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平成22年度1次試験問題:企業経営理論

設問6

 先端的な技術分野では、研究開発に要する資金が大きくなるにつれて、企業間の技術や部材の調達をめぐって、これまでにない提携関係が多く見られるようになってきた。そのような提携に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) エレクトロニクス産業では、EMSと呼ばれる中間製品の安価な供給メーカーから、半導体や液晶ディスプレイなどを買い付けて、価格競争力を確保する動きが国際的に見られる。
(イ) カーエレクトロニクス化が進むにつれて、車載組み込みのソフトやハードの開発コストが膨大になっているので、ライバルメーカーが共同してその標準化に取り組む共同体が、欧州や日本に設立されている。
(ウ) 技術が複雑多様化するにつれて、すべての技術を自前で持つことが不可能になったので、研究開発テーマによっては、異業種他社の参加を広範囲に求めることが多くなった。
(工) 技術規格が定まらない新規技術分野では、いくつかの企業が連携して技術規格の標準化を目指す動きが活発であるが、その帰趨は技術の優位性に依存している。
(オ) 国際競争力を保つべく、同業者が連携して、規模の経済を狙って業界内でコアな標準部品の生産を特定企業に集中し、生産から撤退した企業はそこから供給を受ける仕組みが見られるようになった。

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設問7

 科学的な基礎研究が事業に直接に結びつくとは限らない。また、事業化を目指して研究開発を展開し、商品化に成功したからといって、その商品が期待したような成功を納めるわけではない。自社技術の独自性を磨くことは大事であるが、それが企業の技術競争力に結びつくとは限らない。このような技術開発への対応に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) ある大手企業では中央研究所のあり方を見直し、研究者の一部を事業部門での応用技術研究に配属して、事業部門の研究開発力を強化することにした。
(イ) ある耐久消費財メーカーでは、これまでのロット生産を廃止して、生産工程では顧客の求める仕様を作り込むように生産計画を組んで、限りなく受注生産に近い生産技術を開発して顧客ニーズに応えるようにした。
(ウ) 自社で行う研究分野を絞り込んで、集中的に研究者や資金を配分して、研究のスピードアップを図っているが、どの分野に集中するかの目利きが難しいので、中央研究所のメンバーにより技術ロードマップを作成した。
(工) 他社に先駆けて新技術の製品を発売するようにしているが、後発の他社にやがてシェアを奪われてしまうので、開発段階に営業部門が参加し、市場のニーズを活かした改良を加えて製品の独自性や魅力を高めるようにした。

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設問8

 エレクトロニクス業界においては、自前で開発した技術にこだわる自社技術志向企業と、グローバルに中間財や他社技術を導入して対応しようとする国際水平分業志向企業とでは、製品のコモディティ化への対応が異なっている。
下図は、2つの企業の市場シェアの変化をコモディティ化に関連づけてイメージ化したものである。この図を参考にしながら下記の設問に答えよ。

(設問1)
 図のような現象に関連する状況についての記述として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 国際市況価格で原材料やキーデバイスを仕入れても、同業者も同様に振る舞うことができる分野では、価格優位の長期の維持は難しく、収益低下によって誰もが儲からない競争になりがちである。
(イ) 国際水平分業志向企業は、グローバルに調達した安い原材料やキーデバイスで生産コストの安い国で生産を行いながら価格競争力を高めるのが合理的である。
(ウ) 自社技術志向企業が価格競争力を失うのは、自前主義で時間のかかる独自技術の開発を貫こうとするためなので、コモディティ化のスピードに遅れた自社技術は積極的に破棄してその市場からの撤退を進めなければならない。
(工) 製品技術の優位性が薄らいでくると、国際的な中間財受託生産企業がキーデバイス等の供給を通じて、新規業者の参入を推し進めるので、急速に価格競争が激化する。

(設問2)
 自社技術志向企業がコモディティ化に対応する戦略に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 新しい技術を加えた製品を次々に発売して、キーデバイス等の供給企業の追随を振り払う。
(イ) 技術の知的財産権を守り、急激なコモディティ化に歯止めをかけるように対応する。
(ウ) 国際水平分業志向企業に技術を供与して、低価格をとる企業の間のライバル競争を煽り、それら企業を採算割れに追い込む。
(工) 国内や海外での市場を分析して、現地のニーズに合った製品の供給体制を構築する。
(オ) 自社技術を磨いて、新興工業国の国際水平分業志向企業が作れない高機能製品に生産販売を集中する。

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設問9

 企業は新規参入を阻止して競争激化を抑制しようとするが、他方では業界内部の類似する戦略をとる企業の間で戦略グループが形成され、それが企業の自由な戦略行動を抑制するように作用し始める。前者は参入障壁であり、後者は移動障壁である。これらの障壁と戦略の関係に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) ある技術に基づいて生産し販売される製品分野は、ライバル企業の間で製品の類似性が高くなるので、企業は顧客忠誠心やブランド力を高めてライバルとの差別化を図ることが重要になる。
(イ) 業界特有の販売チャネルや仕入れルートを同業者間で強化することは、他社の参入を防ぐには有効である。
(ウ) 業界内の競争を通じて形成された事業システムやマネジメント方式は、企業に戦略上の癖や慣性を生み出すので、企業が移動障壁に直面する事態にはならない。
(工) 垂直統合や共同化は取引先への交渉力の強化や新たな技術の獲得には有効であるが、その縛りが強いと自社の戦略の成否が他社の戦略展開能力に影響されるようになる。
(オ) 同業者間に共通する戦略課題について協調を維持すると、やがて戦略の類似性が強まり、新規な戦略の展開が困難になる。

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設問10

 マイケル・ポーターは、競争戦略を策定する際に考慮すべき産業の利益率や競争に影響を与える要因として、下図の5つを指摘している。この図に関する説明として、最も不適切なものを下記の解答群から選べ。

【解答群】
(ア) 買い手への対応は、消費者のクレームや消費者行動の変化に対処しつつ、高いマージンに結びつく市場との良好な関係を構築することが重要である。
(イ) 供給業者については、資金や原材料の供給先や労働市場との交渉力の保持が重要であるので、そのためには特定の資源の供給者に強く依存することなく、常に代替的な資源の開発に取り組むなど外部への依存性が強くならないようにしておくことが重要である。
(ウ) 競争業者との戦いは、マージンの高いドメインに自社を位置づけて、そこでの防衛的な地位を保つために、徹底した差別化戦略を展開することが第一に重要である。
(工) 新規参入については、その可能性や参入を受けた場合の競争の変化を分析して、自社の市場への参入障壁をどのように築くことができるか、日ごろから注意しておかなければならない。
(オ) 代替品は、大きな技術の変化や消費者のニーズの変化によってこれまでにない新商品として登場し、既存の商品に取って代わる脅威になることがあるので、技術や市場のマクロなトレンドを見失わないように注意しなければならない。

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