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平成20年度1次試験解答:経営法務

設問1

解答:ウ

@ 役員(会社法第329条第1項)に該当するか否か。
→○:日本の会社法における役員は、取締役・会計参与・監査役を指す(329条)。
A 株主総会への出席義務があるかないか。
→○:取締役、会計参与、 監査役及び執行役は 株主総会に出席義務がある。
▼会社法 第314条
取締役、会計参与、監査役及び執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなけれ ばならない。ただし、当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他 正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は、この限りでない。
B 取締役会への出席義務があるかないか。
→×:
・ 会計参与は、取締役会への出席義務がある。
▼会社法 第376条 第1項 
締役会設置会社の会計参与(会計参与が監査法人又は税理士法人である場合にあっては、その職務を行うべき社員。以下この条において同じ。)は、第436条第3項、第441条第3項又は第444条第5項の承認をする取締役会に出席しなければならない。この場合において、会計参与は、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。

監査役は、 取締役会への出席義務がある。
▼会社法 第383条 第1項 
監査役は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。ただし、監査役が二人以上ある場合において、第373条第1項の規定による特別取締役による議決の定めがあるときは、監査役の互選によって、監査役の中から特に同条第二項の取締役会に出席する監査役を定めることができる。

・ 監査役 (会計監査に限定)は、取締役会への出席義務はない。あくまでも会計監査にのみ限定されているので、業務監査権限はなく、取締役会で意見を述べる必要がないからである。
C 監査役会の構成員となることが可能か否か。
→○: 監査役会は、すべての監査役で組織する必要がある。 すなわち会計参与は監査役会の構成員になることは不可能である。また監査役会を置く場合には、監査役 (会計監査に限定)を設置することはできないので、監査役会の構成員となることは不可能である。
▼会社法 第390条 第1項 
監査役会は、すべての監査役で組織する。

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設問2

解答:ア

(ア)  あなただけがお父様の負債を相続しないようにするには、家庭裁判所で相続放棄の手続をとらなければいけません。相続放棄の期間は、原則として、相続開始があったことを知ってから3か月以内ですから、急いだ方がよいと思います。
→○:父親の死亡によって相続が生じ、父親の負債を含む権利義務の包括承継が生じる。したがって負債を相続しないようにするには、3か月以内に相続放棄の手続きをとる必要がある。
(イ)  お父様がお亡くなりになってから、 100日以内に家庭裁判所で限定承認の手続をとれば、資産があったときだけ返済すればよいことになりますから、他の相続人の方が反対しても、お一人でその手続をとられた方がよいでしょう。
→×:限定承認とは、相続人が遺産を相続するときに相続財産を責任の限度として相続することである。相続財産をもって負債を弁済した後、余りが出ればそれを相続できる。この制度は、相続開始があったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所で手続きをとる必要がある。また全員で共同して行わなければならない。
(ウ)  現時点で、あなたはお父様の事業には何も関与されていませんから、お父様の負債を負うことは法律上あり得ません。どうしても、気になるのであれば、念のため、お父様の負債だけ放棄する手続を家庭裁判所でとればよいと思います。
→×:相続人であれば、父親の事業の関与の有無に関わらず相続の対象となる(包括承継、一般承継)。
(エ)  相続人全員で遺産分割協議を行って、ご長男が全部相続することにすれば、法律上負債も当然にご長男が相続されたことになって、あなたがお父様の負債を負うことはありませんので、これからゆっくり遺産分割協議を行えばよいと思います。
→×:遺産分割協議を行うことで、相続人は遺産を分割することができる。しかし債務は遺産分割の対象とならないので負債は各相続人に応じて分割して相続される
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設問3

解答:ウ

 取締役会設置会社では、計算書類等を定時株主総会の日の2週間前の日に備え置かなければならない。
よって、C社の定時株主総会は6月26日(金)であり、その2週間前の6月12日(金)から備え置かなければならない。

▼会社法 第442条  
株式会社は、次の各号に掲げるもの(以下この条において「計算書類等」という。)を、当該各号に定める期間、その本店に備え置かなければならない。
1 各事業年度に係る計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書(第四百三十六条第一項又は第二項の規定の適用がある場合にあっては、監査報告又は会計監査報告を含む。) 定時株主総会の日の一週間(取締役会設置会社にあっては、二週間)前の日(第三百十九条第一項の場合にあっては、同項の提案があった日)から五年間
2 臨時計算書類(前条第二項の規定の適用がある場合にあっては、監査報告又は会計監査報告を含む。) 臨時計算書類を作成した日から五年間

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設問4

解答:設問1:ア 設問2:イ

事業譲渡会社分割に関する問題である。

(設問1)

(ア)  不動産業を]株式会社に残して、会社分割の方法によって、本業を行う子会社を作ります。それから、その子会社の株式をY株式会社に譲渡します。
→○:新設分割のことである。]株式会社の100%子会社の株式を譲り受けることにより、Y会社はX会社の事業を承継することができる。
(イ)  本業を]株式会社に残して、会社分割の方法によって,不動産業を行う子会社を作ります。その子会社設立と同時に、その子会社の株式全部をY株式会社に割り当てます。
→×:甲社長の要望である不動産の賃貸業は残しておきたいという要望に反している。
(ウ)  本業を]株式会社に残して、会社分割の方法によって、不動産業を行う子会社を作ります。それから、 X株式会社の株式をY株式会社に譲渡します。
→×:]株式会社と不動産業を行う子会社が親子関係になり、親会社である X株式会社の株式をY株式会社に譲渡することによって不動産業を行う子会社もY株式会社の支配下となってしまう。すなわち、甲社長の要望である不動産の賃貸業は残しておきたいという要望に反している。
(エ)  本業を分割して、当然にY株式会社の一部門とすることができますから、その結果,甲社長もY株式会社の株主となることができます。
→×:会社分割の対価としてY社株式が対して交付されるが、それはX株式会社に対してである。すなわち、甲社長がY株式会社の株主となるわけではない。

(設問2)

(ア)  事業譲渡の場合は、金銭が対価でなければなりませんが、会社分割の場合は、法律上、Y株式会社の株式が対価でなければなりません。 Y株式会社に とっては、会社分割の方が、資金手当が必要でない点がメリットとなります。
→×:会社分割の場合の対価は、対価は金銭、株式、社債、新株予約権等でよく、必ずしも株式に限定されない。
(イ)  事業譲渡の場合は、譲渡した部分は、 Y株式会社の一部として組み込まれますが、会社分割の場合は、法人格を保ったまま、会社ごと、Y株式会社の子会社になります。
→○:事業譲渡の場合は、譲渡された事業はY株式会社に移転する。会社分割の場合は、新設子会社は、法人格を保ったまま、会社ごと、Y株式会社の子会社になる。
(ウ)  事業譲渡の場合は、譲渡の対価は当然にY株式会社から甲社長に支払われますが、会社分割の場合は、譲渡の対価は当然にY株式会社から]株式会社に支払われることになります。
→×:事業譲渡の対価は、Y株式会社から]株式会社に支払われる。
(エ)  事業譲渡の場合は、取引先も従業員も当然にY株式会社に引き継がれますが、会社分割の場合は、取引先や従業員から個別の同意が必要となります。
→×:事業譲渡の場合は、それぞれ個別の同意による移転手続きが必要となる。

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設問5

解答:設問1:ア 設問2:エ

(設問1)

(ア) 遺留分
→○:遺留分とは法定相続人が最低限持っていいる相続財産の権利である。遺言書を作成すれば、法定相続人以外の者に全財産を遺贈することもできる。しかし、それでは残された家族が住む家を失い、生活もできなくなるという事態も起こり得る。こうした、あまりにも相続人に不利益な事態を防ぐため、民法では、遺産の一定割合の取得を相続人に保証する遺留分という制度が規定されている。
(イ) 過剰遺言の取消
→×:このような制度は存在しない
(ウ) 寄与分
→×:寄与分とは、相続人の中に被相続人(乙社長)の財産の維持・増加に特別の寄与(貢献すること)した人がいる場合に、その貢献度に応じて相続分を上乗せする制度である。
(エ) 特別受益
→×:特別受益とは、相続人の中に被相続人(乙社長)から特別の援助を受けた人がいる場合(商売の資金援助、マイホーム資金など)に、その度合いに応じて相続分を減ずる制度である。

(設問2)
 乙社長には、長男・次男、長女の3人の法定相続人がいる。
 遺留分の割合は直系尊属(直系の尊属。父母・祖父母・曾祖父母など。)のみが相続人である時には、被相続人(乙社長)の財産の3分の1、それ以外の場合には、被相続人(乙社長)の財産の2分の1が分けられる。なお、直系尊属が相続人になれる場合は、被相続人に子も孫もいないときだけである。

 すなわち、遺留分は被相続人(乙社長)の財産の2分の1を嫡出子3人で分けるので、6分の1ずつになる。

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