平成17年度1次試験解答:経済学・経済政策
設問6
解答:設問1:エ 設問2:ウ(aとdとe)
(設問1)
消費者余剰とは、「安いものをより多く消費できることによって発生するメリット」のことである。
FTAの経済効果としてプラスの「貿易創出効果」とマイナスの「貿易転換効果」が挙げられる。前者は域内の貿易障壁撤廃により域内貿易が拡大すること、後者は貿易障壁が域内においてのみ撤廃されることにより、生産性の高い域外からの輸入が域内からの輸入に代替されることを指す。
(設問2)
動態的な効果には次のものがある。
- 「規模の経済効果」、すなわち、域内の貿易・投資障壁が撤廃され、市場が統合される結果、規模の経済が実現することに伴い、生産性が上昇する効果
- 「競争促進・技術伝播」による生産性向上効果である。安価な財・サービスの流入や外資系企業の参入、海外経営者・技術者の自国流入などにより、競争が促進され、優れた経営ノウハウや技術が自国に伝播することに伴う生産性向上効果
- 「国内制度改革」による効果、FTA締結に向けた交渉や締結後の協議等を通じて加盟国間で有効な政策・規制等が共有あるいは移転される。国境措置にとどまらず、サービスや投資分野の自由化を通じて、投資規制の撤廃や手続きの簡素化・透明化、紛争解決手続きの整備など、投資ルールの整備や共通化を行うことで、ビジネス環境を改善し、貿易・投資促進的な制度となる
- 加盟国内の期待収益率の上昇や不確実性の低下等を通じて、国内投資や対内直接投資の増加により資本が蓄積され、当該国の長期的成長率にプラスの効果が生じる
a | 安価な財の輸入や経営資源の流人により、競争の促進や技術の伝播が発生し、 生産性が上昇する。 →○:1に該当する |
b | 域内における投資の期待収益率が低下することを通じて、国内投資や対域内直接投資が促進され、資本蓄積が増加する。 →×4より誤りであることが分かる。 |
c | 固定費用が大きい産業では、市場統合によって規模の経済が実現し、収穫逓増と費用逓増が観察される。 →×:規模の経済では費用逓増が観察されることはない。 |
d | 参加国独白の規制や国内制度の改革を促すことを通じて、貿易や投資の拡大に寄与する。 →○:3,4に該当する |
e | 貿易や投資の自由化は、それぞれの国内における経済構造の改革を促進する。 →○:3に該当する |
設問7
解答:エ
ヘクシャー=オリーン定理とは、「各国は、その豊富に存在する生産要素を集約的に使う産業に比較優位を持つ」という考え方で、この説に従えば、資本が豊富な国では資本集約型の産業、豊かな土地に恵まれている国では農業、優れた労働力に恵まれた国では労働集約型の産業が比較優位ということになる。
(ア) | 相対的に資本が豊富な国では、資本集約財を輸入することになり、その輸入拡大は当該国の資本報酬率の上昇を引き起こす。 →×:相対的に資本が豊富な国では、資本集約財を輸出することになり、その輸出拡大は当該国の資本報酬率の上昇を引き起こす。 |
(イ) | 相対的に労働が豊富な国では、労働集約財を輸出することになり、その輸出拡大は当該国の賃金の下落を引き起こす。 →×:相対的に労働が豊富な国では、労働集約財を輸出することになり、その輸出拡大は当該国の賃金の上昇を引き起こす。 |
(ウ) | 土地集約財である農産物の輸入拡大は、輸入国の地価を上昇させ、土地を輸出したことと同等の効果を生じさせる。 →×:土地集約財である農産物の輸入拡大は、輸入国の地価を下落させ、土地を輸入したことと同等の効果を生じさせる。 なぜなら、農作物の輸入拡大によって輸入国は農作物生産の為の農地を確保する必要がなくなるので、地下は低下する。また自由な土地が増えるので土地を輸入したことと同等の効果を生じさせる。 |
(エ) | 要素価格の均等化が生じる場合、貿易を通じて、生産要素が移動したのと同等の効果が発生したことになる。 →○:正しい。各国の生産要素価格は、生産要素の国際間移動がなくても貿易によって等しくなる。このことを要素価格均等化命題という。 |
設問8
解答:設問1:ア 設問2:エ
(設問1)
k%ルールは、マネタリストが主張する代表的な手法である。
k%ルールは、長期的な経済成長率に見合った一定の増加率で貨幣供給量を安定的に増加させていく政策のことである。よって(ア)貨幣供給量を長期的な経済成長率にあわせて一定の率で増加させる政策 が解答である。
(設問2)
各種ラグの説明を記す。
ラグ | 説明 |
認知のラグ | 失業率やGDPといった事後的にしか得られない情報を取得するのに時間がかかること |
決定のラグ | どのような政策を発動するか決めるのに時間がかかること |
実施のラグ | 実施するにあたり時間がかかること |
波及のラグ | 政策を実行しても影響がでるまでに時間がかかること |
よって、(エ)認知のラグ→決定のラグ→実施のラグ→波及のラグが解答である。
設問9
解答:オ
需要曲線がシフトする要因としては、以下のものがある。
- 可処分所得の変化
- 他の財の価格の変化(代替財、保管財)
- 当該在に対する嗜好の変化
(ア) | 一時的な所得があった時 →○:1に該当する。 上級材の場合:所得増→需要増→需要曲線右シフト 下級材の場合:所得増→需要減→需要曲線左シフト |
(イ) | 所得が下がった時 →○:1に該当する。 上級材の場合:所得減→需要減→需要曲線左シフト 下級材の場合:所得減→需要増→需要曲線右シフト |
(ウ) | 代替財の価格が変化した時 →○:2に該当する。 代替材の価格上昇→需要増→需要曲線右シフト |
(エ) | 当該財に関する嗜好が変化した時 →○:3に該当する。 嗜好が変化し財を好むようになる→需要量増→需要曲線右シフト 嗜好が変化し財を好まなくなる→需要量減→需要曲線左シフト |
(オ) | 当該財の価格が変化した時 →×:他を一定としてその財の価格が変化した場合、それに対応した需要量が決定されるのみである。すなわち、需要曲線上の点が移動するだけでシフトはしない。 |
よって解答はオである。
設問10
解答:イ
【 A 】:特許の期間が長く、適用範囲が広い場合、長い間独占的に利益を得ることができるので、独占権獲得を目指して、革新を行うインセンティブは【A:強い】。
【 B 】:既に独占権を取得している企業が存在する場合、それ以外の企業には特許という保証が与えられない為、参入が失敗する可能性は高くなる。その結果、インセンティブは弱くなり、少なくとも短期間には競争を【B:不活発にする】。
※インセンティブとは、人の意欲を引き出すために、外部から与える刺激のことである。