平成23年度1次試験問題:中小企業経営・中小企業政策
設問6
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
エネルギー資源の制約が顕在化し、地球温暖化問題への対応の重要性が増す中で、今後、中小企業に対しても、省エネルギー(以下「省エネ」という。)の一層の推進および@二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスの排出量削減を求める動きが強まるものと考えられる。
中小企業の省エネの取り組みを見ると、空室時の消灯や温湿度管理の徹底等の運用による取り組みと、高効率な設備機器や制御装置の導入等の投資による取り組みに大別されるが、各々の取り組み状況は規模や業種によって異なっているのが現状である。製造業のエネルギー投入比率(生産額に占める燃料使用額と購入電力使用額の合計)を見ても、大企業と比較するとさらなる改善余地があると考えられる。
中小企業が省エネの取り組みを進めるにあたっては、省エネに関する情報・知識の不足と人的・資金的な投資負担が課題になると考えられることから、A他社の技術やノウハウの活用、国等において設けられている各種省エネ支援制度の積極的な活用が求められる。
(設問1)
文中の下線部@について、中小企業庁の推計に基づく中小企業のエネルギー起源二酸化炭素排出量に関する記述として、最も不適切なものはどれか。なお、ここで、中小企業庁の推計は総務省「2006年事業所・企業統計調査」、資源エネルギー庁「2007年度総合エネルギー統計」、「2007年度エネルギー消費統計」基礎データからの再集計・推計によるもので、中小企業とは中小企業基本法で定義する常用雇用者数規模に該当する企業をいう。
【解答群】 (ア) 飲食・宿泊業におけるエネルギー起源二酸化炭素排出量は、中小企業が大企業を上回っている。 (イ) 製造業における中小企業のエネルギー起源二酸化炭素排出量に占める割合は、約3割を占めている。 (ウ) 中小企業のエネルギー起源二酸化炭素排出量は、わが国全体の1割強を占めている。 (工) 中小企業の部門別のエネルギー起源二酸化炭素排出量に占める割合は、産業部門(製造業、農林水産業、鉱業、建設業等)よりも業務部門(対事業所サービス、対個人サービス等)が高い。
(設問2)
文中の下線部Aについて、中小企業が省エネに関する他社の技術やノウハウを利用する方策の1つとして、ESCO(Energy Service Company)事業の利用が考えられる。ESCO事業を利用する利点として、最も不適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) ESCO事業者がエネルギーに関する包括的なサービスを提供するため、中小企業は自社に人材が確保できなくても省エネに取り組める。 (イ) ESCO事業者が省エネ結果の計測および検証を行うことから、中小企業は省エネ投資の経済効果について適切に把握できる。 (ウ) ESCO事業者は原則として省エネ効果を保証し、保証した省エネ効果が得られなかった場合は損失を補てんすることから、中小企業はリスクの軽減を図ることができる。 (工) 省エネ設備の導入に際しては契約形態を問わず中小企業に初期投資負担が発生しない。
設問7
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(2006年12月中位推計)」によると、@2035年の総人口は1億1,067万人、そのうち生産年齢人口(15〜64歳)は6,292万人になると見込まれている。
こうした中で、中小企業にとっては、労働力の確保、自社技術や知識の継承者の不足等が中長期的な経営課題として浮上してくることが懸念される。既に中小企業においても、A女性や高齢者、非正規社員の活用等が取り組まれているが、より多様なB人材を確保するとともに確保した人材を効果的に活用していくことが、企業存続の観点からも不可欠になっていくものと考えられる。
(設問1)
文中の下線部@について、「日本の将来推計人口(2006年12月中位推計)」に基づき、2035年の総人口と生産年齢人口を各々2008年比で比較した場合、最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 生産年齢人口の減少率は40%を上回っている。 (イ) 生産年齢人口の減少率は総人口の減少率を上回っている。 (ウ) 生産年齢人口はほぼ横ばいである。 (工) 総人口の減少率は40%を上回っている。 (オ) 総人口はほぼ横ばいである。
(設問2)
文中の下線部Aについて、総務省「就業構造基本調査」に基づき、1992年、1997年、2002年、2007年の4時点について、規模別に就業者に占める女性と高齢者(65歳以上)の割合を見た場合、最も適切なものはどれか。なお、ここでは従業者数299人以下(卸売業、サービス業は99人以下、小売業、飲食店は49人以下)の企業を中小企業、中小企業以外の企業を大企業とする。
【解答群】 (ア) 大企業の就業者に占める女性の割合は減少してきている。 (イ) 中小企業の就業者に占める高齢者の割合は減少してきている。 (ウ) 中小企業の就業者に占める高齢者の割合は4時点とも大企業を下回っている。 (工) 中小企業の就業者に占める女性の割合は減少してきている。 (オ) 中小企業の就業者に占める女性の割合は4時点とも大企業を下回っている。
(設問3)
文中の下線部Bについて、厚生労働省「職業安定業務統計」に基づき、2003年度と2008年度の業種別の新規有効求人数の増減を見た場合、最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 医療、福祉業においては新規有効求人数が減少している。 (イ) 飲食店、宿泊業においては新規有効求人数が増加している。 (ウ) 教育、学習支援業においては新規有効求人数が減少している。 (工) 建設業においては新規有効求人数が増加している。 (オ) 製造業においては新規有効求人数が増加している。
設問8
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
経済のグローバル化の進展を受けて、中小企業においても輸出額や直接投資による海外子会社を保有する企業の割合が増加する等、国際化は着実に進展している。
しかしながら、経済産業省「海外事業活動基本調査」や財務省「法人企業統計年報」を基に、2007年度の製造業における規模別の海外生産比率(注)を見ると、大企業では約【 A 】%であるのに対し、中小企業では約【 B 】%にとどまっている。
また、経済産業省「企業活動基本調査」を基に、2007年度の海外子会社を保有する企業の割合を見ると、大企業の28.2%に対して、中小企業では12.1%となっており、総じて見れば中小企業の国際化の程度は大企業に比べると依然として低い水準にある。なお、ここで海外子会社を保有する企業とは、年度末時点に海外に子
会社または関連会社を所有する企業をいう。また、子会社とは当該会社が50%超の議決権を有する会社をいい、子会社または当該会社と子会社の合計で50%超の議決権を有する会社も含む。関連会社とは、当該会社が20%以上50%以下の議決権を直接有している企業を示している。
(注) 海外生産比率= | = | 現地法人(製造業)売上高 |
現地法人(製造業)売上高 + 国内法人(製造業)売上高 |
(設問1)
文中の下線部について、「海外事業活動基本調査」に基づき、中小企業の有する海外現地法人数(2007年度)を地域別に見た場合に、次の国・地域を全体に占める構成比率が高いものから低いものへと並べた組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。なお、ここでASEANとは、マレーシア、タイ、フィリピン、インドネシア、ベトナム、カンボジア、シンガポール、ラオス、ミャンマー、ブルネイの10カ国をいう。
a | 中 国 |
b | ASEAN |
c | 北 米 |
【解答群】 (ア) a 中 国 − b ASEAN − c 北 米 (イ) a 中 国 − c 北 米 − b ASEAN (ウ) b ASEAN − a 中 国 − c 北 米 (工) b ASEAN − c 北 米 − a 中 国 (オ) c 北 米 − b ASEAN − a 中 国
(設問2)
文中の空欄AとBに入る最も適切な数値の組み合わせはどれか。
【解答群】 (ア) A:7 B:1 (イ) A:14 B:3 (ウ) A:21 B:5 (工) A:28 B:3 (オ) A:35 B:1
設問9
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
中小企業庁が総務省「事業所・企業統計調査」に基づき試算している事業所数(民営、非一次産業)を基にした開業率・廃業率の推移を見ると、わが国では1989年〜1991年を対象期間とした調査以降、一貫して開業率を廃業率が上回る結果となっている。
企業数(会社数および個人事業所数)を基にした試算によっても同様の傾向にあるが、企業数の増減を見ると産業分野による差も大きい。例えば、総務省「事業所・企業統計調査」によって、2001年と2006年の産業別企業数(民営、非一次産業)を比較すると、【 A 】では企業数が減少しているのに対して、【 B 】では企業数が増加している。
(設問1)
文中の下線部について、2001年と2006年の大事業所数と中小事業所数を比較した場合に最も適切なものはどれか。なお、ここで総従業者数300人以下(卸売業、サービス業は100人以下、小売業、飲食店は50人以下)の事業所を中小事業所とし、それ以外を大事業所とする。
【解答群】 (ア) 大事業所数の減少割合を中小事業所数の減少割合は上回っている。 (イ) 大事業所数は増加している。 (ウ) 中小事業所数の減少割合を大事業所数の減少割合は上回っている。 (工) 中小事業所数は増加している。
(設問2)
文中の空欄AとBに入る最も適切な語句の組み合わせを下記の解答群から選べ。
【解答群】 (ア) A:「医療、福祉」と「卸売・小売業」 B:「情報通信業」と「製造業」 (イ) A:「飲食店、宿泊業」と「製造業」 B:「医療、福祉」と「卸売・小売業」 (ウ) A:「卸売・小売業」と「製造業」 B:「医療、福祉」と「飲食店、宿泊業」 (工) A:「卸売・小売業」と「製造業」 B:「医療、福祉」と「情報通信業」 (オ) A:「情報通信業」と「製造業」 B:「医療、福祉」と「卸売・小売業」
設問10
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
中小企業診断士X氏は、顧問先の中小企業である機械部品製造業者Y社社長から、「取引先の生産活動が海外シフトしているのに対応して、自社でも海外生産法人の設立を検討しているが、中小企業が海外直接投資を行うにあたっての留意点・現状について簡単に説明してほしい。」との相談を受けた。なお、現在のところY社の事業活動は国内に限定されている。
以下は、X氏とY社社長との会話である。
X 氏 | : | 「直接投資を行う場合、進出国の諸制度への対応、コスト管理や販路確保に加えて、人材確保・労務管理、投資資金等の資金調達についてもよく考える必要がありますね。」 |
Y社社長 | : | 「必要な投資資金は進出国では調達できないのですか。」 |
X 氏 | : | 「経済産業省の2008年海外事業活動基本調査によれば、@現地での資金調達手法については、本社企業が中小企業の進出企業の場合、日本本社からの資金送金で必要資金を賄っている企業が多いようです。」 |
Y社社長 | : | 「海外生産法人で利益が出た場合、日本本社にも利益を還流させたいのですが。」 |
X 氏 | : | 「収益状況や進出国の法制度等にもよりますが、先ほどの経済産業省の調査によれば、2007年度の中小企業のA現地法人の売上高に占める日本本社への支払費用の比率は2.6%で、同じく出資金に対する配当金の比率は7.3%です。なお、2009年度の税制改正によりB外国子会社配当益金不算入制度が創設されたことから、今後は海外子会社から日本本社への配当金が増加することが期待されています。」 |
(設問1)
文中の下線部@について、「2008年海外事業活動基本調査」に基づき、現地での必要資金の調達方法について、本社企業が大企業の進出企業(大企業)と本社企業が中小企業の進出企業(中小企業)を比較した場合、最も不適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 主にグループ内の金融会社から資金調達していると回答する企業割合は、大企業が中小企業を上回る。 (イ) 主に現地金融機関から資金調達していると回答する企業割合は、大企業が中小企業を上回る。 (ウ) 主に本社からの資金送金で資金調達していると回答する企業割合が、中小企業では過半を占める。 (工) 主に本社からの資金送金で資金調達していると回答する企業割合は、中小企業が大企業を上回る。
(設問2)
文中の下線部Aについて、「海外事業活動基本調査」に基づき、2001年度から2007年度の期間、売上高に占める本社企業への支払費用の比率の推移を、本社が大企業の進出企業(大企業)と本社が中小企業の進出企業(中小企業)のそれぞれについて見た場合、最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 大企業の支払費用比率は、一貫して上昇している。 (イ) 大企業の支払費用比率は、ほぼ横ばいで推移している。 (ウ) 中小企業の支払費用比率は、一貫して上昇している。 (工) 中小企業の支払費用比率は、大企業の支払費用比率を一貫して下回っている。 (オ) 中小企業の支払費用比率は、ほぼ横ばいで推移している。
(設問3)
文中の下線部Bについて、外国子会社配当金益金不算入制度に関する記述の正誤について、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。
a | 外国子会社から受け取る配当の額の95%を益金不算入とする制度である。 |
b | 対象となる外国子会社は、内国法人の持株割合が25%以上(租税条約により異なる割合が定められている場合はその割合)で保有期間が6カ月以上の外国法人である。 |
【解答群】 (ア) a:正 b:正 (イ) a:正 b:誤 (ウ) a:誤 b:正 (工) a:誤 b:誤