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平成15年度1次試験解答:経営法務

設問21

解答:ア

減資に関する問題である。

(ア) 資本の減少手続において、会社債権者に対し、資本の減少に異議がある場合には一定の期間内にこれを述べるべき旨等を官報に公告し、かつ、知れたる債権者に各別に通知するといった、いわゆる債権者保護の手続が必要である。
→○:資本の減少は、債権者の利害に重大な影響があるので債権者保護手続きが必要である。
(イ) 資本の減少を行う場合、会社財産の払戻を行う有償減資と会社財産が減少しない無償減資の方法があるが、欠損填補のための資本減少においては、有償減資の方法が必要である。
→×:欠損填補とは、欠損金(剰余金のマイナス)がある場合に、資本準備金又は利益準備金(法定準備金)などを減少させ、それを欠損金(剰余金のマイナス)に充当することで、欠損金の解消をはかることである。欠損填補のための資本減少においては無償減資の方法が必要である。
(ウ) 資本の減少を行う場合には、株式消却を行う必要がある。
→×:株式数の減少をともなわず資本の額のみを減少する方法や株式併合などの手段もあるため、必ずしも株式消却を行う必要はない。

(エ) 資本の減少を行う場合には、定時株主総会の決議が必要である。
→×:資本減少には、株主総会の特別決議が必要である。
会社法施行により、次の場合には、普通決議で資本を減少することも可能になった。
@定時株主総会において資本減少決議を行う場合
A資本金の減少を行った後に分配可能額が生じない場合(欠損填補)

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設問22

解答:設問1:イ 設問2:エ

(設問1)
合併に関する問題である。
【A】:法定監査とは、会社法や証券取引法等の法律によって企業に義務づけられている監査であるが合併に際して行なわれるものではない。デューディリジェンス(買収監査)とは、企業や投資家が投資対象の価値を正確に把握するために、その実体を網羅的に調査することである。
【B】:会社が吸収合併する場合には、当事会社の株主総会において、合併契約書の承認を受けなければならない。(会社法第748条)
【C】:合併契約書には合併比率に関する事項を記載しなければならない。
【D】:適格合併とは、税法で定める一定の要件を満たす合併のことで、被合併会社の資産・負債を簿価で引き継げる、消滅会社の繰越欠損金を引き継げるといった税務上のメリットを受けることができる制度のことである。すなわち当該合併が適格合併に該当するか否かを調査する必要がある。

(設問2)
会社分割に関する問題である。

(ア) 会社の営業の全部又は一部を設立する会社に承継する分割を吸収分割という。
→×:会社の営業の全部又は一部を設立する会社に承継する分割を新設分割という。
(イ) 吸収分割において、営業を承継する会社は、営業を分割する会社に株式を割当てなければならない。
→×:吸収分割に際しての対価は株式だけではない。営業を分割する会社に株式を割当てる方法(物的分割)以外にも、その会社の株主に割当てる方法(人的分割)などがある。
会社法施行後、会社分割は物的分割のみとなる。
(ウ) 吸収分割における分割契約書には、分割会社の定款を記載しなければならない。
→×:吸収分割をする場合には分割契約書を作成しなければならない。しかし吸収分割の場合には、必ずしも定款を記載する必要はない。ただし、新設分割の場合には分割計画書に分割会社の定款を記載しなければならない。
(エ) 新設分割を行うためには分割計画書を作り株主総会の承認を受けなければならない。
→○:新設分割の場合は契約相手方が存在しないので分割契約書ではなく、分割計画書を作り株主総会の承認を受けなければならない。

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設問23

解答:設問1:イ 設問2:ウ

社債に関する問題である。

(設問1)
(ア) 証券化
→○:売掛債権の証券化により、本来の回収期間よりも早期に資金を回収できるようになる。
(イ) 手形の発行
→×:手形の発行は、発行者の信用を利用して資金繰りを楽にするために行われるものである。手形は支払いを先に延ばすことはできるが、資金回収の早期化の手段とはなりえない。
(ウ) 得意先に対する回収条件の変更要請
→○:得意先に対する回収条件を有利に変更することにより、早期資金回収が可能になる。
(エ) ファクタリングの活用
→○:ファクタリングとは、他人が有する売掛債権を買い取って、その債権の回収を行う金融サービスのことである。 ファクタリングを活用することで、早期に資金化することが可能になる。

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(設問2)
少人数私募債制度の要件はつぎのものである。

  1. 縁故者(社債発行会社の役員及び従業員、その親族及び知人並びに取引先企業等)に限定して直接募集したものである
  2. 社債の購入者に機関投資家がいない
  3. 社債権者が50人未満
  4. 一口の最低社債発行額が発行総額の50分の1より大きい
  5. 募集総額が1億円未満であること
(ア) 私募債であるためには、社債の購入者は役員・従業員等の個人縁故者に限定する必要がある。
→×:社債の購入者は役員・従業員等の個人縁故者だけでなく、取引先企業等の法人も社債権者になることができる
(イ) 社債権者が金融機関等の適格機関投資家を含めて50名未満の場合は、目論見書を作成する必要はない。
→×:社債権者が金融機関等の適格機関投資家のみの場合はプロ私募となるため、目論見書を作成する必要はない。しかし設問では、適格機関投資家を含めてなので、目論見書を作成する必要がある
(ウ) 社債発行口数が50以上の場合は、商法にいう社債管理会社を選定する必要がある。
→○:社債発行口数が50以上の場合は、社債管理会社を置かなければならない。
(エ) 証券取引法上、社債の発行価額が5億円以上の募集又は売出しの場合には有価証券届出書を財務局長等に提出しなければならない。
→×:少人数私募債制度の要件5の内容と異なる。すなわち社債の発行価額が1億円以上の場合には、有価証券届出書を財務局長等に提出しなければならない。

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設問24

解答:設問1:イ 設問2:エ

(設問1)
(ア) 株式取扱銀行に登記簿謄本及び印鑑証明書等を提出して口座を開設する。
→○:株式取扱銀行に登記簿謄本及び印鑑証明書等を提出して口座を開設することは、株式会社の設立の準備として適切である。
(イ) 設立登記の申請を法務局にした後に、定款を作成する。
→×:定款(ていかん)とは、 社団法人(会社・公益法人・協同組合等)の目的・組織・活動・構成員・業務執行などについての基本規則、また、それを記した書面・記録である。設立登記は会社設立の最終段階の手続きであるので、その前に定款は作成されていなければならない
(ウ) 設立登記の申請を法務局にした後に、登記簿謄本及び印鑑証明書の交付申請をする。
→○:会社の設立登記の申請を法務局にした後に、登記簿謄本及び印鑑証明書の交付申請をすることは、通常なされることである。
(エ) 設立登記の申請を法務局にする前に、類似商号の調査をしなければならない。
→○:類似商号の調査をした後に設立登記の申請を法務局にすることは、通常なされることである。 これは類似する商号が存在するのに登記申請をした場合には、その会社の設立の当期が却下されてしまう為である。
(設問2)
 TLO法(大学等技術移転法)とは、産業活性化・学術進展のため、大学の技術や研究成果を民間企業へ移転する仲介役となる承認TLO(技術移転機関)の活動を国が支援するものである。
(ア) TLO法とは、大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律(略して大学等技術移転促進法)のことである。
→○:TLO法(大学等技術移転促進法)とは、正式には「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律(平成10年5月6日法律第52号)」 という。
(イ) TLOが得た利益は、研究者のみならず大学等に還元されて、さらなる研究資金として活用される。
→○:TLO が得た利益は、大学等の研究者のみならず大学等に還元されて、さらなる研究資金として活用される。
(ウ) TLO法の目的は、大学等から生じた研究成果の産業界への移転を促進し、産業技術の向上及び新規産業の創出を図るとともに、大学等における研究活動の活性化を図ることにある。
→○:正しい。
▼大学等技術移転促進法 第1条
(目的)
大学や国の試験研究機関等における技術に関する研究成果を、TLOを介して民間事業者への効率的な技術移転を促進することにより、新たな事業分野の開拓、産業技術の向上、大学等の研究活動の活性化を図り、我が国の産業構造の転換の円滑化、国民経済の健全な発展、学術の進展を目的としています。
(エ) 承認TLO が出願する特許について、特許料及び手数料の全額が免除される政策支援措置がある。
→×:1〜3年の間、特許料を軽減もしくは免除される。しかし、全額免除されるわけではない
▼産業活力再生特別措置法第32条
(特許料の特例)
第三十二条  特許庁長官は、大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律 (平成十年法律第五十二号)第四条第一項 の承認を受けた者(同法第五条第一項 の変更の承認を受けた者を含む。次条及び附則第四条において「承認事業者」という。)が同法第二条第一項 の特定大学技術移転事業(次条及び附則第四条において「特定大学技術移転事業」という。)を実施するときは、政令で定めるところにより、特許法 (昭和三十四年法律第百二十一号)第百七条第一項 の規定による第一年から第三年までの各年分の特許料を軽減し若しくは免除し、又はその納付を猶予することができる。

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