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平成24年度1次試験解答:経営法務

設問6

解答:イ

 違法行為があったにもかかわらず、その会社が取締役に対し、その責任の追及をしないとき、株主は、株主代表訴訟を提起することができる。
 代表訴訟を提起することができる株主は、【 A 】以上の株式を、定款に特別の定めがない限り、【 B 】か月前から引き続き保有している株主である。なお、公開会社以外の会社では、この期間の制限はない。
 株主は、まず、当該会社に対し、取締役の責任追及等の訴えを提起するよう請求する。
 その請求を行ったにもかかわらず、【 C 】日以内に、その会社が当該取締役の責任追及の訴えを行わない場合には、株主は、代表訴訟を提起することができる。

【 A 】
株主代表訴訟の提訴権者としての資格があるのは、株主である。
【 B 】
公開会社では、6カ月前から株式を有する株主であり、非公開会社では6カ月の株式保有の要件は不要とされている。

■会社法 第847条 (株主による責任追及等の訴え)
1.六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主(第百八十九条第二項の定款の定めによりその権利を行使することができない単元未満株主を除く。)は、株式会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等(第四百二十三条第一項に規定する役員等をいう。)若しくは清算人(以下この節において「発起人等」という。)の責任を追及する訴え、第百二条の二第一項、第二百十二条第一項若しくは第二百八十五条第一項の規定による支払を求める訴え、第百二十条第三項の利益の返還を求める訴え又は第二百十三条の二第一項若しくは第二百八十六条の二第一項の規定による支払若しくは給付を求める訴え(以下この節において「責任追及等の訴え」という。)の提起を請求することができる。ただし、責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合は、この限りでない。

2.公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主」とあるのは、「株主」とする。

【 C 】
責任追及等の訴えを行ったにもかかわらず60日以内に、その会社が当該取締役の責任追及の訴えを行わない場合には、株主は、代表訴訟を提起することができる。

■会社法 第847条 (株主による責任追及等の訴え)
3.株式会社が第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しないときは、当該請求をした株主は、株式会社のために、責任追及等の訴えを提起することができる。

4.株式会社は、第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しない場合において、当該請求をした株主又は同項の発起人等から請求を受けたときは、当該請求をした者に対し、遅滞なく、責任追及等の訴えを提起しない理由を書面その他の法務省令で定める方法により通知しなければならない。

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設問7

解答:ア

(ア) 指定商品「菓子」についての登録商標「恋人」の商標権者は、「菓子」と「パン」は相互に類似する商品と見なされているとしても、他人に「パン」について登録商標「恋人」を使用する権利を許諾することはできない。
→○:正しい
(商標権の効力)
第25条 商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。ただし、その商標権について専用使用権を設定したときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
(イ) 他人の商品「おもちゃ」に係る商標「スター」についての商標登録出願前から、商標「スター」を周知性を得られないまま善意で商品「おもちゃ」について使用していた者は、たとえその商標登録出願が商標登録された後でも商標「スター」を商品「おもちゃ」について継続的に使用することができる。
→×:商標登録出願前から、商標「スター」を使用していた場合は先使用権が認められるかが問題となる。先使用権とは、商標登録されていない商標であっても、一定以上有名になった商標については、他人の商標権が存在する場合であっても継続して使用が認められる権利のことである。(商標法第32条)。設問の場合は、周知性を得られないままなので先使用権は認められない。
(ウ) 他人の著名な漫画の主人公の図柄について商標登録した場合でも、商標権者は、他人の承諾を受けることなく、漫画の主人公の図柄から成る登録商標をいずれの指定商品についても使用することができる。
→×:漫画の主人公の図柄を構成要素としていることから、漫画の原著作物の複製であり、商標権者はその使用はできない。
(エ) 他人の登録商標と同一であっても、自己の氏名であれば、商標として使用することができる。
→×:
(商標登録を受けることができない商標)
第4条  次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
 8.他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)

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設問8

解答:エ

特許権の共有とは、複数の主体によって共有されている特許権をいう。1人が単独で権利を有する場合と異なり、権利の行使や処分に際し、他の共有者との関係でさまざまな制約が生じる。実務上は便宜的に共有特許ともよばれる。

(ア) 特許権の共有者は、契約で別段の定めをしていない場合には他の共有者と共にでなくとも、単独で、特許発明の実施をすることができる。
→○:単独で、特許発明の実施をすることができる。(特許法第73条2項)
■特許法
(共有に係る特許権)
第七十三条  特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができない。
2  特許権が共有に係るときは、各共有者は、契約で別段の定をした場合を除き、他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施をすることができる。
3  特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その特許権について専用実施権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができない。
(イ) 特許権の共有者は、他の共有者と共にでなくとも、単独で、共有持分を放棄することができる。
→○:特許発明の共有者は、単独で共有持分を放棄することができる。
(ウ) 特許権の共有者は、他の共有者と共にでなくとも、他の共有者の同意を得たうえで単独で、共有持分を譲渡することができる。
→○:特許権の共有者は、他の共有者と共にでなくとも共有者の同意を得れば単独で、共有持分を譲渡することができる。(特許法第73条1項)
■特許法
(共有に係る特許権)
第七十三条  特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができない。
2  特許権が共有に係るときは、各共有者は、契約で別段の定をした場合を除き、他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施をすることができる。
3  特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その特許権について専用実施権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができない。
(エ) 特許権の共有者は、他の共有者と共にでなくとも、単独で、特許を無効とする審決に対する審決取消訴訟を提起することができる。
→×:許権の共有者は、他の共有者全員でなければ、特許を無効とする審決に対する審決取消訴訟を提起することはできない。

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設問9

解答:イ

特許協力条約(Patent Cooperation Treaty、PCT)は、複数の国において発明の保護(特許)が求められている場合に各国での発明の保護の取得を簡易かつ一層経済的なものにするための条約である。
この条約は、国際出願によって複数の国に特許を出願したと同様の効果を提供するが、複数の国での特許権を一律に取得することを可能にするものではない。この条約等によって複数の国で特許権を取得したかのような「国際特許」、「世界特許」または「PCT特許」といった表現が使用されることがあるが、世界的規模で単一の手続によって複数の国で特許権を取得できるような制度は、現在のところ存在しない。

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設問10

解答:イ

不正競争行為類型には次のものがある。
@周知表示混同惹起行為
他人の商品・営業の表示(商品等表示)として需要者の間に広く認識されているものと同一又は類似の表示を使用し、その他人の商品・営業と混同を生じさせる行為
A著名表示冒用行為
他人の商品・営業の表示(商品等表示)として著名(全国的に知られていること)なものを、自己の商品・営業の表示として使用する行為

(ア) 外国でのみ著名な商品等表示の使用を第三者に許諾している甲は、その商品等表示と類似の商品等表示である標章を付した商品を譲渡して、当該第三者の商品と混同を生じさせる行為を行った乙に対して、その標章を付した商品の引き渡し及び損害賠償を請求することができる。
→×:外国でのみ著名な商品等表示は、@周知表示混同惹起行為にもA著名表示冒用行為にも該当しない
(イ) 関西地方の需要者の間に広く認識されている商品等表示の使用を第三者に許諾している甲は、その商品等表示と同一の商品等表示である標章を付した商品を譲渡して、当該第三者の商品と混同を生じるおそれがある行為を行った乙に対して、その標章を付した商品の廃棄及び標章を製造する装置の除却を請求することができる。
→○:関西地方の需要者の間に広く認識されているので、@周知表示混同惹起行為に該当する。したがって、標章を付した商品の廃棄及び標章を製造する装置の除却を請求することができる。
(ウ) 関東地方の需要者の間に広く認識されている商品等表示を使用している甲は、その商品等表示と非類似の商品等表示である看板を使用した商品を譲渡した乙に対して、その看板の廃棄と謝罪広告を請求することができる。
→×:非類似の商品等表示である看板を譲渡したというのだから、周知表示混同惹起行為には該当しない。したがって、看板の廃棄と謝罪広告を請求することはできない。
(エ) 世界中の需要者に広く認識されている商品等表示を使用している甲は、その商品等表示と非類似の商品等表示である看板を使用して営業を行った乙に対して、不当利得の返還及びその看板の廃棄を請求することができる。
→×:非類似なのだから、不正競争行為類型に該当しない。したがって、不当利得の返還及びその看板の廃棄を請求することができる。

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