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平成25年度1次試験問題:企業経営理論

設問6

 @企業の価値連鎖の中の活動にどこまで携わるかによって、垂直統合の程度は異なる。垂直統合は、企業が経済的な取引を管理・統治する重要な方法であるが、企業によっては活用可能な管理・統治のための選択肢のひとつにすぎない。
 企業が経済的な取引を管理する際に実施する統治選択(governance choice)についてはオプションを持っているのが通常である。その内容を垂直統合か非垂直統合かによって大きく2つに分けた場合、非垂直統合による管理・統治の方法は、さらに逐次契約(sequential contracting)、A完備契約(complete contingent claims contracts)、スポット市場契約(spot-market contract)などに分類できる。

(設問1)
 文中の下線部@に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 企業が価値連鎖の中で携わる活動の数は一定で安定する必要があるが、価値連鎖上で高付加価値を生み出している活動は垂直統合に適している。
(イ) 企業が価値連鎖の中で携わる活動の数は一定で安定する必要があるが、清涼飲料水の生産者が独立したフランチャイジーだったボトラーと戦略的な提携を始めるように前方垂直統合を行う例もある。
(ウ) 企業が価値連鎖の中で携わる活動の数はその増減から垂直統合度は推測できないが、価値連鎖で統合されている活動に関する情報開示があれば垂直統合度のおおよその見当はつく。
(工) 自社の境界外に当該事業にかかわる価値創出活動の多くを出している企業は売上高付加価値率が低く、垂直統合度は低いレベルにある。

(設問2)
 文中の下線部Aの完備契約とスポット市場契約に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 完備契約は、契約履行の詳細なモニタリングと、取引主体が契約上の義務を果たさない場合に法的な制裁が科されるという脅威で機会主義をコントロールできる。
(イ) 完備契約は、取引主体の権利と義務を詳細に特定している契約であるが、取引において将来いくつかの異なる展開を示す可能性は想定していない。
(ウ) スポット市場契約では、複雑な契約書の作成や履行は必要がなく、多数の買い手と売り手が存在すれば機会主義の脅威が小さくなる。
(工) スポット市場契約は、市場で取引される製品やサービスの品質確認に大きなコストをかければ、機会主義的な行動の脅威は小さくなる。
(オ) スポット市場契約は、市場で取引される製品やサービスの品質が低いコストで保証され、取引の相手が限られている場合には経済的な取引を管理・統治する適切な方法である。

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設問7

 完成品メーカーと部品メーカーの取引関係に関する次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 @完成品メーカーと部品メーカーとの取引関係は、両社が属する業界の競争状況や為替相場などの影響を受けながら複雑に変化している。完成品メーカーがこれまでの取引関係を見直して、新たな部品メーカーとの取引を検討したり、あるいは完成品メーカーが外部に発注していた部品を内製化することは頻繁に起こることである。このような取引関係の変化に対応して、A部品メーカーは完成品メーカーに対して様々な手を打つことになる。

(設問1)
 文中の下線部@に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) ある部品の発注先を分散することによって、特定の部品メーカーから大量に調達する場合よりも、部品メーカー 社当たりの生産負担が軽減され、部品コストが低下する。
(イ) 外注する部品について発注先を多様化して競わせることによって、部品メーカーの忠誠心を高め、納入部品の価格を低く抑えることができる。
(ウ) 業界共通の汎用部品の場合、専門部品メーカー数社に発注を集約すれば、そのメーカーに独自能力が蓄積され、完成品メーカーの交渉力が低下する。
(工) 重要な部品について、完成品メーカーが発注先の部品メーカーを増やせば、調達部品の発注明細の標準化や取引条件の単純化が進み、調達の管理コストが下がる。
(オ) 重要な部品については複数の会社に分散発注することで、部品メーカーの競争による品質の向上が期待でき、不測の事態による供給不足にも対応できる。

(設問2)
 文中の下線部Aに関する記述として、最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 完成品メーカーからの受注量を拡大して、現行の技術に依拠した生産の範囲の経済を発揮して、完成品メーカーへの交渉力を高める。
(イ) 完成品メーカー向けの部品の特殊な生産設備への投資によって、部品の値下げ圧力や取引先の切り替えに対抗する。
(ウ) 系列部品メーカーの場合、自社の生産技術やノウハウをブラックボックス化して、完成品メーカーの製品開発に積極的に参加する機会を増やす。
(工) 自社の特殊な生産設備による部品が完成品の性能・機能にとって不可欠な役割を果たす場合、その生産能力増強については完成品メーカーからの投資負担を求めることができる。
(オ) 部品メーカーは、自社の設計による部品の生産納入を図る貸与図方式への転換を図ることで、継続的な取引を確保できるようになる。

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設問8

 製品の設計が、部品間のインターフェースが単純なモジュラー的な場合と、複雑で調整が必要な擦り合わせ的な場合とで、製品開発や技術開発の進め方が異なる。モジュラー的な製品開発や技術開発に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) モジュール部品を多様に組み合わせて得られる製品は、低価格・高機能を容易に実現でき、差別化による高い収益性を発揮できる。
(イ) モジュラー化の進展によって、自社固有の技術開発余地が狭まり、標準部品を使った製品間の競争が激化し、価格競争が激しくなる。
(ウ) モジュラー的な製品開発では、多様な部品を幅広く組み合わせるので、技術開発と製品開発が緊密に連携することが不可欠になる。
(工) モジュラー的な製品では、モジュール部品を広く外部から調達することが可能になるので、これまでの社内のモジュール部品の生産設備は埋没原価になる。
(オ) モジュラー的な製品は、技術を持たない企業の参入可能性を高めるが、先発企業はシステム統合技術で先行するので、市場シェアには大きな影響を与えない。

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設問9

 産業の空洞化が進行したり、国内市場が縮小したために、国内にとどまる中小企業は販売の低迷に直面する例が多くなっている。他方、拡大するアジアの市場を目指して海外進出する企業にも数々の問題が発生している。このような状況に直面する中小企業の対応に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) アジアの進出予定国のカントリーリスクを分析するとともに、現地人の採用は生産現場の雇用期限付きの賃労働者に限定し、現地人の幹部や現場指導者の登用は能力と適性を見て判断する。
(イ) 親企業の要請に応えて海外進出する場合、親企業の指導や支援を受けることができることを前提に、外国企業向け工業団地に工場を設け、そこに償却済みの設備を持ち込んで、単純な工程からなる少数の生産品目から開始する。
(ウ) 海外から安価な原材料や部品を輸入して販売コストの低減を図るとともに、余剰人員の合理化による賃金コストの削減を図り、収益の改善を目指す。
(工) 特定の工業部品の製造販売に特化していたために、その部品の売上が低迷した中小企業は、生産設備をすべて売却して、アジアの新興国で評判の汎用商品を輸入して流通市場に参入するという成長戦略を展開する。

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設問10

 次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
中小企業が同族経営である場合、戦略的問題に関する意思決定は創業者と創業者一族が中心となり、外部の利害関係者の影響力は限定的であることが多い。老舗と呼ばれる中小企業B社は、代々受け継ぐ製法や技法による生産品を中心にリピーターとなる顧客の支持を得ている。株式上場はしていないがその検討をしており、諸外国のガバナンス機構も調査している。
 B 社は、新しい品目や製造プロセスの改良に関して、外部から技術導入や人材の中途採用を実施してきたが、創業者以来の価値観や行動規範の理解を第一に求め、創業者の直系の現社長と役員の過半数を占める創業者一族の同族経営として従業員との一体感を重視してきた。危機的な状況も乗り切ってきたが、最近では、過去に危機からB社を救った伝統的な考え方に基づく事業戦略の策定がうまくいかなくなってきた。

(設問1)
 老舗の中小企業B社の組織文化に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 創業以来の歴史では、創業者の選択した戦略的な問題の解決法が効果を発揮してきたため、その解決法が常套手段として繰り返し用いられて組み込まれている。
(イ) 創業以来の歴史において、外部から導入した製造プロセスの改良技術に基づき、技術関係部門同士の連携による問題解決が定型化されている。
(ウ) 創業以来の歴史において、外部から招いた人材のほとんどは意思決定プロセスに同化し、創業者一族の戦略を十分に理解するようになった。
(工) 創業者とその一族の経験した過去の事業戦略の成功が、現在の戦略上の失策の原因になっているのに、誰も認めようとしない。
(オ) 組織として確立した問題解決法は、創業者の意向を大きく反映したものであり、特定の問題解決や特別任務の遂行への対処が求められた創業期に生まれている。

(設問2)
 文中の下線部に関して、コーポレートガバナンスとその改革に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) B社のような同族経営では、株式公開によって事業規模の拡大とともに株式の分散化が生じ、創業者一族の影響力が低下し、機関投資家などの比重が高まることを懸念する場合が多い。
(イ) アメリカ型のガバナンスにならった改革では、社長の権限の分散と牽制が鍵であり、指名委員会、報酬委員会、監査委員会の設置などが企図されている。
(ウ) 多くの株主が株式を手放すことで経営者責任を問い、経営者を交代へ追い込むウォールストリートルールは機関投資家が多くの株を所有する現実の下ではほとんど期待できない。
(工) 現在の会社法の委員会設置会社制度で業務遂行を委ねられる執行役員は、代表取締役の指揮下で業務執行の一部を担当する。
(オ) ドイツ型のガバナンスでは、株主総会で選出された株主と労働者の代表からなる監査役会が最高決定機関として取締役の任免と監督を行うが、形式的には株主と労働者が主権を分かち合っている。

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