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平成18年度1次試験問題:企業経営理論

設問11

 経営戦略と組織の関係については、これまでは「組織構造は経営戦略に従う」という側面がしばしば主張されてきた。これに対して最近では、既存の戦略コンテクストの中でなかば自発的に展開される自律的な戦略行動と、それらを事後的に解釈して新しい戦略の概念を練り上げていく知識創造のプロセスについても関心が寄せられている。戦略経営と組織に関するこうしたダイナミックな関係について、以下の設問に答えよ。

(設問1)
 既存の経営戦略のもとで展開される組織構造のデザインや、新しい戦略の形成に貢献する自律的な戦略行動の展開に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 既存の経営戦略から演繹的に導かれた戦略行動は、その時点での組織構造と密接な関係があるので、「戦略は構造に従う」という命題が成り立つ。
(イ) 既存の経営戦略のもとで社内ベンチャーのような自律的な戦略行動が展開されるためには、既存の事業から独立した研究開発部門の設置と研究者への十分な金銭的報酬を約束しておかなければならない。
(ウ) 現在の経営戦略は、それに従ってデザインされた組織構造や組織プロセスによって強化されるとともに、成功した自律的戦略行動を事後的に解釈し、正当化することを通じて新しい戦略が形成される。
(工) 自律的な戦略行動とは、現在の経営戦略とはまったく無関係に展開される社内ベンチャーのような活動を意味する。
(オ) 自律的戦略行動は既存の組織構造や組織コンテクストの影響を受けて展開されるが、ひとたびそれが形成されると、既存の組織コンテクストを破壊していく。

(設問2)
 社内ベンチャーに関する記述として最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 現在の経営戦略は、新しい発想が求められる社内ベンチャーにとっては革新性を失わせる方向に作用するため、社内ベンチャーの管理者たちには浸透しないようにしたほうがよい。
(イ) 社内ベンチャーは、既存事業とは現場レベルでの組織能力の関連性が低いので、早期にスピンアウトさせ子会社として管理することが望ましい。
(ウ) 社内ベンチャーは、中間管理職に既存の戦略のコンセプトに疑問を抱かせ、トップマネジメントに自律的戦略行動を正当化する新しい戦略のコンセプトを定義し直すきっかけを与える可能性をもっている。
(工) 社内ベンチャーは、ボトムアップ式の戦略形成プロセスであり、現場の従業員の不満を解消する活性化策として採用される経営手法である。
(オ) 社内ベンチャーを成功に導くためには、社内企業家となる技術者に高額の金銭的報酬を与えなければならない。

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設問12

 下図は、成長していく組織との比較で、衰退していく組織の特徴を、「衰退の兆候」、「不作為」、「誤った行動」、「危機」、「倒産」という5段階に分けてモデル化したものである。@、A、Bは、衰退過程から成長軌道に復帰させる方向性を図式化したものである。組織が衰退する原因やメカニズム、またその克服方法に関する記述として最も適切なものはどれか。

問題

【解答群】
(ア) 第1段階は、衰退の兆候が現れつつあるが、組織はこれに気づいていない時期である。このような問題は、技術や顧客との不調和について組織が適切な情報を得ることができず、ダブルループの組織学習が行われているからである。
(イ) 第2段階は、組織が業績悪化について気がついてはいるが、既存の思考様式に従って行動を続けるため、問題の解決に役立つ行動を展開できない時期である。こ の段階の早い時期に、図中の@に示すように適切な情報を獲得・解釈できる仕組みを構築できれば、組織は成長軌道に復帰する可能性が高くなる。
(ウ) 第3段階は、組織が業績の悪化をもはや無視できなくなる段階であるにもかかわらず、誤った修正行動が展開されてしまう時期である。このような現象は、既存 の行動に対するコミットメントが強くなりすぎることが原因となるダブルループの組織学習が起こっている可能性が高い。
(工) 第4段階は、組織の業績が生存を脅かす限界の水準に達している段階である。この段階に達すると、組織はもはや変革に必要な十分な資源を持っていないために、図中のBに示すように漸次的な改革を積み重ねていかなければ成長軌道に復帰することは難しくなる。

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設問13

 営業部門や製造部門、あるいは研究開発部門などの間で、しばしば部門間コンフリクトが発生することがある。このような場合、コンフリクトへの対応として最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) コンフリクトを起こしているそれぞれの部門内に独自にトレーニング・グループをつくり、組織開発の手法をとり入れた訓練を行う。
(イ) コンフリクトを起こしている部門間に共通の目標を共有させ、情報を共有させるとともに、各部門の専門性を損なわないよう独立した評価システムを導入する。
(ウ) コンフリクトを起こしている部門に対して、インターネットなどのITを導入して情報を共有させ、直接に共同の意思決定をする機会そのものを減らす。
(工) コンフリクトを起こしている両部門を1つの部門に統合することを通じて、相互依存を認識しなくでは意思決定できないようにし、予算や人件費を削減する。
(オ) 部門間人事異動を定期的もしくは不定期に行うことを通じ、それぞれの部門の目標や課題を理解できる人材を増やし、コミュニケーションを活発にするような横断的関係を設ける。

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設問14

 企業組織が強い慣性を持つと、環境の変化に適応して自らを変革することが困難になる。このような組織慣性についての記述として最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 企業が既存の設備や資産に大きな投資をしていると、それらが機会費用となって、環境変化に対する組織慣性となってしまう場合がある。
(イ) 既存の商品の品質や性能に厳しい要求を突きつける取引相手の動向をフォローすることで、既存の技術や製品への投資を継続することへの組織慣性を小さくすることができる。
(ウ) 現在優先的に資源配分を受けているため、組織内でパワーを持っている人々が、資源配分のパターンを変更することに抵抗し組織慣性が強くなる。
(工) 伝統的な情報収集システムを通じて入手できる情報には限界があるため、最先端の情報処理技術を駆使した情報システムを構築しておくことで、組織慣性を小さくすることができる。

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設問15

 次のショートケースを読んで、下記の設問に答えよ。
 創立50周年を迎えたX社は、従業員150人のうちの6割が研究者によって占められており、終身雇用・年功序列の賃金制度を採用していながら自由な雰囲気を持つ企業であり、中規模の研究開発型企業として一定の評価を得てきた。大株主であるY社はX 社により高い配当を求め、定例の株主総会での議決を経て、新経営者A氏を送り込んで経営改革を行うよう指示してきた。A氏はY社への高配当を目的とし、着任後半年間で同業他社の状況を参考にして、マーケティング重視とコスト削減の経営方針を打ち出し、研究開発部門の研究費を2割削減した。研究者に商品化可能な製品開発を中心とした評価制度を導入し、業績主義の人事改革プログラムを提案した。新たに若い営業要員を数名採用し、10人の取締役会メンバーのうち それまで2人だった営業部門出身者を4人に、一方、4人いた研究開発部門出身者を1人とした。この取締役会を中心に、社内の管理システムや業務手続きに関 する諸規則を、トップダウンで次々と変更していった。
 その結果、わずか1年で研究者の多くはモチベーションを低下させ、優れた人材の3割程度は退職してライバル企業に移籍してしまった。また研究開発以外の部門も新しい管理システムの導入により、現場に混乱が生じてしまい、製品の信頼性が低下し、顧客からの苦情も寄せられるようになってしまった。

(設問1)
 新経営者A氏は、経営改革案を作成する際に、どのように行えば良かったのであろうか。次のうち、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 経営改革案の作成段階に研究者を入れると改革そのものに反対する可能性があるので、マーケティング部門および財務部門の代表者をより多く取締役会のメンバーにし計画を作成する。
(イ) 経営改革案を作成するために、取締役会の下に部門横断的な変革推進タスクフォースを設置し、従業員が自由に議論できる組織を構築する。
(ウ) 全従業員からアイデアを募りながら、経営改革案の作成にもう少し時間をかけ、変革のマイルストーンを定めるとともに、従業員が変革の進行プロセスを十分認識できるようにする。
(工) 同業他社の調査とともに、社内の現状調査を行い、従業員の士気や成果に影響を及ぼす要因を識別し、それに対応した具体的な行動計画を作成する。
(オ) なぜ経営改革を行う必要があるのか、経営改革を行わないと将来どのような問題が発生してしまうのかを全従業員に直接語りかけ、改革の必要性を理解してもらう。

(設問2)
 経営改革案の実施段階で、新経営者A氏が行うべきであった方策として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 経営改革が従業員にとって望ましいことを説得するために、従業員のニーズや個人的目標を把握し、それらとの整合性をできる限り確保するよう努める。
(イ) 従業員が経営改革の進展とともに自らの新しい役割を理解し、それを実行に移せるよう十分なトレーニング・プログラムを準備する。
(ウ) 従業員の間に誤った噂が広がったり、誤解が生じないよう、従業員と十分なコミュニケーションをとるとともに、社内のインフォーマルなコミュニケーション・チャネルをモニターしながら変革を進める。
(工) 大株主からの支持を十分取り付けるためにIR活動を積極的に進めるコミュニケーションをとるとともに、従業員に変革の内容を外部から知らしめるよう利害関係者やマスコミへの情報をコントロールする。
(オ) 部門横断的な変革実施プロジェクトチームを構成し、移行プロセスを管理するとともに、変革が逆行しないよう段階的な確認と統制を行う。

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設問16

 現代社会の企業組織内で、人々は絶えずストレスを感じながら仕事を遂行している。ストレスの原因となるストレッサー、ストレッサーとストレスの関係に影響を与えるモデレーター、結果としてのストレス、組織の成果との関係に関する記述として最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 個人に同時に複数の役割が期待される役割葛藤が生じ、それがストレッサーとストレスの関係にプラスに作用するモデレーターとなることがある。
(イ) 職務充実などを通じて、個人の能力に対し過重な負担となる職務を与えるとモデレーターとしてストレスを高くする効果を持つ。
(ウ) ストレス耐性の高い人は、燃え尽き症候群などのバーンアウトを起こす可能性は低く、高い組織成果を上げることが多い。
(工) 高い組織成果を達成するためには、できるだけ組織ストレスの水準を低く抑える必要があり、そのために管理者はストレッサーとモデレーターの適切な管理を行わなければならない。
(オ) 役割葛藤などのストレッサーがあっても、上司や同僚に相談したり彼らから支持を得ることができれば、ストレスを弱めるモデレーターとなる。

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設問17

 労働基準法第67条により、生後満1年に達しない生児を育てる女性は、同法第34条の休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも30分の育児時間を請求する ことができることになっている。また、使用者は、その育児時間中その女性を使用してはならないと定められているが、次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 育児時間は、1日の労働時間を8時間とする勤務を予想し、1日2回の付与を義務付けるものであり、1日の労働時間が4時間以内であれば1日1回の付与でもよい。
(イ) 育児時間は、勤務時間の始め又は終りに請求してきた場合にも拒否することはできない。
(ウ) 勤務時間の中で、使用者が業務に支障がないように時間を決めて30分の育児時間を与えることは差支えがない。
(工) 社内の託児所の施設があれば、往復の時間を含めて30分の育児時間を与えればよい。

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設問18

 労働者災害補償保険法の適用を受けられない労働者はどれか。

【解答群】
(ア) 外国人労働者(不法就労者を含む)
(イ) 現業で非常勤の地方公務員
(ウ) 短時間労働者
(工) 特定独立行政法人の職員
(オ) 派遣労働者

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設問19

 雇用保険法における雇用保険の被保険者として、最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 学校教育法第1条にいう学校の昼間の学部の学生等は原則として被保険者にならないが、在学校の許可を得ることができるものは被保険者になることができる。
(イ) 生命保険等の外務員は原則として被保険者にならないが、勤務の実態、職務の内容、給与の支給方法等から総合的に判断して、雇用関係の確認ができる者は被保険者になることができる。
(ウ) 短時間就労者であって、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、1年以上の雇用が見込まれ、賃金等の労働条件が雇入通知書等に明確に定められている場合は、被保険者になることができる。
(工) 法人の代表取締役は原則として被保険者にはならない。しかし、現に被保険者である労働者が事業主の指名によって子会社の代表取締役へ在籍出向した場合は、親会社との雇用関係にもとづく被保険者になることができる。

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設問20

 労働安全衛生法において、常時使用する労働者の数が50人以上の場合には、業種に問わず事業場の規模によって定められた人数の衛生管理者を選任し、所轄の労働基準監督署に選任報告書を提出しなければならないとされている。衛生管理者は、免許または一定の資格を有する者の中から選任しなければならないが、次 のうち最も適切な資格はどれか。

【解答群】
(ア) 安全衛生推進者
(イ) 医師又は歯科医
(ウ) 技術士
(工) 作業環境測定士
(オ) 労働安全コンサルタント

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