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平成17年度1次試験解答:経営法務

設問11

解答:ア

保障契約に関する問題である。

貸金等根保証契約とは、平成16年の11月に民法改正により新設された規定である。おもな要点は次のことである。
詳細は、法務省民事局「民法の一部を改正する法律」の概要を参照

(1)極度額(限度額)の定め
極度額の定めのない根保証契約を無効とする。
(2)元本確定期日(保証期間の制限)
根保証をした保証人は、元本確定期日までの間に行われた融資に限って保証債務を負担することとしている。この元本確定期日は、契約で定める場合には契約日から5年以内、契約で定めていない場合には契約日から3年後の日となる。
(3)元本確定事由
主たる債務者や保証人が、強制執行を受けた場合、破産手続開始の決定を受けた場合、死亡した場合には、根保証をした保証人は、その後に行われた融資については保証債務を負担しないこととする。
(4)書面の作成(※すべての保証契約が対象)
根保証契約を含む保証契約は、契約書などの書面によってしなければ無効になる。
 
(ア) 一般の保証契約は書面で契約をしなくても効力を生ずるが、貸金等根保証契約は、 書面で契約しないと効力がない。
→×:すべての保障契約は、書面または電磁的記録によらない限り無効となる。

▼民法 第446条

  1. 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
  2. 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
  3. 保証契約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、 電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用す る
(イ) 貸金等根保証契約が連帯保証としてなされたときは、債権者は主たる債務者に弁済の資力があっても、保証人の財産を差し押さえることができる。
→○:連帯保証人には、催告の抗弁権(債権者が保証人に債務の履行を請求したときに、保証人が、まず主たる債務者に催告をなすべき旨を請求することができる権利)と検索の抗弁権(保証人が、債権者に対し、主たる債務者の財産につき執行をなすまで自己の保証債務の履行を拒むことができる権利)がない。従って、主たる債務者に弁済の資力があっても、保証人の財産を差し押さえることができる。
(ウ)

貸金等根保証契約は、極度額を定めなければ効力を生じない。
→○:極度額とは、保障契約の補償限度額のことである。極度額の定めのない貸金等根保証契約は無効となる。 民法第465条の2第2項を参照

▼民法  第465条の2第2項
(貸金等根保証契約の保証人の責任等)

  1. 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であってその債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受ける ことによって負担する債務(以下「貸金等債務」という。)が含まれるもの(保証人が法人であるものを除く。以下「貸金等根保証契約」という。)の保証人 は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害 賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
  2. 貸金等根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
  3. 第446条第2項及び第3項の規定は、貸金等根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。

(エ) 民法第465条の2で定める貸金等根保証契約とは、根保証契約のうち、主たる債務の範囲に、金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることにより負担する債務を含み、かつ、個人を保証人とするものをいう。
→○:正しい。民法第465条の2第1項を参照

▼民法  第465条の2
(貸金等根保証契約の保証人の責任等)

  1. 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であってその債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受ける ことによって負担する債務(以下「貸金等債務」という。)が含まれるもの(保証人が法人であるものを除く。以下「貸金等根保証契約」という。)の保証人 は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害 賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
  2. 貸金等根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
  3. 第446条第2項及び第3項の規定は、貸金等根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。

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設問12

解答:ア

契約に関する問題である。

 請負契約とは、当事者の一方(請負人)が相手方に対し仕事の完成を約し、他方(注文者)がこの仕事の完成に対する報酬を支払うことを約することにより成立する契約である。アの例は当事者の一方が相手方に対して労務に服することを約して、相手方がその労務に対して報酬を支払うことを約することによって効力を生ずる契約である雇用契約に関する説明である。

正しい請負契約の組合せは次のものである。

(ア)請負契約
  (請負人)仕事の完成   (注文者)報酬の支払

また、労務の提供を行うのは雇用契約である。

雇用契約
  (請負人)労務の提供   (注文者)報酬の支払

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設問13

解答:ウ

(ウ) A社は当該特許権を日本において独占的に実施する権利を許諾されており、B社はA社以外の第三者に対し、当該特許権を日本において実施することを許諾できない。
→×:他の製品の製造についての規定はされていないので実施許諾が可能である可能性がある

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設問14

解答:設問1:ウ 設問2:イ

著作権に関する問題である。

(設問1)
【 A 】:ハードウェアとソフトウェアを一体として用いることによるアイデアの実現は物の発明に含まれる為、特許法の保護対象となる。また有用なノウハウ(営業秘密)に該当する場合は不正競争防止法の保護対象となる。よって【 A 】には、特許法・不正競争防止法が入る。
【 B 】
プログラムの設計すなわち特定の機能をどのような処理手順で実現するかに係る設計の部分は、特許法の保護対象となる。また有用なノウハウ(営業秘密)に該当する場合は不正競争防止法の保護対象となる。よって【 B 】には、特許法・不正競争防止法が入る。
【 C 】
ソースコードは、

  • 具体的な表現物であるので著作権法の保護対象となる。
  • プログラムに準ずるもののため特許法の保護対象となる。
  • 有用なノウハウ(営業秘密)に該当する場合は不正競争防止法の保護対象となる。

よって【 C 】には、著作権法・特許法・不正競争防止法が入る。

(設問2)
問題の【  】には表現形式が入る。すなわち著作権法による保護は、コンピュータ・プログラムの【 表現形式 】を保護するものである。

(ア) 秘密として管理されているプログラムαの技術ノウハウを使用している
→×:秘密管理性は不正競争防止法の保護対象となる。
(イ) プログラムαと実質的に同一の表現を用いている
→○:著作権法による保護は、コンピュータ・プログラムの表現形式を保護するものであり、実質的に同一の表現を用いている場合には著作権侵害となる。
(ウ) プログラムαの技術的思想を模倣したものである
→×:技術的思想というアイデアは特許法の保護対象となる。
(エ) プログラムαよりも後にプログラム著作物の登録がされている
→×:著作権法は登録を行なわなくても保護対象となる。

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設問15

解答:設問1:ウ 設問2:エ 設問3:イ 設問4:エ

投資事業有限組合に関する問題である。

(設問1)
(ア) 証券取引法において、投資事業有限責任組合の組合員への分配は、現金以外に認められていないため、組合員が組合の投資先企業の株式を直接所有することはない。
→×:投資事業有限責任組合における組合員への財産の分配は、貸借対照表上の純資産額を超えない限りは現金以外のもの(設問の場合は株式)を組合員に分配することも可能である。
▼投資事業有限責任組合契約に関する法律第10条 
組合財産は、貸借対照表上の純資産額を超えて、これを分配することができない。
(イ) 投資事業有限責任組合は、業務執行組合員であるベンチャーキャピタルに運営を一任する制度であるため、他の組合員は組合の投資先に関する情報を入手することは制度上できない。
→×:組合員は組合の投資先に関する情報を営業時間内ならば、いつでも、財務諸表等並びに組合契約書及び意見書の閲覧又は謄写を閲覧することができる
(ウ) ベンチャーキャピタルが業務執行組合員として運営する投資事業有限責任組合は、組合契約において組合の存続期間が定められており、存続期間が満了した組合は解散する。
→○:投資事業有限責任組合は、存続期間を定めることとなっている。存続期間後の組合は解散することになっている。
(エ) ベンチャーキャピタルと投資を受ける事業会社において締結する投資契約は、投資事業有限責任組合法において、締結すべき内容が定められている。
→×:投資事業有限責任組合法では、出資者が共同で投資事業を行う為の組合契約については締結すべき内容が法定されている。しかし投資事業有限責任組合と投資を受ける事業会社との間の規定は、法律で定められていない
(設問2)
(ア) 証券取引所が定める上場基準では、上場申請日の直前事業年度の末日の翌日から上場日の前日までの間における第三者割当増資は禁止されている。
→×:以前は公開前規制ということで、上場申請日の直前事業年度の末日の翌日から上場日の前日までの間における第三者割当増資は禁止されていた。しかし、現在では原則自由とされ、一定の書面を提出すれば第三者割当増資を行うことは認められている。
(イ) 第三者割当増資において、定款に株式の譲渡制限があり、かつ、発行価額が商法上の有利発行であるとみなされる場合に限り、株主総会の特別決議による承認が必要となる。
→×:第三者割当増資が商法上の有利発行とみなされる場合であれば、定款に株式の譲渡制限がある場合に限らず、株主総会での特別決議が必要となる。
(ウ) 第三者割当増資は原則として時価で発行することが必要とされているため、検査役の調査を受けた発行価格で実施しなくてはならない。
→×:第三者割当増資は公正な発行価額(原則として時価)で発行することが必要とされている。しかし、その発行価額について検査役の調査を受けることは要求されていない
(エ) (エ)有価証券届出書において、最近事業年度の末日の2年前の日から届出書捷出日までの間における第三者割当増資の取得者は、その氏名、住所等が開示される。
→○:正しい。有価証券届出書において、最近事業年度の末日の2年前の日から届出書捷出日までの間における第三者割当増資の取得者は、その氏名、住所等が開示される。
(設問3)
 デッドファイナンスとは、借入れによる資金調達のことである。社債発行や銀行借入など、他人資本の増加になる調達がそれに該当する。
(ア) 私募債は引受人により、投資家の数を49人以下に限定した「少人数私募債」と専門知識のある適格機関投資家を対象とする「プロ私募債」に分類できる。プロ私募債の引受人には、証券会社、保険会社、銀行、ベンチャーキャピタル等の金融機関が含まれる。
→×:少人数私募債の要件には、次のものがある。@投資家の人数が49人以下A1口の最低社債額が、発行総額の50分の1未満B募集総額が5億円未満等の条件が必要である。単に投資家の人数が49人以下というだけではない。
(イ) 社債発行口数が50口以上の場合は、商法にいう社債管理会社を選定する必要がある。
→○:社債発行口数が50口以上の場合は、社債管理会社を選定する必要がある。
(ウ) 社債は、物的会社である有限会社、株式会社であれば発行することが認められた有価証券である。
→×:社債は株式会社のみ発行が認められている。有限会社は社債を発行できない。
(エ) 新株予約種付社債を発行する場合、社債引受人の利便性を向上させるために、新株予約権と社債とを分離することができる新株予約種付社債を発行する必要がある。
→×:新株予約権付社債は、新株予約権と社債とを分離して譲渡することはできない。
(設問4)
(ア) 株式交換・株式移転等により、ある会社を完全子会社とした場合、当該完全子会社が発行していたストックオプションは、完全親会社に引き継ぐことができる場合がある。
→○:ストックオプションは、完全親会社に引き継ぐことができる場合がある。
(イ) ストックオプションは、商法上の規定によれば、原則として、権利行使前に譲渡できる。ただし、その譲渡につき、取締役会の承認を要する旨の決議が行われている場合には、所定の手続きが必要となる。
→○:ストックオプションは原則としては自由に譲渡できる。ただし、その譲渡につき、取締役会の承認を要する旨の決議が行われている場合には、取締役会の承認手続きが必要となる。
(ウ) ストックオプションは、人材の確保、従業員の士気の維持・向上に有用であるだけでなく、取引先との提携関係の強化金融機関との協調関係の強化などにも、効果を発揮する場合がある。
→○:ストックオプションは取引先や金融機関との協調関係の強化などにも効果を発揮する場合がある。
(エ) ストックオプションは、とくに有利な条件で第三者に発行することで取得者に潜在的なキャピタルゲインをもたらすが、定款に特段の定めがない場合、取締役会決議で発行できるため、既存株主からの制約を受けずに様々な局面で活用することができる。
→×:特に有利な条件で第三者に発行する場合は、既存株主の保護のため、取締役会決議だけでなく、株主総会の特別決譲が必要となる。

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設問16

解答:設問1:イ 設問2:エ

合併に関する問題である。

(設問1)
(ア) 会社が合併をする場合において合併に反対の株主は、合併契約承認のための株式総会において会社に対して買取請求をすることができる。
→×:買取請求の前程として合併承認の株主総会の前に会社に対し書面による反対の意思表示を行い、かつ承認総会で合併契約書の承認に反対する必要がある。この要件を満たした株主は株主総会決議の日から20日以内に株式の種類および数を記載した書面を提出し会社に買取を請求することになる。すなわち、合併契約承認のための株主総会において会社に対して買取請求ができるわけではない。
(イ) 会社が合併をする場合において、消滅会社が債務超過であるときは、合併期日までに増資等を行い債務超過を解消しなければ合併できない。
→○:商法上、債務超過の場合は解消しなければ合併できない。
会社法では債務超過の場合であっても吸収合併できる。(会社法第795条)
(ウ) 会社が合併をする場合には、存続会社は新株を発行し資本金を増加しなければならない。
→×:必ずしも資本金を増加する必要はない。
(エ) 簡易合併ができるのは、合併により消滅する会社の株主に支払う合併交付金が最終の貸借対照表の純資産の50分の1を超えず、かつ、消滅会社の株主に発行する新株が、存続会社の発行済株式総数の6分の1を超えない場合に限られている。
→×:簡易合併ができるのは、合併により消滅する会社の株主に支払う合併交付金が最終の貸借対照表の純資産の20分の1を超えない場合である。
会社法では20分の1から5分の1になっている。
(設問2)
(ア) 株式市場において形成された株価、すなわち市場株価を基準とする方式を市場株価平均方式あるいは株式市価法等という。この方式は非公開企業においては類似する公開会社の市場株価を用いて評価するものであり、最も重視すべき評価方式といえる。
→×:通常算定に当たっては複数の方式を総合的に判断しなければならないので市場株価平均方式あるいは株式市価法等を最も重視すべき評価方法であるとはいえない。
(イ) 株式の価値は企業のストックとしての純資産にあると考えるもので、企業に現存する資産・負債を基礎として株式を評価する方式を純資産方式という。この方式は相続税財産評価基本通達に定める方式である。
→×:純資産方式は会社にある純資産を基礎としており、純資産とは株主資本、自己資本を指す。
(ウ) 株式の価値を企業のフローとしてのキャッシュ・フローに基づくと考えるもので、将来獲得しうる各期のキャッシュ・フローを一定の割引率を用いて、その現在価値を求める方式を収益還元方式あるいはデイスカウンテイッド・キャッシュ・フロー方式という。この方式は、企業の将来における税引後の当期利益を長期国債の利回りにより割引計算するため、企業価値を最も適切に算出できる方式である。
→×:前文がDCF(はデイスカウンテイッド・キャッシュ・フロー)方式の説明、後文が収益還元方式の説明である。
(エ) 評価対象会社と類似する特定の公開会社の1株当り利益、純資産等の指標を、評価対象会社のそれと対比させて算定する方式を類似会社比準方式という。この方式は評価対象会社の規模が公開会社に匹敵する場合等において用いられる方式である。
→○:正しい

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