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平成24年度1次試験問題:経営法務

設問16

 電子部品メーカーX株式会社I以下「X社」という。Lの資金調達に関する、X社社長甲氏と中小企業診断士であるあなたとの間の以下の会話を読んで、下記の設問に答えよ。なお、あなたの発言の下線部@〜Cのうち、2つには誤りが含まれている。

甲氏 「この間、メインバンクから、大口の取引先への売掛金を、現在掛売りしている分だけでなく、今後発生する取引の分もまとめて担保に差し出せと言われたんだけど、そんなことできるの。」
あなた 「集合債権の譲渡担保という方法があります。担保提供を受けた銀行は、【 A 】 登記に加えて、登記事項証明書交付による【 B 】 がされれば、他の債権者に対しても売掛先に対しても、将来発生する売掛債権も含めて、担保権者として優先弁済を受ける権利を主張できます。@つまり、担保権者は、融資先の期限の利益が喪失した時点で少なくとも具体的に発生している売掛債権については、融資先に担保権の実行通知を出して売掛債権の取得や処分ができますし、弁済期の到来した売掛先には直接取立てができるので、一般債権者に優先して債権回収ができます。」
甲氏 「へえ、そうなんだ。あと、同業のY社は代理店になっているメーカーの意向で、電子手形というのを始めたらしいんだけど、これって要するに紙の手形が要らなくなるってやつでしょ。」
あなた 「そうですね。紙の手形の代わりに、【 C 】 の電子記録で債権の発生や譲渡が管理されるので、債権管理のコスト削減にもつながりますし、コンピュータのセキュリティを確保しておけば、紙の手形のような証券の紛失・盗難や偽造のリスクもありません。A債務者が電子記録名義人に支払いさえすれば重大な過失がない限り免責されることや、金融機関に持ち込んで割引を受けるときに債権金額の分割ができないことは、紙の手形と同様です。」
甲氏 「資金調達の手段が便利になったのはいいけど、作った製品が売れないことには借金を返すめども立たん。わが社はガラケーI※ガラパゴス携帯電話L全盛時代に専用設備の投資にシフトし過ぎたから、Y社のようにスマホI※スマートフォンLのタッチパネル製造用に機械を更新する資金的な余裕もない。このままだと資金ショートで即アウトになりかねないから、何とか会社を生き残らせるために、民事再生とかも考えないと。」
あなた 「そうですね。B民事再生であれば、再生手続開始後も会社の業務遂行権や財産の管理処分権は維持されますから、経営者自身が企業の再建を進めていけるのが原則です。裁判所によって選任された監督委員の同意が必要な行為もありますけどね。あと、C民事再生手続が開始されれば、債権譲渡担保のような担保権についても、再生手続の中に組み込まれ、担保権者は届出をして再生手続に参加しない限り、担保権を実行することができません。

(設問1)
 会話中の空欄A〜Cに入る語句の組み合わせとして最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) A:債権譲渡 B:第三債務者の承諾 C:手形交換所
(イ) A:債権譲渡 B:第三債務者への通知 C:電子債権記録機関
(ウ) A:債権譲渡 B:第三債務者への通知 C:法務局
(エ) A:債権譲渡 B:引渡し C:電子債権記録機関

(設問2)
 会話中のあなたの発言の下線部@〜Cのうち、正しい発言の組み合わせとして最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 下線部@と下線部A
(イ) 下線部@と下線部B
(ウ) 下線部Aと下線部C
(エ) 下線部Bと下線部C

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設問17

 株式上場にあたり証券取引所が審査を行う基準は形式基準と実質基準の2つから構成される。形式基準は、上場を申請するにあたって最低限クリアしなければならない一定の数値や事実を要件として設定されている。これに対して実質基準は、規則上は定性的な項目を示し、具体的な考え方を「手引き」や「ガイドライン」、「Q & A」の形で公表している。実質基準に関連する下記の設問に答えよ。

(設問1)
 東京証券取引所の上場審査において、実質基準の「企業経営の健全性」の項目では、新規上場申請者の企業グループとその関連当事者との間に取引が発生している場合に、取引の合理性、取引条件の妥当性、取引の開示の適正性等を確認するとしている。
  新規上場申請会社I以下「会社」という。Lと関連当事者との間で行われた取引に関する審査上の判断として、最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 会社が、会社の役員I関連当事者Lに対し報酬の支払いを行っていたとしても、その報酬について財務諸表上で関連当事者との取引として開示を行わないことは問題はない。
(イ) 会社が、会社の役員I関連当事者Lの所有する不動産を賃借しているが、直接の契約の相手方は外部の仲介不動産業者であるため、財務諸表上で関連当事者との取引として開示を行わないことは問題はない。
(ウ) 会社が、会社の役員を退職したオーナーI関連当事者Lを顧問に招聘し顧問料を支払う場合は、期待する役割やその達成状況、顧問料の算定根拠について確認できなくても問題はない。
(エ) 会社が所有するビルの空きスペースを、会社の役員I関連当事者Lが個人事業として営む飲食店に無償貸与することは、空きスペースでもあり問題はない。

(設問2)
 JASDAQグロースの上場審査において下記の「」書きの事項を確かめるのは、JASDAQにおける有価証券上場規程第10 条第2項に掲げられている実質基準の主にどの項目に該当するか。最も適切なものを下記の解答群から選べ。

「競争優位性及び事業環境等の外部環境や内部環境の適切な分析を踏まえた、客観性の認められる事業計画(中長期事業計画等)を有しているか。」

【解答群】
(ア) 企業行動の信頼性
(イ) 企業の成長可能性
(ウ) 企業の存続性
(エ) 健全な企業統治及び有効な内部管理体制の確立

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設問18

 会社法では、機関の設計が柔軟化され監査役を設置しない株式会社も認められる。監査役の設置に関連した説明として最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 株式会社が委員会設置会社の場合は、監査役を設置することはできない。
(イ) 株式会社が、公開会社でも会計監査人設置会社でもない場合は、監査役を設置することはできない。
(ウ) 株式会社が、大会社でも委員会設置会社でもない場合は、監査役の設置は任意となる。
(エ) 株式会社が、大会社でも公開会社でもない場合は、監査役の設置は任意となる。

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設問19

新たな取引先と商品の売買取引を開始することに関連した下記の設問に答えよ。

(設問1)
 新たに取引を開始するにあたり、商業登記簿謄本(登記事項証明書)で取引先の内容を把握することが重要である。これによって把握できるものに関する記述として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 会社の資本金の額を閲覧し、資本金の大きさを確かめる。
(イ) 会社の本店及び支店の所在場所を閲覧し、実際の取引先の住所と一致しているかを確かめる。
(ウ) 会社の目的を閲覧し、実際の取引を行う事業が含まれているかを確かめる。
(エ) 会社の役員を閲覧し、代表取締役の氏名および学歴を確かめる。

(設問2)
 取引先(買主)と新規に取引を開始するに先立ち、債権の保全・回収のための特約を定めた取引基本契約書を締結することが望まれる。この契約書の特約条項のうち、「期限の利益の喪失」条項を盛り込むことによって期待される効果に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 取引先が代金を完済するまで納入品の所有権を売主のものとし、いつでも納入品の返還を要求できる。
(イ) 取引先に信用不安や経営危機などの一定の事由が発生した場合に、一方的に取引を終了させることができる。
(ウ) 取引先に代金の支払遅延などの一定の事由が発生した場合に、支払期日前でも支払期日の到来していないすべての売掛金について直ちに支払いを請求することができる。
(エ) 取引先の債権回収に不安が生じた場合に、納入品の引き渡し数量を制限したりストップすることができる。

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設問20

 株式会社が作成する計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書の取扱いに関する記述として、最も不適切なものはどれか。
  なお、本問の前提となる株式会社は、取締役会および監査役を置くが、会計参与、会計監査人は設置していない。

【解答郡】
(ア) 株式会社は、計算書類を作成した時から10年間、当該計算書類とその附属明細書を保存しなければならない。
(イ) 計算書類及び事業報告については監査役の監査を受けなければならないが、附属明細書は監査役監査の対象とはならない。
(ウ) 事業報告は、株式会社の状況に関する重要な事項を記載し、定時株主総会の日の2週間前の日から5年間その本店に備え置かなければならない。
(エ) 取締役は、計算書類及び事業報告を定時株主総会に提出し、計算書類については承認を受けなければならないが、事業報告については内容の報告で足りる。

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