平成19年度1次試験問題:企業経営理論
設問1
目標管理およびその技法や経営計画に関する説明として最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 米国大手電機メーカーなどで用いられているシックス・シグマという目標管理技法は、統計的管理幅を±6シグマに定め、不良品の発生頻度を96%以内に抑えて、経営効率を上げようとするものである。 (イ) 米国からわが国に導入されたQCは独自な展開をみせ、やがて全社的な品質管理をめざすTQCへと発展したが、その推進の担い手であった日本科学技術連盟はその呼称をTQM(Total Quality Management)に変更した。 (ウ) 米国レーガン政権時代の商務長官にちなんで設けられたマルコム・ボルドリッジ賞は、米国製造業の研究開発力を高める上で貢献したが、経営体質の改善や国際競争力を高める上では機能しなかった。 (工) 目標管理制度とQC活動が緊密に結びつくと短期志向の目先の管理に陥りやすいことから、この弊害を除くべくわが国ではクロス・ファンクショナル・チームが用いられている。
設問2
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
企業は規模を拡大するにつれ、生産の効率化や事業領域の調整、資金繰りや設備投資などあらゆる事業活動を計画的に進めることが重要になる。長期経営計画はそのための代表的なものである。しかし、@長期経営計画にはいくつかの重要な問題点が指摘されている。そのため、それを克服すべく戦略的経営計画が広く用いられている。さらに、近年ではAバランス・スコアカードを導入する企業も増えつつある。
(設問1)
文中の下線部@の長期経営計画の問題点に関する記述として、最も不適切なも のはどれか。
【解答群】 (ア) 過去の実績の趨勢や積み上げによる計画部分が多いと、環境の変化から遊離した計画になりやすく、現状維持的な業務遂行に甘んじがちになる。 (イ) 計画と統制のサイクルが緊密に連動して、管理サイクルが短くなると、現場で創意工夫する余裕がなくなり、ルーティンな仕事ぶりが目に付くようになる。 (ウ) 計画の策定は通常半年以上かかるので、新年度に入ると早くも次期の計画の策定に取り掛かることになり、計画のローリングは不可能であるばかりか、計画そのものが絵にかいた餅として見捨てられがちになる。 (工) 本社の企画部門が中心になって策定した計画は、生産や営業の現場の声が反映されにくいことから、現場の挑戦意欲をそぎ、現場では受容されにくい傾向がある。
(設問2)
文中の下線部Aのバランス・スコアカードに関する記述として最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) バランス・スコアカードでは、業績の原動力となるものをパフォーマンス・ドライバーとよび、これを特定して直接に管理することによって事前段階からの業績管理を可能にしようとする。 (イ) バランス・スコアカードには、経営のバランスを図るべく、ビジネス戦略の視点、財務の視点、顧客の視点、業務の視点、学習・成長の視点の5つの視点が設定されている。 (ウ) バランス・スコアカードは、業績評価システムの構築を目指すものであり、成果主義的な管理制度には不可欠な管理ツールである。 (工) バランス・スコアカードは、多様な目標を総花的に並べることになるだけに、目標間の横の関係性や因果連鎖を的確に把握することは実際には不可能であり、管理技法としての限界が指摘されている。 (オ) バランス・スコアカードは、日本的な目標管理制度を具体化する計画技法として1990年代初頭に開発された。
設問3
生産数量や費用構造の変動と競争状況に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 企業間で生産能力や変動費に非対称性があり、それを制御できる場合、企業は競争優位を確立して、安定的な地位を築くことができる。 (イ) 業界で自由競争が展開されている状況で、企業の費用構造が同質化するにつれて、価格競争は激化しやすくなる。 (ウ) 収穫が逓減するのは、固定的な生産要素が存在せず、生産数量が拡大するにつれて、平均費用が減少する場合である。 (工) 需要の価格弾力性が低く、かつ、供給能力が伸長している市場では、価格競争の回避が難しくなり、企業の収益は低迷しやすくなる。 (オ) 費用構造が収穫逓増を示すとき、最適生産規模が成立しないので、企業は生産数量を拡大して効率を上げようとしがちになり、規模拡大にともなってビジネスのリスクが高くなりやすい。
設問4
IT(情報技術)を利用した新規事業の成功事例が次々に生まれている。このような新規事業に関する説明として最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) ITは誰もが利用できる完結した技術システムであり、コア・コンピタンスである固有の情報や知識などの資源をベースにする必要がまったくない点が、ITビジネスの大きな特徴である。 (イ) IT利用によって、顧客に提供する製品・サービスの価値や情報を広く伝えることができるようになるが、その反面で、IT機器への投資が巨額になるので収益性が低下することは避けられない。 (ウ) IT利用の新規事業では、顧客の求める価値を提供できるようにビジネスを設計することが大切であるが、その設計アイデアは概して他社に見えやすく、模倣されやすいので、それを防ぐ手段を講じることの重要性を軽視してはならない。 (工) ITを利用した新規事業の成功事例は、しばしばビジネス・モデルと呼ばれるが、これはビジネスのアイデアやデザインについて知的財産権が確立されたものを指している。 (オ) ITを利用して自社に特徴的な分業の構造、インセンティブのシステム、情報、モノ、カネの流れなどを統合化する場合、独創性に欠けたものになるので自社の強みが薄らぐことに注意しなければならない。
設問5
製品のモジュール化や開発競争をめぐる問題点や戦略的な適応に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 安価な部品やデバイス等を提供する中間財市場が成立するにつれて、製品のモジュール化が進んで、差別化による競争が激化することになる。 (イ) エレクトロニクス業界では、製品のコモディティ化を抑制する方法として、標準部材市場の成立を遅延させるために製品開発のスピードアップが試みられている。 (ウ) オープンな特許政策や自社部品の過剰な社外販売を展開すると、自社規格のデファクト・スタンダード化が起こりうるが、その反面で参入した他社との間で製品の価格競争が発生して、製品が一挙にコモディティ化する可能性が高まる。 (工) 技術の高度化につれて、商品の機能が向上するが、競争激化とともに顧客の支払う対価が低下し、商品ニーズの頭打ちとともに、商品価格の下落がみられるようになる。