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平成21年度1次試験問題:経営法務

設問11

 C株式会社(以下「C社」という。)が、次のような状況にあることを前提として、賃貸借契約に関し、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

 C社はX氏の所有する倉庫を、倉庫兼事務所として使用するために平成2年(1990年)4月1日から5年ごとに都度合意して賃貸借契約を更新し、賃借している。しかし、賃料が近隣の相場より高く、C社の経営状態を圧迫しているために、よりコスト負担の少なくなる方策を検討している。なお、本件賃貸借契約において、C社は賃料6カ月分相当額を「保証金」との名目でX氏に預けている。また、来年(平成22年(2010年))3月末には、更新の時期を迎える。

【解答群】
(ア) C社は、X氏の了承を得て倉庫に備えつけた汎用的な建具を残して引越費用を削減したいとしても、C社とX氏間の賃貸借契約に特段の定めがない場合、X氏から「残しても良い」旨の同意がない限り、C社は入室した当初と同様の状態にするためのコストを負担しなければならない。 
(イ) 現在のC社近隣の賃料相場と比べてC社の賃料が著しく高くなっている場合、C社が支払っている現在の賃料を下げる方法には、X氏と交渉することのほか、法律に基づき、C社はX氏に対し裁判を起こして賃料を下げるように請求することもできる。
(ウ) 引越しするには、次の賃貸借契約締結の際に保証金を引越先のオーナーへ支払うこととなっているが、C社は、建物明渡後に返還される保証金から未払い賃料を相殺するようにX氏に請求することができるので、期間満了時まで賃料の支払いを止めて、引越先の保証金を準備することができる。
(エ) 本件賃貸借契約の契約書には、更新について「更新料を支払った場合に更新できる」と規定があるだけで、特段の記載がない場合、C社が更新時期の2カ月以上前にX氏に対して更新をしない旨を通知しないときは、自動的に5年間契約が更新される。

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設問12

 D株式会社(以下「D社」という。)は、E株式会社(以下「E社」という。)から、E社がその著作権および著作者隣接権を保有する音楽コンテンツ(以下「本コンテンツ」という。)の管理・運用を依頼され、これをオンライン上で配信してユーザーに課金するサービスを提供することを約した。本コンテンツの管理・運用に関するD社の著作権法上の義務に関する記述として最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 本コンテンツについて、E社の請求があるときは、原則として、E社に対し配信した実績を証明する資料を開示する義務がある。 
(イ) 本コンテンツについて、原則として、その著作者である第三者やE社の指示にしたがい、著作者名を表示し、あるいは、表示しない義務がある。
(ウ) 本コンテンツについて、自社の提供するサービスを通じて音楽コンテンツを取得したユーザーが、取得したデータを不正に利用しないように、データに技術的な保護手段を講じて管理する義務がある。
(エ) 本コンテンツについて、ユーザーが不正使用したことが発覚した場合、E社の請求があるときは、原則として、配信したユーザーに関する情報をE社に開示する義務がある。

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設問13

 X社は商品の物流を担っている株式会社であるが、ソフトウェアの開発を専門とする株式会社であるY社に対して、事業に使用するシステムに組み込むソフトウェアの開発をしてほしいと考えている。
そこで、X社は、自社の事業所内の一部を作業場所として提供し、Y社の従業員でソフトウェア技術者であるZ氏に、その作業場所を利用して、システム開発およびその保守の作業にあたらせることを予定している。
次は中小企業診断士のあなたとX社の総務担当部長の会話であるが、会話中の空欄A〜Cに入る用語の組み合わせとして最も適切なものを下記の解答群から選べ。

部 長 「Z氏を推薦してきたY社に『早急に新しいシステムがほしいので、来月から始めたいね』と言ったら、すぐに【 A 】書を持ってきたよ。でもね、すべて先方の責任として、だけれども当社の指示はきちんと守るように、うちの社員と同様に使えるよう、交渉したいなぁと思うのだけど。」
あなた 「それは、【 B 】書ではないのですか。」
部 長 「ちがうね。何かまずいの。」
あなた 「Y社は派遣業者として届出や許可がある業者なのですか。」
部 長 「うーん、わからないねー。」
あなた 「Y社に届出や許可がないのであれば、Y社との契約は【 C 】などであることが必要ですから、相手方に一定の裁量を与えなければダメですよ。」
部 長 「どうして。」
あなた 「【 B 】は法律で労働者を保護するためにさまざまな規制があります。これを脱法するために【 C 】書にして対処しようとする企業があります。この契約書のタイトルは『【 A 】書』になることもあります。ただ、これらは偽装請負や偽装委託などといって、違法な行為になります。」
部 長 「ああ、聞いたことがある言葉だね。そんな悪いことをする会社に思えなかったけど。」
あなた 「【 C 】といえるためには、Z氏がその作業を遂行するにあたり、その遂行方法に関する指示その他の管理をY社が行い、Y社が自らの責任で御社に仕事完成物を納品することが必要になります。ですから、契約書もY社に管理権限があることになっているのでしょうし、実態もそうでなくてはなりません。就業場所が御社ということですと、就業規則なども他の社員と同じように守ってもらいたいでしょうし、なかなか難しそうですね。」
部 長 「それでは、このままだと当社は基本的にわざわざY社を通じてZ氏を管理しなくてはならないということなんだね。」
あなた 「そのとおりです。ですから、御社がパート社員のようにZ氏を使いたいのであれば、Y社が届出や許可を受けている派遣業者か確認しなければならないと思います。」
部 長 「適法な派遣業者か確認して、【 B 】の関係にしてもらうほうがよいということですね。」
あなた 「そのほうがコンプライアンスにかなうと思いますよ。」
【解答群】
(ア) 【A】:業務委託契約 【B】:雇用契約  【C】:準委任契約 
(イ) 【A】:業務委託契約 【B】:労働者派遣契約 【C】:請負契約
(ウ) 【A】:準委任契約 【B】:雇用契約  【C】:請負契約
(エ) 【A】:準委任契約  【B】:労働者派遣契約 【C】:業務委託契約

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設問14

 次の英文は、カリフォルニア州法人であるABC社と日本法人であるXYZ社の間で締結されたABC社が販売するソフトウェアのライセンス契約書の一条文とする。この条文の記載内容について、最も適切なものを下記の解答群から選べ。なお、「SOFTWARE」とは、本ライセンス契約のライセンスの対象となっているソフトウェア(以下「本ソフトウェア」という)を意味し、また、本契約書はもともとABC社から提案されたもので準拠法はカリフォルニア州法となっている。

 IN NO CASE WILL ABC BELIABLE FOR ANY CONSEQUENTIAL, SPECIAL INDIRECT, INCIDENTAL OR PUNITIVE DAMAGES WHATSOEVER (INCLUDING,WITHOUT LIMITATION, DAMAGES FOR LOSS OF BUSINESS PROFITS,BUSINESS INTERRUPTION, LOSS OF BUSINESS INFORMATION, LOSS OF DATA OR OTHER SUCH LOSS) ARISING OUT OF THE USE OR, INABILITY TO USE THE SOFTWARE, EVEN IF ABC HAS BEEN ADVISED OF THE POSSIBILITY OF SUCH DAMAGES. IN NO CASE WILL ABC'S AGGREGATE LIABILITY ARISING OUT OF THIS LICENSE AGREEMENT EXCEED THE ROYALTIES ACTUALLY PAID BY XYZ FOR THE SOFTWARE.

【解答群】
(ア) XYZ社が、本条に基づいてABC社に対して損害賠償を請求する場合は、本ソフトウェアをABC社に返却しなければならない。 
(イ) 本条がすべて大文字により規定されている理由は、法的な効果と関係なく、単に、ABC社のXYZ社に対する取引上の良心に基づき、目立つように記載されたものである。
(ウ) 本条の規定は、ABC社がXYZ社に提供した本ソフトウェアを原因として損害が発生した場合における、ABC社の損害賠償責任の範囲を規定している。
(エ) 本ソフトウェアの性能がABC社と合意したレベルに至っていない場合、XYZ社は、本条に基づいて、ABC社に対し実際に支払ったライセンス料を返金してもらうことができる。

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設問15

 A社は、公共のインフラを整備する事業を行うことを目的として、平成20年(2008年)9月に新機器の開発とその製造に関するコンペティション(入札)を行い、その結果、B社の製品を採用することを決定した。
 A社とB社間で製品の仕様・対価・数量の概要が合意され、A社が平成21年(2009年)4月から新機器を利用したサービス開始を予定していたため、B社は新機器の開発やA社の要求する数量を期限までに間に合わせるために、A社とB社間で開発及び製造に関する業務開発委託契約書を作成する前に、B社は前倒しで部品の調達及び新機器の開発を進めていた。このような事情をA社の担当者は把握しており、A社はB社に対して納品がサービス開始の日程に間に合うかということを何度となく確認し、B社も急ピッチで作業を行っていた。
 ところが、A社の代表者が平成21年1月にいわゆるインサイダー取引の容疑で刑事訴追を受けたことから、A社の取締役が総入れ替えして新体制となり、事業縮小の一環で当該事業も取りやめる旨を決定した。
 結局、A社とB社間では契約書の作成も行われず、B社が調達した部品や開発した機器が、A社の当該事業のために特別に発注したものだったため、他に転用することができず、B社のもとに残った。
 以上のような事情を前提に次のうち最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) A社は、B社との間で契約を締結していないことから、B社に生じた損害を一切賠償する必要はない。
(イ) A社はB社に対し、契約締結の準備段階における信義則上の注意義務に基づいて、B社が実際に当該機器の開発・製造のために調達した部品の代金の全部又はその一部を賠償しなければならない。
(ウ) A社はB社に対し、契約を締結しなかったという債務不履行責任に基づいて、実際にB社がA社に当該機器を販売した場合に得られるべき利益を賠償しなければならない。
(エ) A社はB社に対し、その代表者が刑事訴追を受けたという不法行為責任に基づいて、B社の生じた損害を賠償しなければならない。

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