平成20年度1次試験解答:企業経営理論
設問6
解答:設問1:エ 設問2:イ 設問3:イ
(ア) | 中国政府は自国自動車メーカーと対等の出資比率での合弁を前提に、外資メーカーの参入を認めている。 →×:中国企業が50%以上を出資しなければならない(すなわち対等の出資比率での合併が求められてはいない)という外資の規制がある。 |
(イ) | 中国では基幹産業である自動車産業への台湾からの進出は許可されていないが、台湾からの部品の購入は自由であり、近年急増している。 →×:中台関係の政治的緊張のリスクは存在するが、台湾からの進出は自動車部品だけでなく、完成品に関しても認められている。 |
(ウ) | 中国には競争力に乏しく生産性も低い中小の自動車メーカーが多かったので、 1990年代初頭から中国政府はその集約を図り、外資との合弁を大手メーカーのみに許可している。 →×:外資との合併を大手メーカーのみに許可するということではない。 |
(工) | 日本の完成車メーカーの系列部品メーカーの中国進出が多くなっているが、中国では系列を超えて欧米の自動車メーカーにも部品を供給する例もみられる。 →○:系列部品メーカーは中国進出にあたり巨額の設備投資を行っているため、スケールメリットを追求する必要がある。そのため、売上規模を拡大し、低コスト化と経営の自立化を図るために系列を超えて欧米の自動車メーカーにも部品を供給する例もみられる。 |
(ア) | 台湾の電子部品メーカーでは生産コストの安い中国への生産移転が相次いでいるが、金型などの生産技術も中国に移転されており、中国メーカーの技術競争力の強化に結び付いている。 |
(イ) | 中国市場の将来性に注目して、韓国の旧財閥系企業は中国での生産や販売の拠点を増強しながら、中国製品との価格競争に特化した戦略を展開している。 →×:韓国の旧財閥系企業(サムソン電子など)は半導体や液晶テレビなどの分野で高い技術力を持ち世界を座巻した。すなわち価格競争に特化した戦略を展開しているわけではない。 |
(ウ) | 中国のデジタル家電市場は大衆的な価格帯のものが中心であり、高機能で高額な日本製品は価格競争力が弱く相対的に市場シェアを低下させている。 →○:日本製品は高機能で高付加価値・高価格であるため、富裕層には受け入れられるが、大衆には受け入れられにくい。 |
(工) | 中国のデジタル家電メーカーはキーデバイスの自社開発力が弱いので、技術による差別化よりも価格競争力を志向することになるが、それが大衆市場のニーズと合致している。 →○:キーデバイスとは差別化のカギとなる中心的な部品・装置のことである。中国のデジタル家電メーカーはキーデバイスの自社開発力が弱いので、台湾や韓国などの電子部品メーカから購入し完成品を組み立て安価で売ることが、大衆市場のニーズと合致している。 |
(オ) | 中国のデジタル家電メーカーは、台湾や韓国などの電子部品メーカーからキーデバイスやパーツを調達して、自国のニーズに対応したデザインや仕様で製品を次々に開発している。 →○:中国のデジタル家電メーカーは、台湾や韓国などの電子部品メーカーからキーデバイスやパーツを調達して、自国のニーズに対応した商品開発を行っている。 |
(ア) | 技術開発のスピード・アップへの対応のために、国内開発拠点を重視することが多くなっている。 |
(イ) | 携帯電話やデジタルカメラなどのデジタル製品は多様な技術を垂直に統合した生産体制が不可欠であり、そのため海外での生産が困難になっている。 →×:携帯電話やデジタルカメラなどのデジタル製品は、モジュラー型の製品構造となっていることが多い。そのため、モジュールさえ調達すれば容易に完成品を組み立てることができる。すなわち、海外での生産も困難ではない。 |
(ウ) | 国内工場は、先端技術を駆使した自動化の推進や新しい生産技法の導入などにより生産性を高めており、高次な製品を中心に生産を強化している。 →○:国内拠点で生産している製品は高付加価値製品、海外拠点で生産している製品は普及品を作る企業は多い。 |
(工) | 特定の国に生産拠点を集中させるとカントリーリスクの回避が難しくなるため、生産拠点を他の国に分散させるとともに、一部を日本に戻すぺく生産の国内回帰に取り組んでいる。 →○:特定の国に生産拠点を集中させるとカントリーリスクの回避が難しくなる。これを受けて一部の生産機能を国内に回帰させる動きがみられる。 |
(オ) | 日本的生産システムの強みである現場の熟練技術を喪失しないように、国内工場での生産を増やそうとする企業が増えている。 →○:技術の伝承は日本の大きな課題であり、生産の国内回帰の理由の一つである。 |
設問7
解答:ウ
(ア) | 開発時の技術が顧客の支持を受けるほど、その後の技術発展の方向が制約されやすく、技術分野が固定化されて企業の競争優位が失われていく。 →○: このような現象をイノベーションジレンマと呼ばれる。イノベーションジレンマとは、一度成功した企業によく見られる特徴で、成功した要因を信じ続け、周りの前提条件が変わったにもかかわらず、その成功が正しいと信じ続け、新たな改革、新しい技術革新、新規事業などのイノベーションが起こせない状態を言う。 |
(イ) | 技術優位と市場ニーズが合致するとは限らないので、高機能の先端技術製品が技術的に劣る製品に敗れるという「ダーウィンの海」と呼ばれる現象がしばしば起こる。 →○:「ダーウィンの海」とは、事業化に成功して新製品が開発されても、既存商品や他企業を相手にした競争が待ち受けている状態を指す。新しく開発した製品・技術が、高機能であっても製品化や販売網の整備などの面で、既存商品に勝てずに淘汰されることが、しばしば起きる。 |
(ウ) | 自社技術の拡散スピードが速い場合、技術優位性は守りにくくなるが、先発者利得を獲得したり、累積生産量を大きくして製品の差別化を持続的に確立することができる。 →×:自社技術の拡散スピードが速い場合、技術優位性は守りにくくなる上に、先発者利得を獲得するのは極めて困難である。また、累積生産量を大きすることでコストダウンを図ることはできるが、製品の差別化はできない。 |
(工) | 市場ニーズに適合的な技術に基づく製品は、企業の成長に貢献すればするほど、革新的な技術の製品が新しい市場を築き始めると、急速に市場を失うことがある。 →○:企業の成長に貢献すればするほど、革新的な技術の製品の持つ意味を理解することができず、新技術への対応が遅れることがある。 |
(オ) | 部門内に蓄積された大量の情報や暗黙知などは、技術部門と営業部門の交流を阻むので、市場ニーズから遊離した製品が開発されやすくなる。 →○:大量の情報や暗黙知は、有用なものであるが、各部門間の交流がないと情報が生かされず、市場ニーズから遊離した製品が開発されやすくなる。 |
設問8
解答:設問1:ア 設問2:ウ 設問3:イ 設問4:ア
(ア) | 会社法で新設された合同会社(LLC)は、出資者1名以上の有限責任制度で、しかも取締役会・監査役会が不要であることから、新規創業の方式として注目されている。 →○:正しい |
(イ) | 会社法では最低資本金制度が廃止されて、株式会社は資本金1円でも設立可能であり、取締役会設置会社を除き設立時の取締役は3名だけで済むようになった。 →×:会社法では最低資本金制度が廃止されて、株式会社は資本金1円でも設立可能である。しかし、取締役会設置会社を除き設立時の取締役は1名だけで足りる。 |
(ウ) | 会社法では有限会社が廃止されたが、既存の有限会社は特例有限会社として登記し直すことによって存続できることになっており、有限会社の廃止は創業意欲に水を差すものではない。 →×:既存の有限会社は、新会社法の施行により自動的に特例有限会社に移行することとなり、そのための定款変更や登記申請等は原則として不要である。また、特例有限会社としての存続期間について、特に制限は定められていない。 |
(工) | キャピタルゲインへの課税方式の変更や株券の電子化は、個人の株式投資への誘因になっており、個人投資家の資金流入が増加して、 IPOを目指す企業の追い風になっている。 →×:株券の電子化と個人投資家の資金流入は関係がない。すなわち、IPO(株式公開)を目指す企業の追い風になっているわけではない。 |
(オ) | 東京証券吸引所のジャスダック市場、大阪証券取引所のヘラクレス市場をはじめ各種の新興市場が開設されてかなり経過しているが、近年これらの市場でIPOが急増している。 →×:東京証券吸引所に開設されている新興市場はマザーズである。また、新興市場は伸び悩んでいる。 |
a | キャッシュフロー・マネジメントに留意して自己資本比率を高めるとともに、資金調達先への依存度を調整する。 →○:・キャッシュフローマネージメントとは、資金繰り(資金の収入と支出の時期と資金量)の管理・運営をすることである。自己資本比率を高め、資金調達先への依存度を調整する必要がある。 |
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b | 以前勤めていた企業で身につけた技能とそこからの受注で創業したが、その企業の将来性は厳しく受注も伸び悩んでいる。しかし、他社からの受注活動は一切しないようにする。 →×:リスク分散の観点からも受注先を一社に限定することはリスクが高いので望ましくない。他の取引先を開拓する必要がある。 |
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c | 創業の契機になった自社技術や市場は新規参入が相次いで競争が激化しており、赤字転落したので、採算の見込める価格に改訂し、市場拡大を図る。 →×:競争が激化いる以上、採算の見込める価格に改定(値上げ)をしたら競争に敗れる可能性が高い。価格改定ではなく、代替的市場の開拓、機能面以外(デザインや付属的機能)での差別化を図るべきである。 |
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d | 創業時に支援を受けた以前の勤務先やそこから紹介を受けた得意先への依存を改めるため、新規顧客の開拓を活発に進める。 →○:多様な取引先を開拓することで、経営リスクの分散を図ることができる。 |
(ア) | 会社の目標と計画に沿って個人別の目標を設定する場合、部下の参画を求め、主体的な目標管理を促すとともに、新入社員に対しては上司が積極的に目標設定を指導する。 →○:個人別の目標を設定する場合は、部下の自主性を重視し、かつ会社目標に沿ったものにする必要がある。そのためにも上司が積極的に目標設定を指導する必要がある。 |
(イ) | 会社への忠誠心を高めるために、個人別に業績を評価し、それを給与や処遇に連動させた計数管理を徹底する。 →×:個人別に売上や利益といった定数化できる成果によって評価した場合、会社と個人の関係はドライなものになりやすい。すなわち、会社に対する貢献意欲や忠誠心を損なう可能性が高い。 |
(ウ) | 職務へのコミットメントを高めるために、個人別に権限と責任を明確にした管理システムを導入する。 →○:コミットメントとは、仕事や組織に対する愛着の程度や心理的距離の概念として理解される。個人別に権限と責任を明確にした管理システムを導入することで、職務へのコミットメントを高めることができる。 |
(工) | 創業の思いを共有するため、トップは従業員との対話の機会を増やし、創業時の思いや成功・失敗談を誇るとともに、個々の仕事への意欲的なチャレンジを奨励する。 →○:創業者の個人的経験やエピソードが過去と現在をつなぎ、組織文化の形成に大きな影響を与える。 |
(ア) | カンパニー制度のような自律的な事業組織を編成し、事業部長に経営計画や資源配分および利益目標等の企画に関するすべての責任と権限を与え、本社は業績の管理だけに徴するようにする。 →×:カンパニー制度とは、一つの企業において企業内を事業分野ごとに独立性のある複数の企業の集合体のように組織することである。カンパニー制度を導入することで、各部署の戦略行動をまとめ上げて、会社としての総合力を発揮することは困難となる。 |
(イ) | 機軸となる新規プロジェクトについては、そのリーダーに大きな権限を与えて、社内資源の動員を図り、資源のシナジーを生かしたプロジェクト遂行を進める。 →○:機軸となる新規プロジェクトについては、そのリーダーに大きな権限を与えることで、会社としての総合力を発揮することができる。また社内資源の動員を図り、資源のシナジーを生かしたプロジェクト遂行を進めることで、各部署の戦略行動をまとめ上げて、会社としての総合力を発揮することができる。 |
(ウ) | 経営計画を定め、計画と統制のサイクルを各組織の単位で回すとともに、個人レベルでもPDCAサイクルが回るように目標管理体制を構築する。 →○:個人レベルでもPDCAサイクルが回るように目標管理体制を構築することが望ましい。 |
(工) | 事業分野が多様化して、ヒト、モノ、カネなどの配置に無駄が生まれるので、全社の戦略目標を明確にしてPPMに基づいた資源配分を試みる。 →○:全社の戦略目標を明確にしてPPMに基づいた資源配分を試みることで、各部署の戦略行動をまとめ上げて、会社としての総合力を発揮することができる。。 |
(オ) | 製品市場分野ごとに現場での独自な取り組みを促すための予算や人員の配置を行うとともに、その実施プロセスと成果について全社レベルで意見交換や分析を行う。 →○:事業部間のシナジーや全社的な範囲の経済性を追求するためにも、全社レベルで意見交換や分析を行うことは有意である。 |
設問9
解答:ア
(ア) | この時代、熟練技能労働者が韓国や中国の企業にも流出したため、一部では生産技術の国際格差が縮まり、競争優位を失うことが見られた。 →○:職を失った熟練技能労働者が韓国企業や中国企業に招かれ熟練技術が流出した。その結果、一部では生産技術の国際格差が縮まり、競争優位を失うことが見られた。 |
(イ) | 事業額域の選択と集中を行う企業が増えたが、狭い得意分野に特化したため市場適応能力を失い長期にわたって業績不良に悩まされる企業が多発し、不況を長引かせるところとなった。 →×:バブル期には、数多くの日本企業が多角化を推進した。その結果、不採算に陥った企業も多かった。そのため事業領域の選択と集中を行った自社の得意分野に特化することで、一部の企業の業績は改善された。 |
(ウ) | 生産の海外移転が順調に進み、海外生産規模は1990年代未にはGDPの50%に達するようになり、税制面から婚外子会社を連結対象にした新しい会計制度が施行された。 →×:1990年代のGDPに占める海外生産の割合は20%程度であり、50%には達していない。 |
(工) | 不良債権処理のため低金利政策がとられたので、融資条件が大幅に緩和され、中小企業は資金需要を容易に満たすことができたので、廃業件数は減少した。 →×:金融機関の中小企業に対する貸し渋り・貸しはがしが多発した。その結果、中小企業の廃業件数は増加した。 |
設問10
解答:オ
セル生産方式はエレクトロニクス製品の組み立てなどで、1人または数人の作業者が、組立から検査までの全工程を担当する方式です。
(ア) | セル生産方式は、現場労働者を多能工化することによって成立するので、多工程持ちが進み、作業工程の手待ちの無駄を排除できる。 →○:セル生産方式では、1人の作業者が複数の工程を担当するため、作業工程間の仕掛や作業スペードを短縮することで手待ちの無駄を削除することができる。 |
(イ) | セル生産方式は、少人数グループの「ワークセル」を単位とするチーム生産方式が進化したものとみることができる。 →○:セル生産方式は、ワークセル生産方式が前身であるといわれる。 |
(ウ) | セル生産方式は、製品が多様化し変化のスピードが速い場合、生産ラインの切り換えコストを節約できるので有効である。 →○:セル生産方式は、生産ラインの切り換えコストを節約できるので多品種少量生産に適している。 |
(工) | セル生産方式は、単調な労働を排除して労働の人間化を実現でき、従業員のモチベーションが高まり、生産性が改善できる可能性が高い。 →○:セル生産方式を採用することで機会の歯車になることなく責任とやりがいをも持って作業をするのでモチベーションを高める効果がある。 |
(オ) | セル生産方式は、ベルトコンベアを完全に撤去した熟練労働による生産であるため、熟練労働力が不足する海外でこれを展開することは難しい。 →×:セル生産方式でも、一部にベルトコンベアを使用することはある。また熟練労働力が不足する海外でも、それに対応したセル生産方式を展開することは可能である。 |