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平成20年度1次試験問題:企業経営理論

設問6

 次の文章を読んで、下記の設間に答えよ。
 2007年度の@中国国内での自動車販売は日本を上回ったが、生産台数も急激に伸びており、数年のうちに1千万台に達するといわれている。日本の自動車メーカーは中国での生産を増強している。他方、日本の電機メーカーをみると、これまで中国市場で大きなシェアを誇っていたテレビなどのAデジタル家電製品は、 韓国や中国の製品が競争力を強めるにつれて苦戦している。電機メーカーはこのような状況を踏まえながら、B生産の国内回帰を図るなど技術力を図るなど技術力を生かした戦略を展開している。

(設問1)
 文中の下線部@に関連して、中国自動車産業の戦略的な動向として、最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 中国政府は自国自動車メーカーと対等の出資比率での合弁を前提に、外資メーカーの参入を認めている。
(イ) 中国では基幹産業である自動車産業への台湾からの進出は許可されていないが、台湾からの部品の購入は自由であり、近年急増している。
(ウ) 中国には競争力に乏しく生産性も低い中小の自動車メーカーが多かったので、 1990年代初頭から中国政府はその集約を図り、外資との合弁を大手メーカーのみに許可している。
(工) 日本の完成車メーカーの系列部品メーカーの中国進出が多くなっているが、中国では系列を超えて欧米の自動車メーカーにも部品を供給する例もみられる。

(設問2)
 文中の下線部Aに関する説明として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 台湾の電子部品メーカーでは生産コストの安い中国への生産移転が相次いでいるが、金型などの生産技術も中国に移転されており、中国メーカーの技術競争力の強化に結び付いている。
(イ) 中国市場の将来性に注目して、韓国の旧財閥系企業は中国での生産や販売の拠点を増強しながら、中国製品との価格競争に特化した戦略を展開している。
(ウ) 中国のデジタル家電市場は大衆的な価格帯のものが中心であり、高機能で高額な日本製品は価格競争力が弱く相対的に市場シェアを低下させている。
(工) 中国のデジタル家電メーカーはキーデバイスの自社開発力が弱いので、技術による差別化よりも価格競争力を志向することになるが、それが大衆市場のニーズと合致している。
(オ) 中国のデジタル家電メーカーは、台湾や韓国などの電子部品メーカーからキーデバイスやパーツを調達して、自国のニーズに対応したデザインや仕様で製品を次々に開発している。

(設問3)
 文中の下線部Bの生産の国内回帰に関する説明として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 技術開発のスピード・アップへの対応のために、国内開発拠点を重視することが多くなっている。
(イ) 携帯電話やデジタルカメラなどのデジタル製品は多様な技術を垂直に統合した生産体制が不可欠であり、そのため海外での生産が困難になっている。
(ウ) 国内工場は、先端技術を駆使した自動化の推進や新しい生産技法の導入などにより生産性を高めており、高次な製品を中心に生産を強化している。
(工) 特定の国に生産拠点を集中させるとカントリーリスクの回避が難しくなるため、生産拠点を他の国に分散させるとともに、一部を日本に戻すぺく生産の国内回帰に取り組んでいる。
(オ) 日本的生産システムの強みである現場の熟練技術を喪失しないように、国内工場での生産を増やそうとする企業が増えている。

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設問7

 技術イノベーションと戦略の関係に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 開発時の技術が顧客の支持を受けるほど、その後の技術発展の方向が制約されやすく、技術分野が固定化されて企業の競争優位が失われていく。
(イ) 技術優位と市場ニーズが合致するとは限らないので、高機能の先端技術製品が技術的に劣る製品に敗れるという「ダーウィンの海」と呼ばれる現象がしばしば起こる。
(ウ) 自社技術の拡散スピードが速い場合、技術優位性は守りにくくなるが、先発者利得を獲得したり、累積生産量を大きくして製品の差別化を持続的に確立することができる。
(工) 市場ニーズに適合的な技術に基づく製品は、企業の成長に貢献すればするほど、革新的な技術の製品が新しい市場を築き始めると、急速に市場を失うことがある。
(オ) 部門内に蓄積された大量の情報や暗黙知などは、技術部門と営業部門の交流を阻むので、市場ニーズから遊離した製品が開発されやすくなる。

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設問8

 次の文章を読んで、下記の設開に答えよ。
 企業が設立される理由はさまざまであるが、@近年の会社法の施行や証券市場の整備によって創業やIPOが容易になったことも重要な要因である。しかし、制度が整備されたとはいえ、創業した企業を発展させ、持続的成長を図ることは容易ではない。零細企業を脱してIPOが可能な企業への成長を目指す場合、創業してから安定成長の軌道に乗るまでに克服しなければならないいくつかの壁がある。
 創業から間もなく直面する壁は、A企業として自立するために創業時の制約条件を克服することである。これを克服して従業員が増え、会社としての形態が整ってくると、やがて創業者はB創業時の熱気を維持し組織の活力を高めることを課題として自覚するようになる。これが第2の大きな壁である。この克服には時間と情熱を傾けて取り組まなければならない。組織として会社が動くようになるとC各部署の戦略行動をまとめ上げて、会社としての総合力が発揮されるように組織に働きかけることが重要になる。このことが自律的に発展を続ける企業への脱皮に向けて取り組む最後の壁になる。

(設問1)
 文中の下線部@のような措置によって創業やIPOが容易になったことをめぐる説明として、最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 会社法で新設された合同会社(LLC)は、出資者1名以上の有限責任制度で、しかも取締役会・監査役会が不要であることから、新規創業の方式として注目されている。
(イ) 会社法では最低資本金制度が廃止されて、株式会社は資本金1円でも設立可能であり、取締役会設置会社を除き設立時の取締役は3名だけで済むようになった。
(ウ) 会社法では有限会社が廃止されたが、既存の有限会社は特例有限会社として登記し直すことによって存続できることになっており、有限会社の廃止は創業意欲に水を差すものではない。
(工) キャピタルゲインへの課税方式の変更や株券の電子化は、個人の株式投資への誘因になっており、個人投資家の資金流入が増加して、 IPOを目指す企業の追い風になっている。
(オ) 東京証券吸引所のジャスダック市場、大阪証券取引所のヘラクレス市場をはじめ各種の新興市場が開設されてかなり経過しているが、近年これらの市場でIPOが急増している。

(設問2)
 文中の下線部Aへの対応に関する説明として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

  キャッシュフロー・マネジメントに留意して自己資本比率を高めるとともに、資金調達先への依存度を調整する。
  以前勤めていた企業で身につけた技能とそこからの受注で創業したが、その企業の将来性は厳しく受注も伸び悩んでいる。しかし、他社からの受注活動は一切しないようにする。
  創業の契機になった自社技術や市場は新規参入が相次いで競争が激化しており、赤字転落したので、採算の見込める価格に改訂し、市場拡大を図る。
  創業時に支援を受けた以前の勤務先やそこから紹介を受けた得意先への依存を改めるため、新規顧客の開拓を活発に進める。
【解答群】
(ア) aとb
(イ) aとc
(ウ) aとd
(工) bとc
(オ) cとd

(設問3)
 文中の下線部Bの課題は、会社の成長にともなってしばしば発生する課超である。経営者は多くの時間をこの課題の克服のために割いているが、その対応として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 会社の目標と計画に沿って個人別の目標を設定する場合、部下の参画を求め、主体的な目標管理を促すとともに、新入社員に対しては上司が積極的に目標設定を指導する。
(イ) 会社への忠誠心を高めるために、個人別に業績を評価し、それを給与や処遇に連動させた計数管理を徹底する。
(ウ) 職務へのコミットメントを高めるために、個人別に権限と責任を明確にした管理システムを導入する。
(工) 創業の思いを共有するため、トップは従業員との対話の機会を増やし、創業時の思いや成功・失敗談を誇るとともに、個々の仕事への意欲的なチャレンジを奨励する。

(設問4)
 文中の下線部Cへの対応に関する説明として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) カンパニー制度のような自律的な事業組織を編成し、事業部長に経営計画や資源配分および利益目標等の企画に関するすべての責任と権限を与え、本社は業績の管理だけに徴するようにする。
(イ) 機軸となる新規プロジェクトについては、そのリーダーに大きな権限を与えて、社内資源の動員を図り、資源のシナジーを生かしたプロジェクト遂行を進める。
(ウ) 経営計画を定め、計画と統制のサイクルを各組織の単位で回すとともに、個人レベルでもPDCAサイクルが回るように目標管理体制を構築する。
(工) 事業分野が多様化して、ヒト、モノ、カネなどの配置に無駄が生まれるので、全社の戦略目標を明確にしてPPMに基づいた資源配分を試みる。
(オ) 製品市場分野ごとに現場での独自な取り組みを促すための予算や人員の配置を行うとともに、その実施プロセスと成果について全社レベルで意見交換や分析を行う。

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設問9

 1990年代の日本経済は長期不況に見舞われ、しばしば失われた10年と呼ばれている。この間、経済はグローバル化し、企業は個々に戦略的対応を繰り広げてきている。このような失われた10年を説明するものとして、最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) この時代、熟練技能労働者が韓国や中国の企業にも流出したため、一部では生産技術の国際格差が縮まり、競争優位を失うことが見られた。
(イ) 事業額域の選択と集中を行う企業が増えたが、狭い得意分野に特化したため市場適応能力を失い長期にわたって業績不良に悩まされる企業が多発し、不況を長引かせるところとなった。
(ウ) 生産の海外移転が順調に進み、海外生産規模は1990年代未にはGDPの50%に達するようになり、税制面から婚外子会社を連結対象にした新しい会計制度が施行された。
(工) 不良債権処理のため低金利政策がとられたので、融資条件が大幅に緩和され、中小企業は資金需要を容易に満たすことができたので、廃業件数は減少した。

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設問10

 競争優位の源泉を低コストと精密な加工技術に置く製造企業では、セル生産と呼ばれる新しい生産方式に切り換えて,一層の生産性改善に取り組む例がみられるようになった。このようなセル生産方式に関する説明として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) セル生産方式は、現場労働者を多能工化することによって成立するので、多工程持ちが進み、作業工程の手待ちの無駄を排除できる。
(イ) セル生産方式は、少人数グループの「ワークセル」を単位とするチーム生産方式が進化したものとみることができる。
(ウ) セル生産方式は、製品が多様化し変化のスピードが速い場合、生産ラインの切り換えコストを節約できるので有効である。
(工) セル生産方式は、単調な労働を排除して労働の人間化を実現でき、従業員のモチベーションが高まり、生産性が改善できる可能性が高い。
(オ) セル生産方式は、ベルトコンベアを完全に撤去した熟練労働による生産であるため、熟練労働力が不足する海外でこれを展開することは難しい。

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