平成26年度1次試験問題:企業経営理論
設問11
スタートアップ段階のベンチャー企業A社は、将来の成長ステージについて段階を追って計画を立て、達成目標と時期を明確にしたマイルストーンの明示を真剣に考えている。同社は成果が出るまでに数年を要すると考えて、効果的なキャッシュフローはJカーブ曲線を描くと予想し、それを経営の根幹に位置付けて計画を検討している。累積的なキャッシュフローが描くJカーブ曲線に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【解答群】
(ア) |
新製品・サービスが意図した通りのプロセスで開発できるかどうかのリスクを示し、アイデアの創出から市場投入までの商業化段階での効果を指す。 |
(イ) |
新製品・サービスが意図した通りのプロセスで開発できるかどうかのリスクを示し、市場投入前の先行投資であるサポートコストの影響を受ける。 |
(ウ) |
新製品・サービスが顧客の望む数量や価格水準で受け入れられるかどうかのリスクを示し、市場投入後の再投資を含むスタートアップコストの影響も受ける。 |
(工) |
新製品・サービスの開発、生産、販売などを予想通り行えるかどうかのリスクを示し、商品の市場投入までの時間と量産までの時間の両方から影響を受ける。 |
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設問12
中小企業が海外でモノづくりに取り組む際に注意すべき点や考慮すべき事項に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
【解答群】
(ア) |
海外でのトラブル対処には時間とコストがかかり、時には政治的な介入がありうる事を想定しておかなければならないので、国際弁護士や国際関係機関との連携を構築することも重要である。 |
(イ) |
自社製品の海外拠点での生産販売を目指す場合、日本国内で現地人を採用し、日本語によるビジネス能力を育成し、彼らを責任者にした輸出から着手する方が回り道であるが、現地拠点とのビジネス・コミュニケーションが円滑になり、進出リスクを軽減できる可能性が高まる例がみられる。 |
(ウ) |
単独出資での進出に制限がある場合、現地パートナーとの関係構築が重要になるので、現地操業後の管理運営について密接な情報交換と深い人間関係を通じた信頼の構築が難しい場合は、進出を中止することも選択肢になる。 |
(工) |
部品のサプライヤーとして進出する場合は、アセンブラーと連携を図るとともに、現地での販売先を確保できる見通しをつけておくことが必須になる。 |
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設問13
企業は自己の利益を追及するばかりではなく、その活動が社会に与える影響について適切に対応するとともに、社会が企業に求める期待に応えることが要請されている。以下の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
【解答群】
(ア) |
意欲的な企業ではNPOに金銭的な寄付のみならず、余剰の商品在庫を提供したり、従業員のボランティア派遣を行ったり、管理職がNPOの役員に就任したりして、NPOとの連携で社会貢献を図ろうとする例がみられる。 |
(イ) |
偽装を取り締まる法律は通称JAS法しかなく、表示内容にあざむく意図がない場合は誤表示として扱われて、JAS法の適用を免れるので、企業は偽装の疑いに対して誤表示と言い張る例が昨今多くなっている。 |
(ウ) |
国際標準化機構の社会的責任の国際規格ISO26000は、日本ではJIS Z
26000「社会的責任に関する手引」として普及が図られている。 |
(工) |
社会的に批判を受けている一部の企業では、若年者の長時間労働とその使い捨て、各種のハラスメントの横行などがみられ、著しく離職率が高い特徴をもつ。 |
(オ) |
世界経済フォーラム発表の2013年のジェンダー・ギャップ指数で日本は136カ国中105位と低く、欧米諸国に比べてわが国の企業では女性の管理職への登用や女性が働く職場環境の整備が進んでいない。 |
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設問14
有効な組織デザインには、適切なコントロール・システムを組み込むことが不可欠である。組織のコントロール・システムに関する記述として、最も適切なものはどれか。
【解答群】
(ア) |
官僚主義的なコントロールとは、規則や基準、階層構造や合法的権威にもとづき、業務遂行のプロセス中での組織メンバーの行動を統制することをいう。 |
(イ) |
クラン・コントロール(clan
control)は、組織文化や帰属意識、伝統などの社会的特性を利用して行動をコントロールすることで、不確実性が高く変化が速い環境で重要になる。 |
(ウ) |
市場コントロールは、組織内部の部門のコントロールには利用できないが、市場における価格競争が組織の生産量や生産性を評価する時に有効である。 |
(工) |
予算管理システムや事業部門の目標管理に基づく管理者の報酬システムは、市場コントロールの有効なサブシステムである。 |
(オ) |
リーダーが従業員の知識や裁量を行使する範囲を明確に設定できない場合には、従業員自身に自己目標を設定させ、自らの成果を監視させる自律的コントロールが有効である。 |
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設問15
経営者による戦略の選択は組織構造とプロセスを形作るとともに、組織構造とプロセスは経営戦略を制約する。代表的な研究者であるレイモンド・マイルズとチャールズ・スノーは、組織の戦略の型によって解決すべき企業者的問題、技術的問題、管理的問題が異なり、そのコストと利点も異なると主張した。これについて最も適切なものはどれか。
【解答群】
(ア) |
受動型(reactor)戦略をとる企業は、経営者がトップダウンで明確な戦略を示すことができないため、社内ベンチャーのようなボトムアップからイノベーションが生まれるような制度をもっている傾向が高い。 |
(イ) |
探索型(prospector)戦略をとる企業の企業者的問題は、新製品市場の開発と新市場の創造にある。そのために柔軟に試作的な技術を追求し、中央集権的な統制システムを採用する。 |
(ウ) |
分析型(analyzer)戦略をとる組織が直面する企業者的問題は、既存の製品−市場分野の維持と新しい製品−市場分野の開発のバランスをとることにある。そのために、応用研究分野で複数のコア技術を持ち、安定性と柔軟性のバランスをとる組織構造が必要とされる。 |
(工) |
防衛型(defender)戦略をとる組織が直面する企業者的問題は、既存の事業領域を積極的に維持することである。そのためにコアとなる技術以外にもイノベーションを追求し、有機的管理システム採用する必要がある。 |
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