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平成24年度1次試験解答:経営法務

設問16

解答:設問1:イ 設問2:イ

(設問1)

空欄 【 A 】・空欄【 B 】:平成 10 年に「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(債権譲渡特例法)」が制定され,同法に基づく債権譲渡担保登記ができるようになった。これによると,法務局の債権譲渡の登記ファイルに記載されれば,当該債権の債務者以外の第三者に対して確定日付の通知があったものとみなされる。また,この登記事項証明書を第三債務者(売掛先など)に交付すれば,第三債務者に対抗できる。

空欄【 C 】:電子記録債権に関する問題である。電子記録債権とは,平成 20 年 12 月に施行された「電子記録債権法」により,債権の発生・譲渡・消滅等について,記録原簿への電子記録を要件とする金銭債権である。あなたの第 2 発言にあるように,電子記録債権には,従来からある手形債権と比べて,債権管理のコスト削減,紛失・偽造のリスク低減などのメリットがある。電子記録債権の記録原簿は,電子債権記録機関(銀行の関連会社など)が作成する。

(設問2)

@つまり、担保権者は、融資先の期限の利益が喪失した時点で少なくとも具体的に発生している売掛債権については、融資先に担保権の実行通知を出して売掛債権の取得や処分ができますし、弁済期の到来した売掛先には直接取立てができるので、一般債権者に優先して債権回収ができます。」
→○:集合債権譲渡担保権者は,債務者が期限の利益を喪失した時点で発生している売掛債権について,債務者に担保権の実行通知を出して売掛債権の取得や処分ができる。また,弁済期の到来した第三債務者に直接取り立てをすることも可能である。このため,一般債権者に優先して債権回収ができる。
A債務者が電子記録名義人に支払いさえすれば重大な過失がない限り免責されることや、金融機関に持ち込んで割引を受けるときに債権金額の分割ができないことは、紙の手形と同様です。」
→×前段は正しい。債務者が債権記録に電子記録債権の債権者として記録されている者に対して支払いをした場合には,仮にその者が無権利者であったとしても,悪意・重過失がない限り,その支払いは有効であるとされ,支払いをした者に免責が認められている。後段は誤りである。電子記録債権の特長の 1 つとして,手形割引とは異なり,債権の分割により一部金額の資金化ができる点がある。
B民事再生であれば、再生手続開始後も会社の業務遂行権や財産の管理処分権は維持されますから、経営者自身が企業の再建を進めていけるのが原則です。
→○:従来の経営陣が事業の経営権を喪失し,更正管財人が経営にあたる会社更生法とは異なり,民事再生法においては,経営者に会社の業務遂行権や財産の管理処分権が維持され,経営者自身が企業の再建を進めていけるのが原則である。(ただし,実務上は裁判所により監督委員が選任され,重要事項については監督委員の同意が必要とされる場合が多い。)
C民事再生手続が開始されれば、債権譲渡担保のような担保権についても、再生手続の中に組み込まれ、担保権者は届出をして再生手続に参加しない限り、担保権を実行することができません。
→×:担保権がすべて再建手続内に取り込まれ,手続外で行使することができない会社更生手続とは異なり,民事再生手続では,原則として担保権の行使を禁止することはできない。(ただし,事業継続に必要な財産が散逸すると再建が不可能になることから,競売手続中止命令などにより,担保権の行使を阻止されることはありうる。)

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設問17

解答:設問1:ア 設問2:イ

(設問1)
(ア) 会社が、会社の役員I関連当事者Lに対し報酬の支払いを行っていたとしても、その報酬について財務諸表上で関連当事者との取引として開示を行わないことは問題はない。
→○:役員の報酬に関して、財務諸表上で報酬額の個別開示は要求されていないので、報酬額の個別開示を行わなくても問題はない。
(イ) 会社が、会社の役員I関連当事者Lの所有する不動産を賃借しているが、直接の契約の相手方は外部の仲介不動産業者であるため、財務諸表上で関連当事者との取引として開示を行わないことは問題はない。
→×:東京証券取引所「新規上場の手引き」で問題があるケースとして例示されている。
Q8:関連当事者等との間で営業取引や不動産取引が発生している場合、審査上どのように判断されるのでしょうか。
A8:関連当事者等との取引が行われている場合には、取引の合理性(事業上の必要性)、取引条件の妥当性、取引の開示の適正性等を確認していますが、これらに不適切な点がある場合には、上場審査上の判断は慎重なものとなります。 不適切な事例としては、例えば、以下のようなケースなどが想定されます。
(開示の適正性に問題があるケース)
・関連当事者等が所有する不動産を賃借しているにも係わらず、直接の契約相手方を仲介不動産業者としたうえで、開示の隠蔽を図ったケース
(ウ) 会社が、会社の役員を退職したオーナーI関連当事者Lを顧問に招聘し顧問料を支払う場合は、期待する役割やその達成状況、顧問料の算定根拠について確認できなくても問題はない。
→×:東京証券取引所「新規上場の手引き」で問題があるケースとして例示されている。
Q9:関連当事者等との間で顧問契約を締結し顧問料の支払いを行っています。このような事例の場合、審査上どのように判断されるのでしょうか。
A9:関連当事者等との取引については、当該取引が会社の利益を第一に考えた場合において真に正当なものとして合理的に説明することが可能であるのかが重要な観点となります。 まず、関連当事者等を顧問に招聘する合理性(事業上の必要性)については、期待する役割やその達成状況などを踏まえつつ確認をします。その結果、合理的な説明が十分にできない取引については、解消することが必要となります。
(エ) 会社が所有するビルの空きスペースを、会社の役員I関連当事者Lが個人事業として営む飲食店に無償貸与することは、空きスペースでもあり問題はない。
→×:東京証券取引所「新規上場の手引き」で問題があるケースとして例示されている。
Q8:関連当事者等との間で営業取引や不動産取引が発生している場合、審査上どのように判断されるのでしょうか。
A8:関連当事者等との取引が行われている場合には、取引の合理性(事業上の必要性)、取引条件の妥当性、取引の開示の適正性等を確認していますが、これらに不適切な点がある場合には、上場審査上の判断は慎重なものとなります。 不適切な事例としては、例えば、以下のようなケースなどが想定されます。
(取引条件の妥当性が認められないケース) ・申請会社のビル等の空きスペースを関連当事者等の個人事業に無償貸与していたケース

(設問2)
JASDAQの有価証券上場規程 第10 条第2項は次のような内容である。

■有価証券上場規程
(上場審査)
第10条 新規上場申請者がスタンダードへの上場を申請した場合,第8条の規定に適合する株券の上場審査は,新規上場申請者並びに新規上場申請者及びその資本下位会社等により構成される新規上場申請者の企業グループ(以下「新規上場申請者の企業グループ」という。)に関する次の各号に掲げる事項について行うものとする。
(1) 企業の存続性
事業活動の存続に支障を来す状況にないこと。
(2) 健全な企業統治及び有効な内部管理体制の確立企業規模に応じた企業統治及び内部管理体制が確立し,有効に機能していること。
(3) 企業行動の信頼性
市場を混乱させる企業行動を起こす見込みのないこと。
(4) 企業内容等の開示の適正性
企業内容等の開示を適正に行うことができる状況にあること。
(5) その他公益又は投資者保護の観点から本所が必要と認める事項
2 新規上場申請者がグロースへの上場を申請した場合,前条の規定に適合する株券の上場審査は,新規上場申請者の企業グループに関する次の各号に掲げる事項について行うものとする。
(1) 企業の成長可能性
成長可能性を有していること。
(2) 成長の段階に応じた健全な企業統治及び有効な内部管理体制の確立
成長の段階に応じた企業統治及び内部管理体制が確立し,有効に機能していること。
(3) 企業行動の信頼性
市場を混乱させる企業行動を起こす見込みのないこと。
(4) 企業内容等の開示の適正性
企業内容等の開示を適正に行うことができる状況にあること。
(5) その他公益又は投資者保護の観点から本所が必要と認める事項
3 前2項の規定は,第15条の規定の適用を受ける新規上場申請者の株券の上場審査については,適用しない。

 

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設問18

解答:ア

(ア) 株式会社が委員会設置会社の場合は、監査役を設置することはできない。
→○:委員会設置会社では、3委員会の1つとして監査委員会が設置される。したがって、監査役を設置することができない。
(イ) 株式会社が、公開会社でも会計監査人設置会社でもない場合は、監査役を設置することはできない。
→×:公開会社でも会計監査人設置会社でもない場合は、原則として監査役の設置は任意であり、監査役を設置できないわけではない。
(ウ) 株式会社が、大会社でも委員会設置会社でもない場合は、監査役の設置は任意となる。
→×:大会社でも委員会設置会社でもない場合でも、公開会社や会計監査人設置会社に該当すれば監査役の設置が義務付けられる。
(エ) 株式会社が、大会社でも公開会社でもない場合は、監査役の設置は任意となる。
→×:会計監査人設置会社に該当すれば監査役の設置が義務付けられる。

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設問19

解答:設問1:エ 設問2:ウ

(設問1)

(ア) 会社の資本金の額を閲覧し、資本金の大きさを確かめる。
→○:会社法 第911条3項5号より正しい。
(イ) 会社の本店及び支店の所在場所を閲覧し、実際の取引先の住所と一致しているかを確かめる。
→○:会社法 第911条3項3号より正しい。
(ウ) 会社の目的を閲覧し、実際の取引を行う事業が含まれているかを確かめる。
→○:会社法 第911条3項1号より正しい。
(エ) 会社の役員を閲覧し、代表取締役の氏名および学歴を確かめる。
→×:会社法 第911条3項14号より誤り。代表取締役の氏名及び住所が登記事項であり、学歴は登記事項ではない。

■会社法
(株式会社の設立の登記)
第911条 株式会社の設立の登記は、その本店の所在地において、次に掲げる日のいずれか遅い日から2週間以内にしなければならない。
一 第46条第1項の規定による調査が終了した日(設立しようとする株式会社が委員会設置会社である場合にあっては、設立時代表執行役が同条第3項の規定による通知を受けた日)
二 発起人が定めた日
2 前項の規定にかかわらず、第57条第1項の募集をする場合には、前項の登記は、次に掲げる日のいずれか遅い日から2週間以内にしなければならない。
一 創立総会の終結の日
二 第84条の種類創立総会の決議をしたときは、当該決議の日
三 第97条の創立総会の決議をしたときは、当該決議の日から2週間を経過した日
四 第100条第1項の種類創立総会の決議をしたときは、当該決議の日から2週間を経過した日
五 第101条第1項の種類創立総会の決議をしたときは、当該決議の日
3 第1項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
一 目的
二 商号
三 本店及び支店の所在場所
四 株式会社の存続期間又は解散の事由についての定款の定めがあるときは、その定め
五 資本金の額
六 発行可能株式総数
七 発行する株式の内容(種類株式発行会社にあっては、発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容)
八 単元株式数についての定款の定めがあるときは、その単元株式数
九 発行済株式の総数並びにその種類及び種類ごとの数
十 株券発行会社であるときは、その旨
十一 株主名簿管理人を置いたときは、その氏名又は名称及び住所並びに営業所
十二 新株予約権を発行したときは、次に掲げる事項
イ 新株予約権の数
ロ 第236条第1項第1号から第4号までに掲げる事項
ハ ロに掲げる事項のほか、新株予約権の行使の条件を定めたときは、その条件
ニ 第236条第1項第7号並びに第238条第1項第2号及び第3号に掲げる事項
十三 取締役の氏名
十四 代表取締役の氏名及び住所(第22号に規定する場合を除く。)
十五 取締役会設置会社であるときは、その旨
十六 会計参与設置会社であるときは、その旨並びに会計参与の氏名又は名称及び第378条第1項の場所
十七 監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)であるときは、その旨及び監査役の氏名
十八 監査役会設置会社であるときは、その旨及び監査役のうち社外監査役であるものについて社外監査役である旨
十九 会計監査人設置会社であるときは、その旨及び会計監査人の氏名又は名称
二十 第346条第4項の規定により選任された一時会計監査人の職務を行うべき者を置いたときは、その氏名又は名称
二十一 第373条第1項の規定による特別取締役による議決の定めがあるときは、次に掲げる事項
イ 第373条第1項の規定による特別取締役による議決の定めがある旨
ロ 特別取締役の氏名
ハ 取締役のうち社外取締役であるものについて、社外取締役である旨
二十二 委員会設置会社であるときは、その旨及び次に掲げる事項
イ 取締役のうち社外取締役であるものについて、社外取締役である旨
ロ 各委員会の委員及び執行役の氏名
ハ 代表執行役の氏名及び住所
二十三 第426条第1項の規定による取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人の責任の免除についての定款の定めがあるときは、その定め
二十四 第427条第1項の規定による社外取締役、会計参与、社外監査役又は会計監査人が負う責任の限度に関する契約の締結についての定款の定めがあるときは、その定め
二十五 前号の定款の定めが社外取締役に関するものであるときは、取締役のうち社外取締役であるものについて、社外取締役である旨
二十六 第24号の定款の定めが社外監査役に関するものであるときは、監査役のうち社外監査役であるものについて、社外監査役である旨
二十七 第440条第3項の規定による措置をとることとするときは、同条第1項に規定する貸借対照表の内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの
二十八 第939条第1項の規定による公告方法についての定款の定めがあるときは、その定め
二十九 前号の定款の定めが電子公告を公告方法とする旨のものであるときは、次に掲げる事項
イ 電子公告により公告すべき内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの
ロ 第939条第3項後段の規定による定款の定めがあるときは、その定め
三十 第28号の定款の定めがないときは、第939条第4項の規定により官報に掲載する方法を公告方法とする旨

(設問2)

  期限の利益とは、期限の到来までは債務の履行をしなくてもよい、という債務者の利益のことである(民法136条)。
 期限の利益の喪失とは、債務者の期限の利益を喪失させることによって、期限の到来前であっても、債務の履行を請求することができるようにすることある。
 したがって、ウが正解である。

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設問20

解答:イ

(ア) 株式会社は、計算書類を作成した時から10年間、当該計算書類とその附属明細書を保存しなければならない。
→○:会社法 第435条4項より正しい。
■会社法
(計算書類等の作成及び保存)
第435条 株式会社は、法務省令で定めるところにより、その成立の日における貸借対照表を作成しなければならない。
2 株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。
3 計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、電磁的記録をもって作成することができる。
4 株式会社は、計算書類を作成した時から10年間、当該計算書類及びその附属明細書を保存しなければならない。
(イ) 計算書類及び事業報告については監査役の監査を受けなければならないが、附属明細書は監査役監査の対象とはならない。
→×:会社法 第436条1項、2項より誤り。
■会社法
(計算書類等の監査等)
第436条 監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含み、会計監査人設置会社を除く。)においては、前条第2項の計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、法務省令で定めるところにより、監査役の監査を受けなければならない。
2 会計監査人設置会社においては、次の各号に掲げるものは、法務省令で定めるところにより、当該各号に定める者の監査を受けなければならない。
一 前条第2項の計算書類及びその附属明細書 監査役(委員会設置会社にあっては、監査委員会)及び会計監査人
二 前条第2項の事業報告及びその附属明細書 監査役(委員会設置会社にあっては、監査委員会)
3 取締役会設置会社においては、前条第2項の計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書(第1項又は前項の規定の適用がある場合にあっては、第1項又は前項の監査を受けたもの)は、取締役会の承認を受けなければならない。
(ウ) 事業報告は、株式会社の状況に関する重要な事項を記載し、定時株主総会の日の2週間前の日から5年間その本店に備え置かなければならない。
→○:会社法 第442条1項より正しい。
■会社法
(計算書類等の備置き及び閲覧等)
第442条 株式会社は、次の各号に掲げるもの(以下この条において「計算書類等」という。)を、当該各号に定める期間、その本店に備え置かなければならない。
一 各事業年度に係る計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書(第436条第1項又は第2項の規定の適用がある場合にあっては、監査報告又は会計監査報告を含む。) 定時株主総会の日の1週間(取締役会設置会社にあっては、2週間)前の日(第319条第1項の場合にあっては、同項の提案があった日)から5年間
二 臨時計算書類(前条第2項の規定の適用がある場合にあっては、監査報告又は会計監査報告を含む。) 臨時計算書類を作成した日から5年間
(エ) 取締役は、計算書類及び事業報告を定時株主総会に提出し、計算書類については承認を受けなければならないが、事業報告については内容の報告で足りる。
→○:会社法 第438条より正しい。
■会社法
(計算書類等の定時株主総会への提出等)
第438条 次の各号に掲げる株式会社においては、取締役は、当該各号に定める計算書類及び事業報告を定時株主総会に提出し、又は提供しなければならない。
一 第436条第1項に規定する監査役設置会社(取締役会設置会社を除く。) 第436条第1項の監査を受けた計算書類及び事業報告
二 会計監査人設置会社(取締役会設置会社を除く。) 第436条第2項の監査を受けた計算書類及び事業報告
三 取締役会設置会社 第436条第3項の承認を受けた計算書類及び事業報告
四 前3号に掲げるもの以外の株式会社 第435条第2項の計算書類及び事業報告
2 前項の規定により提出され、又は提供された計算書類は、定時株主総会の承認を受けなければならない。
3 取締役は、第1項の規定により提出され、又は提供された事業報告の内容を定時株主総会に報告しなければならない。

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