平成20年度1次試験解答:企業経営理論
設問11
解答:設問1:ア 設問2:ア 設問3:ア
(設問1)
機能別組織に関する問題である。
(ア) | 機能別部門組織では、各機能部門が専門機能を基礎に編成されているため、全社的なコントロールを担当する次世代のトップマネジメントを養成することが難しい。 →○:機能別部門組織では、各機能部門のマネージャは担当する機能部門にのみ運営についての権限、責任が付与される。そのため、全般的な視野をもった次世代のトップマネジメントを養成することが難しい。 |
(イ) | 機能別部門組織では、高度な分権化が進展しているため、トップマネジメントへの集権化の程度は低い。 →×:機能別部門組織では、部門間の調整機能がトップに一点集中するため、トップマネジメントへの集権化の程度は高い。 |
(ウ) | 機能別部門組織では、それぞれの部門が異なる機能を担当しているため、変化する環境でも部門間コンフリクトが発生する可能性は低い。 →×:機能別部門組織では、絶えず機能間の調整が必要とされる変化の激しい環境下にある場合は適さない。また、 コンフリクトが生じやすいという問題点もある。 |
(工) | 機能別部門組織の利点は、機能部門ごとの専門化の利益を最大限に発揮できる点にあり、その分、規模の経済は犠牲になる。 →×:機能別部門組織の利点は、機能部門ごとの専門化の利益を最大限に発揮できる点にあり、その分、業務の専門家が追及され規模の経済を図ることができる。 |
(オ) | 機能別部門組織は、単一製品一市場分野に進出している企業に採用される傾向が高く、あまり大規模な操業には適さない。 →×:機能別組織は、事業の多角化が進んでおらず、また経営環境が安定していて開発、製造、販売といった機能間のコーディネートがあまり必要でない状況であれば、効率的な組織形態である。しかし、大規模な部門業務の専門化を追求する場合には、大規模な操業であっても採用されることはある。 |
(設問2)
事業部別組織に関する問題である。
(ア) | 事業部制組織では、各事業部は独立採算のプロフィットセンターとして管理されるために、複数の事業部にまたがる統合的な製品の開発などは遅れがちになる。 →○:事業部制組織では、企業全体の利益よりも事業部の利益を優先されることがあり、複数の事業部にまたがる統合的な製品の開発などは遅れがちになる。 |
(イ) | 事業部制組織では、各事業部を評価する統一的な基準がないために、本社機構のオーバーヘッドコストが高くなる傾向がある。 →×:本社機構の管理費用(オーバーヘッドコスト)は、機能別組織などと比較しても高くはない。また各事業部を評価する基準は基本的には業績である。 |
(ウ) | 事業部制組織では、本社と事業部の間に擬似的な資本市場が存在することになり、一般に各事業部の限界利益率に応じて予算配分が行われる。 →×:事業部制組織では、負担能力主義によって次号部売上高や事業部管理可能利益、事業部資産などを基準として予算配分されることが多い。 |
(工) | 事業部制組織では、複数の製品−市場分野に進出している企業で採用される傾向が高く、事業部間の高度な連携をとることが容易になる。 →×:事業部制組織では、複数の製品−市場分野に進出している企業で採用される傾向が高い。しかし、事業部間の高度な連携をとることは決して容易ではない。 |
(オ) | 事業部制組織は、本社の情報処理負担が軽減されるとともに、事業戦略に関する権限が本社に集中するために、事業部の再編成や既存事業の融合を通じた新規事業を創造しやすくなる。 →×:事業部制組織は、本社の情報処理負担が軽減されるとともに、事業戦略に関する権限が各事業部に集中するために、事業部の再編成や既存事業の融合を通じた新規事業を創造することは困難になる。 |
(設問3)
マトリックス組織に関する問題である。
(ア) | マトリックス組織が有効に機能するためには、複数の命令系統に柔軟に対応し、コンフリクトを創造的に解決する組織文化の裏付けが必要である。 →○:正しい。しかし複数の命令系統に柔軟に対応し、コンフリクトを創造的に解決することは非常に困難であり、マトリックス組織が採用されない大きな理由の一つである。 |
(イ) | マトリックス組織では、機能マネジャーと事業マネジャーが同じ内容の権限を持つので、従業員は2人の上司の管理下におかれ高いストレスを感じる。 →×:マトリックス組織では、機能マネジャーには職能に関する権限が与えられ、事業マネージャには事業に関する権限が付与される。すなわち同じ権限を持つわけではない。 |
(ウ) | マトリックス組織では、主要な権限を委譲された事業マネジャーと機能マネジャーのコンフリクトが発生しやすいので、トップマネジメントの情報処理負担は大きくなる。 →×:一般的には、事業マネージャーに最終的な決定権があるので、コンフリクトが発生しにくいので、トップマネジメントの情報処理負担は小さくなる。 |
(工) | マトリックス組織は、環境変化の速い複数の非関連事業に多角化した企業が、複数の事業部にまたがる横断的調整機能を導入したものである。 →×:マトリックス組織は、限られた人員を複数の事業間で共有しなけらばならない場合に採用される。すなわち、非関連事業に多角化した企業では導入は困難である。 |
(オ) | マトリックス組織は、現場での事業感覚が重要である組織に導入すると事業活動を制約してしまうため、主に本社機構に導入される傾向がある。 →×:マトリックス組織は昨日と事業という2つの現場軸からなる組織形態である。本社機構よりも事業を行っている現場で採用される。 |
設問12
解答:ウ
(ア) | エンパワーメントとは、職務拡大(job enlargement)が進化した形で、個人に割り当てる職務の幅をプランニング権限にまで広げたものである。 →×:エンパワーメントとは、個人が自分自身の力で問題や課題を解決していくことができる社会的技術や能力を獲得することである。すなわち職務充実が進化したものである。 |
(イ) | 個人に割り当てる職務をあまり単純な単位に分解すると、単調な作業を繰り返すだけになるため、職務の幅を広げて多能工化することで、職務充実((job enrichment)を図る必要がある。 →×:個人に割り当てる職務をあまり単純な単位に分解すると、単調な作業を繰り返すだけになるため、職務の幅を広げて多能工化することで、職務拡大(job enlargement)を図る必要がある。 |
(ウ) | 個人の多能工化と品質管理を一体化した生産方式を導入すると、生産数量の頻繁な変化に柔軟に対応しつつ、低コストで一定以上の品質を維持することができる。 →○:個人の多能工化と品質管理を一体化した生産方式(セル生産方式)を導入すると、生産ボリュームの変動への適応力が高くなり、作業者の責任感・士気が向上するので、低コストで一定以上の品質を維持することができる。 |
(工) | 職務のプロセスを標準化すると、従業員の専門能力を向上させるとともに、アウトプットの分散が大きくなり検査コストが増える。 →×:職務のプロセスを標準化すると、従業員の専門能力を向上させるとともに、業務品質の安定化が図られる。(アウトプットの分散は小さくなる。) |
(オ) | 職務の目標や評価基準を標準化することを通じて、職務のモジュール化が促進されるため、管理者の調整負担は増えるが、不確実性への対応は容易になる。 →×:職務の目標や評価基準を標準化することを通じて、職務のモジュール化が促進されるため、管理者の調整負担は減るるが、不確実性への対応は困難になる。 |
設問13
解答:オ
管理の幅(span of control)とは、管理者1人が直接管理している部下の人数や、業務の領域のことである。管理の幅が広くなるとは、一人の上司が管理できる部下の人数が多くなることであり、管理の幅が狭くなるとは一人の上司が管理できる部下の人数がすくなるという意味がある。
(ア) | 作業工程などのマニュアル化が進むと、例外事項が発生する可能性が高くなるので、 「管理の幅」は狭くなる。 →×:作業工程などのマニュアル化が進むと、例外事項が発生する可能性が低くなるので、 「管理の幅」は広くなる。 |
(イ) | 職務間で同期をとる必要性が高い職場では、複数の業務にまたがる調整が必要になるので、 「管理の幅」は広くなる。 →×:職務間で同期をとる必要性が高い職場では、複数の業務にまたがる調整が必要になるので、 「管理の幅」は狭くなる。 |
(ウ) | 部下が複数の業務に熟練している場合には、業務間の相互依存度が高くなるので、 「管理の幅」は狭くなる。 →×:部下が業務に熟練しているので、上司の指示を仰ぐことは少なくなる。すなわち管理の幅は広くなる。 |
(工) | 部下間の職務の相互依存度が高く、環境が不規則に変化する場合には、 「管理の幅」を広くとることができる。 →×:部下間の職務の相互依存度が高く、環境が不規則に変化する場合には、部門間の調整や例外事項への意思決定が必要になるので、管理の幅は狭くなる。 |
(オ) | 部下や下位部門が、標準化された業績評価指標で統一的に管理できる場合には、 「管理の幅」は広くなる。 →○:部下や下位部門が、標準化された業績評価指標で統一的に管理できる場合には、例外事項の発生確率が低くなるので、 「管理の幅」は広くなる。 |
設問14
解答:イ
(ア) | うわさが自然におさまるまで、あえて何もしない。 →×:うわさをそのまま放置すれば、従業員のモラールは更に低下する恐れがある。 |
(イ) | うわさには触れず、直ちに工場内放送を通じて、事実関係について発表する。 →○:まず事実関係について発表するべきである。うわさについてはかえって混乱を招く恐れがあるので触れるべきではないだろう。 |
(ウ) | このうわさがなぜ発生したのかを調査し、後日、社内報で従業員に結果を報告する。 →×:従業員のモラールが著しく低下し始めている以上、後日報告するのでは対応として遅すぎる。 |
(工) | 直ちに従業員を調査し、うわさを広げた張本人を探し出すとともに、厳しい処分をくだす。 →×:うわさを広げた張本人を探し出すとともに、厳しい処分をくだしたところで、問題の解決にはならない。まずは従業員に対して説明する必要がある。 |
(オ) | 直ちに役員会を開催して対策を検討し、記者会見を開いて、うわさが事実と異なるということを主張する。 →×:今回の問題は社内の問題であり、社外に対して記者会見を行う必要はない。また記者会計での説明では従業員に事実関係が正しく伝わらない恐れがある。 |
設問15
解答:オ
(ア) | PM理論によれば、有効なリーダーシップスタイルは、P(目標達成度)とM(集団維持機能)の関係および組織形態によって変わるという。 →×:PM理論とは、三隅二不二氏によって提唱された理論である。リーダーが集団に果たす機能を「目標達成機能(Performance)」と「集団維持機能(Maintenance)」の2つに分け、ともに高度に行うのが望ましい。すなわち、関係および組織形態によって変わるわけではない。 |
(イ) | パス−ゴール理論によれば、フォロワーのタスク特性からあいまいさを排除し、タスク自体から得られる満足度を最大化するリーダーシップスタイルが望ましいという。 →×:「メンバーの目標達成を助けることはリーダーの職務であり、目標達成に必要な方向性や支援を与えることは集団や組織の全体的な目標にかなう」という理論である。すなわち、タスク特性からあいまいさを排除するというリーダーシップスタイルが望ましいわけではない。 |
(ウ) | フィードラーのコンティンジェンシー理論によれば、友好的で開放的なリーダーシップスタイルが望ましい成果を生むという。 →×:フィードラーのコンティンジェンシー理論とは、フィードラーによって提唱されたリーダーシップ理論で、条件即応モデルともよばれる。フィードラーは、最適なリーダーシップ・スタイルはリーダーを取り巻く状況に従い変化するため、ある特定のスタイルがあらゆる状況において最適にはならないという立場をとる。すなわち、友好的で開放的なリーダーシップスタイルが望ましい成果を生むという理論ではない。 |
(工) | リーダーシップに関するオハイオ研究によれば、参加型のリーダーシップが専制型のリーダ-シップよりも望ましいという。 →×:リーダーシップに関するミシガン研究によれば、参加型のリーダーシップが専制型のリーダ-シップよりも望ましいという。 |
(オ) | リッカートによれば、支持的関係の原理や連結ピン機能が、媒介変数である従業員の信頼感や高い業績目標設定に影響を与え、その結果として生産性や欠勤率に影響を及ぼすという。 →○:リッカートは、参加的経営を特徴付けるリーダーシップの原則として、次のものをあげている。 @ 支持的関係の原則 部下の背景、考え方や期待を考慮に入れ、部下が自分の価値や重要性を自覚するように、上司が部下を支持するように行動していくことを意味している。上司の部下に対する支持的行動によって、上司への協力的態度や信頼感が生まれるようになる。 A 管理の集団方式 意思決定や監督は、各管理段階で集団決定として行われるようにすること。各単位組織は、それぞれ一つの集団をなし、各管理者は、一つの集団の長をなしている。各集団で問題について集団討議が行われたうえで、決定が行われ、その実行に対する監督は、集団のメンバーの相互作用の形で行われるようにする。このような管理の集団方式によって、コミュニケーションが良くなり、相互の信頼感や集団への忠誠心が強くなる。 B 高い水準の業績目標 最後に高い水準の業績目標を設定するようにする。安定した雇用、昇進の機会や昇給に対する各人の動機は、高い業績目標の達成によって実現される必要がある。その高い水準の業績目標を自発的に設定するようにする。 |