平成17年度1次試験問題:企業経営理論
設問11
企業組織は利害関係者集団との資源取引においてその貢献に見合う十分な誘因を支払うだけでなく、利害関係者集団から正当性を獲得しなければ存続していくことはできない。企業組織と正当性に関する記述として最も不適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 安定的な配当政策や商品の品質管理、長期雇用政策などは、組織が生み出す成果の信頼性を高めるため、正当性の獲得に貢献する。 (イ) 企業組織が安定的な構造を持つのは、それが利害関係者からの正当性の獲得に貢献するからである。 (ウ) 企業の会計責任は、投資家から正当性を獲得するために重要な貢献をしている。 (工) 企業は法や社会規範を遵守することを通じて、社会からの正当性を獲得することができる。 (オ) 他の企業とは異なる組織形態や積極的な差別化戦略を採用し、急速に成長している企業組織の正当性は高くなる。
設問12
組織における職務デザインにおいて、職務、責任、権限の関係を明確に理解しておく必要がある。職務デザインと職務・責任・権限関係に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 権限とは、職務を遂行するための、組織内の諸資源(ヒト、モノ、カネ、情報など)を一定の自由裁量の範囲内で使用する権利を意味する。 (イ) 職務エンリッチメント(enrichmeent)とは、複数の職務について責任権限を持つように職務をデザインする方法である。 (ウ) 上司が部下に権限を委譲することがあるが、それに伴い責任も上司が負う必要はなくなる。 (工) 責任とは職務を遂行する義務であるから、職務は他者の行動から独立に設計することが望ましい。 (オ) 高い成果を上げている組織では、すべての職務について、職務・責任・権限は一致している。
設問13
経営組織構造をデザインするには、職務の設計・部門化コントロールの範囲、指揮命令系統の確保、権限-責任の配分、公式化の程度などを決める必要がある。これらに関する記述として最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 同じ企業内でも職務によって公式化の程度が異なり、公式化の度合いが高くなると従業員の自由裁量の幅は広くなる。 (イ) 機能別に部門化する方法は、類似の専門能力を持つ人々をひとつの部門に集めることで、範囲の経済性を達成しようとするものである。 (ウ) コントロールの範囲を広くすることによって管理階層をフラットにするには、部下に十分な権限や情報を与えるとともに、問題解決スキルを教育しておくことが重要である。 (工) 分散処理型の情報システムを導入すると、責任-権限の分権化が進み、指揮命令系統の一元性を維持することが容易になる。
設問14
戦務設計を行うには、その職務の困難さが従業員の動機づけにどのような影響を与えるかを考慮に入れなければならない。図A、B、C、Dは・職務の困難さと職務成果の関係を仮説的に表したものである(ただし報酬の影響は考慮に入れていない)。
これらの図について、下記の設問に答えよ。
(設問1)
動機づけの理論のうち、期待理論を前提としている図として最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) A (イ) B (ウ) C (工) D
(設問2)
動機づけの理論のうち、達成動機理論を前提としている図として最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) A (イ) B (ウ) C (工) D
設問15
一般に事業の海外進出の程度によって、企業経営は、国内経営段階から、国際化段階、多国籍化段階、グローバル化段階の順で高度化していくと考えられている。企業経営のこうした発展段階にしたがって、その戦略に適した組織構造や経営管理システムを構築していかなくては、企業はその経営資源を有効に活用することはできない。
国際化段階、多国籍化段階、グローバル化段階の各段階における組織構造や管理システムの特徴に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 国際化段階は事業の海外進出の初期段階であり、主に商社などと提携した製品輸出が中心であるため、社内には海外業務を専門に管理する部門はまだ形成されていない。 (イ) 多国籍化段階では、進出した各国の事情に合わせて製品仕様などを変えていかなくてはならないので、海外業務を専門に扱う国際事業部のような組織がおかれ、全社の海外業務を集中的に管理する。 (ウ) 多国籍化段階では、国もしくは地域別の事業部制をとることが多く、それぞれが各国の市場にあわせた事業戦略をとることができる。 (工) グローバル化段階では、進出したそれぞれの国や地域で十分大きな規模で企業活動を展開しているため、それぞれの海外子会社ごとに独立の戦略的意思決定ができるよう十分な責任・権限が与えられている。 (オ) グローパル化段階では、地域別・製品別のマトリックス構造をとることが多いが、 進出した各国間の文化の差などに十分配慮して、地域ごとに異なる人事評価規定などが導入される。
設問16
企業組織においてほとんどの職務は集団を単位に行われている。集団の機能やマネジメントに関する記述として、 最も不適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 環境が安定している場合には集団内部では同調行動を促す強い力が働くためコンフリクトが起こりにくいが、外部環境が悪化すると集団の凝集性が低下しコンフリクトが起こりやすくなる。 (イ) 凝集性が高い集団が、あまり慣れていないタイプの問題解決に直面し、時間的に早く結論を出すようなプレッシャーを受けると、「集団思考(group think)」に陥りやすい。 (ウ) 集団の意思決定の方が、個人の意思決定に比べてリスクの高い選択を行いやすい傾向にあるのは、個人が決定に対する説明責任を負う可能性が低いからである。 (工) 集団の凝集性が高く、集団の目標と組織の目標が一致する度合いが高くなると、組織の生産性は高くなる。 (オ) 集団を小規模に設計し、メンバーが長い時間にわたって経験を共有するようになると、集団の凝集性は高くなり、組織文化が生まれてくる。
設問17
企業組織を活性化する方法の一つとして「組織開発(Orgaruzational Development)」と呼ばれる手法が注月を浴びてきた。組総開発に関する記述として最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 組織開発は、計画・組織・指揮・統制という管理プロセスの中で行われる従業員能力開発手法の一つで、主にジェネラリストを養成するために、管理プロセスの全体を経験させることを通じて行われる。 (イ) 組織開発は通常の業務を遂行中に「行動を通した学習(leaning by doing)」によって行われる能力開発であり、自己啓発セミナーなどと組み合わせて行うと効果がある。 (ウ) 組織開発のチェンジエージェントとして行動科学者が活用され、参加的・協力的な組織文化を重視する傾向にある。 (工) 組織開発プログラムが構造変革への介入を行う場合には、権限を集権化し管理者の数を減らすことを通じ、人件費削減といった経済的効果を組織にもたらす。 (オ) 組織開発ではチームビルディング手法がよく使われ、集団圧力を使ってメンバーが落ちこぼれることがないように訓練する。
設問18
近年わが国でも雇用形態の多様化が進み、年功序列型賃金体系が企業の人件費コストを圧迫するようになり、一方で成果主義賃金制度の有効性に疑問が投げかけられるなど、貸金管理システムを見直す動きが盛んになっている。賃金管理に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 一般に職務給を導入するには、正確に職務分析を行う必要があるが、成果主義賃金制度は、結果としての成果に注目するので職務分析をする必要はない。 (イ) 企業業績が上昇しているときには、ペースアップの形で社員にその成果を還元することが、短期的な環境変動の観点から見て適切である。 (ウ) 職能給を採用すると、職務給の場合と比べて配置転換が難しくなり、成果に対する人件費率が高くなる傾向にある。 (工) 職務能力が経験年数にともなって上昇するような業務が減ってきて、むしろ勤続年数の長さが新しい職務を学習することに不適合を起こす場合には能力給は採用せず、年功給を採用すべきである。 (オ) 成果主義貸金として職務給が制度化される場合には、担当職務を社員の希望に沿ったものにするため、自己申告や社内公募制などを取り入れるのが一般的である。
設問19
労働基準法において定められている、労働者名簿、貸金台帳、記録の保私時効に 関する記述として、最も不適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。 (イ) 使用者は、各事業場ごとに貸金台帳を調製し、貸金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。 (ウ) 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を2年間保存しなければならない。 (工) 労働基準法の規定による貸金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は2年間、退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によって消滅する。
設問20
労働契約の期間等について定めた労働基準法第14条第2項の規定に基づき.「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」が平成16年1月1日から適用されているところである。その基準の内容について、最も不適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 使用者が有期労働契約を更新する場合がある旨明示したときは、使用者は、労働者に対して当該契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければならない。 (イ) 使用者は、有期労働契約の締結後に契約を変更する場合には、当該契約を締結した労働者に対して、速やかにその内容を明示しなければならない。 (ウ) 使用者は、有期労働契約の締結に降し、労働者に対して、当該契約の期間の満了後における当該契約に係る更新の有無を明示しなければならない。 (工) 使用者は、有期労働契約(あらかじめ当該契約を更新しない旨を明示されているものを除く。)を更新しない場合には、少なくとも当該契約期間満了の2週間前までにその予告をしなければならない。 (オ) 使用者は、有期労働契約(あらかじめ当該契約を更新しない旨を明示されているものを除く。)を更新しない場合には、労働者が更新しないこととする理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。