トップページ企業経営理論トップページ過去問題 平成21年度 問題 >平成21年度解答

平成21年度1次試験解答:企業経営理論

設問11

解答:設問1:ウ 設問2:エ 設問3:エ

(設問1)

ヘンリー・ミンツバーグは、組織構造とは「単純構造」「機械的官僚制」「プロフェッショナル官僚制」「事業部制構造」「アドホクラシー」という5つの形態に大まかに分類できるとした。

単純構造
トップからミドル、現場部門と指揮系統を持つ単純な縦構造の組織形態。戦略的トップによる現業部門に対する直接的コントロールが強くなる。創業時の企業は、この組織形態。
機械的官僚制
現場部門における業務プロセスが標準化され、テクノストラクチャの役割が大きくなった組織形態。
プロフェッショナル官僚制
現場部門において技術面の標準化が進み、専門家が配置された現場部門とサポートスタッフの役割が大きくなった組織形態。
事業部制構造(分権構造)
事業部制のような組織形態で、それぞれの組織を管理するミドルラインの役割が大きくなる。
アドホクラシー
組織内のメンバーによる管理・調整機能を重視した組織形態で、サポートスタッフは少なく役割は大きくなる。
(ア) 専門家の業務に対する戦略的トップによる直接的コントロールが強い。
⇒×:単純構造の説明である。
(イ) 多角化した企業における事業部のポートフォリオマネジメントに適している。
⇒×:事業部制構造(分権構造)の説明である。
(ウ) 定型的な業務を効率的に遂行する戦略に適している。
⇒×:事業部制構造(分権構造)の説明である。
(工) テクノストラクチャは少なく、専門職を支援するサポートスタッフは多い。
⇒○:プロフェッショナル官僚制の説明である。
(オ) 比較的単純で安定的な環境に適しており、公式化の程度は比較的高い。
⇒×:械的官僚制の説明である。

(設問2)

アドホクラシーは通常の官僚的制度的な指揮系統を断ち切ることで機会を機敏に捉え、問題を解決し、結果を出すとしている。また、官僚制(bureaucracy)は旧時代のもので、アドホクラシーのほうが望ましいとされる。

(ア) サポートスタッフが多く、変化する環境に適応できる支援を行なっている。
⇒×:機械的官僚制やプロフェッショナル官僚制の説明である。アドホクラシーではサポートスタッフは少ない。
(イ) 事業部長などのミドルラインに権限を集権化し、環境への迅速な対応を可能にしている。
⇒×:事業部制構造(分権構造)の説明である。
(ウ) 戦略的トップによる現業部門に対する直接的コントロールが強くなる。
⇒×:単純構造の説明である。
(工) 組織内の仲間によるコントロールと相互調整によって管理される傾向が強い。
⇒○:アドホクラシーの説明である。
(オ) テクノストラクチャが充実しており、現業部門に対する支援を積極的に行っている。
⇒×:機械的官僚制の説明である。

←問題に戻る

設問12

解答:設問1:ウ 設問2:ウ

情報の粘着性とは、情報の受け手が情報を利用できるようになるために必要な移転費用である。

  • 情報の粘着性が高い場合⇒移転費用が高く、移転が難しい
  • 情報の粘着性が低い場合⇒移転費用が安く、移転が易しい
(設問1)
(ア) LANなどの情報システムへ投資し、従業員間で情報の共有がスムーズに行われるようにする。
⇒情報の粘着性が高い場合、情報システムでの情報の共有は難しい。
(イ) インターネットなどの検索エンジンを活用して、広い範囲から技術情報を獲得する。
⇒×:報の粘着性が高い場合、インターネットなどの検索エンジンによる情報の共有は難しい。
(ウ) 顧客が生産活動や消費活動を行っている現場に技術者や営業員を行かせ、対面形式の会話を通じて入手する。
⇒○:情報の粘着性が高い場合、フェイストゥフェイスのコミニュケーションが重要である。
(工) コンサルタントや広告代理店を通じてマーケティング調査を行い、統計的に意味ある情報を入手する。
⇒×:コンサルタントや広告代理店を通じて取得する情報は形式知に該当する。形式知と暗黙知では暗黙知の方が移転に費用がかかる(すなわち情報の粘着質が高い)。
(オ) 最先端の技術情報が掲載されている学会誌や業界雑誌などをレビューする専門の部門を配置する。
⇒×:最先端の技術情報が掲載されている学会誌や業界雑誌などの情報は形式知に該当する。形式知と暗黙知では暗黙知の方が移転に費用がかかる(すなわち情報の粘着質が高い)。
(設問2)
(ア) 広告宣伝活動
⇒×:組織学習能力とは無関係である。
(イ) サプライチェーンマネジメント
⇒×:組織学習能力とは無関係である。
(ウ) 自社の研究開発投資
⇒○:リードユーザの持つ情報やニーズを取り込むことが可能となり自社の技術陣のレベルが向上する。
(工) 市場調査
⇒×:市場調査では一般ユーザの情報やニーズしか把握できない。
(オ) 従業員満足度の向上
⇒×:組織学習能力とは無関係である。

←問題に戻る

設問13

解答:イ

(イ) 組織文化は、外部環境への適応行動である戦略行動にはあまり影響を与えないが、組織内部の管理や人事評価などに強い影響力を持つ。
⇒組織文化は、外部環境への適応行動である戦略行動には大きな影響を与える。また、組織内部の管理や人事評価などに強い影響力を持つ。

←問題に戻る

設問14

解答:エ

エンパワーメントとは、与えられた業務目標を達成するために、組織の構成員に自律的に行動する力を与えることである。

(工) 従業員満足度調査の中で、上司のリーダーシップやキャリア開発への支援のあり方を部下が評価し、それを上司に直接提出させる。
⇒上司のリーダーシップやキャリア開発への支援のあり方を部下が評価し、それを上司に直接提出するやり方では部下は上司のことが気になり適切な評価はできない。人事部や直属の上司とは異なる管理者に提出するべきである。

←問題に戻る

設問15

解答:設問1:イ 設問2:オ

コンピテンシーとは、ある職務や状況において、期待される業績を安定的・継続的に達成している人材に、一貫して見られる行動・態度・思考・判断・選択などにおける傾向や特性のことである。

コミットメントとは、自分にとって重要なものや意味のあるものへの関与や執着およびそれによって引き起こされる現在の行為や関係の継続を表すものである。

(設問1)
(ア) 管理者は、部下のコンピテンシーの状態を絶えず評価し、彼らがミスを犯さないようにプロセスをチェックしていく。
⇒×:管理者がミスを犯さないようにプロセスをチェックしていくと部下は委縮してしまう。
(イ) 現場の従業員に経営資源を活用する権限を移譲し、自己規律に基づくエンパワーメントをしていく。
⇒○:エンパワーメント(権限委譲)とは、与えられた業務目標を達成するために、組織の構成員に自律的に行動する力を与えることである。経営資源を活用する権限を移譲し、自己規律に基づくエンパワーメント(権限委譲)をしていくことで個人のコンピテンシーを高め、自発的に職務にコミットできるようになる。
(ウ) 個人の自発的コミットメントを引き出すために、従業員の賃金のベースアップ率を高くする。
⇒×:金銭的報酬といった外的要因では、個人のコンピテンシーを高め、自発的に職務にコミットできるようにならない。
(工) 従業員個人の職務を明確に規定し、どの職務を担っても処遇に差が生じないよう、一律の賃金体系を導入する。
⇒×:金銭的報酬といった外的要因では、個人のコンピテンシーを高め、自発的に職務にコミットできるようにならない。
(オ) 同僚や高い評価を受けている従業員に対して不公平感を感じないようにするため、従業員相互で評価についての比較をさせないようにする。
⇒×:従業員相互で評価についての比較をしないと高い評価を受けている従業員の優れている点を学習することができなくなる。
(設問2)
(ア) 管理者は部下のメンターもしくはコーチとして行動し、専門職能を基軸とした分権的組織構造を構築する必要がある。
⇒×:メンターとは、仕事や人生に効果的なアドバイスをしてくれる相談者のことである。 専門職能を基軸とした分権的組織構造を構築すると組織メンバーは所属部署へのコミットメントを高めることとなり部門間のコンフリクト(衝突)発生の可能性を高める。
(イ) 個人間の情報伝達をオープンにするため、非公式の情報伝達ルートを制限し、誰でも情報を入手できるようにする。
⇒×:非公式の情報伝達ルートを制限したのでは自由な意見交換が阻害されてしまう。
(ウ) 個人の責任・権限と財務的報酬を明確に定義した業務評価システムを構築し、個人レベルの学習が組織にとってどう関係するかを理解できるようにする。
⇒×:×:個人の責任・権限と財務的報酬を明確に定義した業務評価システムを構築した場合、個人は自らの職務にのみコミットメントを高めることとなる。
(工) 従業員が参加できる集団的意思決定方式を導入し、全員一致の合意に基づく政策決定を優先するようなリーダーによって運営される必要がある。
⇒×:全員一致の合意に基づく政策決定を優先した場合、個人的な意見が抑圧されてしまう。
(オ) 成熟した事業部門の枠を超えて、他の事業部門との横方向の情報交換を促進するような場の設定や、情報システムを導入する。
⇒○:個人のコンピテンシーとコミットメントを、組織全体の力として統合していくための方策として有効である。

←問題に戻る

Copyright(C)Katana All right reserved.