平成16年度1次試験解答:中小企業経営・中小企業政策
設問11
解答:ウ
中小企業白書 2003年(平成15年)版 本文を読む前に(凡例)には次の記述がある。
中小企業に関する統計を見ていく場合、平均値のみを見て、そこから中小企業の全体像を探ることには以下の2点で問題となる場合がある。
1) | 中小企業は大企業と異なり企業によってばらつきが大きいため、平均値は中小企業の標準的な姿を代表していない可能性がある。 |
2) | 中小企業に係る統計数値の分布は平均を中心に左右対称でなく、左に歪んでいる可能性がある。 |
よって(ウ)b とcが解答である。
設問12
解答:設問1:イ 設問2:エ 設問3:イ
(設問1)
(4)中小企業金融において存在する「情報の非対称性」より
中小企業の資金調達は一般的に大企業に比べて厳しい条件に直面している。こうした現象は、なぜ、生じるのであろうか。このことは、次のように考えることが できる。すなわち、金融取引においては、貸手である金融機関は、借り手から元金と利息を長期間にわたって返済してもらって、初めて収益となる。したがっ て、借り手が長期間にわたって返済できるかどうかということを見極めるために、借り手の正確な情報を入手することが、決定的に重要である。
ところが、中小企業金融においては、一般的に貸出額が大企業に比べて小さいため、そうした情報を入手するための審査や貸出後のモニタリングを十分に行う ことが困難であり、審査を補う格付け機関やアナリスト等も存在しないので、借り手の質や、借りた後の行動を正確に把握することが難しい。そのため、貸手と 借り手の間に「情報の非対称性」が生じることとなり、リスクが不確かな中小企業への貸出しを控え、条件を厳しくして対応しているということが考えられる。
よって(イ)非対称性が解答である。
(設問2)
規模の経済性とは、生産規模の拡大に伴ってコストが下がり、効率が上昇することである。すなわち(エ)融資額が大きくなるほど、審査費用など融資の単位あたり費用が低下すること。が解答である。
(設問3)
- ハードインフォメーション
- 決算書などの数値化しやすい財務データなど
- ソフトインフォメーション
- 財務情報以外の情報(社長のもつ人柄や保有技術力、取引先との関係、従業員の士気、業界内や取引先の評判、技術開発力)のことである。
(ア) | 借り手企業との間に長期継続的な関係を築く。 →○:長期的な関係を築くことでソフトインフォメーションが得られる。 |
(イ) | 借り手企業に対して、日頃から財務情報の積極的な開示を求める。 →×:ソフトインフォメーションは、数値化しやすい財務データなどのハードインフォメーションとは異なる。 |
(ウ) | 地域社会とのコンタクトを通じて、コミュニティに内在する情報を利用する。 →○:正しい。地域社会とのコンタクトを通じて、ソフトインフォメーションが得られる。 |
(エ) | 融資の担当者が、借り手企業の経営者と日頃から頻繁に連絡を取る。 →○:双方が日頃から連絡を取り合うことで、ソフトインフォメーションが得られる。 |
設問13
解答:イ
(ア) | 企画・開発機能 →○:異業種の情報交流を通じた新製品の企画・開発が可能となる |
(イ) | 危険負担機能 →×:卸売業者が連携することは、卸売業者が分散している時に比べて危険の負担が大きくなる。 |
(ウ) | 品揃え形成機能 →○:異業種間の連携が進めば取扱商品が拡大し、品揃えが充実する |
(エ) | 情報収集機能 →○:異業種の情報交流により、情報収集機能は高くなる。 |
(オ) | 物流機能 →○:輸送や保管といった物流機能は強くなる。 |
設問14
解答:設問1:オ 設問2:ウ
(ア) | SOHO →×:SOHO(Small Office/Home Office)には、明確な定義は存在しなが、「パソコンなどの情報通信機器を利用して、小さなオフィスや自宅などでビジネスを行っている事業者」といった意味で使われる場合が多い。 |
(イ) | 家業的経営 →×:家業的経営とは、業主と家族従業者主体の経営であり、利潤と賃金は明確に分離され、企業としての経済計算は一応確立している。 |
(ウ) | 個人事業 →×:個人事業とは、経営形態の名称である。 |
(エ) | 自営業 →×:自営業とは、経営形態の名称である。 |
(オ) | 生業的経営 →○:生業的経営は、文字通り、生業(なりわい:生活する、生きていくための仕事)の為の企業であり、成長志向・利益志向は弱く、生活の維持を主な目的とする。 |
よって解答はオである。
(ア) | コア・コンピタンスの確立 →×:コア・コンピタンス(競合他社に真似できない核となる能力)の確立は重要なことではあるが、初期段階における経営資源の不足を保管できるものではない。 |
(イ) | 早期の株式公開 →×:早期の株式公開は、研究開発型ベンチャー企業にとって大きな目的である。しかし、創業初期段階で株式公開を果たすことは、まず不可能である。 |
(ウ) | ネットワークを通じた外部資源の活用 →○:ネットワークを通じた外部資源を活用することで、資金・人材・情報といった経営資源を補完することができる。 |
(エ) | ベンチャーキャピタルからの出資獲得 →×:資金・人材・情報などの経営資源を補完したいのであり、出資等の資金だけを補完しても仕方ない。 |
よって解答はウである。
設問15
解答:ア
中小企業者の定義は次のものである。
業種分類 | 定義 |
製造業その他 | 資本金3億円以下又は従業者数300人以下 |
卸売業 | 資本金1億円以下又は従業者数100人以下 |
小売業 | 資本金5千万円以下又は従業者数50人以下 |
サービス業 | 資本金5千万円以下又は従業者数100人以下 |
よって、
(ア) | 資本金1憶円、常時使用する従業員の数が100人の小売業のA 社 →×:定義上、中小企業ではない。 |
(イ) | 資本金1憶円、常時使用する従業員の数が100人のサービス業のB 社 →○:定義上、中小企業である。 |
(ウ) | 資本金3憶円、常時使用する従業員の数が100人の卸売業のC 社 →○:定義上、中小企業である。 |
(エ) | 資本金5憶円、常時使用する従業員の数が300人の製造業のD 社 →○:定義上、中小企業である。 |
となるので(ア)が解答である。