平成17年度1次試験解答:企業経営理論
設問1
解答:ウ
プロダクト・インテグリティ(Product Integrity:製品統合性)とは,製品の多様な属性を1つの製品として全体的に統合・調和させ、全体的な調和を図ることである。それに該当するのはウである。
設問2
解答:ア
他社との間に差別化を生み出すには次の方法がある。
- 製品の品質、性能、価格といった個々の商品やサービスでのレベルでの差別化
- 事業を行うための資源と資源を活用する仕組みの差別化
(ア) | これまで練り上げてきた生産システムや販売システムを一貫性のある全社的な事業システムとして構築する。 →○:「これまで練り上げてきた生産システムや販売システム」の技術を他者が模倣・追随するのは困難である。 |
(イ) | 熟練が必要な手間のかかる工程を合理化し、工場を自動化して生産能力を増強する。 →×:「工程を合理化」、「工場を自動化」することにより、合理化は進むが、他社の模倣・追随は容易になる。 |
(ウ) | 将来性のある独自な製品事業分野であっても現在の収益に貢献していない場合は資源配分を制限する。 →×:独自な製品事業分野は模倣・追随しにくい。また、将来性のある事業分野を収益に貢献していないからといって資源配分を制限することは将来的な競争優位を弱体化させる。 |
(工) | 製品ラインを絞り込み、複雑な分業工程をやめて、汎用機械による量産を促進する。 →×:「汎用機械による量産」することにより、他社の模倣・追随は容易になる。 |
(オ) | ブランドの強化を図るために、コスト優位を発揮してシェアを追求するべく量販店での販売キャンペーンに注力する。 →×:ブランドの強化によって競争優位を築くことができる。ただし、「量販店での販売キャンペーンに注力」することはシェアの拡大にはなるが、ブランド強化にはつながらない。また、販売キャンペーンが他社の模倣・追随を受けにくい方策とは考えにくい。 |
設問3
解答:イ
ダーウィンの海とはハーバード大学のブランスコム教授が提唱している概念である。たとえ新製品が開発されても、既存製品や競合他社との競争リスクがあり、弱肉強食の海で生存競争に勝ち残る必要があることをダーウィンの進化論になぞらえたものである。よって解答はイである。
(ア) | 医療技術がITやロボット工学と融合して医療ベンチャーが誕生する現象をいう。 →×:単に医療技術を開発するベンチャー企業の説明である。 |
(イ) | 最新の技術で開発された製品が市場競争を通して生き残ることが難しい現象をいう。 →○:正しい |
(ウ) | ナノテクノロジー分野で微細加工技術をめぐる倣烈な競争が起こっている現象をいう。 →×:単にナノテクノロジー分野での競争に関する説明である。 |
(工) | 半導体産業で新親な技術が突然変異的に出現して市場で既存製品を駆逐する現象をいう。 →×:破壊的イノベーション(確立された技術やビジネスモデルによって形成された既存市場の秩序を乱し、業界構造を劇的に変化させてしまうイノベーションのこと)に関する説明である。 |
(オ) | ベンチャー企業が市場競争を通じて多産多死する現象をいう。 →×:単にベンチャー企業の説明である。 |
設問4
解答:ウ
(ア) | 計画に沿って戦略的な課題領域を細分化して、担当部署ごとに意思決定権限を与え、現場での課題解決を求めるようにする。 →○:戦略的な課題領域を細分化することで、それぞれの現場に特有な課題を解決することができる。 |
(イ) | 全社的にビジョンの共有を図り、戦略的な課題を細分化して、担当部署に主体的な意思決定権限を与える。 →○:ビジョンの共有を行うことで、それぞれの担当部署での意思決定が相互に矛盾することを防ぐことができる。また細分化された課題は、各担当部署が主体的に意思決定を行う必要がある。 |
(ウ) | 戦略策定専門スタッフが、高度な分析を通じて戦略的な意思決定事項を詳細に計画し、実行についても厳密な統制を行う。 →×:戦略策定専門スタッフは必ずしも現場の実情に通じていないので、実行について厳密な統制を行なうことは困難である。 よって、実行についての厳密な統制は、ライン上の上司が行なうべきである。 |
(工) | 戦略的な意思決定は企業の環境に関わる問題なので、できる限り意思決定権限をトップに集中させて、トップの側近である戦略スタッフが意思決定のサポートを行なう。 →○:戦略的な意思決別は、基本的にトップが行う。しかし、実行に際しては下位の者に権限を与えて、実行段階で発生する問題を随時フィードバックし、 修正を加えつつ推進していく必要がある。 |
(オ) | 戦略的な意思決定は、予測不可能で不確実な問題解決になるので、フィードバックグループを通して、逐次的に不確実性を削減する。 →○:戦略的な意思決別は、基本的にトップが行う。しかし、実行に際しては下位の者に権限を与えて、実行段階で発生する問題を随時フィードバックし、 修正を加えつつ推進していく必要がある。 |
設問5
解答:設問1:エ 設問2:ウ 設問3:ウ
(設問1)
新産業都市とは、1962年の新産業都市建設促進法に基づいて、「産業の立地条件及び都市施設を整備することにより、その地方の開発発展の中核となるべき」として指定された地域である。
テクノポリスとは、1983年の高度技術工業集積地域開発促進法に基づいて、「高度技術集積都市、及びそれを実現する」ための計画であり、先端技術産業を中核とした産・学・住が一体となった街づくりを促進し、研究開発施設など各種産業基盤の事業整備等の推進を通じて地域経済の振興と向上を目指すことを目的としたものである。
(ア) | アジア、とくに中国の工業化が急進展していたので、地方の企業誘致は中国との競争にさらされるようになった。 →×:中国の工業化は90年代末から盛んになりはじめた。新産業都市やテクノポリスの時期とは異なる。 |
(イ) | 行政は地場企業の工業用地への入居を優先したので、大企業の地方分散は進まなかった。 →×:新産業都市建設促進法や高度技術工業集積地域開発促進法の企業誘致対象は大企業であり、地場企業ではない。 |
(ウ) | 工業団地を整備するにあたって、行政は企業の要望を取り入れたので、どこも入居は順調に推移した。 →×:各地に工業団地が造られたものの、経済の全体的な停滞状況、あるいは地域によっては地域間競争が激化するなど、工業団地への入居は全てが順調に推移したわけではない。 |
(工) | 産業の集積には、企業のみならず、技術や人材を供給する大学、自治体の支援そして便利で良好な生活空間などが一体となって相乗効果を発揮することが望ましいことが指摘された。 →○:先端技術産業を中核とした産・学・住が一体となった街づくりを促進するのが望ましい。 |
(オ) | 大企業が生産拠点を地方に分散するにともなって、工業力の乏しい地方都市にも中小のサポーティング・インダストリーが多数生まれ、第1次ベンチャー・ブームが地方から起こった。 →×:第1次ベンチャーブームとは、高度経済成長期の頂点、大量生産、大量消費産業から加工組立産業(自動車、電機)へと転換している時期に起こったもので、研究開発型のハイテクベンチャーが多く輩出された。第1次ベンチャーブームは1970〜73 年頃に起こったものであり、設問の時代背景にはそぐわない。 |
(ア) | 郊外型の大型店に客を奪われ、商店街の売上が激減している。 →○:郊外に立地する大型店に客を奪われ売り上げが激減している状況は日本各地においてみられる。 |
(イ) | 商店街の経営者が高齢化して後継者不足になっている。 →○:経営者の高齢化による後継者不足は商店街の抱えている問題である。 |
(ウ) | 商店街への大型店出店への反対運動が激しく、大型店は郊外出店を余儀なくされる例が続出している。 →×:平成12(2000)年に施行された大規模小売店舗立地法では、大規模商業施設の店舗規模の制限などを主目的とした旧法とは異なり、大型店と地域社会との融和の促進を図ることを主眼としている。これにより近年では大型資本の出店攻勢が活発化しており、それにより既存の商店街がシャッター街化するケースも増加している。よって大型店は郊外出店を余儀なくされているわけではない。 |
(工) | タウン・マネジメントを使った商店街の再開発は大きな成果を生み出せないでいる。 →○:「連携不足」、「リーダー不在」などの理由よりタウン・マネジメント使った商店街の再開発は大きな成果を生み出せないでいる。 |
(ア) | エレクトロニクスや自動車産業における水平型のネットワークによる技術連携が代表的であり、ネットワークの中心となる企業の名を冠した産業集積がみられる。 →×:ネットワークの中心となる企業の名を冠した産業集積は従来からあるものである。新しい産業集積とはいえない。 |
(イ) | 社会的な分業が特定地域に集中して地域の特産品が生まれてきている。 →×:地場産業の集積のことであるが、地場産業の集積は従来からあるものである。新しい産業集積とはいえない。 |
(ウ) | この例として先端技術分野の異業種が空間的に集積し、ネットワーク型の連携をとっている例がIT分野などにみられ、しばしば産業クラスターと呼ばれている。 →○:産業クラスターとは、特定分野の関連企業、研究機関、サービス提供者が地理的に近接した集団を作ることで、専門性の高い資源へのアクセスや活動の補完、地理的 な近接性からもたらされる競争のプレッシャーを感じることで、企業の生産性を向上させたり、新規事業の形成を促進することができる。 |
(工) | この例として注目されるのは、ハイテク団地をつくり、先端技術企業を集団立地させて産業集積をつくるものであり、手法的には古典的であるが、M.ポーターの提唱に沿って産業集積のダイヤモンド・モデルと呼ばれている。 →×:テクノポリスのことであるが、テクノポリスは従来からあるものである。新しい産業集積とはいえない。 |
設問6
解答:設問1:オ 設問2:エ 設問3:ウ 設問4:オ 設問5:エ
(ア) | オーム →×:オームの法則とは、一定の導体に流れる電流は電圧に比例し、抵抗に反比例するという法則。 |
(イ) | クルーグマン →○:ポール・クルーグマンは、アメリカの経済学者、コラムニストである。 |
(ウ) | ショックレー ウィリアム・ショックレーとは、アメリカの物理学者で、トランジスタを開発したメンバーの1人である。 |
(工) | パーキンソン →×:パーキンソンの法則とは、英国の歴史学者・政治学者であるC・ノースコート・パーキンソンが唱えた法則で、「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」(第一法則)、「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」(第二法則)というものである。 |
(オ) | ムーア →○:インテル社の創立者の1人である、ゴートン・ムーア博士が1965年に経験則として提唱した、「半導体の集積密度は18〜24ヶ月で倍増する」という法則である。 |
(設問2)
「シリコンバレーフィーバー」とは、米国サンフランシスコ南東地区の通称である「シリコンバレー」でのベンチャー企業ブームを表した用語である。
(ア) | イノベーション・ジレンマ →×:優れた特色を持つ商品を売る巨大企業が、その特色を改良する事のみに目を奪われ、顧客の別の需要に目が届かず、その商品より劣るが新たな特色を持つ商品を売り出し始めた新興企業の前に力を失う理由を説明したマーケティングの理論である。 |
(イ) | 技術崩壊 →×:製品化するプロセスが進まないことが、技術の崩壊に直結するわけではない。 |
(ウ) | 死の谷 →○:死の谷とは研究成果と事業展開の間に存在する深いギャップのことである。 |
(工) | 情報の粘着性 →×:情報の粘着性とは、局所的に生成される情報をその場所から移転するのにどれだけコストがかかるかを表現する言葉である。そのコストが高い時、粘着性が高いという。この概念はマサチューセッツ工科大学(MIT)のフォン・ヒッペル教授が提唱したものである。 |
(オ) | プロジェクト・ジレンマ →×:プロジェクトにおいて作業の遅れを取り戻すために、開発者の人数を増やしても効率が比例して上がらないことである。 |
(ア) | 旧式になった製造装置を安価に調達できる。 →○:一世代前の技術による製品の場合、その製造装置は旧式のため安価に調達することができる。 |
(イ) | 技術が標準化されている部分が少なくないので研究開発負担が少なくてすむ。 →○:一世代前の技術による製品の場合、その技術は標準化されている部分が多いので、研究開発負担が少なくてすむ。 |
(ウ) | このような競争では製品ブランドが成立しにくいので、品質と価格を武器にグローバルに営業できる。 →○:先端技術分野での技術革新競争では技術の変化するスピードが早すぎるのでイメージによる製品ブランドは成立しにくい。 |
(工) | 市場で製品内容が既によく知られているので、セールス・エンジニアリングによる技術情報操供の負担が少ない。 →○:全く新しい技術の場合はセールス・エンジニアリングも顧客に対して一から全ての情報を説明する必要があるが、後発企業の場合は市場で製品内容が既によく知られているのでセールス・エンジニアリングによる技術情報操供の負担が少ない。 |
(オ) | 先発メーカ一の知財管理が厳しいため、当該製品の市場価格が高く保たれており、参入のメリットは大きい。 →×:先発メーカ一特許やライセンスといった知財管理を厳しく行なっている場合には、ライセンス費用を先発企業に払う必要がでてくるためにコスト面で大きな負担になる。その為、参入のメリットは小さくなる。 |
(ア) | 1990年代の不況の中で、企業は基礎研究の負担能力を削いできたので、大学にそれを求める傾向を強めている。 →○:1990年代の不況の中で、企業は基礎研究よりも企業の売上に直結する応用研究に力を注ぐ傾向がある。その為、基礎研究の部分を大学に求める傾向を強めている。 |
(イ) | 企業は大学との連携によって、大学の基礎研究能力のみならず、研究人材についても調達可能性をもつことができる。 →○:企業は大学と連携することによって大学の教授や優秀な人材を転職といった形で調達する可能性をもつことができる。 |
(ウ) | 国立大学法人の教員の兼業規定が緩和され、企業の顧問に就任したり自らベンチャー企業を起こすなどの活動が可能となり、企業は大学との連携を図りやすくなった。 →○:法制度の改革により国家公務員である国立大学法人の教員の兼業規定が緩和された。その結果、企業の顧問に就任したり自らベンチャー企業を起こすなどの活動が可能となり、企業は大学との連携を図りやすくなった。 |
(工) | 大学は知的財産対策を強めており、パテント供与先の企業に全学の施設を自由に利用することが義務づけられた。 →×:パテントとは、特許のことである。大学が、パテントを企業に供給したり売却したりする例は増加しているが、供給先の企業に全学の施設を自由に利用することを義務づけた法は存在しない。 |
(オ) | 理工系学部を持つ国立大学では、国立大学法人化にあわせて外部資金の調達が求められるようになり、産学連携を強めている。 →○:国立大学の独立法人化に伴い大学は自ら研究開発費を獲得する必要がでてきた。そのため、外部資金の調達を求めて、産学連携を強めている。 |
設問7
解答:ウ
事業ドメインとは、事業の展開領域のこと。どのような顧客にどのような付加価値をどのようにして提供するのかという事業の基本領域のこと。
(ア) | 既存の事業の仕組みを再構築するのに時間がかかるから。 →○:ドメインの再定義は従来の顧客層や技術を見直す必用がある。そのため、仕組みを再構築するのに時間がかかるから。 |
(イ) | 再定義されたドメインが以前のものほど魅力的ではないから。 →○:多くの従業員や取引先は既存のドメインへの愛着をもつので再定義されたドメインを魅力的に感じにくい。 |
(ウ) | 再定義するドメインがライバル企業のドメインと協調的であるように業界団体の指導を受けるから。 →×:業界団体がドメインに対する指導を行なうことはない。 |
(工) | ドメイン再定義にともなう事業活動の変更について顧客の理解を得るのが雉しいから。 →○:顧客側が企業のドメイン再定義を理解するには時間とコストを要する。 |
(オ) | 慣れ親しんだ仕事の仕組みを変更することへの従業員の抵抗が起こるから。 →○:ドメインの再定義を行うことによって従業員には従来の業務を変更する必要が生じる。その結果、慣れ親しんだ仕事の仕組みを変更することに対しての従業員の抵抗が起こる。 |
設問8
解答:設問1:ア 設問2:イ 設問3:ア 設問4:イ 設問5:イ
(設問1)
経営者支配とは、会社が大規模化、複雑化したことにより、株式が多数の株主に広範囲に分散して所有されるようになると、会社本来の所有者である株主に代わり、生産組織体を指導し、調整する技術、能力、経験を備えた専門経営者(MBA取得者)などが、企業の最高意思決定を左右するようになることをいう。それに該当するのはアである。
(設問2)
多角化戦略に関する問題である。
(ア) | アマルガメーシヨン →×:合併、混合という意味の単語である。 |
(イ) | コングロマリット化 →○:技術的にもマーケテイング的にも自社事業と直接関連性のない企業を買収、合併して多角化していく企業戦略 |
(ウ) | コンソーシアム化 →×:コンソーシアムとは、2つ以上の個人、企業、団体、政府(あるいはこれらの任意の組合せ)から成る団体であり、共同で何らかの目的に沿った活動を行ったり、共通の目標に向かってリソースをプールする目的で結成される。 |
(工) | ストック・ホールディング化 →×:持株化のことである。 |
(オ) | レバレッジド・バイ・アウト →×:企業買収を行う際に行う手法の一つで、買収対象企業の資産価値や将来収益性を担保に資金を調達して買収を行う。 |
(設問3)
(ア)戦略的提携がM&Aに代わって登場してきたので、M&Aが下火になった。
→×:ある企業の技術を得ることを目的としたM&Aは、M&Aよりもリスクの少ない方法である戦略的提携(アライアンス)で代替することができる。しかし、事業分割こよる事業売却として使用されるものでもないし、その登場は、「事業分割こよる事業売却が多く見られるようになった」背景の理由でもない。
(設問4)
(イ)資産と負債の総合管理(アセットライアビリティ・マネジメント:ALM) を重視した経営が展開されるようになり、資産の運用リスクが高まった。
→×:アセットライアビリティ・マネジメント:ALMは、資産と負債のバランスを統合的に管理し、収益の最大化とリスクを最小化するものである。よって資産の運用リスクを高めるものではない。
(設問5)
(イ)財閥が復活し、その系列企業の結束が固くなって、買収ができない状況になった。
→×:財閥は第2次大戦後にGHQによって解体された。旧財閥を中心とした企業グループも存在するが、同族経営を行い、系列企業の結束が強固だった戦前の財閥とは異なる。
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設問9
解答:ウ
(ウ)管理者がその企業を代表する人間として、対外的に業績について説明責任を持つ度合いが低いため。
→×:管理者はその企業を代表する人間のため、対外的に業績について説明責任を持つ度合いが高くなるその結果、心理的なコストが高くなり、自ら行った意思決定を修正できず、逆にその意思決定に固執するようになってしまう。
仮に、
対外的に業績について説明責任を持つ度合いが低い場合は、失敗に対する心理的なコストがないために意思決定の修正は容易である。
設問10
解答:ウ
MIT名誉教授であるエドガー・アンカーが構築した理論的概念であり、キャリアを選択する際に最も大切な他に譲れない価値観や欲求のことである。シャインは主なキャリアアンカーは、次の5つに分類されるとした。
- @管理能力
- 組織の中で責任ある役割を担うことを望むこと。
- A技術的・機能的能力
- 自分の専門性や技術が高まることを強く望むこと。
- B安全性
- 安定的に1つの組織に属することを望むこと。
- C創造性
- クリエイティブに新しいことを生み出すことを望むこと。
- D自律と独立
- 自分で独立することを望むこと。
このキャリアアンカーを見極めて企業は人事制度を設計し、個人はキャリアを選択すべきである。
(ア) | キャリアアンカーとは自分の能力・価値観・動機などを含む自己イメージを意味し、個人が最初に企業に入社するまでに形成される。 →×:キャリアアンカーは「個人が最初に企業に入社するまでに形成される」ものではない。キャリアアンカーでは、職業に就いてから5〜10年を重視しており、この時期にキャリア・アンカーを形成することが、その後の職業選択やキャリア発達を方向づけるとしている。 |
(イ) | キャリアアンカーとは自分が生涯にわたって尊敬する人物を意味し、さまざまな意思決定場面で見習うべき手本として考える対象である。 →×:キャリアアンカーは、「自分が生涯にわたって尊敬する人物を意味し、さまざまな意思決定場面で見習うべき手本として考える対象」とするものではない。 |
(ウ) | 管理能力をキャリアアンカーとしている者は、自分が分析能力、対人関係能力、情緒的能力といった3つの能力を組み合わせて持っていると認識する傾向にある。 →○:管理能力をキャリアアンカーとしている者は、分析能力、対人関係能力、 情緒的能力といった3つの能力を持っていると思いがちである。 |
(工) | 技術的・職能的能力をキャリアアンカーとしている者は、特定領域での創造性を発揮できる機会を求め、企業の創業者に典型的に見られる傾向にある。 →×:「特定領域での創造性を発揮できる機会を求め、企業の創業者に典型的に見られる傾向にある」のは、創造性または自立と独立性をキャリアアンカーとしている者である。設問の技術的・職能的能力をキャリアアンカーとしている者は、自分の専門性や技術が高まることを強く望む。 |
(オ) | 自律性をキャリアアンカーとしている者は、より高い地位や報酬を求めて、企業間を移勤しやすい傾向にある。 →自律性をキャリアアンカーとしている者は、組織織のルールや規制に縛られず、自分のやり方で仕事を進め、仕事のペースを自分の裁量で自由に決めることを望むタイプであるため、必ずしも地位や報酬にとらわれない。 |