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平成18年度1次試験問題:企業経営理論

設問1

 企業の競争状況に関する記述として最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 一般に産業の成長が低下すると、その産業に属する企業の間の市場シェアをめぐる競争は激しくなる。
(イ) 現有の生産設備をフル稼働させようとする同業者が多い産業において、需要の価格弾力性が低下すると、価格競争は緩和する。
(ウ) 固定費や在庫費用が高い産業では、企業間の競争は概して緩やかになり、価格も安定化しやすい。
(工) 産業内で製品の差別化が難しくなるほど、企業間の競争は綬やかになる。
(オ) 同業者の数が少なくなりながらも、圧倒的な市場シェアをもつ企業がないような産業では、企業間の競争は緩やかになりやすい。

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設問2

 企業は、しばしば新規事業分野への進出を図ろうとする。その際に見られる競争上の特徴や企業の行動に関する記述として最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 主力事業との関連が薄い事業分野への多角化は、新規技術や異質なマーケット情報をもたらすので、主力事業とのシナジー効果が高まり、収益力は強化される。
(イ) 主力事業と無関係な新規事業分野に進出すればするほど、企業規模が拡大し、スケールメリットを生かした市場支配力を発揮して、高い収益性と成長性を獲得できる。
(ウ) 主力事業に関連する事業分野を中心に多角化すると、主力事業の市場において自社の他事業との競合が起こるので、企業の収益性は低下しやすい。
(工) 主力事業で競合する企業は、互いにしばしば類似の多角化行動をとるので、業界内の既存の競争関係が維持されやすい。
(オ) 主力事業分野に特化すればその分野の固有の技術が深まり、生産能力が強化されるので、それらを生かした新規事業分野への進出が容易になる。

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設問3

 次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
 @デジタル技術の進展にともない、カメラの主流はフイルムカメラからデジタルカメラへとシフトしている。デジタルカメラの中身をみると、レンズや焦点制御などのカメラ部品にも増して、電荷結合素子(CCD)、液晶モニター、信号処理等のLSlなどのA電子部品が主要なコンポーネントになっている。そして、主要なコンポーネントそれぞれに有力な供給業者が存在するが、Bそれら部品の供給業者や有力電子機器メーカーは、同時に、デジタルカメラの生産者として
デジタルカメラ業界に参入する例が少なくない。
デジタル製品では、鍵となる電子部品を調達でき組立技術さえあれば、異業種からでも参入できる余地が大きいからである。また、電子部品の標準化が進むにつれてデジタルカメラは差別化が難しい商品になりつつあることも注目すべき点である。しかし、C既存のカメラメーカーの製品の中には、フイルムカメラで長年培ってきたカメラや写真に関する独自の技術やノウハウなどの強みを生かして差別化を図り、強い市場地位を占めるものが登場してきている。


(設問1)
 文中の下線部@のように、デジタル技術や情報技術などエレクトロニクス技術のスピードの速い革新を受けて、新規製品が市場シェアを一挙に占有するような現象がしばしば見られる。このような場合、既存の企業の不適切な戦略行動は、ただちに業績を悪化させかねない。このような状況で、最も不適切な戦略になるのはどれか。

【解答群】
(ア) OEMを視野に入れた製品供給体制を敷き、当該製品の技術標準を確立しつつ、自社のブランドカを生かしたマーケテイング戦略に重点を置く。
(イ) 研究開発に経常資源を重点的に配分して、すべての部品やキーコンポーネントを自社生産に切り替えて、既存製品のシェア拡大に特化する。
(ウ) 国内競争力を失いつつある製品について、海外生産や海外発注に切り替え、海外からの安価な製品を大量供給しながらシェアの回復を図る。
(工) 参入の遅れた技術については外部からの部材供給に切り替え、得意とする現有技術の精緻化を図りつつ、製品供給に取り組む。
(オ) 社内技術やノウハウの囲い込みや漏出対策をとりながら、生産能力を強化するとともに、新製品開発を急ぎ、自社製品の競争力を高める。


(設問2)
 先端的な技術をめぐって競争を繰り広げる分野では、文中の下線部Aのように、さまざまな電子部品が供給される仕組みが存在する。このような部品等の供給を行う企業に関する説明として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 工場を持たずに主として製品の企画や設計に専念する企業をファブレス企業と呼んでいる。
(イ) 顧客の設計図をもとに電子部品等の製造を請け負う企業をファウンドリー企業と呼んでいる。
(ウ) 電子部品メーカーからの部品供給網を築いて電子部品を販売する流通業者をEMS企業と呼んでいる。
(工) 発注元のブランドや仕様に基づいて電子部品等を設計し製造する企業をODM企業と呼んでいる。

(設問3)
 文中の下線部Bのような異業種からの新規参入の結果・競争環境は大きく変わることになる。そのような変化や企業の戦略行動に関する説明として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 新規参入企業が国際的な水平分業を活用して、標準化したキーデバイスを外部調達して開発した製品を大量供給しながら参入すると価格競争が激化しやすい。
(イ) 成長産業で技術仕様が不断に変化すると、標準部材市場が崩壊するので、新規参入企業は新製品の開発が不可能になり、撤退せざるを得なくなる。
(ウ) 先発企業は、部材間の適合性を確保した製品設計を図り、設計技術力による差別化によって、参入企業のキャッチアップのタイムラグを生み出して参入企業の追撃をかわす。
(工) 先発企業は、部材の適合的なデザインと生産技術の最適ミックスによりキーコンポーネントの独創性を強め、製品のコモディティー化を回避しようとする。
(オ) 多数の企業が類似技術で参入すると、先発企業は製品開発コストを十分回収できない横並びの価格競争に陥ることになる。

(設問4)
 文中の下線部Cのように、既存のカメラメーカーが強い市場地位を占めることを可能にするような状況が存在する。その説明として、 最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 高画質写真をデジタルカメラで実現するには、画素数やカラー画面の回路設計能力が重要であるが、それらの能力は既存のカメラメーカーがもともと重視しており、一部の既存のカメラメーカーは電子技術化で先行し得た。
(イ) デジタルカメラが普及するにつれて、高級カメラへのニーズが高まり、既存のカメラメーカーが構築してきたこの分野のブランド力が改めて評価されるようになりつつある。
(ウ) デジタルカメラの商品サイクルが短縮化するにつれて、多様な自社部品の在庫を豊富に持つ電子機器メーカーは、既存の部品在庫を生かして技術的に先端的な新製品を次々と開発したが、価格競争に巻き込まれ、差別化製品を生み出し得ないでいる。
(工) 電子機器メーカーの画像処理技術は、映像機器間での画質の狙い手軽なデジタル画像交換を売りにしていたため、一部の電子機器メーカーは高画質なデジタルカメラへの進出が遅れた。

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設問4

 生産が拡大し組織が大きくなると、一般に規模の経済が得られるが、そのことによって生じる現象はさまざまである。規模の経済をめぐる現象の説明として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 会社の組織規模が大きくなるにつれて、規則や手続きを設けて組織の管理の複雑性を小さくすることが試みられることが多い。
(イ) 規模が拡大するにつれて、生産現場で働く従業員の数が増大し、これまで生産に携わっていた従業員のコミットメントや従業員への人間的配慮が弱くなる傾向がみられる。
(ウ) 規模の経済が実硯されると、その後の規模の拡大は生産の非効率を招くので、新規の設備投資は見送らなければならない。
(工) 最適生産規模を超えると、一般的に現有生産技術の生産性が低下し生産コストが上昇する。
(オ) 単一大規模設備に異なる技術を混在させると効率が低下することがあるので、新規技術は規模の経済を阻害することのない制御可能なものに限定されがちである。

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設問5

 競争優位に結びつく経営資源に関する説明として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) ある資源の供給が不足している状況で、その入手可能性をもつ企業は、強い交渉力やその資源を活用した競争優位を構築できる。
(イ) 企業に固有で外部調達が難しい情報的経営資源は有力な差別化要因であるが、近年ではインターネットを通じて容易にそのすべてを外部に移転したり、外部から入手できるようになったので、インターネット上での情報公開や電子メールの使用について社内ルールを厳しくすることが重要になっている。
(ウ) 顧客ニーズは、自社に独自な経営資源を分析するとともに、顧客の選好、競合品や代替財などの選択肢、関連財や補完財の供給などを考慮することによって充足される。
(工) 時間をかけて形成され獲得される資源は、企業の競争優位の源泉になることが多いが、技術革新や市場の変化のスピードが速い場合は企業の戦略不適合のリスクを高める。
(オ) 製品に用いられる特殊素材や独創的な生産方式など、物理的に複製困難な資源や重要な技術に関する特許をもつ企業に対抗するためには、代替的な技術や製品の開発が必要になる。

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設問6

 ライバルに勝つことが戦略の唯一の日的ではない。むしろライバルとの競争を回避し、自社独自の市場地位を強化して収益を獲得することが重要である。
 そのための方法として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 限られた市場規模の業界に圧倒的な規模の新鋭設備を建設し、市場を占有して市場の魅力を削ぐ。
(イ) 競争優位の源泉となる生産工程をブラックボックス化し、コストと品質の強みを守る。
(ウ) 戦略的連携やM&Aによって、鍵となる技術や資源を保有する他社を自社の影響下に囲い込む。
(工) 低価格による競争力を武器に市場シェアを高めながら、高級ブランド・イメージを構築し、独自な市場地位を確立する。
(オ) 特許申請や社内ノウハウの管理を厳重に行って自社技術の漏洩を防いで、他社の参入を阻止する。

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設問7

 経営計画を策定し、それを遂行し、成果を検証し、次期の経営計画に生かすというPDC(Plan→Do→Check)サイクルは、実際にはこの順番通りにうまく回らないことが多い。最近では、PDCサイクルがうまく回らない理由を明らかにし、そのことを前提にした経営計画のあり方が検討されるようになったが、このような状況に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 計画通りに物事が運ばない事態に直面すると、計画に見落としや情報不足があったと考え、前よりも精緻な分析に基づく計画を策定するという悪循環に陥ることが問題になってきた。
(イ) 計画にない想定外の試みや新機軸が現場から創発する可能性を織り込んだ経営計画が策定されるようになった。
(ウ) 計画にも増して実施段階から得られる知織を重視して、学習プロセスを介在させて、PDCサイクルを回すことが行われるようになった。
(工) 先端技術の展開や経済のグローバル化など、これまでとは異質な大きな環境変化が起こっており、そのため、予測や分析が困難な要因が計画に強く影響するようになった。
(オ) ビジョンや経営目標の共有が重要であるという理解が進展しており、それに基づいて戦略課題を現場に下ろし、成果主義で業頼管理を行うことが広く行われており、経営計画は効果を発揮できず、無視されるようになってきた。

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設問8

 A市は、鉄鋼メーカーをコアに、金属加工の中小企業が集中的に立地する鉄の町である。@鉄鋼関連企業の集積はさまざまな経済的なメリットを生んできた。しかし、鉄鋼メーカーのリストラにともない、これら中小企業の鉄鋼メーカーからの受注量は大幅に減少し、業績は低迷している。他方で近年、近隣の町に新たに自動車メーカーや半導体メーカーの進出が相次いでいる。これらA新規進出の大企業は地場企業にパートナーを求めている。そこで、金属加工の中小企業は、鉄鋼で培った金属加工技術をベースに、これらメーカーとの新たな関係構築を模索し始めた。その結果、中小企業に技術イノベーションが起こり、B産業集積はこれまでと異なる効果を発揮し始めた。

(設問1)
 文中の下線部@のような特定産業分野の企業の集積は、集積のメリットを生み出すことが多い。そのようなメリットに関する説明として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) ある産業において同業の中小企業が特定地域に集積するほど、同業者間の競争が緩和するとともに、中小企業の技術や経営力が強くなる。
(イ) ある地域に集中立地する同業者が連携すると、もともとある大手企業に対して一定の交渉力をもつことができる。
(ウ) 特定の産業において中小企業が水平的に連携することにより、業界情報の獲得や共有が円滑に進み、作りすぎや在庫の抱え込みを調整できる。
(工) 特定の地域に同業種の企業が集積することによって、資材や中間製品等の空間移動が短くなり、物流コストが軽減される。
(オ) もともとある大手企業が、特定地域に集積する取引先の中小企業に対して技術指導や経営改善のアドバイスなどを行うことによって、産業集積内の経営効率は向上する。

(設問2)
 
文中の下線部Aのように、進出した大企業が地場企業に部品やメンテナンス等の発注をすることが多い。しかし、地場企業は、なかなかそれに応じることができないでいることが少なくない。これにはいくつかの原因がある。そのような原因として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 進出企業側の納期や受注単価などの条件が厳しく、地場の中小企業は慣れ親しんでいる既存の取引を優先しがちになるから。
(イ) 進出企業の注文を受けると、地場の同業者の信頼を失い、地場の金融機関の支援も受けられなくなるから。
(ウ) 進出企業の発注に応えるには新規設備投資が必要な場合が多く、地場の中小企業は資金的にも人材的にも投資余力が乏しく対応しきれないことが多いから。
(工) 地場の中小企業の技術水準が低いため、進出企業の発注仕様に応じられないことが起こりがちだから。

(設問3)
  文中の下線部Bの新たな有力企業の進出が生みだす効果に関する説明として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 異質な業種の進出にともなって競争が激化すればするほど、地場企業は新規技術の導入や固有の技術の精緻化に取り組みがちであり、産業集積内の技術は高度化する可能性が高くなる。
(イ) 大手の進出企業が地場の中堅中小企業に求める新規技術をめぐって、産業振興を図ろうとする自治体や公的機関による技術移転あるいは地場企業間の学習を通じた技術習得などがみられ、集積による技術革新が発生しやすくなる。
(ウ) 新規進出企業の技術革新のスピードが速いほど、地場の中小企業はそれに対応できる企業とそうでない企業との間で格差を拡大しながら、産業構造の高度化が進行する。
(工) 新規の企業立地にともなって、工場用地や労働力の不足が起こりやすくなるが、製品の高付加価値化によって産業集積の経営効率化が進む。
(オ) 他地域からのサポーティング企業の新規立地によって、新規進出企業に対する受注競争が緩和されて地場の中小企業は好業績になる。

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設問9

 企業組織における中間管理者は、職務を遂行するため公式に与えられた権限(authority)だけでなく権力(power)を行使することが必要な場合がある。権限や権力に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) あらかじめ決められた規則やルーティンが多いほど、中間管理者の権力は大きくなる傾向にある。
(イ) その部門の職務が企業全体の重要な課題に対して関係が深いほど、中間管理者の権限は強くなるが、権力は少なくなる。
(ウ) 中間管理者が管理する部門の職務の多様性が高いほど権力を行使する機会は多くなるが、職務の柔軟性が高くなると権力は失われる傾向にある。
(工) 他の部門や、より上位の管理者に対する影響力が大きいほど、自部門内での権力も強くなる。
(オ) 問題解決活動への従業員参加の程度が高いほど、中間管理者の権力は大きくなるが、それを行使する機会は減少する。

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設問10

 企業の組織構造は、その経営戦略に応じて変革される必要がある。経営戦略の展開と組織構造の変革に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 既存事業とのシナジー効果が大きい関連事業を買収した場合には、集権的で強力な本社機構をもつ事業部制組織構造の採用を検討すべきである。
(イ) 集権的機能別部門組織をとっている企業が、非関連事業への多角化を進める場合には、マトリックス組織構造の採用を検討すべきである。
(ウ) 比較的少数の製品を扱う多国籍企業が、規模の経済性をより追求していく場合には、グローバル・マトリックス構造の採用を検討すべきである。
(工) 流通など単一機能に特化している企業が、垂直統合戦略をとるならば、事業部制組織構造の採用を検討すべきである。
(オ) 流通など単一機能に特化している企業が水平統合戦略をとるならば、マトリックス組織構造の採用を検討すべきである。

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