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平成24年度1次試験解答:経営法務

設問11

解答:ウ

■商標法 第2条3項
3  この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。
一  商品又は商品の包装に標章を付する行為
二  商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為
三  役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為
四  役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為
五  役務の提供の用に供する物(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を含む。以下同じ。)に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為
六  役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為
七  電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法をいう。次号において同じ。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為
八  商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為
九  音の標章にあつては、前各号に掲げるもののほか、商品の譲渡若しくは引渡し又は役務の提供のために音の標章を発する行為
十  前各号に掲げるもののほか、政令で定める行為
(ア) 家庭用テレビゲーム機用プログラムを記憶させたCD-ROMに標章を付して販売する行為は、役務についての商標の使用にあたる。
→×:家庭用テレビゲーム機用プログラムを記憶させたCD-ROMに標章を付して販売する行為は、譲渡する行為になる。(商標法 第2条3項2号)
(イ) 商標は、業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用するものであるため、商品の生産準備中に、使用予定の商標を雑誌などに広告することは商標の使用にあたらない。
→×:商品の生産準備中であっても、使用予定の商標を雑誌などに広告することは商標の使用にあたる(商標法 第2条3項8号)。
(ウ) 電気通信回線を通じて提供されるダウンロード可能な「電子出版物」のデータに標章を付して販売する行為は、商品についての商標の使用にあたる。
→○:電気通信回線を通じて提供されるダウンロード可能な「電子出版物」のデータに標章を付して販売する行為は、商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為に該当する。すなわち、商品についての商標の使用に該当する。(商標法 第2条3項2号)
(エ) 標章を付した商品をわが国から輸出する行為は、その商品は輸出先国での販売が予定されているので、わが国での商標の使用にあたらない。
→×:商品に標章を付したものを輸出する行為は、商標の使用に該当する。(商標法 第2条3項2号)

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設問12

解答:設問1:イ 設問2:ウ

(設問1)
「遺留分」とは本来、自分の財産は、誰に、どのようにあげるのも自由なはずですが、民法は、遺族の生活の安定や最低限度の相続人間の平等を確保するために、相続人(兄弟姉妹及びその子を除く。) に最低限の相続の権利を保障している。これが「遺留分」である。

他の相続人が過大な財産を取得したため自己の取得分が遺留分よりも少なくなってしまった場合には、自己の遺留分に相当する財産を取り戻すことができる。この権利のことを「遺留分減殺請求」という。

(ア) 遺贈及び生前贈与の減殺を請求することができるのは、遺留分権利者本人に限られ、その承継人は請求することができない。
→遺留分権利者となるのは,以下の人である。したがって承継人も請求することが可能である。
  • 兄弟姉妹を除く法定相続人(子・直系尊属・配偶者)
  • 兄弟姉妹を除く法定相続人の代襲相続人
  • 上記遺留分権利者からの承継人

(イ) 遺留分減殺請求権の消滅時効期間は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から 1年間である。
→○:下記より正しい。
■民法
(減殺請求権の期間の制限)
第1042条
減殺の請求権は,遺留分権利者が,相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは,時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも,同様とする。
(ウ) 兄弟姉妹のみが相続人である場合の遺留分の割合は、被相続人の財産の3分の1である。
→×:下記より兄弟姉妹には遺留分は認められない。
■民法 
(遺留分の帰属及びその割合)
第1028条
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
1. 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
2.前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一
(エ) 相続の開始前における遺留分の放棄は、推定相続人の単独の意思表示により、その効力を生ずる。
→×:下記より家庭裁判所の許可を受けたときに限り効力を生ずる。
■民法
(遺留分の放棄)
第1043条
1.相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
2.共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。

(設問2)
推定相続人が複数いる場合、後継者に自社株式を集中して承継させようとしても、遺留分を侵害された相続人から遺留分に相当する財産の返還を求められた結果、自社株式が分散してしまうなど、事業承継にとっては大きなマイナスとなる場合がある。

このような遺留分の問題に対処するため、経営承継円滑化法は、「遺留分に関する民法の特例」(以下「民法特例」といいます)を規定している。民法特例を活用すると、後継者を含めた現経営者の推定相続人全員の合意の上で、現経営者から後継者に贈与等された自社株式について、
@遺留分算定基礎財産から除外(除外合意)、又は
A遺留分算定基礎財産に算入する価額を合意時の時価(※)に固定(固定合意)をすることができる(両方を組み合わせることも可能)

(ア) 遺留分算定において、後継者が生前贈与を受けた自社株式の価額を固定し、又は遺留分の算定から除外する旨の推定相続人間の合意は、その合意が特例中小企業者の経営の承継の円滑化を図るためにされたこと等についての経済産業大臣の確認を受けた者の申立てにより、地方裁判所の許可を得たときに限り、その効力を生ずる。
→×:民法特例を利用するには、要件を満たした上で「推定相続人全員の合意」を得て、「経済産業大臣の確認」及び「家庭裁判所の許可」を受けることが必要です。すなわち地方裁判所の許可は必要ない。
(イ) 遺留分特例により、特例中小企業者の先代経営者から後継者に自社株式を生前贈与した場合、後継者を含む先代経営者の推定相続人は、当該生前贈与後に成立した推定相続人全員の合意をもって、書面により、後継者が上記生前贈与により取得した自社株式について、遺留分を算定するための基礎財産の価額に算入すべき価額を当該生前贈与の時における価額とすることができる。
→×:遺留分を算定するための基礎財産の価額に算入すべき価額を当該合意の時における価額とすることができる。
■中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律
(後継者が取得した株式等に関する遺留分の算定に係る合意等)
第4条  旧代表者の推定相続人及び後継者は、その全員の合意をもって、書面により、次に掲げる内容の定めをすることができる。ただし、当該後継者が所有する当該特例中小企業者の株式等のうち当該定めに係るものを除いたものに係る議決権の数が総株主又は総社員の議決権の百分の五十を超える数となる場合は、この限りでない。
1.当該後継者が当該旧代表者からの贈与又は当該特定受贈者からの相続、遺贈若しくは贈与により取得した当該特例中小企業者の株式等の全部又は一部について、その価額を遺留分を算定するための財産の価額に算入しないこと。
2.前号に規定する株式等の全部又は一部について、遺留分を算定するための財産の価額に算入すべき価額を当該合意の時における価額(弁護士、弁護士法人、公認会計士(公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)第十六条の二第五項に規定する外国公認会計士を含む。)、監査法人、税理士又は税理士法人がその時における相当な価額として証明をしたものに限る。)とすること。
(ウ) 遺留分特例により、特例中小企業者の先代経営者から後継者に自社株式を生前贈与した場合、後継者を含む先代経営者の推定相続人は、その全員の合意をもって、書面により、後継者が上記生前贈与により取得した自社株式の価額について、遺留分を算定するための基礎財産の価額に算入しないことができる。
→○:正しい。
■中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律
(後継者が取得した株式等に関する遺留分の算定に係る合意等)
第4条  旧代表者の推定相続人及び後継者は、その全員の合意をもって、書面により、次に掲げる内容の定めをすることができる。ただし、当該後継者が所有する当該特例中小企業者の株式等のうち当該定めに係るものを除いたものに係る議決権の数が総株主又は総社員の議決権の百分の五十を超える数となる場合は、この限りでない。
1.当該後継者が当該旧代表者からの贈与又は当該特定受贈者からの相続、遺贈若しくは贈与により取得した当該特例中小企業者の株式等の全部又は一部について、その価額を遺留分を算定するための財産の価額に算入しないこと。
2.前号に規定する株式等の全部又は一部について、遺留分を算定するための財産の価額に算入すべき価額を当該合意の時における価額(弁護士、弁護士法人、公認会計士(公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)第十六条の二第五項に規定する外国公認会計士を含む。)、監査法人、税理士又は税理士法人がその時における相当な価額として証明をしたものに限る。)とすること。
(エ) 特例中小企業者において、先代経営者から後継者に自社株式を生前贈与した場合、先代経営者の死亡後に、後継者と非後継者との間の遺産分割協議により、生前贈与株式についての非後継者の遺留分を放棄する合意をしたとしても、家庭裁判所の許可がなければ遺留分放棄の効力を生じない。
→×:先代経営者の死亡後とは、相続開始後のことであり、相続開始後の遺留分の放棄は権利者が自由にすることができる。すなわち家庭裁判所の許可がなくても可能である。

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設問13

解答:設問1:エ 設問2:エ

次のようになる。

甲氏 「知財担当の主任から聞きましたが、平成24年4月から特許法の改正法が施行されて、特許権のライセンスについて登録制度が変更されたそうですね。」
あなた 「はい。特許権の【A:通常実施権】 の設定を受けたライセンシーが、特許権を譲り受けた第三者に自らの権利を対抗するため、これまでは特許庁にその権利の登録をする必要がありました。今後、ライセンシーは登録なしで【A:通常実施権】  を特許権の譲受人に対して当然に対抗できることになります。」
甲氏 「当社はライセンシー側でもありますが、登録制度を利用していませんでした。」
あなた 「また、破産手続のことを考えると、破産管財人は破産手続開始時点で【B:双方未履行】  である破産者・第三者間の双務契約を解除できるのが原則ですが、ライセンス契約においては、たとえ【C:ライセンサー】 が破産しても【A:通常実施権】 について対抗要件が備わっていれば、破産管財人は【A:通常実施権】の設定契約を解除できません。今回の特許法改正により、特許権者から【A:通常実施権】 の設定を受けたライセンシーはその後特許権者が破産しても、破産管財人に当然に対抗できます。ライセンスを受けた技術を安心して利用し続けられますし、特許権のライセンスビジネスでの活用の幅も広がります。」
甲氏 「だけど、せっかく第三者が特許権を買い取っても、特許庁の登録を見ても分からないライセンシーへのライセンスを打ち切れないわけですよね。それって特許権を活用したファイナンスとかM&Aの妨げになりませんか。」
あなた 企業買収の際には、買収企業側が被買収企業側にデュー・ディリジェンスを実施し、被買収企業側からの「開示したライセンシーがすべてであり、開示されないライセンシーは存在しない」という【D:表明・保証】 条項をおけば、買収側としては一応のリスク回避が可能です。ただ、おっしゃるとおり、隠れたライセンシーの存在やライセンス日付のバックデートの可能性が、特許権を活用した資金調達のマイナス要因になりかねないという指摘はあります。」
甲氏 「それに、特許権の譲渡後に譲渡人が新たなライセンシーとライセンス契約を結んでしまったりした場合、ライセンシーは【A:通常実施権】を特許権の譲受人に主張できますか。」
あなた 「特許法の条文上は、ライセンシーは【E:通常実施権の発生】 後に特許権を取得した第三者にその権利の効力を主張できますから、【F:ライセンス契約締結】 が特許権の移転登録より先であれば、【A:通常実施権】の方が優先します。」

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設問14

解答:ア

that the covenanting party will not assert ( or cause others to assert ) any of the party's essential patent claims in the material that the party conveyed,
against you, arising from your exercise of rights under this License.

上記の表現から、(ライセンス契約によりプログラムを受け取るが、)その場合に本質的な特許請求の範囲(特許クレーム)のうちの、どれも主張しないとする内容である。したがって、アの非係争義務についての規定である。

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設問15

解答:ウ

(ア) 中小小売商業振興法上の特定連鎖化事業に該当する事業を行うフランチャイズ本部には、その本部とフランチャイズ契約を締結しようとする加盟希望者に対し、あらかじめ、加盟に際し徴収する金銭、加盟者に使用させる商標・商号その他フランチャイズ契約の概要等を記載した書面を交付し、その記載事項について説明する義務はない。
→×:小小売商業振興法上の特定連鎖化事業に該当する事業を行うフランチャイズ本部には、その本部とフランチャイズ契約を締結しようとする加盟希望者に対し、あらかじめ、加盟に際し徴収する金銭、加盟者に使用させる商標・商号その他フランチャイズ契約の概要等を記載した書面を交付し、その記載事項について説明する必要があるはない。
■中小小売商業振興法上 第11条
(特定連鎖化事業の運営の適正化)
第十一条  連鎖化事業であつて、当該連鎖化事業に係る約款に、加盟者に特定の商標、商号その他の表示を使用させる旨及び加盟者から加盟に際し加盟金、保証金その他の金銭を徴収する旨の定めがあるもの(以下「特定連鎖化事業」という。)を行う者は、当該特定連鎖化事業に加盟しようとする者と契約を締結しようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、あらかじめ、その者に対し、次の事項を記載した書面を交付し、その記載事項について説明をしなければならない。
(イ) フランチャイズ契約解除後、フランチャイズ本部からフランチャイズ・チェーン名称の使用を継続している旧加盟店に対して名称使用の差止請求をするには、その名称の商標登録が必要である。
→×:フランチャイズ契約解除後、フランチャイズ本部からフランチャイズ・チェーン名称の使用を継続している旧加盟店に対して名称使用の差止請求が可能である。すなわち、名称の商標登録は必要ではない。
(ウ) フランチャイズ契約において、契約終了後も、フランチャイズ本部が加盟店に対して、特定地域で成立している商権の維持、同本部が加盟店に供与したノウハウの保護等に必要な範囲を超えるような地域、期間又は内容の競業禁止義務を課す規定をおくことは、優越的地位の濫用に該当する。
→○:加盟者に対して取引上優越した地位にある本部が、加盟者に対して、フランチャイズ・システムによる営業を的確に実施する限度を超えて、正常な商慣習に照らして不当に加盟者に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施する場合には、フランチャイズ契約又は本部の行為が独占禁止法第二条第九項第五号(優越的地位の濫用)に該当する。
(エ) フランチャイズ契約における加盟希望者が小売店である場合でも、小売店は消費者とみなされるから、消費者契約法の適用がある。
→×:フランチャイズ契約における加盟希望者が小売店である場合には、小売店は個人商人(個人企業)または会社形態をとっている事業者となるため消費者はみなされない。

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