平成23年度1次試験問題:企業経営理論
設問16
従業員の企業に対する帰属意識に関する概念に組織コミットメントがある。組織コミットメントとは、一般に組織と個人の心理的距離や関係を規定する概念である。組織コミットメントに関する記述として最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 規範的コミットメントとは、合理的に組織目標へ自我投入し、個人の役割状況にかかわらず、組織へ関与することである。 (イ) 功利的コミットメントとは、活動の継続・中止にかかわらず、首尾一貫する行動のことである。 (ウ) 情緒的コミットメントとは、個人の信念に基づいて組織の価値や目標へ感情的、かつ、熱狂的に支持をすることである。 (工) 態度的コミットメントとは、組織の価値や目標を進んで受け入れ、関連した役割などに積極的に関与することである。
設問17
不確実な状況変化のなか職場で良好な人間関係を築きながら、リーダーシップを発揮することが大きな課題となってきている。リーダー・メンバー交換(LMX)理論に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) リーダーシップが有効に発揮されるかどうかは、リーダーがメンバーと良好な交換関係を築くことができるかに依存している。 (イ) リーダーとの特別な関係を構築しない外集団のメンバーは、公式権限に基づくやり取りのみになるため、業績評価が低く、離職の意志も高くなる。 (ウ) リーダーは、自分の部下の一部の小集団と特別な関係を築くが、この集団に属するメンバーはリスクをとらずに、より多くの資源や機会を活かす傾向がある。 (工) リーダーは、組織内の様々な人々に対してそれぞれ異なる行動を取り、自分と似た考え方や個人特性を持ったメンバーで、能力の高い者を内集団のフォロワーに選ぶ傾向が高い。 (オ) リーダーは、自分が必要とする貢献行動をメンバーに求めると同時に、その貢献行動に対する内的・外的報酬を提供する。
設問18
企業経営者が、損失を隠す粉飾決算を行い、投資を呼び込むために株価をつり上げ、そのことが公表されて倒産するに至るという事件が起きることがある。このような場合、投資家、顧客、従業員、地域社会の他、利害関係者に大きな損害を与える可能性があるとともに、資本主義経済システムへの信頼そのものを失わせてしまう可能性がある。
有効なコーポレートガバナンスの仕組みに関する記述として最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 株式市場に上場し、より多くの株主に株式を分散して保有してもらい、多様な株主による株主総会でのチェック機構を強化する。 (イ) 企業の会計基準を時価会計にあらため、外部監査会社による積極型会計(aggressive accounting)を法的に義務づけ積極的に情報の開示を促進させる。 (ウ) 内部統制と内部統制報告書の作成を促進し、情報の開示や説明責任の明確化などを図る必要がある。 (工) 万一こうした損害が発生した場合、その被害を最小限に抑えるために、一定以上の資産をデリバティブなどのリスク管理資産として留保しておくよう義務づける。
設問19
企業はその生存にとって必要な資源を、外部環境を構成する他の組織に依存しているために、そうしたステイクホルダーからのコントロールを受け入れる必要があるという「資源依存モデル」がある。
資源依存モデルに関する以下の設問に答えよ。
(設問1)
資源依存モデルによれば、環境の構造的特徴によって、焦点組織が直面する不確実性は異なってくるという。このことに関する記述として最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 組織間相互依存度が高くても、重要な資源が豊かにある場合、組織間コンフリクトの可能性は低くなるため、焦点組織が直面する不確実性は低くなる。 (イ) 組織間で権力の集中度が高くなると、組織間コンフリクトの可能性は高くなるため、焦点組織が直面する不確実性は高くなる。 (ウ) 組織間で権力の集中度が低くなると、組織間の相互依存度が高くなり、組織間コンフリクトの可能性が高くなるため、焦点組織が直面する不確実性は高くなる。 (工) 組織間の連結の度合いが高く、組織間で権力の集中度が低い場合、組織間コンフリクトの可能性が低くなるため、焦点組織が直面する不確実性は低くなる。 (オ) 組織間の連結の度合いが高いと、組織間の相互依存度が高くなり、組織間コンフリクトの可能性が低くなるため、焦点組織が直面する不確実性は低くなる。
(設問2)
資源依存モデルによれば、環境コンテキストは、組織の行動や構造の変化、経営者の継承や交代、組織内の権力関係の変化などをもたらすという。このことに関する記述として最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 環境コンテキストが組織内の権力関係に影響を与えることを通じて、誰が経営者として選任されるかに影響を与え、組織の行動や構造の変化をもたらし、その結果、環境コンテキストに変化を与えようとする。 (イ) 環境コンテキストが組織内の権力関係に影響を与え、組織の行動や構造の変化をもたらすので、誰が経営者として選任されるかを決めることを通じて、その結果、環境コンテキストに変化を与えようとする。 (ウ) 環境コンテキストが組織の行動や構造の変化をもたらし、組織内の権力関係に影響を与えることを通じて、誰が経営者として選任されるかに影響を与え、その結果、環境コンテキストに変化を与えようとする。 (工) 環境コンテキストが誰が経営者として選任されるかに影響を与えることを通じて、組織内の権力関係に影響を与え、組織の行動や構造の変化をもたらし、その結果、環境コンテキストに変化を与えようとする。 (オ) 環境コンテキストが誰が経営者として選任されるかに影響を与えることを通じて、組織の行動や構造の変化をもたらし、組織内の権力関係に影響を与え、その結果、環境コンテキストに変化を与えようとする。
設問20
次のケースを読み、あなたがA社のコンサルタントとして診断するとすれば、経営者への助言として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
「創業以来、個性的な開発者による小規模なプログラムの受注開発を請け負ってきたA社は、その成長とともに、次第により大きな規模の企業から複雑なプログラムの開発を受注するように主な事業ドメインをシフトしてきた。従業員数も急激に増加してきたが、2年ほどたつと、取引先企業のコスト削減要求が強くなり、一方で競争も激化し、売上高の伸び率も鈍化してきた。それまで開発者同士を切磋琢磨させるために導入していた個人へのインセンティブシステムを廃止し、従業員も削減し始めた。またこの時期から、創業当初からいた個性的な開発者たちが次々とA社を辞職していき、利益率も悪化し始めた。
そこでA社は、個人へのインセンティブシステムを復活させ、従業員のモチベーションを高めようと組織改革に取り組んだ。しかし、取引先企業からは納期の遅れや品質面での苦情が多数寄せられるようになり、その修復にコストがかかるようになり、一時的に利益率は回復したものの、その後、かえって利益率は低下してしまった。」
【解答群】 (ア) 開発者たちの創造性を高めるため、個人へのインセンティブの幅を大きくし、従業員間の競争を促進する。 (イ) 個人へのインセンティブの幅を小さくし、プロジェクト単位での顧客満足度を報酬に反映させるようにする。 (ウ) 従業員を削減し、個人の責任を明確にするとともに、個人へのインセンティブの幅を大きくする。 (工) 職務のルーティン化を進め、個人へのインセンティブの幅を削減し、人件費総額を圧縮する。 (オ) 創業当初からいた個性的な開発者たちをA社に戻すため、特別の給与体系を用意する。