平成15年度1次試験解答:経済学・経済政策
設問6
解答:イ
在庫投資の動きを見る為のものとして在庫循環図がある。在庫循環図では、次のような4つの局面に分類される。
- 在庫積み増し局面
- 景気の拡大による将来の需要増を見込んで、清算を拡大し、在庫を積んでいく局面
- 在庫積み上がり局面
- 景気がピークを迎え下降局面に入り、在庫がたまりはじめる局面
- 在庫調整・在庫減らし局面
- 積み上がった在庫を減らすために減産を行う局面
- 景気回復局面
- 在庫調整が進むと同時に景気が回復し、生産が徐々に上向いていく局面
すなわち、2001年の局面は在庫調整・在庫減らし局面に位置する。
設問7
解答:設問1:ウ 設問2:ア(a とc) 設問3:イ
(設問1)
貨幣乗数とは、マネーサプライ(世の中に出まわっているお金の流通量のこと。通貨供給量、貨幣供給量とも呼ばれる。)がハイパワードマネー(日本銀行が供給する通貨のこと。ベースマネー、マネタリーベースとも呼ばれる。)の何倍になるかを表した数字で、信用乗数ともいう。
(設問2)
現金・預金比率とは、現金と預金の割合のことであり、次式で求めることができる。
現金・預金比率 | = | 現金という形で所有されている通貨料 |
預金という形態で所有されている通貨料 |
現金・預金比率の上昇は、預金という形態で所要される通貨の比率が低下し、預金の貸し出しを通じた信用創造が抑制されることになるので、マネーサプライの増加を抑制する。
また、準備・預金比率とは、法定準備金(銀行は、受け入れている預金の一部を貸し出しにまわさずに日本銀行へ預け入れる額)と預金の割合のことであり、次式で求めることができる。
準備・預金比率 | = | 法定準備として日本銀行へ預け入れる額 |
受け入れている預金の額 |
準備・預金比率の上昇は、預金のうち法定準備として受け入れなければならない額が増加し、貸出にまわすことのできる額が減るので、準備・預金比率の上昇は、マネーサプライの増加を抑制する。
よって解答は(ア)a とcである。
(設問3)
貸出を通じて預金が増加し、それがまた貸出に回るという信用創造プロセスが活発であれば、貨幣乗数は【A:上昇する】 。また、銀行や他の民間部門が当座預金残高や貨幣の保有を増加させると、貨幣乗数は【B:低下する】 。
設問8
解答:ア
各選択肢の説明を下記に記す。
(ア) | ケインズ政策 →○:ケインズ政策とは、財政・金融を中心とする総合的な景気調整政策のことである。景気が後退する局面では、公共事業の追加で財政支出を増やし、金融緩和を進めて経済活動を活発にさせる。 |
(イ) | サプライサイド経済学 →×:サプライサイド経済学とは、生産力の基礎である資本や労働の供給が税制やインフレによって阻害されていることを指摘し、所得税や法人税の引き下げによって供給を刺激すべきという考え方である。 |
(ウ) | 新古典派理論 →×:市場調整能力や経済主体の合理的行動仮説を支持し、政府の経済への介入はむしろ経済の不安定要因であると指摘し経済を自由放任することである。 |
(エ) | マネタリズム →×:自由市場の尊重と財政均衡を主張し、経済成長に見合う通貨供給を行うことで経済の安定化を図るべきとする考え方である。 |
設問9
解答:オ
1日1問☆中小企業診断士 経済学各選択肢の説明を下記に記す。
競争促進効果とは貿易自由化により企業間の競争が促進され、効率的な生産が行われるようになる効果のことである。
貿易転換効果とは、貿易自由化により、域外の低コスト生産国からの輸入が域内の輸入に代替される効果のことである。
貿易創造効果とは、 域内の貿易障壁が撤廃されることで、貿易が新たに生みだされる効果のことである。
交易条件効果とは、貿易量の拡大が未加盟国に対する影響力を拡大し、加盟国と未加盟国との間の交易条件を改善する効果である。
よって
最近、複数の国の間で自由貿易協定(FTA)が結ばれるようになっている。協定締結国間の関税徹廃により、それらの国の間の貿易が拡大し、経済厚生にプラスの影響を与える効果を【@:貿易創造効果】 と呼ぶ。
一方で、本来競争力のあるFTA 域外からの輸入がFTA 域内の生産によって代替され、域内・域外の資源の効率配分が阻害されるマイナスの効果を【A:貿易転換効果】 と呼ぶ。
設問10
解答:設問1:イ 設問2:イ
(設問1)
下図は0を表す横軸よりも上に伸びている場合は、経常利益を増加させる方向に働き、下に伸びている場合は経常利益を減少させる方向に働いたことを示す。
(ア) | 売上価格の上昇が、利益を高める効果をもたらした。 →×:売上価格要因は、0を表す横軸よりも下に伸びているので、経常利益を減少させる効果を持っている。 |
(イ) | 売上数量拡大の効果が、売上価格要因を上回っている。 →○:正しい。売上数量要因の長さは売上価格要因の長さより常に上回っている。 |
(ウ) | 交易条件要因は、利益にプラスの寄与をしている。 →×:交易条件要因は、0を表す横軸よりも下に伸びているので、経常利益を減少させる効果を持っている。 |
(エ) | 人件費の低下が、利益を高める効果をもたらした。 →×:人件費要因はU期とW期で、0を表す横軸よりも下に伸びているので、経常利益を減少させる効果を持っている。 |
(設問2)
交易条件は、産出価格(販売価格)と投入価格(仕入れ価格)の比較に基づいている。すなわち販売価格の上昇と仕入れ価格の下落とは、費用が安くなった上に財の価格が上がるということなので交易条件を改善する。よって解答はイである。