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平成27年度1次試験問題:企業経営理論

設問11

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 日本企業は、中国やアセアン諸国等の新興国に向けて、大企業のみならず中小中堅企業も数多く進出している。中小中堅企業は、大手取引先の海外生産拠点への部品供給や技術支援を目的に海外進出をする場合が多い。その一方で、近年、@小売業やサービス業分野はもとより一部の製造業でも現地市場への浸透を目指す海外進出 が増加しており、成功事例も多くなっている

 他方、アジアでは自国の経済が発展するにつれて現地の有力企業が台頭し、海外企業と激しく競争する例がみられるようになった。我が国の多くの企業では高所得層のハイエンド市場に現地市場戦略の重心をシフトする例が少なくない。しかし、人口が多く、将来的に大きく成長する可能性のあるA中所得層や低所得層の潜在的な市場への浸透を図ることも重要であることを看過してはならない。

(設問1)

 文中の下線部@で指摘されている現地市場への浸透の成功事例は、業種の特性や進出国の状況などによって多様である。成功している現地対応策に関する記述として、最も不適切なものはどれか

【解答群】
(ア) 新M&Aをした企業の現地人材に自社のビジョンや戦略の理解を促し、現地市場に大幅な経営権限を与えて、現地に即した経営を展開して現地化を図る。
(イ) アジアの新興国市場の発展可能性を評価して、新興国対応のために製品の企画から生産、販売までの事業単位を編成して、現地市場への対応強化を図る。
(ウ) 現地市場への浸透や市場の拡大のスピードを速めるためには、現地法人のガバナンスを強化して、派遣した日本人だけによる生産販売活動に切り換える。
(工) 現地の市場で優位に立つのは、日本国内や海外のライバル企業であることも多いので、ライバル企業の戦略を分析して自社の現地優位性を確立することを重視する。
(オ) 新興国で小売業や飲食サービスのチェーン展開を図るために、ブランドを重視して、事業コンセプトに沿った現地でのオペレーションを実施する。

(設問2)

 文中の下線部Aで指摘するような市場への浸透について注意すべきことに関する記述として、最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 現地の大衆市場でコモディティ化が進行する製品分野では、改良型製品を次々に市場に投入するスピードを発揮できれば、価格競争を回避し得る。
(イ) 現地の大衆市場では低価格を武器とする現地企業と競合して不採算に陥りやすいので、現地対応の低価格製品を日本国内の生産で供給する体制をとる。
(ウ) 現地の大衆市場では薄利多売が有効であるが、損益分岐点が押し上げられるため、営業費用等の変動費を下げる必要がある。
(工) 現地の低所得層の市場では、商品配送に支障をもたらす道路事情や商品知識に乏しい顧客が散在しているなどのため、濃密でコストのかかる人的接触重視によるアプローチも求められることに注意しなければならない。

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設問12

 組織を情報処理システムとしてみた場合、組織デザインの手段は、情報処理の必要性と情報処理能力の観点から評価できる。組織デザインに関する記述として、最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 横断的組織の導入は、情報処理の必要性を高くするとともに、組織の情報処理能力を高くする。
(イ) 階層組織は、情報処理の必要性を高くするとともに、組織の情報処理能力を高くする。
(ウ) 規則の使用は、情報処理の必要性を減らすが、組織の情報処理能力を低くする。
(工) 自己完結的組織は、情報処理の必要性を高くするとともに、組織の情報処理能力を高くする。
(オ) 垂直的情報処理システムの導入は、情報処理の必要性を高くするが、組織の情報処理能力を低くする。

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設問13

 人間や組織は、単純化や経験則に頼って意思決定をすることが多い。こうした単純化の方法は、ヒューリスティックと呼ばれ、時には論理的な意思決定に対してバイアスをかけてしまうこともある。このようなヒューリスティックやバイアスに関する記述として、最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) ある選択肢に好意を抱いた人は、その選択肢を支持するような証拠を探し求め、データをそのように解釈する「後知恵バイアス(hindsight bias)」に陥りやすい。
(イ) 同じ業績であっても上司のそばに席を置いている部下の方が、遠くの席の部下よりも高く評価される傾向がある場合には、「確証バイアス(confirmation bias)」が作用している可能性が高い。
(ウ) 肯定的仮説検証現象が起きると、結果が出たあとにものごとを振り返った場合、他の結果も起こりえた可能性を無視してしまう「感情ヒューリスティック(affect heuristic)」に陥りやすい。
(工) 人間が意思決定する際に、「営業に適した人は社交性が必要だ」といったように、あらかじめ抱いている固定観念に合った特性を見いだそうとする「代表性ヒューリスティック(representativeness heuristic)」を利用する傾向がある。
(オ) 人間は天気の良い日には楽観的になって、株価が上昇したりするが、このような効果は「利用可能性ヒューリスティック(available heuristic)」に依拠する。

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設問14

 バーナードの理論において、組織の権威の根拠を従業員に求めたとき、上意下達のリーダーシップが維持されると考えられる理由として、最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 従業員が組織の権威を受け入れている場合、組織的なコミュニケーションに従わないことは、自らの利害を損ねることになるから。
(イ) 組織の権威を受け入れた従業員の間には、組織に反抗する非公式組織が形成されないから。
(ウ) 組織の権威を伝達するためには、ビジョンを提示し、自ら部下の規範となる行動を行い、その結果を評価することができるカリスマ的リーダーシップが求められるから。
(工) リーダーが何を命令しようが、従業員がそれに従おうとしない限り、命令は実行されないから。
(オ) リーダーシップには、単に従業員に命令を下して目的を達成する機能だけではなく、人間関係に配慮して集団凝集性を高める機能の両方が求められるから。

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設問15

 企業で働く人々は、雇用契約として規則で明文化されている処遇が改善されるかどうかにかかわらず、業務上で必要な仕事に取り組む傾向がある。このような働き方を支える人々の心理的状態に注目する概念のひとつに、心理的契約がある。心理的契約に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 心理的契約があれば、組織は明文化された雇用契約以上の業績を期待することができる。
(イ) 心理的契約は、雇用契約を結ぶ組織との間ではなく、実際の当事者間の相互期待や理解として結ばれている。
(ウ) 心理的契約は、正規社員との間には結ばれるが、非正規社員との間には結ばれない。
(工) 心理的契約は、組織との明文化された契約関係ではなく、将来に関する人と人との間での約束である。
(オ) 心理的契約は、外部の社会的・経済的環境、人事施策、リーダーシップなどとは独立に結びついた、心理的な状態を指す。

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