平成20年度1次試験問題:企業経営理論
設問16
機能別部門組織をとるA社は、これまで不定期に新商品企画を行いながら、耐久消費財を生産するメ-カーである。その新商品開発活動は、企画部門における商品コンセプト設計、研究所における製品機能設計と製品試作、工場エンジニアリング部門における生産工程設計と量産設計、生産部門などの複数の部門にまたがる業務の調整を通じて行ってきた。 A社の属する産業の規模が拡大し、競争が激しくなるにつれて、定期的に新商品開発を行う必要性が出てきた。A社の新商品開発組織こ関する記述として、最も適切なものはどれか。
なお、「軽量級のプロダクトマネジャー」とは、予算執行権限や人事権などを持たず弱い調整権限しか持たないマネジャーを、 「重量級のプロダクトマネジャー」とは、予算執行権限や人事権など時には機能部門長以上の権限を持つマネジャーを、それぞれ意味する。
【解答群】 (ア) 既存の組織内で新商品開発を行うと、協力が得られにくいため、独立の新商品開発プロジェクト組織を設置し、軽量級のプロダクトマネジャーを配置する。 (イ) 商品開発過程全体でのやり直しに伴うコストを最小限にするためには、各過程で十分な検査過程を経てから次の業務段階に移行するよう組織し、業務間の調整の必要性を最小限にする。 (ウ) 商品コンセプト設計から生産に至るプロセスを連続的(sequential)に組織化し、各段階が終了したら次の段階にスムーズに移行できるよう、調整担当者として重量級のプロダクトマネジャーをおく。 (工) 商品コンセプト設計段階から、製品機能設計や試作段階の技術者を参加させて直接コミュニケーションを促すなど、複数の業務をオーバーラップさせながら重量級のプロダクトマネジャーに管理を任せる。
設問17
互いに激しい競争をしている複数の企業に対して、工場で使用されている生産設備の一部を納入している企業P社がある。 P社の製品は、それぞれの工場のエンジニアたちによって微妙に修正が施されたり、 P社の想定とは異なる使用方法で利用されたりしているという。
このような状況下で、 P社の新商品企画が戟争優位を維持する方法に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) P社と顧客企業とを自動受発注情報システムを通じてリンクし、ジャストインタイムで情報が共有できるようにする。 (イ) P社の技術者と営業担当者が連携して、直接顧客企業の工場に入り、顧客企業のエンジニアと直接対話する機会を増やす。 (ウ) P社の研究開発投資を削減し、その分を営業費用に回し、顧客企業の工場から情報収集をできるようにする。 (工) 業界の技術情報を詳しくレポートするコンサルタントと契約し、新商品の動向に関する情報を得る。 (オ) 複数の企業の多様性に対応するには、商社や問屋などを通じて営業活動をし、調査報告書を提出してもらう。
設問18
中小企業Q社は、 2つの主要な部品XとYを組み合わせて商品を生産している。部品]は汎用品で、インターフェースは業界全体で標準化されている。一方、部品YはQ社の特注品で、大企業R社に依頼して生産してもらっている。
このとき、 Q社は、部品]とYを生産している企業との組織間関係をどのようにすればよいか、最も適切なものを選べ。
【解答群】 (ア) 部品]の供給を特定の1社から受けることで、規模の経済を実現できるため、取引コストを低く抑えることができる。 (イ) 部品Xを供給できる企業が多いので、そのうちの1社をQ社内部に取り込み部品]を内製化していくことで、より低い取引コストで部品獲得が可能になる。 (ウ) 部品Yの技術革新が頻繁に起こる場合には、投資規模があまり大きくないなら、 Q社は部品Yの生産を内製化し、技術革新がもたらす成果を独占することで競争優位を維持することができる。 (工) 部品Yを生産している企業R社にとって、Q社との取引量が大きい場合には、 Q社が市場取引閑係を通じて部品Yを調達すれば、取引コストは低くなる。 (オ) 部品Yを生産するのに大規模な設備投資を必要とする場合には、部品Yの生産を垂直統合してQ社の管理下に置くことが望ましい。
設問19
企業が長期に成長・発展していくためには、シングルグループ学習とダブルループ学習を適切に切り替えて行っていく必要がある。このことに関する記述として,最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 業績評価基準を成果主義型から過程重視型にシフトすることを通じて、シングルループ学習を抑え、ダブルループ学習を促進する可能性が高くなる。 (イ) 計画策定部門と執行部門を明確に区分し、適切なコミュニトションを確保する組織を構築することで、シングルループ学習とダブルループ学習を適切に切り替える可能性が高くなる。 (ウ) 執行部門により多くの権限を委譲することを進めると、シングルループ学習を促進し、ダブルループ学習を阻害する可能性が高くなる。 (工) 職務を細分化し、過程別専門化を進めていくことが、シングルループ学習を阻害し、ダブルループ学習を促進する可能性を高める。 (オ) 専門化された各部門の責任・権限を明確化することを通じて、シングルループ学習を抑え、ダブルループ学習を促進する可能性が高<なる。
設問20
組織の個体群生態学(population ecology)モデルに関する記述として、最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) ある成功した企業の組織形態を、他の多くの企業が正当性を獲得するために模倣することを通じて、組織個体群に含まれる企業の組織形態は類似する傾向がある。 (イ) ある組織個体群が淘汰されていくのは、政府の政策や規制などよりも、市場での競争に敗退したことによって起こりやすい。 (ウ) 各企業は環境の変化に応じて経営戦略や組織を修正していくため、その企業が属する組織個体群は成長していく。 (工) 各企業はそれぞれの経営戦略にしたがって、合理的な組織形態を採用する結果、同じような戦略をとる企業は類似の組織形態をとるようになる。