平成20年度1次試験解答:経営法務
設問11
解答:イ
(ア) | A社が]について有する著作権のひとつである翻案権を根拠に、 B社に対してYの販売差し止めの請求をする。 →○:ソフトウェアの改編は翻案に該当する。翻案とは著作物に新たな創作行為を加えて二次著作物を創作することである。B社は著作者であるA社に無断でソフトウエアXを改変しコピーして一般消費者に販売しているので翻案権侵害になる。 |
(イ) | A社がYについて有する著作権のひとつである複製権を根拠に, B社に対して損害賠償の請求をする。 →×:複製権とは、著作物を有形的に再生する権利、簡単にいうと著作物のコピーを作成する権利である。B社はソフトウエアXを改変し、コピーしているので複製権侵害を根拠として損害賠償の請求をすることは困難である。 |
(ウ) | B社の秘密情報に関する秘密保持義務違反という債務不履行を根拠に、B社に対して損害賠償の請求をする。 →×:秘密保持に関する特約があったわけではないので、秘密保持義務違反という債務不履行を根拠に、B社に対して損害賠償の請求をすることは困難である。また仮に秘密保持に関する特約があったとしても、契約時から7年経過しているので、5年の商事消滅時効によって消滅していると考えられる。 |
(エ) | ソフトウェアの開発委託については、著作権法の規定により、その著作権が発注者(この場合はB社)に帰属することとされているので、 B社に対してなんら請求することはできない。 →×:ソフトウェアの開発委託については、著作権法の規定により、その著作権が発注者(この場合はB社)に帰属するという規定は存在しない。 |
設問12
解答:ア
(ア) | 支払期限を、従来は納品から30日後現金払いだったものを納品から45日後に定める →×:下請代金支払遅延等防止法では、物品等を受領した日(役務提供委託の場合は、役務が提供された日)から起算して、60日以内に定めた支払期日までに下請代金を全額支払わなければならないと定められている。乙社は45日後に変更したものの、60日以内であるので、下請代金支払遅延等防止法に違反する行為ではない。 |
(イ) | 正当な理由がないのに発注した物品の納期を延期する →○:受領拒否の禁止に該当する。下請代金支払遅延等防止法では、親事業者が、下請事業者に責任がないのに、注文した物品等の受領を拒んでならない。よって、下請代金支払遅延等防止法に違反する行為である。 |
(ウ) | 大量発注の割引価格で見積もりさせ、その単価で少量を発注する →○:買いたたきの禁止に該当する。下請代金支払遅延等防止法では、親事業者が下請代金を決定するときに、類似品等の価格又は市価に比べて、著しく低い額を不当に定めてはならない。よって、下請代金支払遅延等防止法に違反する行為である。 |
(エ) | 発注後直ちに発注内容を記載した書面の交付をしない →○:書面の交付の義務に違反する。親事業者は、発注に際して、直ちに、給付の内容、給付を受領する期日等を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。よって、下請代金支払遅延等防止法に違反する行為である。 |
設問13
解答:エ
設問の条約を和訳すると次のようになる。
第○○条
本契約は日本法に準拠し、日本法に従って解釈されるものとする。また本契約当事者間に生じたすべての紛争に関しては東京地方裁判所が専属管轄裁判所となるものとする。
(ア) | 本条項は、外国企業と第三者の間で日本国内において紛争が起きた場合の対応の仕方について規定されている。 →×:第三者の間で日本国内において紛争が起きた場合の対応の仕方についての記述はない。 |
(イ) | 本条項は、この契約において準拠すべき法についてのみ規定されたものであり、日本法を基準としている。 →×:準拠すべき法を日本にしているのは正しいが、それのみ規定したものではない。 |
(ウ) | 本条項は、当事者間で紛争となった場合の日本法に基づく仲裁に関する手続きについて触れられている。 →×:仲裁に関する手続きについて触れられていない。 |
(エ) | 本条項は、当事者間に紛争が発生し、訴訟を提起する場合、東京地方裁判所を専属管轄裁判所としている。 →○:正しい |
設問14
解答:ウ
プロバイダ責任制限法とは、インターネットや携帯電話の掲示板などで誹謗中傷を受けたり、個人情報を掲載されて、個人の権利が侵害されるなどの事案が発生した場合、プロバイダ事業者や掲示板管理者などに対して、これを削除するよう要請しますが、事業者側がこれらを削除したことについて、権利者からの損害賠償の責任を免れるというものである。
また、権利を侵害する情報を発信した者の、情報の開示請求ができることも規定している。
(ア) | 権利者は書き込みを行った発信者情報の開示をプロバイダに請求できるが、開示請求した権利者の「権利が侵害されたことが明らかであるとき」に限られ、明らかかどうかについての一次的な判断はプロバイダに委ねられている。 |
(イ) | 発信者の「表現の自由」を著しく侵害したり、誤って発信者情報を開示してしまう可能性などがあり、プロバイダには憤重な判断が求められるため、プロバイダに故意もしくは重大な過失がなければ、開示請求に応じなくても賠償責任を負わないことを定めている。 →○;特定電気通信役務提供者が、開示請求に応じないことにより生じた損害については自己が発信者である場合を除いては、故意または重大な過失がある場合を除いては原則として損害賠償責任を負わない。 |
(ウ) | プロバイダには自己が管理するサイトについて常時監視義務が規定され、権利者から通知があった情報については、自己の管理するサイト内において違法な侵害行為があるか否かについて、常に監視していなければならないとされている。 →×:プロバイダ等が事故の管理するサイトについて常時監視義務は設けられていない。 |
(エ) | プロバイダは,権利を侵害されたとする被害者から書き込み内容の削除要請があったとき、要請があったことを書き込みした人物に対して伝えたにもかかわらず7日以内に返事がない場合には、削除などの「送信防止措置」をとることができる。 →○:プロバイダは、被害者から理由を示して侵害情報の削除要件を受けた場合、その情報の発信者に対して送信防止措置を講ずることに同意するかを照会し、7日を経過しても発信者からの同意の申し出がないときは、当該情報の削除などの送信防止措置を講ずることができる。 |
設問15
解答:ウ
(ア) | B社がA社に対する売掛金債務の履行をしない場合の強制執行について認諾した旨の記載がある公正証書を作成してもらう。 |
(イ) | B社が第三者に対して有する売掛金債権について、A社とB社との間で集合債権譲渡担保設定契約を締結し、これについて債権譲渡登記をする。 →○:集合債権譲渡担保設定契約により、B社の持っている債権をまとめて担保とすることができる。 |
(ウ) | C個人に無期限かつ金額の上限なくA社のB杜に対するすべての売掛金債権について口頭で保証してもらう。 →×:補償契約は書面でする必要があり、口頭で契約をしても無効である。 |
(エ) |
既に存在するA社のB社に対するすべての売掛金債権について、新たに書面でC個人の連帯保証をしてもらう。 →○:C個人に十分な資力がある場合、連帯保証をしてもらうことで、債権回収と確実になる。 |