平成16年度1次試験問題:企業経営理論
設問1
収穫逓増がみられる産業における企業間競争の特徴についての説明として、最も適切なものはどれか。
【解答群】
(ア) |
コストを削減し、品質を向上することによって競争優位を確立することが最重要課題になる。 |
(イ) |
市場参加者が増大するにつれて、各社とも生産の合理化が進み、競合商品は絞られていく。 |
(ウ) |
商品のライフサイクルが短縮化するので、差別化戦略が効かなくなる。 |
(工) |
先行商品が市場をロックイン(固定化)して、大きなシェアを取ることが見られる。 |
(オ) |
労働力を追加するにつれて、その追加投入比率に見合って算出量が増大する。 |
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設問2
次の図に関して、下記の設問に答えよ。
(設問1)
上図に関する説明として最も適切なものはどれか。
【解答群】
(ア) |
セルA は絶好調の商品群であり、クリーム・スキミング戦略が成功している。 |
(イ) |
セルB は価格戦略の失敗のため、業績が伸び悩んでいる。 |
(ウ) |
セルC は弱小ブランドであり、競争市場では長期的に低迷する傾向がある。 |
(工) |
セルD はニッチ戦略によって市場シェアを高めている。 |
(設問2)
上図は何と呼ばれているか。最も適切なものを選べ。
【解答群】
(ア) |
ステータス・マップ |
(イ) |
ブランド・コンセプト・マップ |
(ウ) |
ブランド・マトリックス |
(工) |
プロダクト・ポートフォリオ・マップ |
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設問3
差別化戦略に関する説明として最も適切なものはどれか。
【解答群】
(ア) |
広告宣伝はイメージ形成に効果的なので、新製品の市場導入期に実施し、その効果がなくなる成長期からは実施しない。 |
(イ) |
顧客のクレームや評判に注意を払いながら、顧客の求める製品機能の充実を図り、 反復購入率を高めるようにする。 |
(ウ) |
製品ラインを幅広くして価格訴求力を強めて、広範囲な顧客をターゲットにする。 |
(工) |
徹底した生産合理化や、海外調達によって、コストリーダーシップを確立して、 市場シェアを奪って競争優位を発揮する。 |
(オ) |
特許や商標などの知的財産権を取得すると、後続企業による製品の模倣を防ぐばかりでなく、特許申請費用が資産として評価されるので、自己資本比率を改善する効果がある。 |
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設問4
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
大企業の生産部門に約10年勤務したA 氏は、自分が腕を磨いたアルミ加工技術を活かすべく、@会社を辞して仲間3名で出資して資本金500万円で平成11年に有限会社を設立した。彼らは常に生産現場で協力しながら、アルミ鋳物の鍋やフライパンを作り続けた。製品は好評で、会社は2年間毎月売上を伸ばしたが、3年目に入ると陰りが見え始めた。幸いにもA新製品の開発に成功し、やがてそれが売上に貢献するようになった。工場を拡張し、営業部門も増員した。ところが、会社が大きくなるにつれて、長期雇用をベースに熟練を形成して、従業員の創意工夫が湧きあがる会社を目指すという社長の意図が浸透せず、従業員の士気は低下しはじめた。重大な危機と認識した社長は、B矢継ぎ早に必要な手立てを講じた。こうして勢いを取り戻した会社では、従業員から製品アイデアや生産工程の改善アイデアが出るようになった。現場の知恵を活かした新製品は好評で、会社は売上を伸ばし始めた。やがてC地元の大学と連携を深めながら、アルミ溶接などの高度な技術に挑戦するようになった。
(設問1)
文中の下線部@のような会社を設立したときに発生する事柄について述べたものとして、最も不適切なものはどれか。
【解答群】
(ア) |
運転資金不足のため3名は貯蓄をつぎ込んだが、それでも足りず、やがて3名は自宅を担保に銀行から資金を借り入れた。 |
(イ) |
初年度は売上が3千万円であったので、内税にしていた消費税は納めなかった。 |
(ウ) |
設立の登記に際して印鑑証明書が必要になったが、A 氏はその3週間前に役所で発行してもらった印鑑証明書があったので、それを使うことにした。 |
(工) |
有限会社なので、設立時に社員総会を開いたが、その後は社員総会を開催しないで済ませている。 |
(設問2)
文中の下線部Aに関連して、新設の小規模企業が製品開発を行うための対応策として、最も不適切なものはどれか。
【解答群】
(ア) |
最新鋭の自動化設備を導入して、他社を凌駕する生産効率をあげる。 |
(イ) |
従業員に自分のアイデアを試作する機会を与える。 |
(ウ) |
消費者をモニターにして、自社製品についての意見をこまめに集める。 |
(工) |
商品見本市への出品や百貨店に強い販売力をもつ納入業者との情報交換を活発化する。 |
(設問3)
文中の下線部Bでとった手立てとして、最も不適切なものはどれか。
【解答群】
(ア) |
QC活動を導入して、優れた改善提案に対して金一封を添えて表彰する。 |
(イ) |
会社の方針に沿って機能別に職務を編成して、権限と責任を明確にする。 |
(ウ) |
業績があがらず不満の多い従業員を面接指導し、場合によっては配置転換する。 |
(工) |
経営計画の策定に従業員を参加させて経営責任を共有する。 |
(オ) |
従業員を短期の雇用契約に切り替え、出来高給制をとって雇用の流動化を図る。 |
(設問4)
文中の下線部Cのように産学連携を進める際に、大学のTLO(技術移転機関)が重要な役割を果たすとの期待が高まっている。しかし、中小企業にとってはTLO と連携して技術戦略を推進するのは必ずしも容易ではないようである。その理由として最も適切なものはどれか。
【解答群】
(ア) |
外部機関との共同研究によって生れた特許は、原則として大学に帰属するので、 TLO にとっても中小企業にとっても共同研究に取り組むインセンティブが働きにくい。 |
(イ) |
大学のTLO には中小企業の技術や経営に精通した人材が比較的少ない。 |
(ウ) |
大学のTLO や産学連携に関する情報が中小企業へは全く伝わらない。 |
(工) |
大学の保有する特許は先端技術に基づくものばかりであり、ビジネス化には多額の追加投資が強いられがちであり、中小企業には不向きである。 |
(オ) |
大学は高度な基礎研究重視であり、中小企業を相手にしてくれない。 |
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設問5
リストラクチャリングのあり方をめぐる見解として、最も適切なものはどれか。
【解答群】
(ア) |
事業構想にあわせて不採算分野を縮小し、成長分野への経営資源の重点投入を図る。 |
(イ) |
従業員の希望退職等によって人件費の負担を軽減することに専念する。 |
(ウ) |
新規事業を見送り、研究開発活動も休止する。 |
(工) |
大企業との下請関係を清算する。 |
(オ) |
量販店へのリベートを増加させ、拡販キャンペーンを展開する。 |
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設問6
次の文書を読んで、下記の設問に答えよ。
1980年代半ば以降、わが国の企業の海外進出は活発化した。1990年代に入ると、中堅中小企業の海外進出が多くなり、東アジアに向けて数多くの企業が海外子会社を設けた。@これにはいくつかの理由があげられる。しかし、1997年のアジア通貨危機を境に、この進出ブームは一挙に沈静化した。他方、中国のWTO 加盟にともなって、中華料理の本場の中国にラーメンで進出して成功している企業のように、A拡大する中国市場をにらんだ進出も多くなりつつある。また、B中国で生産した製品の品質が向上し、日本国内での競争力を高めていることはよく知られている。
(設問1)
文中の下線部@の理由として最も不適切なものはどれか。
【解答群】
(ア) |
ODA による中小企業融資が、資金不足の中小企業の海外進出を後押しした。 |
(イ) |
自社の生産システムを比較的円滑に移転できた。 |
(ウ) |
既に海外進出している大手企業が下請企業の進出を促した。 |
(工) |
低コスト生産が海外進出先で可能であった。 |
(オ) |
東アジアで外資優遇策が設けられた。 |
(設問2)
文中の下線部Aのように、中国への進出を促している要因として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。
(a) |
中国人の所得向上にともなう消費の拡大やライフスタイルの変化 |
(b) |
日本的経営を導入する現地企業の増加 |
(c) |
経営力ある現地のパートナー企業の成長 |
(d) |
原材料の完全な現地調達の実現 |
(e) |
信頼できる全国規模の流通チャネルの存在 |
【解答群】
(ア) |
a とb |
(イ) |
a とc |
(ウ) |
b とc |
(工) |
b とe |
(オ) |
d とe |
(設問3)
文中の下線部Bのような結果をもたらしている要因として、最も適切なものはどれか。
【解答群】
(ア) |
海外でMBA を取得した留学組の人材が国有企業に入って、欧米流の現代的な経営への改革を推進する傾向が強まっており、国有企業の経営力が高まっている。 |
(イ) |
中国企業の技術水準が向上し、先端技術分野の要素技術では日本と遜色がなくなった。 |
(ウ) |
中国での労働力の質が向上して、熟練技能工の採用が容易になった。 |
(工) |
中国は物価水準が低いので、日本では高価な材料を安価で容易に調達できる。 |
(オ) |
日本製や欧米製の先端的な生産機械を導入して生産を行うことで品質を向上させている。 |
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設問7
経営計画についての説明として、最も不適切なものはどれか。
【解答群】
(ア) |
一般に米国では経営計画は統合的意思決定の枠組みとして機能しており、行動プログラムに具体化できる厳格な中身を盛り込んでいるので、部門別に成果に基づく業績管理を可能にしている。 |
(イ) |
概して日本企業では、経営計画の実行プロセスにおいて現場から湧き上がる意図していなかった業績部分が大きく、経営計画に基づくプラニング・アンド・コントロールを厳格に行うよりも、経営計画を行動指針として用いる傾向が強い。 |
(ウ) |
外部環境、とりわけ業界やライバル企業の分析は難しいので、経営計画には、ライバル企業をベンチマークしながら変化に柔軟に対応できる余地を現場にもたせることを織り込むことが大切である。 |
(工) |
経営計画は科学的に策定されなければならないので、本社の戦略企画部門が情報技術を用いて各種の予測技法を駆使しながら練り上げられるべきであり、全社計画策定の間はライン部門と計画のすり合わせはするべきではない。 |
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設問8
中小企業は多角化や新規事業の展開につまずくことが少なくない。この理由として、最も不適切なものはどれか。
【解答群】
(ア) |
経営危機克服の切り札として急きょ多角化を選択すると、十分に環境分析をしないまま競争の激しい不慣れな高成長分野へ参入して失敗することが多い。 |
(イ) |
新規事業のアイデアがユニークすぎると、ビジネスとして立ち上げるための資源が不足したり、狭いニッチにはまり込んだりして、伸び悩むことになる。 |
(ウ) |
新規分野の進出に成功して売上や収益が急拡大すると、大手企業の反撃を受けたり、新規参入を招いたりしやすいので、業績の伸びを意図的に低く抑える。 |
(工) |
多角化する際に経営資源を新規分野に撮り向けすぎると、既存事業の経営資源が不足し本業が弱体化して経営危機に陥りやすい。 |
(オ) |
有望な技術やノウハウを持っていても、知的財産の管理が不十分であると、大手企業や他社の参入を招き、競争優位を失いやすい。 |
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設問9
企業は市場を介して他の企業と競争しながらも協調的関係を構築している。特に近年では中小企業においても、企業間の協調的な関係が戦略的に展開されることが少なからず見られるようになった。
このような戦略的な協調あるいは提携に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。
(a) |
提携を通じて多くのパートナー企業に自社の技術規格を採用してもらい、自社技術をベースにした製品による市場占有率を高めることができる。 |
(b) |
新規分野でのマーケティング・ノウハウが不足する場合、その不足を補完する目的で提携することができるが、提携先企業との競争が激化するので、戦略的提携はやがて解消することになる。 |
(c) |
中小企業は業務提携を通じて集合戦略をとることができ、生産や物流における規模の経済を得ることができる。 |
(d) |
戦略的提携は協定された範囲内での交換関係にとどまるので、互いに交流を深めても提携効果は変わらない。 |
【解答群】
(ア) |
a とb |
(イ) |
a とc |
(ウ) |
b とc |
(工) |
b とd |
(オ) |
c とd |
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設問10
リーダー企業は後続企業にはみられない特異な戦略を展開することがある。そのような戦略について、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。
(a) |
もっぱら朝食に食べられていることが判明したベーダル(パン)を、昼食用に販売キャンペーンを実施し需要を拡大する。 |
(b) |
後続企業が新規な機能をもつ製品で攻勢をかけてきたので、類似の製品を直ちに生産して市場競争を挑む。 |
(c) |
海外子会社で低コスト生産された製品を持ち帰って、国内市場で価格競争を挑む。 |
(d) |
技術的な優位性を武器に技術の分かる顧客にアプローチして、その分野で強い商品に育てる。 |
【解答群】
(ア) |
a とb |
(イ) |
a とc |
(ウ) |
b とc |
(工) |
b とd |
(オ) |
c とd |
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