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平成18年度1次試験解答:経営法務

設問1

解答:イ

株式会社の設立に関する問題である。

詳細は、現物出資、自己設立の簡素化を参照して下さい。

(ア) 株式会社設立の登記を行う際に、出資の履行が行われたことを示す書面は添付しなければなりませんが、発起設立・募集設立いずれの場合も、当該書面は、銀行預金の残高証明だけで足りることになりました。
→×:出資の履行が行われたことを示す書面とは、払込金保管証明のことである。 払込金保管証明とは、会社設立の際には、銀行または信託会社が務める払込取扱金融機関が、設立登記前に、発起人または株式申込人から金銭出資の払込みがなされたことを証明する書類である。発起設立により会社を設立する場合は、「払込金保管証明」は不要であるが、募集設立の場合は、「払込金保管証明」は必要である。
詳細は、払込金保管証明制度の一部廃止を参照して下さい。
(イ) 現物出資に検査役の調査が不要となる範囲が拡大されましたので、現物出資財産について定款に記載された価額の総額が500万円以下であれば、検査役の調査は不要です。
→○:会社の設立時や設立後に、金銭以外の財産をもって出資することを現物出資という。新会社法では、検査役の調査が不要な現物出資・財産引受けの範囲が次のとおり拡大される。
▼検査役の調査が不要な現物出資・財産引受けの範囲
(※)下記のいずれかの条件を満たせば、検査役の調査が不要
  従来 新会社法
財産の総額 財産の総額が資本金の1/5以下かつ500万円以下 財産の総額が500万円以下
(資本金の1/5を超えてもよい)
有価証券 取引所の相場のある有価証券 市場価格のある有価証券
(「店頭登録有価証券」などが追加)
専門家の証明 財産の価額が相当である旨の、弁護士等専門家の証明 財産の価額が相当である旨の、弁護士等専門家の証明(変更なし)

従来は、「財産の総額が資本金の5分の1以下かつ500万円以下」の場合は検査役の調査は不要であった。新会社法施行後は、「財産の総額が500万円以下」であったならば検査役の調査は不要である。

(ウ) 取締役会が設置されない小規模な株式会社の場合は、設立手続も規模に応じて簡素な形式になりましたので、発起人が作成した定款に公証人の認証を受ける必要はありません。
→×:規模の大小に関わらず、作成した定款が、定款として効力を生じるためには、公証人の認証を受けなければならない。
(エ) 有限会社を設立することは原則できないこととなりましたが、特例として資本金の額が10万円以下であれば、設立する会社を有限会社とすることもできます。
→×:最低資本金規制は存在しないので特例として資本金の額が10万円以下・・・という記述は誤りである。また会社法では、有限会社制度が廃止され株式会社制度に一本化された為、新たに有限会社を設立することはできない。

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設問2

解答:設問1:ウ 設問2:エ

株式会社の機関取締役・取締役会会計監査人に関する問題である。

(設問1)
 委員会設置会社、監査役会設置会社、公開会社は取締役会の設置が義務づけられる。

▼会社法 第327条 第1項
次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならない。
1. 公開会社
2. 監査役会設置会社
3. 委員会設置会社

(設問2)
【 B 】:取締役会を設置した会社では、原則として監査役が必要である。
【 C 】:公開会社でない株式会社(株式譲渡制限会社)が会計参与を設置する場合には、監査役を設置する必要はない。

▼会社法 第327条 第2項
取締役会設置会社(委員会設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。ただし、公開会社でない会計参与設置会社については、この限りでない。

【 D 】:委員会設置会社及び資本金5億円以上等の大会社では、会計監査人を置くことが義務付けられている。(会社法 327条)

▼会社法 第327条 第5項
委員会設置会社は、会計監査人を置かなければならない。

▼会社法 第328条
1.大会社(公開会社でないもの及び委員会設置会社を除く。)は、監査役会及び会計監査人を置かなければならない。
2.公開会社でない大会社は、会計監査人を置かなければならない。


【 E 】:ただし委員会設置会社では監査委員会が存在する為、重複する役割の監査役を置くことはできない。すなわち監査役会も存在しない。

▼会社法 第327条 第4項
委員会設置会社は、監査役を置いてはならない。

詳細は、株式会社の機関中小株式会社の機関設計のパターン例 を参照して下さい。

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設問3

解答:イ

持分会社組合に関する問題である。

 合同会社(日本版LLC)とは、法務省が管轄し、平成18年5月に施行された会社法に規定された新しい会社形態のことである。
 有限責任事業組合(日本版LLP)とは、経済産業省が管轄する「有限責任事業組合契約に関する法律」に規定された新しい組織形態です。 両社は、組合の構成員が有限責任であるという点や取締役会等の機関が必要ない点、利益の配分を自由に設計できるという点は、共通している。しかし次の点が異なる。
LLPとLLCの主な特徴を表にまとめる。

特徴 合同会社(日本版LLC) 有限責任事業組合(日本版LLP)
1 法人格 あり なし
2 登記 本店の所在地において設立の登記をすること 設立要件ではないが、組合契約の内容を登記しなければ、その内容を第三者に対抗することができない。
3 業務執行機関 各社員。社員が複数ある場合は社員の過半数又は業務執行委員 各組合員。重要な財産の処分、譲り受け、多額の借財については組合員の同意
4 利益処分割合 定款規定により自由 組合契約により自由
5 構成員が1名となった場合 存続可能 構成員の間で組合契約を締結する必要があるため、構成員が一人になった場合には、存続不可能
6 組織変更 他の種類の会社への組織変更可能 会社への組織変更は不可能
7 組織再編 株式会社との間で合併等の組織再編行為が可能 組織再編行為は不可能
8 課税方法 会社に対して法人税が課税される 法人ではない為、組合に法人税は課されない。構成員に対して課税される(パススルー課税)

上記表より、

項 目 合同会社 有限責任事業組合 正誤
@法人格の有無 あり なし ○:1参照
A登記の有無 あり なし ×:2参照
B構成員が1名となった場合の組織の存続の可否 存続可能 存続不可 (解散) ○:5参照
C課税の対象 合同会社 組合の各構成員 ○:8参照

となる。すなわち有限責任事業組合(日本版LLP)でも登記をすることができる。よって解答はイである。

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設問4

解答:設問1:ウ 設問2:エ

 産業活力再生特別措置法第12条の9第1項によると、認定事業者である株式会社が認定計画に従って株式交換、吸収分割又は合併を行う場合において、当該認定事業者の事業再構築、共同事業再編又は経営資源再活用を行うために必要かつ適切であることについて主務大臣の認定を受けると、存続会社等は、株式交換、吸収分割又は合併に際してする新株の発行に代えて、特定金銭等(金銭又は他の株式会社の株式(定款に株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めがある株式会社の株式を除く)をいう)を消滅会社等の株主に交付することができる。

(設問1)
【 A 】:上記法律を根拠として、(ウ)産業活力再生特別措置法 を利用した手法がとられる。
(設問2)
【 B 】、【 C 】:特定金銭等(金銭又は他の株式会社の株式(定款に株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めがある株式会社の株式を除く)をいう)を消滅会社等の株主に交付し、株式交換が行なわれる。よって解答はエである。

本問はキャッシュアウトマージャに関する問題である。
キャッシュアウトマージャとは株式を用いず金銭のみによって合併等を行うことである。従来は産業活力再生特別措置法に基づいて行われる場合にのみ特例的に認められていたが、会社法施行により可能となった。

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設問5

解答:イ

特許法意匠法に関する問題である。

【解答郡】
(ア) 会社Xの勤務規則に意匠登録を受ける権利に問する規定がないので、会社Xの従業員甲が意匠登録を受ける権利を会社Yに譲渡することは何の問題もなく、会社Xは、会社Yの許諾を得なければ、照明器具aについて継続して製造販売することはできません。
→×:同一物品について意匠権と特許権が抵触した場合には、先願の特許権者に対しては、後願の意匠権者は権利行使できない。すなわち、会社Yの意匠登録出願は会社Xの特許出願より遅れているので、会社Yの意匠権は制限され、会社Xに主張することはできない。
(イ) 会社Yの意匠権Bの意匠登録を受ける権利は、会社Xの従業員甲が創作した意匠についてでありますので、会社Xは、このまま照明器具aについて製造販売を継続しても問題はありません。
→○:会社Xは、従業員甲の職務捜索に係わる意匠について無償の通常実施権を有している。すなわち、会社Xは、このまま照明器具aについて製造販売を継続しても問題はありません。
(ウ) 会社Yは、会社Xの従業員甲に相当の対価を支払って意匠登録を受ける権利の譲渡を受けて意匠権Bを取得したものでありますから、会社Xは、会社Yが従業員甲に支払った対価を会社Yに支払えば、意匠権Bが会社Xに移転されます。
→×:会社XとYの合計(契約)によって意匠権の移転をすることは可能であるが、会社Yの意思を問題にすることなく、従業員甲に支払った対価を会社Yに支払えば、意匠権Bが会社Xに移転されるわけではない
(エ) 従業員甲は、会社Xの従業員であり、もともと会社Yに意匠登録を受ける権利を譲渡することなど許されないことなので、会社Yの意匠権Bは無効であり、会社Xは、従業員甲の意匠登録を受ける権利に基づいて意匠登録出願を行えば、独自に意匠権を取得することができます。
→×:従業員甲が意匠登録を受ける権利を譲渡する事は法律上、可能であり会社Yの意匠権Bは有効である

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設問6

解答:設問1:イ 設問2:エ 設問3:イ 設問4:ウ 設問5:ウ

著作権法に関する問題である。

(設問1)
著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。よって解答はイである。

▼著作権法第2条1項1号
著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

(設問2)
著作権は、権利を得るための手続は必要ない。著作権は著作物の創作をもって発生し、登録は不要である(無方式主義)。よって解答はエである。

(設問3)
著作権の存続期間は原則として著作者の死後50年まで存続する。よって解答はイである。

▼著作権法第51条2項 保護期間の原則
第51条 著作権の存続期間は、著作物の創作の時に始まる。
2 著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。次条第1項において同じ。)50年を経過するまでの間、存続する。

(設問4)
著作者人格権とは、著作者が著作物について有する人格的利益を保護する権利である。著作者個人が専有し、譲渡、相続することができない。

著作者人格権には、公表権氏名表示権同一性保持権がある。

公表権
著作物を公表するかしないか、公表するとすれば、いつ、どのような方法、形で公表するかを決めることができる権利
氏名表示権
著作物を公表するときに、著作者名を表示するかしないか、するとすれば、実名か変名かを決めることができる権利
同一性保持権
自分の著作物の内容又は題号を自分の意に反して勝手に改変されない権利

よって解答はウである。

(設問5)
著作権侵害があった場合、著作権者は、以下に示す民事上、刑事上の救済措置をとることができる。よって解答はウである。(イ)の侵害による損害賠償は(2)の損害賠償請求権に該当しそうではあるが、おそれの段階では損害賠償は請求することはできない。

(1)差止請求権
侵害行為を止めさせることができる
(2)損害賠償請求権
侵害行為により受けた損害の賠償を請求できる
(3)不当利得返還請求権
侵害によって第三者が不当な利得を得ているときは、その返還を請求できる
(4)信用回復措置請求権
侵害行為によって特許権者の信用が傷つけられたとき、その信用を回復する為の措置を講ずることを求めることができる
(5)著作権侵害罪
故意による侵害については、刑事告訴をして刑事上の責任を問うことができる
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設問7

解答:イ

特許権に関する問題である。

【解答郡】
(ア) 会社Xの増資を行って資金調達を行う。
→○:増資とは、株式会社が資本金を増やすために、新株を発行することである。十数件の特許出願をしたことでも分かるように会社Xの技術力や潜在的価値は高いと認められ株価が高騰する可能性が高い。
(イ) テレビジョン受像器に関連する十数性の特許出願に係る発明に質権を設定して資金調達を行う。
→×:現時点では、特許出願の段階であり、特許権を得たわけではない。この段階では、質権を設定して資金調達を行うことは法律で禁止されている
(ウ) テレビジョン受像器に関連する十数性の特許出願に係る発明に対して実施権を許諾してロイヤリティを得ることによって資金調達を行う。
→○:正しい。
(エ) テレビジョン受像器に関連する十数性の特許出願に係る発明をファンドに組み込み、資金調達を行う。
→○:ファンドとは、複数の投資家から資金を集め、その資金を用いて行われる事業・資産からの利益を投資家に分配する仕組みである。テレビジョン受像器に関連する十数性の特許出願に係る発明をファンドに組み込むことで、資金調達は容易になる。

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設問8

解答:ア

知的財産権に関する問題である。

(ア) チョコレートケーキaのデザインは、『女性の憧れ』をイメージするモチーフとして図案化したものの著作物に該当し、著作権法で保護を受けることができます。
→○:チョコレートケーキaのように、食べればなくなるような物でも、思想又は感情を創作的に表現したもの(『女性の憧れ』をイメージするモチーフがそれに該当する)である以上、著作権法の保護を受けることができる。
(イ) チョコレートケーキaのデザインは、パティシエ甲が手作りによって製作したチョコレートケーキa(物品)の形状に特徴を有するものですから、物品の形状の意匠に該当し、意匠法で保護を受けることができます。
→×:意匠法とは、工業上利用できる物品あるいは物品の部分の形状、模様、色彩などの意匠(デザイン)に関する法律である。チョコレートケーキaは、工業上利用できる物品ではないので意匠法の保護を受けることはできない
(ウ) チョコレートケーキaのデザインは、パティシエ甲が独白の製作技術を駆使して考案したもので独創性を有しており、物品(チョコレートケーキa)の形状に係る考案に該当し、実用新案法で保護を受けることができます。
→×:実用新案法とは、発明のような高度性が要求されない物品の形状、構造、組み合わせに係る考案の保護及び利用を図ることにより、その考案を奨励し、もって産業の発展に寄与する為の法律である。チョコレートケーキaは産業の発展に寄与しないし、物品ではないので、実用新案法の保護を受けることはできない
(エ) チョコレートケーキaのデザインは、パティシエ甲が独特の手順(方法)に基づいて製作することによって完成するものですから、パティシエ甲の独特の製作手順が物(チョコレートケーキa)を製造する方法の発明に該当し、特許法で保護を受けることができます。
→×:特許法とは、発明の保護及び利用を図ることにより発明を奨励し、産業の発達に寄与する為の法律である。チョコレートケーキaは産業の発展に寄与しないし、発明ではないので、特許法の保護を受けることはできない

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設問9

解答:設問1:ア 設問2:ウ

(説明1)

(ア) X社はYに対し、不法行為責任に基づき、少なくとも、サブライセンス契約およびマスターライセンス契約が有効であれば本来X社が受け取るはずであったロイヤリティ相当額を、X社が披った損害の賠償として請求することができる。
→○:YはX社に対して虚偽の説明を行いX社との契約を解除し、X社を排除してZとの間で直接ライセンス契約を締結している。これはX社の業務を違法に妨害したことであり、不法行為に該当する。賠償の範囲は問題になるが、すくなくてもYとのマスターライセンス契約が有効で、Zとのサブライセンス契約が有効であれば本来X社が受け取るはずであったロイヤリティ相当額を請求することは可能である。
(イ) X社はYに対し、本来X社が受け取るべきロイヤリティをYが受け取ったことから、YがZ社から受け取ったロイヤリティ相当額を、債務の履行として請求することができる。
→×:X社とYのマスターライセンス契約が既に解除されており、直接契約関係にはない。ゆえにYがZ社から受け取ったロイヤリティ相当額を、債務の履行として請求することはできない。
(ウ) X社はZ社に対し、不法行為責任に基づき、少なくとも、サブライセンス契約およびマスターライセンス契約が有効であれば本来X社が受け取るはずであったロイヤリティ相当額を、X社が被った損害の賠償として請求することができる。
→×:Z社は故意又は過失があったわけではないので、不法行為には該当しない。
(エ) X社はZ社に対し、本来X社に支払われるべきロイヤリティをX社に支払わなかったことから、Z社がYに支払ったロイヤリティ相当額を、債務の履行として請求することができる。
→×:X社とZ社間のサブライセンス契約は解除されており、直接契約関係にはない。ゆえにZ社がYに支払ったロイヤリティ相当額を、債務の履行として請求することはできない。

(説明2)
 ミニマムギャランティー(ミニマムロイヤリティ)とは、最低実施料といわれ、一定数量以下しか製造しない場合や販売できない場合でも最低一定金額を支払う方式のことある。

【解答郡】
(ア) サブライセンス先がライセンサーに対し、契約期間中、契約を遵守することを担保するために預ける金額
→×:上記説明より誤り
(イ) サブライセンス先がライセンサーに対し、契約の成立を証するための証拠という趣旨で支払う金額
→×:上記説明より誤り
(ウ) サブライセンス先がライセンサーに対し、ロイヤリティの最低保証金額として合意した期間ごとに支払いを約束している一定の金額
→○:上記説明より正しい
(エ) サブライセンス先がライセンサーに対して支払う期間中の販売実績基準としてその商品卸売価格総額に一定の料率を乗じた金額
→×:ランニングロイヤリティに関する説明である。ランニングロイヤリティは出来高に一定の料率を乗じた金額を支払う方式である。

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設問10

解答:ウ

知的財産権に関する問題である。

【 A 】:商品に映画、テレビ、マンガに登場する人物などの肖像が描かれていたりすると、その商品を購入しようとする者の注意を惹き、販売促進に大きな力を発揮する。 このような肖像は「キャラクター」と呼ばれる。
また、「商品化権」や「マーチャンダイジング」とは、このようなキャラクターを商品の販売やサービスの提供のために利用することに関する財産権の一種である

【 B 】:「Merchandising Rights」とは翻訳すると商品化権のことである。

【 C 】:商標法、意匠法、著作権法、不正競争防止法などにより保護を受けることができる。 詳細は、漫画キャラクターの無断使用対策を参照して下さい。

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