平成16年度1次試験解答:経営法務
設問1
解答:設問1:エ 設問2:ア 設問3:エ
(設問1)
事後設立(じごせつりつ)とは、株式会社の取引に関する規制の一つであり、会社成立後2年以内に、その成立前から存在した財産を継続して使用する目的で、純資産に対する一定の割合以上の対価(旧商法においては、資本の20分の1以上、会社法においては、原則、当該財産の対価として交付する財産の帳簿価額の合計額が当該株式会社の純資産額として会社法施行規則135条で定める方法により算定される額に対し5分の1を超える場合)で取得する契約を締結することである。
原則として株主総会の決議と検査役の調査が必要とされていたが、2005年に成立した会社法においては、検査役の調査についてはコストがかかりすぎるという理由で廃止され、株主総会の特別決議さえあればよいことになった(会社法309条2項11号)。
会社法施行による変更点は現物出資・事後設立の簡素化を参照して下さい。
(設問2)
事業譲渡(営業譲渡)に関する問題である。
(ア) | 営業譲渡の目的物たる不動産については、価格などが相当であることについての弁護士、公認会計士又は税理士等の証明書と不動産鑑定士の鑑定評価書があれば、裁判所の選任する検査役の調査は不要である →○:現物出資が不動産の場合には、弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人等の証明を受け、不動産鑑定士の鑑定評価書があれば、裁判所の選任する検査役の調査は不要である。 |
(イ) | 営業譲渡の目的物たる不動産については、不動産鑑定士の鑑定評価書のみがあれば、これについて裁判所の選任する検査役の調査は不要である →×:不動産鑑定士の鑑定評価書のみではいけない。営業譲渡の目的物が、不動産の場合は、弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人等の証明も必要である。 |
(ウ) | 営業譲渡の目的物の価格などに関して調査をさせるため、必ず裁判所に検査役の選任を請求しなければならない →×:財産の価額が「資本の5分の1」かつ「500万円」以下の場合、または事後設立の内容が相当であることを証明した場合において検査役の選任は不要である。また営業譲渡が不動産の場合においても、アの要件を満たせば検査役の選任は不要である。 |
(エ) | 営業譲渡の目的物の種類にかかわらず、価格などが相当であることについて弁護士、公認会計士又は税理士等の証明書のみがあれば、裁判所の選任する検査役の調査は不要である →×:営業譲渡する目的物が不動産の場合にはアの要件を満たすことにより、検査役の選任は不要となる。ただし、その場合においても証明書のみではなく、不動産鑑定士の鑑定評価書が必要である。 |
(ア) | 営業譲渡では、どのような債務を引き継ぐかを契約で定めることができるが、 譲受人が譲渡人の商号をそのまま使用する場合は、原則として譲渡人の営業上の債務について譲受人も弁済しなければならない。 →○:商号をそのまま使用する場合においては、原則として譲渡人の営業上の債務について譲受人も弁済しなければならない。 |
(イ) | 営業の全部を譲り受ける場合、株式会社においては譲受対象営業の規模が小さければ株主総会決議が不要な場合があるが、有限会社では常に社員総会の特別決議が必要である。 →○:株式会社においては、譲受対象営業の規模が小さければ株主総会決議が不要な場合がある(簡易営業(事業)譲渡)。しかし有限会社においては常に特別決議が必要となる。 |
(ウ) | 営業の譲受人が譲渡人の商号をそのまま使用せず、かつ、債務を引き受けたとは明記されていなくとも、事業を譲り受けたという趣旨が記載されている広告をしたときは、譲渡人の債務の弁済をしなければならない場合がある。 →○:営業の譲受人が譲渡人の商号をそのまま使用せず、かつ、債務を引き受けたとは明記されていなくとも、事業を譲り受けたという趣旨が記載されている広告をしたときは、譲渡人の債権者は譲受人に対して弁済の請求が可能である。 |
(エ) | 重要な営業の譲渡契約が譲渡会社の株主総会の承認を得ていなかった場合、その営業譲渡契約は無効だが、この場合、譲渡会社側の株主の利益が侵されたのだから無効の主張ができるのは譲渡会社であって譲受会社ではない。 →×:営業譲渡について株主総会承認を得ていない場合、営業譲渡契約は絶対的に無効となる。この場合、譲渡会社、譲受会社共に無効を主張できる。 |
設問2
解答:設問1:オ 設問2:エ
(設問1)
設問の解答は次の様になる。よって解答はオである。
株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(商法特例法)上の小会社(以下「小会社」という)の監査役は【A:会計監査のみを行う】 ところ、有限会社の監査役【B:も会計監査のみを行う 】 。株式会社の監査役の任期は就任後4年内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時までであり【C:定款や選任決議などでこの期間を伸長も短縮もできない】 。
小会社で会社の取締役に対する責任追及の訴えについて会社を代表するのは【D:取締役会が定める者】 である。株式会社でも有限会社でも監査役の会社に対する責任の全部免除は【E:総株主(社員)の同意が必要】 である。
※平成16年当時は、上記の内容であったが、会社法施行によって変更がある。
【 A 】:監査役は、中小企業の監査強化の為に、資本金や負債の額に関わらず、会計監査・業務監査を行なう。ただし定款で権限を会計監査のみに限定することは可能である。(会社法第381条)
【 B 】:原則としては4年であるが、株式譲渡制限会社においては、定款によって最大10年まで延長可能である。(会社法第389条)
(ア) | 監査役全員一致でその権限を行使しなければならない。 →×:監査役は独立して監査を行なう。たとえ1人であっても、意見は尊重される。すなわち全員一致する必要はない。 |
(イ) | 監査役の互選で代表者を決めた場合は、その者によってのみ監査役の権限を行使できる。 →×:監査役の互選で代表者を決めた場合においても、他の監査役が権限を行使できなくなるわけではない。あくまでも監査役は独立して監査を行なう。たとえ1人であっても、意見は尊重される。 |
(ウ) | 監査役の多数決で監査役としての権限を行使する。 →×:監査役は独立して監査を行なう。たとえ1人であっても、意見は尊重される。監査役の多数決で監査役としての権限を行使するわけではない。 |
(エ) | 監査役は各自が単独でその権限を行使できる。 →○:監査役は、それぞれ独立して職務権限を行使する。 |
(オ) | 商法特例法上の大会社及びみなし大会社における監査役会においては、その決議に基づかなければ業務、財産調査等の監査役の権限を行使できない。 →×:監査役は、それぞれ独立して職務権限を行使する。すなわち監査役会の決議をもってしても、監査役の権限の行使を妨げることはできない。 |
設問3
解答:設問1:ウ 設問2:ア
(設問1)
【 A 】〜【 D 】は次のようになる。よって解答はウである。
甲「乙に利益処分案についてしか議決権を有しない利益配当優先株を発行したとします。定款に特別な定めがない場合、優先配当が実際にできなかったときには、乙の株式に利益処分案以外についての決議権が復活しますか。」
丙「【A:しません】 。」
甲「利益配当優先株を発行する場合、総会決議事項ではなく、取締役会決議事項である代表取締役の選任について、乙に拒否権を与える株式を発行することはできますか。」
丙「【B:できます】 。」
甲「それでは、5名の取締役を置く場合、私のみが出席する総会だけで3名、乙のみが出席する総会だけで2名の取締役を選ぶという株式を発行することはできますか。」
丙「できます。ただし、そのような株式は、定款による株式譲渡制限がなされている会社【C:でのみできます】 。」
甲「そのような株式を発行しておいて、今後第三者から投資をしてもらうときには、その者に対しては取締役を選任できない株式を発行することができるのですか。」
丙「できます。ただし、その場合は取締役を選任できない株式は、発行済株式総数の【D:二分の一】を超えて発行することはできません。」
【A】: | 配当に関する優先権と無関係に議決権を制限することが認められている。 |
【B】: | 事実上、拒否権を有する種類株式の発行を認めている。
▼会社法第108条 8項 |
【C】: | ある種類の株主総会で取締役または監査役を選任するという株式を発行することは譲渡制限会社でのみ可能である。 |
【D】: | 議決権を行使することができる事由につき制限のある種類の株式については、その総数は発行済株式の総数の2分の1を超えることができない。
▼会社法第115条 種類株式発行会社が公開会社である場合において、株主総会において議決権を行使することができる事項について制限のある種類の株式(以下この条において「議決権制限株式」という。)の数が発行済株式の総数の二分の一を超えるに至ったときは、株式会社は、直ちに、議決権制限株式の数を発行済株式の総数の二分の一以下にするための必要な措置をとらなければならない。 |
設問4
解答:設問1:オ 設問2:ア
(設問1)
【 A 】会社法第429条より、重過失が入る
役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
【 B 】本件行為が取締役会の決議に基づいてなされた場合、丙(決議に賛成した取締役)は「本件行為を自らしたものとみなされる」(会社法第423条3項3号)
▼会社法第423条
1. 取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
2. 取締役又は執行役が第356条第一項(第419条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定に違反して第356条第一項第一号の取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。
3. 第356条第一項第二号又は第三号(これらの規定を第419条第二項において準用する場合を含む。)の取引によって株式会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定する。
1. 第356条第一項(第419条第二項において準用する場合を含む。)の取締役又は執行役
2. 株式会社が当該取引をすることを決定した取締役又は執行役
3. 当該取引に関する取締役会の承認の決議に賛成した取締役(委員会設置会社においては、当該取引が委員会設置会社と取締役との間の取引又は委員会設置会社と取締役との利益が相反する取引である場合に限る。)
【 C 】丁は「議事録に異議をとどめなければ賛成したものと推定される」(会社法第369条5項)
1. 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。
2. 前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。
3. 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
4. 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
5. 取締役会の決議に参加した取締役であって第3項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する
【 D 】全く名目的な存在で、職務を実際には行っていない者でも、正式に就任している以上は責任が問われる
【 E 】監査役である戊も登記について承諾を与えていた場合は損害賠償責任を負う場合がある
(ア) | この責任の消滅時効期間は3年である。 →×:通常の不法行為責任の消滅時効期間は3年であるが、取締役の責任に関する損害賠償請求権の消滅時効期間は10年とされている。 |
(イ) | この責任は不法行為責任とは別個の特別な法定責任である。 →○:取締役の第三者に対する責任は、不法行為責任とは別に第三者の保護のために、取締役の責任を加重した特別な法的責任である。 |
(ウ) | 中小企業におけるこの責任の追求は、法人格否認の法理の適用に代わる役割を果たす面がある。 →○:「法人格否認の法理」とは、会社の存続中に、その会社の形式的独立性を貫くことが正義・衡平の理念に反すると認められるなどの例外的な場合に、会社の法人格を当該法律関係に限って否認することで事案の衡平な解決を図る法理であり、判例・学説上認められてきたものである。すなわち取締役の対第三者責任を追及することにより、取締役個人の責任を問うことができる。すなわち法人格否認の法理に代わる役割を果たす。 |
(エ) | 取締役の選任決議も登記もなされていない事実上の取締役でもこの責任を負う場合がある。 →○:選任決議も登記もなされていない事実上の取締役であっても取締役の責任は問われる場合がある。 |
(オ) | 本件行為について監査役も責任を負うときは、取締役との連帯責任となる。 →○:監査役が責任を負う場合には監査役と取締役は連帯責任となる。 |
設問5
解答:エ
(ア)、(イ)、 (ウ)
→×:会社Y は対価を支払って正当に特許権者である会社X から製品A を購入している。会社Xが会社Yに特許製品を製造・販売・譲渡した場合、会社Xの特許権は用い尽くされたものとなり特許権を行使する事はできない。 (用尽論)
←問題に戻る
設問6
解答:設問1:イ 設問2:ウ 設問3:オ 設問4:ア 設問5:エ
(ア) | 記号又は立体的形状 →×:商標法の保護対象である。 |
(イ) | 形状、構造又は組合せ →○:実用新案法では、物品の計上や構造又は組合せに係わるものを保護対象とする。 |
(ウ) | 形状、模様若しくは色彩又はこれらの組合せ →×:意匠法の保護対象である。 |
(エ) | 思想又は感情を創作的に表現したもの →×:著作権法の保護対象である。 |
(オ) | 製造方法 →×:特許法の保護対象である。 |
(ア) | 自己の業務に係るものであること、形状に表示するものであること →×:「商標権」の取得要件の定義である。 |
(イ) | 新規性を有すること、進歩性を有すること、美感を有すること →×:「意匠権」の取得要件の定義である。 |
(ウ) | 新規性を有すること、進歩性を有すること、不登録事由に該当しないこと →○:正しい |
(エ) | 独自の思想又は感情を具体的に表現したもの →×:「著作権」の取得要件の定義である。 |
(オ) | 窃取、詐欺、脅迫その他の不正の手段によって得たものでないこと →×:これらのものは考案したものにはあたらない為、実用新案法の審査自体が行なわれない。 |
(設問3)
(オ)無審査主義
→○:実用新案は、方式審査と基礎的要件の審査(考案が物品の経常・構造・組合せに係るものかなどの審査)が行われるだけで、特許と異なり実態審査は行われない。これを無審査主義という。
実用新案は無審査主義であるため、特許のような出願広告・審査請求といった制度はなく、出願があったときは原則として登録され、その内容が実用新案広報に掲載される。
(設問4)
(ア)出願の日から6年
→平成16年時点では出願の日から6年間が実用新案の存続期間であった。
現在は改正され出願の日から10年が実用新案の存続期間である。
(設問5)
実用新案技術評価書とは、出願された考案の新規性、進歩性などについて特許庁の審査官が評価し、実用新案権の有効性の判断を示した書類のことである。いわば一種の鑑定書である。
実用新案制度において無審査主義が導入されているため、実用新案権者は、自己の権利を侵害する者を発見したときは実用新案技術評価書を提示して警告した後でなければ、その権利を行使することはできない。よって解答はエである。
設問7
解答:ウ
(ア) | 会社Y のデジタル時計a 付ノートパソコンd の販売行為は、ノートパソコンの部分については特許権の侵害にはなりませんが、デジタル時計a の部分については会社X が特許権を保有しておりますので、特許権A の侵害になります。 →×:デジタル時計a の部分は会社X から購入しており、特許権は用い尽くされたものとなり、特許権を行使する事はできない。 (用尽論) |
(イ) | 会社Y の販売するデジタル時計付ノートパソコンd は、会社X の100%子会社Zが製造するノートパソコンc を用いているので、会社X が製造販売しているデジタル時計a を購入して、ノートパソコンに取り付けても会社X の保有する特許権を侵害することにはなりません。 →×:「デジタル時計a とノートパソコン(ノートパソコンの形式は限定されていないと思われる)とを外部から時間がわかるように組み合わせたもの」が特許権Bである。よって、会社Y が会社Z からノートパソコンc を購入してデジタル時計a を 組み込んだノートパソコンd の製造行為は、特許権B の侵害になる。 |
(ウ) | 会社Y は、会社X が製造販売しているデジタル時計a を購入して、会社Z 製のノートパソコンc に単に組み込んでいるだけですが、デジタル時計a とノートパソコンc とを組み合わせていますので特許権B の侵害になります。 →○:正しい |
(エ) | 会社Y は、会社Z が製造販売するノートパソコンc に、会社X が製造販売したデジタル時計a を購入して組み込んでいるだけで、会社Y はデジタル時計a もノートパソコンc も自らが製造している訳でないから、会社X の保有する特許権を侵害することにはなりません。 →×:「デジタル時計a とノートパソコン(ノートパソコンの形式は限定されていないと思われる)とを外部から時間がわかるように組み合わせたもの」が特許権Bであるので特許権Bを侵害する行為である。 |
設問8
解答:ウ
(ア) | 玩具会社X のおもちゃのクリスマスツリーa は、おもちゃのクリスマスツリーa を見ただけで、玩具会社X のものであると認識することができるほど有名になっており、製菓会社Y の販売しているチョコレートのモチーフが、玩具会社X のクリスマスツリーのモチーフと同じであるので、不正競争防止法の形態模倣禁止の規定に基づいて、製菓会社Y のチョコレートのクリスマスツリーb の販売を止めさせることができます。 →×:不正競争防止法の形態模倣禁止とは、最初に販売された日から三年以内の他人の商品の形態を模倣した商品の譲渡・貸し渡し・譲渡や貸渡しのための展示・輸出・輸入を行う行為を禁止するものである。この法律に基づき、販売禁止を請求するためには、形態が同一または実質的に同一といえるほど酷似していなければならない。すなわち、おもちゃとチョコレートという相違点があるので販売禁止請求は困難である。 |
(イ) | 玩具会社X は玩具を製造販売する会社で、一方、製菓会社Y はお菓子を製造販売する会社であり、玩具会社X と製菓会社Y の販売行為は販売商品を別々にしているので、製菓会社Y のチョコレート販売行為は玩具会社X が保有している意匠権A の侵害を構成しません。 →×:意匠権の効力は類似商品にまで及ぶので、販売商品を別々にしていても意匠権侵害は認められる。 |
(ウ) | 製菓会社Y がクリスマスツリーb のチョコレートを販売することは、問題ありませんが、小さな苗木のクリスマスツリーc は、玩具会社X のおもちゃのクリスマスツリーa と類似する物品ですから、玩具会社X が保有している意匠権A の侵害を構成しております。 →○:正しい |
(エ) | 製菓会社Y の販売しているチョコレートのクリスマスツリーb のモチーフは、商品が別であっても玩具会社X のおもちゃのクリスマスツリーa のモチーフと同じですから、製菓会社Y がクリスマスツリーb のチョコレートを販売することは、玩具会社X が保有している意匠権A の侵害を構成しております。 →×:意匠の類似性を判断する場合は、単にモチーフの同一性で判断するのではなく、「同一物品・類似物品」であるかを含めて判断する必要がある。 |
設問9
解答:設問1:ア 設問2:イ
(設問1)
瑕疵担保責任とは、売買の目的物に【A:隠れた】瑕疵(欠陥)がある場合に、売主が飼い主に対して負う担保責任である。
「瑕疵担保責任」の内容は次のとおりである。
@ 瑕疵があるため契約の目的を達することができない場合には、買主は契約を解除できる。
A @以外の場合には、買主は 【C:損害賠償】のみを請求できる。
(民法570条,民法566条1項より)
よって、解答はアである。
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。
地上権等がある場合等における売主の担保責任
1.売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2.前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
3.前2項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない。
(設問2)
【 B 】瑕疵担保責任は買主が善意(瑕疵の事実を全く知らない)かつ無過失でないと瑕疵担保責任は追求できない。(民法566条1項より)
よって解答はイである。
設問10
解答:ア
(ア) | 使用許諾契約で明文で改変を禁じられていないときは、ソフトウェアの購入者は自己利用に必要な範囲で自分の使用するシステム環境に適合するよう当該ソフトウェアを改変することができる。 ▼著作権法第47条の2
プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、当該著作物の複製又は翻案(これにより創作した二次的著作物の複製を含む。)をすることができる。
|
(イ) | ソフトウェアの「翻案」とはソフトウェアのアルゴリズムの変更をいうので、日本語対応のソフトウェアのソースコードを中国語対応のソフトウェアのソースコードに書きかえる行為は、ソフトウェアの翻案にはあたらない。 →×:日本語対応のソフトウェアのソースコードを中国語対応のソフトウェアのソースコードに書きかえる行為は、ソフトウェアの翻訳に当たる。 |
(ウ) | 著作権法では、自己利用目的での複製は著作権を侵害しないと定められている。使用許諾契約で1台のコンピュータにのみインストールできると定められているソフトウェアであっても、自己利用目的である限り、自己の使用する複数台のコンピュータにインストールすることは著作権法違反とはならない。 →×:使用許諾契約に違反し複数台のコンピュータにインストールすることは著作権法第47条の2の必要と認められる限度を超えた複製であり、著作権法違反となる。 |
(エ) | 著作権法では、ソフトウェアを送信する行為は著作権を侵害するが、ソフトウェアのアップロードにとどまる場合は、著作権侵害にはあたらない。 →×:ソフトウェアを無断でアップロードする行為は、公衆送信権(著作物を公衆送信する権利)を侵害する行為であり、著作権侵害にはあたる。 |