平成26年度1次試験解答:財務・会計
設問16
解答:イ
IRR(内部利益率)は、キャッシュフローを使用し、時間価値を考慮する点で、NPV(正味現在価値)と同様に理論的に優れているが、いくつかの問題点がある。
本間では、割引率10%のもとではNPVはY案のほうが高いが、IRRはX案のほうが上回っている。この場合、割引率10%のもとでは、NPVを用いた評価のほうが適切であり、IRRは適切な答えを導くことができない。
2つのプロジェクトから1つを選択する場合(相互排他的投資案)には、IRRを直接比較してはならず、プロジェクトのリスクを考慮した適切な割引率を用いたNPVで判断する必要がある。
もし、IRRを用いる場合には、本間のようにY案のキャッシュフローからX案のキャッシュフローの差をとってIRRを計算すればよい。
そうすれば、割引率が10%の場合には、IRRの計算結果10.55%が割引率を上回るので、Y案を実施すべきであるという結論が得られる。もちろん、そのときの差額キャッシュフローのNPVはプラスになっているはずである。
設問17
解答:イ
安全資産とは、収益率が1つの値をとる(標準偏差がゼロ)資産のことをいう。
例)国債
リスク資産とは、収益率が複数の値をとる(標準偏差が正の値)資産のことをいう。
例)株式やほとんどの債券、不動産、デリバティブなど
相関係数とは、2つの資産の収益率を例にとる場合、収益率が同じ方向に動くとき正の相関があるといい、収益率が逆の方向に動くとき負の相関があるという。相関係数は-1から1の値をとる。
- 相関係数=1の場合:まったく同じ方向に動く
- 相関係数=Oの場合:まったく関係なく動く
- 相関係数=-1の場合:まったく反対の方向に動く
安全資産の収益率とリスク資産の収益率との木目関徽をρ(ロー)としたとき、リスク資産の収益率が増加しようと減少しようと、安全資産の収益率は一定の値から変化しない(まったく関係なく動く)ため、ρは(ρ=0)である。
したがって、イが正解である。
設問18
解答:ウ
β値に関する計算問題である。
A証券と市場ポートフォリオについての相関関数の定義は、次のとおりである。
相関係数 | = | 共分散 |
A証券の標準偏差×市場ポートフォリオの標準偏差 | ||
共分散 | = | 相関係数×A証券の標準偏差×市場ポートフォリオの標準偏差 |
= | 0.4×10%×5% | |
= | 20 |
また、A証券のβ値について、定義式は次の通りである。
A証券のβ | = | A証券の収益率と市場ポートフォリオとの共分散 |
市場ポートフォリオの収益率の分散 |
市場ポートフォリオの収益率の標準偏差は5%なので市場ポートフォリオの収益率の分散は25(=5%×5%)である。
また、A証券の収益率と市場ポートフォリオの収益率との共分散は20であるから、A証券のβは次のようになる。
A証券のβ | = | A証券の収益率と市場ポートフォリオとの共分散 →20 |
市場ポートフォリオの収益率の分散 →25 |
||
= | 0.8 |
したがって、ウが正解である。
設問19
解答:イ
理論株価を計算するには、配当金と株式の期待収益率(株主資本コスト)が必要である。
株式の期待収益率は、与えられたデータからCAPMを利用して計算することになる。
@株式の期待収益率
CAPMの計算式より、
株式の期待収益率=安全利子率+β×(市場ポートフオリオの期待収益率-安全利子率)
=2%+1.5×(4%-2%)=5%
A理論株価
A社の配当は60円で毎期一定であることから、配当割引モデル(ゼロ成長モデル)により計算する。
よって、
理論株価=配当金÷株式の期待収益率=60円÷5%(0.05)=1,200(円)
となる。
よって、イが正解である。
設問20
解答:設問1:ウ 設問2:ウ 設問3:ウ
【設問1】
企業価値評価の手法を3つに大別される。
評価アプローチ | 内容 | 評価法 |
マーケット・アプローチ | 株式公開 (IPO) を目指している企業や上場している比較しやすい同業が存在する企業を評価する際によく使われる | 市場評価法,類似上場会社法(乗数法)等 |
インカム・アプローチ | 成長企業を評価する際などによく使われる | DCF法,収益還元法等 |
コスト・アプローチ | 成熟企業や衰退基調にある企業を評価する際などによく使われる | 簿価純資産価額法, 時価純資産価額法 等 |
(ア) | 収益還元法は、インカム・アプローチである。 |
(イ) | 純資産価額法は、コスト・アプローチである |
(ウ) | マルチプル法(乗数法)は、マーケット・アプローチである。 |
(工) | リアルオプション法は、インカム・アプローチである。 |
したがって、ウが正解である。
【設問2】
PBR(Price Book-value Ratio:株価純資産倍率)は、企業の株価と純資産の比率を示す指標です。 PBRは株価が割安か割高か、企業評価や投資判断の目安として用いられます。 PBRは株価をBPS(1株当たり純資産)で割って求めます。
したがって、ウが正解である。
【設問3】
DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)とは、事業計画書からその会社が将来どれくらいの利益(フリーキャッシュフロー)を得るか計算し、将来の不確定性やリスクを「割引率」として考慮したうえで計算式から企業価値を求める手法です。
- 加重平均資本コスト(WACC)を求める。
株主資本価値は、配当割引モデルを用いて求める。
株主資本価値 : 毎年の配当額 360万円 =4,000万円 株式の要求収益率 9%
負債価値は、毎年の支払利息を負債の利子率で除すことで求める。
負債価値 : 毎年の支払利息 500万円 =10,000万円 負債の利子率 5%
よって、加重平均資本コスト(WACC)は、次のようになる。
WACC 5%×(1-40%) × 10,000万円 +9%× 4,000万円 10,000万円+4,000万円 10,000万円+4,000万円 = 660 14,000
- フリー·キャッシュフローを計算し、最後に、フリー·キャッシュフローをWACCで除すことで企業価値を計算する。
フリー·キャッシュフロー 1,100万円×(1-40%)=660万円 - 企業価値の計算をする
企業価値 : フリー·キャッシュフロー 660万円 =14,000万円 WACC 660 14,000
よって、ウが正解である。