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平成19年度1次試験解答:企業経営理論

設問1

解答:イ

(ア) 米国大手電機メーカーなどで用いられているシックス・シグマという目標管理技法は、統計的管理幅を±6シグマに定め、不良品の発生頻度を96%以内に抑えて、経営効率を上げようとするものである。
→×:シックス・シグマとは、データの統計学的な解析に基づいて製品の不良率を引き下げる品質管理手法のことである。「100万回の作業で不良が発生する回数を3.4回未満にする」ことを目標とするものである。すなわち不良品の発生頻度を0.00034%以下にすることが目標であり、不良品の発生頻度を96%以内に抑えることが目標ではない。
(イ) 米国からわが国に導入されたQCは独自な展開をみせ、やがて全社的な品質管理をめざすTQCへと発展したが、その推進の担い手であった日本科学技術連盟はその呼称をTQM(Total Quality Management)に変更した。
→○: QC(Quality Control:品質管理)は、品質管理活動のことで、製造現場の従業員が自発的に職場の管理や改善を検討し、品質改善につなげていくという活動のことである。QC活動を広げた活動が、TQC(Total Quality Control:全社的品質管理)であり、全社的な品質管理の推進を行うもので、品質管理に関するさまざまな手法を総合的に、かつ、全社的に展開して適用し、従業員の総力を結集してその企業の実力向上を目指すものである。 TQCを発展したものがTQM(Total Quality Management:総合的品質管理)であり、業務・経営全体の質向上管理のことである。
(ウ) 米国レーガン政権時代の商務長官にちなんで設けられたマルコム・ボルドリッジ賞は、米国製造業の研究開発力を高める上で貢献したが、経営体質の改善や国際競争力を高める上では機能しなかった。
→×:マルコム・ボルドリッジ賞とは、1987年レーガン政権下において、米国産業の国際競争力回復をめざすいわば国家戦略として制定されたもので、米国商務省の元長官、故マルコム・ボルドリッジ氏にちなんで命名された。研究開発力や国際競争力を高め、経営体質の改善に貢献した。
(工) 目標管理制度とQC活動が緊密に結びつくと短期志向の目先の管理に陥りやすいことから、この弊害を除くべくわが国ではクロス・ファンクショナル・チームが用いられている。
→×:どのような問題を目標として設定するかによって異なるので、一概に目標管理制度とQC活動が緊密に結びつくと短期志向の目先の管理に陥りやすいとはいえない。またクロス・ファンクショナル・チームとは、既存の組織の枠にとらわれず、必要な人材が集まって随時編成される横断的な組織のことである。

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設問2

解答:設問1:ウ 設問2:ア

経営計画に関する問題である。

(設問1)
(ウ) 計画の策定は通常半年以上かかるので、新年度に入ると早くも次期の計画の策定に取り掛かることになり、計画のローリングは不可能であるばかりか、計画そのものが絵にかいた餅として見捨てられがちになる。
→×:長期経営計画とは、経営ビジョンと現状のギャップを埋めるための計画のことである。明確な定義はないが、一般的に5〜10年程度の長期を指すことが多い。問題文のように毎年計画する計画は短期計画である。
また、企業をとりまく環境の変化が激しい中、計画と実績の間に食い違いが生じたり、計画策定時に予想しえなかった事象が起こる可能性がある。 そういった場合に対応する為の経営計画の修正方法として、ローリングプラン(計画の練り直しや見直しの事で、長期計画の実施過程において、計画と実績の間に食い違いが生じていないかを定期的にチェックし、部分的に修正を加えていく技法である。)がある。これによって計画そのものが絵にかいた餅になることはなくなる。

(設問2)
バランス・スコアカードとは従来の財務的指標中心の業績管理手法の欠点を補うものであり、戦略・ビジョンを次の4つの視点

  1. 財務の視点
  2. 顧客の視点
  3. 業務プロセスの視点
  4. 学習と成長の視点

で分類し、その企業の持つ戦略やビジョンと連鎖された財務的指標、及び非財務的指標を設定する業績評価システムである。

(ア) バランス・スコアカードでは、業績の原動力となるものをパフォーマンス・ドライバーとよび、これを特定して直接に管理することによって事前段階からの業績管理を可能にしようとする。
→○:バランス・スコアカードでは、業績の原動力となるものをパフォーマンス・ドライバーとよぶ。パフォーマンス・ドライバーを特定して直接に管理することによって事前段階からの業績管理が可能となる。
(イ) バランス・スコアカードには、経営のバランスを図るべく、ビジネス戦略の視点、財務の視点、顧客の視点、業務の視点、学習・成長の視点の5つの視点が設定されている。
→×:バランス・スコアカードには、財務の視点、顧客の視点、業務プロセスの視点、学習と成長の視点の4つの視点が設定されている。
(ウ) バランス・スコアカードは、業績評価システムの構築を目指すものであり、成果主義的な管理制度には不可欠な管理ツールである。
→×:バランス・スコアカードとは従来の財務的指標中心の業績管理手法の欠点を補うものであり、成果主義的な管理制度とは性格が異なる。
(工) バランス・スコアカードは、多様な目標を総花的に並べることになるだけに、目標間の横の関係性や因果連鎖を的確に把握することは実際には不可能であり、管理技法としての限界が指摘されている。
→×:バランス・スコアカードは、目標間の横の関係性や因果連鎖を的確に把握することが可能である。
(オ) バランス・スコアカードは、日本的な目標管理制度を具体化する計画技法として1990年代初頭に開発された。
→×:バランス・スコアカードは、キャプラン(ハーバード・ビジネス・スクール教授)とノートン(コンサルタント会社社長)が1992年に「Harvard Business Review」誌上に発表した多面的な業績評価・業績管理の手法である。日本的な目標管理制度を具体化する計画技法ではない。

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設問3

解答:ウ

(ウ) 収穫が逓減するのは、固定的な生産要素が存在せず、生産数量が拡大するにつれて、平均費用が減少する場合である。
→×:収穫が逓減するのは、固定的な生産要素が存在して、生産数量が拡大するにつれて、平均費用が減少する場合である。

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設問4

解答:ウ

(ア) ITは誰もが利用できる完結した技術システムであり、コア・コンピタンスである固有の情報や知識などの資源をベースにする必要がまったくない点が、ITビジネスの大きな特徴である。
→×:ITを利用した事業といえどもコア・コンピタンスとなり得る経営資源は重要である。
(イ) IT利用によって、顧客に提供する製品・サービスの価値や情報を広く伝えることができるようになるが、その反面で、IT機器への投資が巨額になるので収益性が低下することは避けられない。
→×:IT機器への投資金額は、システム構成によって異なるので一概に巨額になるとはいえない。また、巨額になってもそれを上回る効果を生み出せば収益率が低下することもない。
(ウ) IT利用の新規事業では、顧客の求める価値を提供できるようにビジネスを設計することが大切であるが、その設計アイデアは概して他社に見えやすく、模倣されやすいので、それを防ぐ手段を講じることの重要性を軽視してはならない。
→○
(工) ITを利用した新規事業の成功事例は、しばしばビジネス・モデルと呼ばれるが、これはビジネスのアイデアやデザインについて知的財産権が確立されたものを指している。
→×:ビジネス・モデルは知的財産権が確立されていることを要件としない。
(オ) ITを利用して自社に特徴的な分業の構造、インセンティブのシステム、情報、モノ、カネの流れなどを統合化する場合、独創性に欠けたものになるので自社の強みが薄らぐことに注意しなければならない。
→×:ITを利用して自社に特徴的な分業の構造、インセンティブのシステム、情報、モノ、カネの流れなどを統合化する場合でも、どのようなシステム構成・システム設計をするかによって独創性は変わるので独創性に欠けたものになるとは一概にいえない。

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設問5

解答:ア

(ア) 安価な部品やデバイス等を提供する中間財市場が成立するにつれて、製品のモジュール化が進んで、差別化による競争が激化することになる。
→×:製品のモジュール化とは、統一された規格を下に、複雑な製品をいくつかの部分(モジュール)に分解し、それぞれのモジュール毎に独立したイノベーションが行われることで、全体の生産性が向上することである。製品のモジュール化が進むと同等の機能を有する製品同士の競争となるので差別化は進まない。

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