平成16年度1次試験解答:企業経営理論
設問41
解答:エ
サプライチェーンマネジメント(SCM)とは、原材料の供給者から顧客に至る全過程の個々の業務プロセスを、1つのビジネスプロセスとしてとらえ直し、 企業や組織の壁を越えてプロセスの全体最適化を継続的に行い、製品・サービスの顧客付加価値を高め、企業に高収益をもたらす戦略的な経営管理手法である。
(ア) | 各市場の需要の変化に応じて、簡単に製品を変更できるようにする必要がある。 →○:各市場の需要の変化に柔軟に対応できるようにすることでチェーンの無駄をなくすことができる。 |
(イ) | 国内と同等のサービス水準を提供できるように、情報システムを構築する必要がある。 →○:国内と同等のサービス水準を提供できるようにする為には、情報システムを構築する必要がある。 |
(ウ) | 事業コストの変動に対して、競合企業がどう反応するかを事前に予測する必要がある。 →○:競合企業の価格政策を予測し迅速に対応を立てる必要がある。 |
(工) | 生産能力を最大限に発揮する必要があり、生産地点を1カ所に集中する必要がある。 →×:サプライチェーンマネジメント(SCM)では、柔軟性の高い生産体制が求められるので、生産箇所を分散することが多い。また生産地点を1カ所に集中にした場合、地震や戦争といった不足の事態に対応できなくなる。 |
(オ) | 世界各国の納入業者から、部品や原材料を調達できるようにする必要がある。 →○:世界各国から安価で高品質の部品や原材料を調達できるようにする必要がある。 |
設問42
解答:エ
リベートとは、流通業者の取引高や売上高など一定の条件をクリアした卸売店や小売店など、流通業者に対して支払う報酬のこと。
(ア) | リベートが存在することによって、直接費をより正確に測定することができる。 →×: リベートは直接費ではなく、間接費である。直接費とは、ある特定の製品やサービスに関連して発生したことが明確に分かる費用のことである。間接費とはコストの発生が事業や製品と直接結びつかない費用のことである。 すなわち、リベートが存在することによって直接費は測定しにくくなる。 |
(イ) | リベートは価格維持を目的とすることがあるが、リベート率の売上に対する累進度が低いと、価格引き下げ要因となる。 →×:リベート率の売上に対する累進率が高くなると、価格引下げ要因となる。 |
(ウ) | リベートを支給する条件が複雑であっても、その条件を数値で把握することは容易である。 →×:リベートを支給する条件が複雑ならば、その条件を数値で把握することは困難である。 |
(工) | リベートを活用することによって、特定の取引相手を優遇することができる。 →○:リベートは全ての取引相手に同じ条件が適用されるわけではない。一般的に取り扱いの大きい取引先(特定の取引相手)に対しリベートは多く支払われる(優遇する)ことが多い。 |
(オ) | リベートを活用することによって、取引条件を事前に変更することが可能になる。 →×:リベートを活用することによって、取引条件を事後に変更することが可能になる。リベートは取引後に支払われるので事前に変更する事は不可能である。 |
設問43
解答:イ
(ア) | 買い手が先に購入希望価格を提示して、それに応ずる企業と取り引きすることができる。 →○:正しい。逆オークションのことである。アメリカではPriceline.com社がビジネスモデル特許を取得しており、航空券などを指値で購入できるサービスなどを提供している。 |
(イ) | 価格交渉に必要なコストは、インターネットを利用しない場合に比べて高い。 →×:価格交渉に必要なコストは従来型(対面・電話)に比べてコストは低いといえる。 |
(ウ) | 顧客ごとに価格を変えられるので、他の顧客よりも高いことがある。 →○:正しい。顧客ごとに価格や購入選択可能商品の設定を行なうことができるので、他の顧客よりも高いことがある。 |
(工) | 状況の変化に応じて、価格変更をたやすく行うことができる。 →○:競合他社の価格の変化や売行きに応じて価格変更を容易に行うことができる。 |
(オ) | 多数の提供者の間で価格比較ができるので、インターネットを利用しない場合よりも価格競争が激しい。 →○:ブラウザ上で検索するだけで競合他社との価格比較ができるので、価格競争は激しい。 |
設問44
解答:イ
(ア) | 航空輸送は、迅速ではあるので、在庫費用の削減に役立つ。しかし品傷みの可能性が高く、多くの包装が必要である。 →×:航空輸送は、迅速であるので在庫費用の削減に役立つ。また生産地から消費地までを短時間で移動するので損傷や損失が少ない。 |
(イ) | 国内貨物輸送量をトン単位、トンキロ単位でみると、いずれも自動車が最大の構成比をもっている。 →○:正しい。 |
(ウ) | パレットを利用すると、荷役は効率的に行うことができるが、それを荷主に返却するための物流が必要で、物流総コストは低下しない。 →×:パレットを利用すると、荷役効率化、輸送パッケージの簡易化などにより物流総コストは低下する。 |
(工) | ピギーバック方式とは、コンテナを利用して、機械荷役を効率化する方法である。 →×:ビギーバック方式とは、トレーラやトラックを鉄道貨車にそのまま搭載して輸送する方式のことである。 |
(オ) | ユニット・ロード・システムとは、輸送する商品の個数を同じにすることによって、物流効率化を図ることである。 →×:ユニット・ロード・システムとは、輸送単位を合理的な大きさ(コンテナ、パレット、ダンボール)にまとめて輸送する方法のことである。 |
設問45
解答:ウ
(ア) | 競合ブランドの購入者に対して、自社のクーポンを発行すると、ブランド・スイッチングを促す。 →○:競合ブランドの購入者に対して、自社のクーポンを発行することで、割安感を感じた顧客が自社商品を購入する可能性があり、ブランド・スイッチングを促すことができる。 |
(イ) | 競合ブランドのロイヤル・ユーザーの場合、発行された自社のクーポンの使用率は低い。 →○:ロイヤル・ユーザとは、特定のブランドに強い愛情を持ち、何度も続けて購入する顧客のことである。 競合ブランドのロイヤル・ユーザーの場合の場合、発行された自社のクーポンの使用率は低い。 |
(ウ) | この方法では、選好を一時的ではなく、持続的に変えることができる。 →×:クーポンの効果は商品の選考を変更させることは可能であるが、短期的な効果が強く持続性は低い。 |
(工) | 自社商品の購入者にクーポンを発行すると、顧客維持の強化を図ることができる。 →○:自社商品の購入者にクーポンを発行することで、再度購入する動機づけをすることができるので、顧客維持の強化を図ることができる。 |
(オ) | 自社のマーケティングプランに応じて、対象となる消費者に的確に配布される。 →○:POSレジスターと印刷機を連動させて、購入商品に応じて特定のクーポンを印刷発行させることで、配布をしたい消費者に対して的確に配布することができる。 |
設問46
解答:イ
(ア) | キャンペーン応募者の個人データは、マーケテイング政策のための有用な情報源として外部に提供される。 →×:個人情報の保護という点から、個人データの外部提供は本人の同意を得ない場合は行なってはならない。すなわち内部で記録、分析し活用される。 |
(イ) | 調査機関から得られるスキャン・パネル・データは、個人名がないが、市場分析に活用できる。 →○:スキャン・パネル・データとは顧客ごとの属性や購買履歴データのことである。小売店のポイントカードシステムがそれに該当し、市場分析に活用できる。 |
(ウ) | ホーム・スキャン方式による製品購眉履歴の収集は、世帯ごとの買い物行動を店頭で把握するものである。 →×:ホーム・スキャン方式とは、調査対象者が自宅でバーコードリーダ付端末を用いて、購買した商品をスキャンニングし、そのデータをセンタで収集する方法である。これによりパネリストが様々な店舗で購入した商品に関する購買履歴を世帯単位で補足することができる。よって買い物行動を店頭で把握するものではなく、自宅で把握するものである。 |
(工) | マーケテイングに関する調査を実施する際には、まず、1次データの収集を行う必要がある。 →×:一般的にマーケティングリサーチは2次データ(公開されているレポートや資料などから収集される既存のデータ)を収集し、その後、必要に応じて1次データ(マーケティングリサーチによって収集されたオリジナルデータ)の収集を行なう。 |
設問47
解答:エ
(ア) | 各消費者の消費に関するデータをもとにして消費者をグルーピングするには、まずクラスター分析をして、その後に、因子分析をする。 →×:まず、因子分析を行ってからクラスター分析を行う |
(イ) | 新製品の仕様を決定するための調査では、パレート分析が用いられる。 →×:パレート分析とは、ABC分析と実質的には同じものである。パレートの法則(売上の80%は、全商品の20%が作る)を元にした分析である。すなわち、新製品の仕様を決定するためのものではない。 |
(ウ) | 販売量とそれを規定する量的な説明変数との関係を明らかにするために、数量化理論T類が用いられる。 →×:数量化理論T類では質的な説明変数を用いる。 |
(工) | ブランド間の相対的な位置づけをマッピングするためには、MDS(多次元尺度構成法)が用いられる。 →○:MDS(MultiDimensional Scaling:多次元尺度構成法)とは、データの中に潜むパターン、構造を探り出したり、構造をできるだけ少数の次元の空間に配置し、視覚的にわかりやすい形で表現して分析していく手法である。 |
(オ) | 類似のブランド間から、消費者が1つを選択する場合、消費者属性情報を利用して、選択するブランドを判定する場合に、数量化理論V類が用いられる。 →×:数量化理論V類には選択するブランド要素はない。 |
設問48
解答:イ
- エイブルは製品=市場マトリックスを応用して、標的市場を5つに分類した。
単一セグメント集中型 - 経営資源を1つのセグメントに全面的に集中させる戦略
- 製品専門型
- 特定の製品を、様々な市場のニーズに適合させて販売する戦略
- 市場専門型
- 特定の消費者を対象に、その消費者が持つ多様なニーズに対応して多種の製品を提供する戦略
- 選択的専門型
- 企業が魅力を感じる市場や経営資源の投下により収益が期待できる市場を選択する戦略
- 全市場浸透型
- 企業のあらゆる製品を、あらゆる市場セグメントに供給する戦略
(ア) | セグメントにかかわらず、市場全体を対象とする方法。資金が大量に必要で一部の企業しか採用できない。 →○:全市場浸透型のことである。この戦略では、製品を、あらゆる市場セグメントに供給するのでコストがかさむため一部の大企業のみが可能な戦略である。 |
(イ) | 1つのセグメントを選択して、そこに少数の製品を投入する方法。この場合、コストリーダーシップを狙う。 →×:単一セグメント集中型のことである。この戦略では、規模の経済性を達成しにくくなるため、 コストリーダーシップを狙うことはできない。 コストリーダシップを狙うのではなく、集中化によって強固な市場地位を得る。 |
(ウ) | 1つのセグメントを対象として、そのセグメントにおいて発生する幅広いニーズに対応する方法。扱う商品の幅が広いので、専門度の高い企業からの攻撃に弱い。 →○:市場専門型のことである。この戦略では、より専門度の高い企業に比べて競争力が弱い。 |
(工) | 複数のセグメントを選択して、それぞれに応じた製品を提供する方法。リスクを分散しやすい。 →○:選択的専門型のことである。この戦略では、リスクを分散しやすい。 |
(オ) | 複数のセグメントを対象として、それらに同一の製品を扱う方法。代替品の登場によって、一挙に市場を失う可能性がある。 →○:製品専門型のことである。この戦略では、代替品の登場によって一挙に市場を失う可能性が高い。 |
設問49
解答:イ
(ア) | 高級ホテルだけではなく、中級ホテルへ営業活動を行う。 →×:高級石鹸のイメージを利用していない。また中級ホテルに商品を納入することにより、高級なイメージを損なう恐れがある。 |
(イ) | 航空機内の通販カタログ会社へ、自社ブランドの石鹸の掲載を依頼する。 →○:新規にチャネルの開拓になるし、高級なイメージを損なう恐れもない。 |
(ウ) | スーパーマーケットで、自社ブランドの石鹸を販売する。 →×:スーパーマーケットで販売することにより、高級なイメージを損なう恐れがある。 |
(工) | 石鹸類だけから、客室で使用するリネン類へ取扱商品を広げる。 →×:石鹸とリネン類とでは、関連性がないのでリスクが高くなる。 |
(オ) | 利便性を考え、コンビニエンスストアで販売する。 →×:コンビニエンスストアで販売することにより、高級なイメージを損なう恐れがある。 |
設問50
解答:エ
(ア) | インターネットを利用した電子商取引を活用することによって、購買に関係して いる各担当者のロイヤルティを高めることができる。 →×:インターネットを利用した電子商取引を活用することによって購買担当者の利便性は高まるが、ロイヤルティは高まらない。 |
(イ) | 購買に関係している各担当者に対して、同一の情報を用いて訴求する必要がある。 →×:社内での役割や担当に応じて、担当者ごとに異なる情報を与える必要がある。購買部門ならば価格に関する情報を提供し、製品部門ならば製品の使いやすさを重視した情報を提供するのが望ましい。 |
(ウ) | 購買に関係している各担当者は製品に関する情報を多く持っているとは限らないので、企業イメージに関する情報を提供する必要がある。 →×:一般的に購買に関係している各担当者は製品に関する情報を多く持っているので、企業イメージに関する情報よりも製品に関する情報を提供するべきである。 |
(工) | 自社や他社で製造している製品群を組み合わせるシステム販売が行われる。 →○:システム販売とは、単なる製品の販売にとどまらない、顧客の問題解決を目的としたより広い便益システムの販売である。システム販売を行い、産業材の購買担当者が必要とするものを提供できれば、今後の継続的販売が見込める。 |
(オ) | 新製品発売時には、認知度を上げるために、テレビ広告を利用することが、主たるプロモーションになる。 →×:一般的にテレビ広告は産業財ではなく、消費財のプロモーションに行なう。 |