平成16年度1次試験解答:企業経営理論
設問21
解答:設問1:エ 設問2:エ
( 設問1)
資源依存関係を回避する戦略には、2つの典型的なものがある。
- 代替的取引関係の開発
- 多角化
(ア) | 事業の買収や売却を通じたドメインの変更は、資源依存関係を回避する有効な手段である。 →○:事業の買収や売却を通じたドメインの変更を行うことで結果的に企業は多角化することになる。これによって資源依存関係を回避することができる。 |
(イ) | 製品多角化を進めることを通じて、企業の売り上げを特定顧客の動向に依存することを回避し、リスクを分散することができる。 →○:製品多角化を進めることで、特定の顧客との依存関係を弱めることができる。 |
(ウ) | 石油にかわる天然ガスのように、代替的資源の開発は、インプットサイドの供給業者への依存関係を回避する行動として採用される。 →○:石油にかわり、天然ガスを利用することが可能になれば、石油を共有している業者への依存関係を解することができる。 |
(工) | 部品や原材料の代替的なセカンドソースを確保しておくことは、取引コストを削減できるため、資源依存関係そのものを回避する戦略として効果的である。 →×:部品や原材料の代替的なセカンドソースを確保しておくことは、資源依存度を低くする方法である。しかし、複数の供給源との取引は取引コスト(取引先についての情報収集を行う。契約を締結する。契約内容を履行する等)を増大させる。 |
( 設問2)
資源依存関係それ自体を変更できない場合には、他組織からのコントロールを最小限に抑えるために次の方法がとられる。
- 交渉(直接組織間の財・サービスの取引に関する合意を意図とした折衝)
- 包摂(利害関係者の代表を参加させること)
- 結託(2つ以上の組織が連合する)といった方法がある
(ア) | カルテルのように将来の活動に関する共同意思決定ができれば、資源の非生産的な使用を避け、他組織からの支配も回避できる。 →○:「結託」に該当する。カルテルとは、同一産業内において、独占を目的とする企業間の協定のことである。 |
(イ) | 企業間で技術や仕様・デザインについて統一したり、業界標準を決めたりするのは、消費者からの影響を最小限にとどめるための戦略となる。 →○:「結託」に該当する。企業間連合を形成し技術や仕様・デザインを統一したり、デファクトスタンダードの確立を行うで、他組織からの支配を効果的に回避できる。 |
(ウ) | 企業が利害関係組織と直接交渉して、長期的かつ安定的な資源供給に関する合意や協定を結ぶことができると、他組織からの支配を効果的に回避できる。 →○:「交渉」に該当する。企業が利害関係組織と直接交渉して、長期的かつ安定的な資源供給に関する合意や協定を結ぶことができると、他組織からの支配を効果的に回避できる。 |
(工) | 金融機関から財務的支援を望む企業が、自社の取締役会に金融機関のメンバーを受け入れることは、「結託(coahtmn)」と呼ばれる支配回避のための対環境戦略である。 →×:金融機関から財務的支援を望む企業が、自社の取締役会に金融機関のメンバーを受け入れることは、「包摂」と呼ばれる支配回避のための対環境戦略である。 |
設問22
解答:ウ
ジョブ・ローテーションとは、従業員にひとつの職務だけでなく、他にいくつかの職務を定期的、計画的に経験させる方法である。
(ア) | 高年齢層のジョブ・ローテーションは、従業員の職務適性を評価するために行われるもので、実力主義・実績主義と組み合わせると、配置管理への不満が生まれやすい。 →×:若年層のジョブ・ローテーションは、従業員の職務適性を評価するために行なわれるが、高年齢層のジョブ・ローテーションは主に視野・管理能力の拡大の為に行なわれる。 |
(イ) | 事前に企業がキャリアパスを公開すると、従業貞はやる気をなくしてしまうことが多いので、異動はその都度、従業員と企業が相談して決めることが望ましい。 →×:キャリアパスとは、人事異動を含めた配置・昇進ルートそのものや配置・昇進の際の基準・条件のことである。キャリアパスを公開し、本人の意思や適性によって相談して決めるのが望ましい。そうすることで、従業員の自己啓発意欲も喚起される。 |
(ウ) | ジョブ・ローテーションは、昇進と組み合わせて実施することにより、従業員のモラールアップにつながる。 →○:ジョブ・ローテーションと昇進と組み合わせて実施することで従業員のモラールは向上すると考えられる。 |
(工) | 若い年齢層の従業員を対象としたジョブ・ローテーションは、ゼネラリストを育成する早期選抜の目的で行われることが多く、選抜にもれた従業員の職場での不満解消の手段ともなる。 →×:若い年齢層の従業員を対象としたジョブ・ローテーションは主に従業員の職務適性を評価するために行われる。また仮に設問のように早期選抜も目的で行なわれた場合、選抜にもれた従業員の職場での不満が増幅される。 |
設問23
解答:ア
- 低次学習(lower order learnmg)
- 単なる行為の繰り返しや部分修正、シングル・ループ学習などが含まれる。
- 高次学習(higher order leaming)
- 組織全体に影響を与える学習やダブル・ループ学習、規範、認知枠組み、根源的仮定の変化等が含まれる。
(ア) | 一定期間以上、目標水準を超える業績が続くと、いわゆる「有能性のわな(competencytrap)」が発生し、現在の能力を磨く方向にしか関心がいかなくなるから。 →○:「有能性のわな(competencytrap)」とは、企業組織および環境を構成している諸組織は、満足水準を超過する十分な利潤を得ている場合、満足してしまい、現状を変更する可能性を探索したり、そうした変革を実行しようとする十分な動機を持たなくなることをいう。 |
(イ) | 環境が急激に変化すると、いわゆる「ゆでガエル」現象が起こりやすく、高次学習に相当する組織の抜本的変革の時間的余裕がなくなってしまうから。 →×:ゆでガエル現象とは、知らないうちに少しづつ環境が変わっていき、気がついたらもう手遅れの状態のことである。カエルを熱いお湯に入れると、ビックリして飛び跳ねて命が救われる。しかし、水の状態から入れてその水がだんだん熱くなっていくと、カエルはその変化に気付けず、やがて命を落としてしまう。このようなことから名づけられた。環境がゆるやかに変化すると、いわゆる「ゆでガエル」現象が起こりやすい。 |
(ウ) | 組織の行動と成果との因果関係が、高次学習の場合には具体的で明確であるのに対し、低次学習の場合には曖昧であるから。 →×:組織の行動と成果との因果関係が、高次学習の場合には曖昧な場合が多い。逆に、低次学習の場合は具体的で明確である。 |
(工) | 組織の中で分業が行われ、それぞれの部分がルースにしか結合していない状況下では、部分の変化・学習が組織全体に波及する可能性が高くなるから。 →×:組織の中で分業が行われ、それぞれの部分がルース(ゆるやか)にしか結合していない状況下では、部分の変化・学習が組織全体に波及する可能性が低くなる。 |
設問24
解答:ア
- OJT(On the-Job Training:職場内訓練)
- 上司や先輩の指導の下で実際に仕事を行なうことで業務を行なう際に必要な知識や能力を部下に身に付けさせる手法である。
- Off-JT(Off the job training:職場外訓練)
- 実際の業務から離れて、特別に時間と場を設けて行なわれる教育訓練手法である。社内での集団的訓練、社外でのセミナー、通信教育、外部講習会への参加がそれにあたる。
(ア) | Off-JTは、体系化された知識を整理したかたちで教育することができるため、職務に対する知識や能力を十分にもっていないときに、OJTと組み合わせて用いると効果が高い。 →○:OJTのデメリットとしては、体系的な知識・技術の習得が困難なことがある。それをOff-JTと組み合わせるとことによって補完することができる。 |
(イ) | Off-JTは、ビジネススクールや通信教育など企業以外の場での自己啓発活動を意味し、個人の自律的キャリアアップに有効な手段である。 →×:ビジネススクールや通信教育など企業以外の場での自己啓発活動は「自己啓発」と呼ばれる。すなわち、Off-JTは、自己啓発活動でもないし、自立的キャリアアップの手段でもない。 |
(ウ) | OJTは、現場の職務を経験させることを通じた人材育成手段であるから、成果主義賃金体系と組み合わせることで最も効果を発揮する。 →×:OJTは、あくまでも教育・訓練である。成果主義賃金体系と組み合わせることは、OJTの展開を妨げる。 |
(工) | OJTは、マニュアルがしっかりと導入されている生産現場などでよく用いられ企業業績などの客観的成果との関連を測定しやすいために、個人に対する学習効果は高い。 →×:OJTは、生産現場だけでなく、ホワイトカラーの職場でもよく用いられる。またマニュアルがしっかりと導入されている場合には、それを読めばいいのであって、OJTの必要性は低い。 |
設問25
解答:ア
(ア) | 仕事の方針や目標などの決定にメンバーを参加させることによって、メンバーの集団へのコミットメントが強くなり、支持的な規範が形成されやすい。 →○:コミットミントとは「約束、義務、責務、債務、かかわりあい」と訳され、個人や組織の目標を明確に約束して、その目標達成に全力を尽くし、もし達成できない場合はその責任を明確にするという考え方のとこをいう。仕事の方針や目標の決定段階からメンバーを参加させることで、集団と個人の目標の共有化が進む。またコミットメントも強くなり、支持的な規範が形成されやすい。 |
(イ) | 集団が一定期間以上活動を続けると、メンバーが集団規範を共有するようになり、同調行動を促す圧力が強くなって、組織の成果に悪影響を与えるため、集団のメンバーを頻繁に組み替えることが有効である。 →×:集団のメンバーを頻繁に組み替えることことは、社員の共通意識や目標設定が困難になる。また、一概に集団が一定期間以上活動を続けると、組織の成果に悪影響を与えるとはいえない。 |
(ウ) | 集団の意思決定では、「赤信号みんなで渡れば恐くない」といった表現に典型的に表されるように、個人の意思決定に比べてよりリスクの高い選択肢を選択してしまう可能性が高い。 →×:そのような可能性はあるが、可能性は高くない。むしろリスクの低い選択肢を選択してしまう可能性が高い。 |
(工) | 集団の凝集性が低く、強力なリーダーが存在しないと、集団内では多数派の意見に同調する圧力が働くため、「集団思考(group think)」と呼ばれる近視眼的意思決定が行われやすくなる。 →×:集団の凝集性とは、「集団の団結度合い」のことである。よって集団の凝集性が高く強力なリーダが存在しないと不在の場合は、集団内では多数派の意見に同調する圧力が働くため、「集団思考(group think)」と呼ばれる近視眼的意思決定が行われやすくなる。 |
設問26
解答:イ
ハーツバーグの「動機づけ―衛生理論」・職務設計に関する問題である。
労働の単純化、単調化、他律化などといったいわゆる「労働疎外」(結果としてモラールの低下、作業ミスの増加、副次行動の増加などが起こる)に対する対策として、多能工化、ワンマン・マルチセッション、円卓生産方式、流れ作業の廃止、職務の細分化(分業)の見直し、などがあげられている。
(ア) | 与えられた職務を達成するのに、複数の多様な技能を必要とするように職務を設計すると、従業員に大きなストレスを生み出すため、効率性が低下してしまう傾向が高い。 →×:多能工化は職務充実の対策のひとつである。多能工化によって労務の単純化を防ぐことができる。 |
(イ) | 職務の目標設定や遂行の手段手続きを決める自由裁量を与えることで、コミッ トメントを高めることができるので、動機づけの効果も高い。 →○:個人が職務の目標設定や遂行の手段・手続き決定に関与するほど、個人と組織の間における目標の相違は小さくなる。また個人の職務に対するコミットメントの強化やモチベーションの向上につながる。 |
(ウ) | 職務を容易に反復できる課業に分解し、単純化を進めることによって・従業員のモチベーションを高めることができ、ミスの発生率を最小限にすることができる。 →×:労働の単純化によって労働疎外感が生じモチベーションが低くなりやすい。 |
(工) | ハーズバーグは、「衛生要因」と「動機づけ要因」を区別し・職務設計には、まず、より重要な「動楔づけ要因を十分確保し、そのうえで「衛生要因」を与えるようにすべきだと主張した。 →×ハーズバーグは、衛生要因(会社の方針、作業条件、人間関係、給料、雇用の安定など)を十分に確保し、その上で動機づけ要因(仕事の達成、責任の増大、やりがいのある仕事、成長など )を与えるべきであると主張した。 |
設問27
解答:ア
(ア) | 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は無効。 →○:労働基準法第18条2が平成15年(施行は平成16年1月1日)に定められた。その他の選択肢は既に労働基準法に定められている。よってアが解答である。 |
(解雇)
第18条の2 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
第18条の2 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
設問28
解答:オ
労働安全衛生法とは、労働災害を防止し、労働者の安全と健康の確保や快適な職場環境の形成を促進する為の法律である。設問は、労働安全衛生法第10条に関する問題である。
(総括安全衛生管理者)
第10条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。
1.労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
2.労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
3.健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。
4.労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
5.前各号に掲げるもののほか・労働災害を防止するため必要な業務で、厚生労働省令で定めるもの
第10条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。
1.労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
2.労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
3.健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。
4.労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
5.前各号に掲げるもののほか・労働災害を防止するため必要な業務で、厚生労働省令で定めるもの
(ア) | 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置をすること。 →○:3に該当する。 |
(イ) | 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。 →○:4に該当する。 |
(ウ) | 労働者の安全または衛生のための教育を実施すること。 →○:2に該当する。 |
(工) | 労働者の危険または健康障害を防止するための措置をすること。 →○:1に該当する。 |
(オ) | 労働者の就業の規則を作成すること。 →×:労働者の就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する使用者が作成する。 |
設問29
解答:オ
▼労働組合法第15条
(労働協約の期間)
第15条 労働協約には、3年をこえる有効期間の定をすることができない。
2 3年をこえる有効期間の定をした労働協約は、3年の有効期間の定をした労働協約とみなす。
3 有効期間の定がない労働協約は、当事者の一方が、署名し、又は記名押印した文書によつて相手方に予告して、解約することができる。一定の期間を定める労働協約であつて、その期間の経過後も期限を定めず効力を存続する旨の定があるものについて、その期間の経過後も、同様とする。
4 前項の予告は、解約しようとする日の少くとも90日前にしなければならない。
(労働協約の期間)
第15条 労働協約には、3年をこえる有効期間の定をすることができない。
2 3年をこえる有効期間の定をした労働協約は、3年の有効期間の定をした労働協約とみなす。
3 有効期間の定がない労働協約は、当事者の一方が、署名し、又は記名押印した文書によつて相手方に予告して、解約することができる。一定の期間を定める労働協約であつて、その期間の経過後も期限を定めず効力を存続する旨の定があるものについて、その期間の経過後も、同様とする。
4 前項の予告は、解約しようとする日の少くとも90日前にしなければならない。
(ア) | 3年を超える有効期間の定めをした協約は、3年の有効期間の定めをした協約とみなす。 →○:正しい(労働組合法第15条2項参照) |
(イ) | 一定の期間を定める協約であって、その期間の経過後も期限を定めず効力を存続する旨の定めがあるものについて、その期間の経過後も、当事者の一方が署名し、または記名押印した文書によって相手方に予告して、解約することができる。 →○:正しい(労働組合法第15条3項参照) |
(ウ) | 協約は、3年を超える有効期間の定めをすることができない。 →○:正しい(労働組合法第15条前文参照) |
(工) | 有効期間の定めがない協約は、当事者の一方が署名し、または記名押印した文書によって相手方に予告して、解約することができる。 →○:正しい(労働組合法第15条参照) |
(オ) | 有効期間の定めがない協約を解約する場合、その予告は解約しようとする日の少なくとも60日前にしなければならない。 →×:その予告は解約しようとする日の少なくとも90日前にしなければならない。(労働組合法第15条4項参照) |
設問30
解答:ア
逸脱、中断としないことになっている項目は次のものである。
- 日用品の購入その他これに準ずる行為
- 職業能力開発促進法第15条の6第3項に規定する公共職業能力開発施設における職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
- 選挙権の行使その他これに準ずる行為
- 病院又は診療所において診察を受けることその他これに準ずる行為
(ア) | 終業後、通勤途上にある病院に入院している同僚を見舞いに行く。 →×:該当項目がない為、通勤中とは認められない。 |
(イ) | 職業能力開発促進法による公共職業能力開発施設において行われる職業訓練を受ける。 →○:2より通勤中と認められる |
(ウ) | 選挙権を行使する。 →○:3より通勤中と認められる |
(工) | 日用品を購入する。 →○:1より通勤中と認められる |
(オ) | 病院または診療所において、診察、治療を受ける。 →○:4より通勤中と認められる |