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平成15年度1次試験解答:企業経営理論

設問21

解答:オ

イノベーションに関する問題である。

(ア) イノベーションの現場ではとかく情報が錯綜し、冗長性が増し能率が低下する傾向にあるので、冗長性を排除する工夫が必要である。
→×:様々な情報が錯綜するイノベーションの現場では安易に情報の冗長性を排除せず、新たな発想の生成を阻害しないようにする必要がある。
(イ) 知識創造は暗黙知を形式知に変換することであるから、理解の対立を表すコンフリクトの発生は、イノベーションの失敗に結びつく。そのためコンフリクトが発生しないよう十分注意して管理する必要がある。
→×:コンフリクトが発生したからといって、イノベーションが失敗するとは限らない。むしろコンフリクトが発生した根本的な原因を探索することによって創造的な環境を構築できる。
(ウ) イノベーションを計画的に遂行する組織には、有機的な(organic)管理システムよりも、機械的な(mechanistic)管理システムが望ましい。
→×:イノベーションの現場においては機械的な管理システムより有機的な管理システムの方が望ましい。
(工) 顧客や市場に関する情報が研究開発部門で必要になる場合があるので、あらかじめ情報収集・処理手続きを構築しておく必要がある。
→×:あらかじめ情報収集・処理手続きを構築しておくと既存の枠組内の情報しか研究開発部門にもたらされなくなる。イノベーションという観点からはふさわしくない。
(オ) 新製品企画部門のメンバーは、より豊かな情報交換を促進するためフェイス・ツー・フェイスの横断的コミュニケーションを行う必要がある。
→○:フェイス・ツー・フェイスにより横断的コミュニケーションが行なわれる。

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設問22

解答:設問1:イ 設問2:ウ

(設問1)
 一般的には以下のような傾向が認められている。

  1. 満足が低ければ低いほど、代替的なプログラムを求めてますます旺盛に探求を行う。
  2. 探求が旺盛に行われるほど、報酬の期待価値は高くなる。
  3. 報酬の期待価値が高くなればなるほど、満足水準は高くなる。
  4. 報酬の期待価値が高くなればなるほど、有機体の要求水準は高くなる。
  5. 要求水準が高くなればなるほど、満足は低くなる。
(ア) 希求水準が高くなると、満足度は低くなる。
→○:5より正しい。希求水準(自らが求める水準)が高くなると、満足水準も高くなるので、容易には満足しなくなるであろう。
(イ) 代替的行動案の探索が活発になると、報酬の期待値は低下する。
→×:2より誤り。代替的行動案の探索が活発になると、選択し得る行動案が増える。その結果、報酬の期待値は高くなる。
(ウ) 報酬の期待値が高くなると、希求水準も高くなる。
→○:4より正しい。もらえると思っている報酬の大きさが大きいほど、自らが満足するであろう希求水準は高くなる。
(工) 報酬の期待値が高くなると、満足度も高くなる。
→○:3より正しい。報酬の期待値が高くなると、満足度はより高くなる。
(オ) 満足度が低下すると、代替的行動案の探索が活発に行われる。
→○:1より正しい。現状に満足できなくなると、代替的行動の探索が活発に行われる。
(設問2)
(ア) 一定期間以上満足が得られない状況が続くと、従業員は希求水準自体を低くすることによって適応しようとする。
→×:一定期間以上満足が得られない状況が続くと、従業員は達成水準や目標水準を低くするよりも、希求レベルを超える代替的行動案を探すようになる。
(イ) 給与水準を高くすると希求水準も上がるので、短期的には満足度の上昇にはつながらない。
→×:給与水準を高くすると短期的に満足度の上昇につながる。
(ウ) 職務に満足している従業員は、組織目的にかなった行動へと動機づけられ、生産性が高い。
→○:労働生産性と職務満足度は正の相関をもつと言われている。
(工) 不景気になると、従業員は生産性を上げるより、離職する傾向が高くなる。
→×:一概にそうとはいえない。むしろ不景気になると代替的行動案(具体的には転職先を探す)を探しても見つからないので、離職する傾向が低くなる。
(オ) 満足度が低くなると、従業員は探索を活発化させるから、生産性の上昇に結びつく。
→×:労働生産性と職務満足度は正の相関をもつため満足度が低くなると生産性の下降に結びつく。

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設問23

解答:設問1:エ 設問2:オ

リーダシップ論に関する問題である。

 【 A 】〜【  D 】には次の語句が入る。
 リーダーシップとは、能率を超えた概念である。通常、能率とはあらかじめ設定された目標と、それに対応した手段とを結合させることを意味している。これに対して、セルズニック(P. Selznick)は、リーダーシップの基本的な機能を、組織の基本的な使命を設定し、 【A:組織に価値を注入すること】 にあるという。このような意味でのリーダーシップを、 【B:制度的リーダーシップ】という。
 また、リッカート(R. Likert)は、組織を個人対個人の関係としてみる伝統的組織観のもとで展開される【C:専制的リーダーシップ】 は、短期的に高い能率を生み出すことができるが、長期的には組織を崩壊させてしまうと指摘した。その上で、相互作用―影響方式、【D:支持的関係の原理】 などに支えられた重複集団としての組織観を提唱し、連結ピンとして機能する参加的リーダーシップの重要性を唱えたのである。

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設問24

解答:ウ

労働組合法に関する問題である。

(ア) 使用者が、労働組合の運営に必要な経費の支払いについて、財政的な援助を与えること。
→×:使用者が、労働組合の運営のための経費支払いについて、経理上の援助を与えることは不法行為にあたる。
(イ) 使用者が従業員のために労働組合を結成すること。
→×:労働組合とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主目的としている。すなわち、使用者が、労働組合を結成し、運営することに介入したり、これを支配したりすることは不法行為にあたる。
(ウ) 使用者が労働組合の組合費を組合員の給与から控除し、労働組合に渡す組合費を徴収すること。
→組合費の給与からの控除については、経費援助ないし不当労働行為としての利益供与にはあたらないとされている。よって不法行為ではない※ただし労使協定が必要である。
(工) 正当な組合活動をしていることを理由に、減俸、昇給停止などの待遇を与えること。
→×:労働者が労働組合の組合員であることを理由として、また労働組合に加入しようとしたり、労働組合を結成しようとしたりしたことを理由として、その労働者を解雇したり、その他不利益な取扱いをすることは不法行為にあたる。
(オ) 労働者が労働組合に加入しないことを雇用の条件として行う労働契約を結ぶこと。
→×:黄犬契約(雇用者が労働者を雇用する際に、労働者が労働組合に加入しないこと、あるいは、労働組合から脱退することを雇用条件とすること)の締結は不法行為にあたる。。

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設問25

解答:エ

職務分析に関する問題である。

(ア) 管理職ポストの不足に対してとられる対策として、専門職制度を採用することで、中高年労働者を処遇することが望ましい。
→×:管理者ポストの不足に対して、専門職制度を採用することは適切ではない。むしろ中高年労働者は専門的な技術についていけなくなることの方が多いはずである。
(イ) 職務評価に際しては、等級基準表を設定することで、客観的な妥当性を得ることができる。
→×:職務評価とは、職務分析によって得られた情報をもとに、従業員のそれぞれに課せられている職務について、その困難度や責任、作業条件等に応じて、その相対的価値を評価し、格付けすることである。職務評価では、等級基準表(職務の各等級に必要な職務内容等を一覧にしたもの)はあまり用いられない。等級基準表を用いるのは等級制度である。
(ウ) 人事考課においてはハロー効果をさけるために、個別の評価要素ごとに独立して評価することは適当ではない。
→×:ハロー効果とは、特定の要素や特徴によって全体の評価が幻惑されることである。ハロー効果をさけるためにも個別の評価要素を独立して評価するべきである。
(工) 高い業績をあげている労働者の行動特性をコンピテンシーといい、これを評価基準として職務モデルを作成することがある。
→○:正しい。この手法をコンピテンシーモデルという。
(オ) 労働者の人数が少ない場合には、人事考課に際しては労働者の勤務成績に序列をつけたり、順位をつけたりすると説得力が弱くなる。
→×:労働者の人数の大小に関わらず人事考課に際しては労働者の勤務成績に序列をつけたり、順位をつけたりするべきである。

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設問26

解答:イ

労働基準法に関する問題である。

(ア) 就業規則には、労働者の生活を保護するために、退職手当てに関する記述を必ず記載しなければならない。
→×:退職手当は相対的記載事項である。すなわち、必ずしも記載する必要はない
(イ) 使用者は労働契約の締結や存続を条件として、貯蓄の契約をさせてはならない。
→○:正しい。

▼労働基準法第18条(強制貯金)
「使用者は、労働契約に付随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない」
(ウ) 常時10人以下しか労働者を雇用していない企業では、就業規則を定める必要はない。
→×:常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を定め所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。また、10人以下の場合でも就業規則は定めるのがのぞましい。
▼労働基準法第89条(就業規則) 
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
(工) 未成年者の雇用に関しては、父母や後見人など法定代理人と労働契約を締結しなければならない。
→×:労働契約は、未成年者であっても本人と締結しなければならない
(オ) 我が国では、労働期間を1年未満に定めた労働契約は無効である。
→×:改正労働基準法により、平成16年1月1日から、労働契約の契約期間を3年以内とすることができることとなった。
また、専門的な知識、技術又は経験(以下「専門的知識等」と言います。)であって、高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当するものを有する労働者がそのような専門的知識等を必要とする業務に就く場合に締結する労働契約については、契約期間を5年以内とすることができることとなった。
▼労働基準法第14条(契約期間等)
労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、5年)を超える期間について締結してはならない。

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設問27

解答:ア

(ア) 商法上、取締役の役員報酬は、確定金額報酬、不確定金額報酬、非金銭報酬の区分に応じて定款または株主総会の決議をもって定めなければならない。
→○:取締役の報酬は、定款または株主総会の決議によってその額や算定方法が決定される(会社法361条、旧商法269条)。

▼会社法第361条
1. 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。

  1. 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
  2. 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
  3. 報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容

2. 前項第二号又は第三号に掲げる事項を定め、又はこれを改定する議案を株主総会に提出した取締役は、当該株主総会において、当該事項を相当とする理由を説明しなければならない。

(イ) 職能給とは、各職務の遂行に必要な能力を分析・評価し、それをもとに職務ごとに設定する給与システムである。
→×:職務給とは、各職務の遂行に必要な能力を分析・評価し、それをもとに職務ごとに設定する給与システムである。職能給とは従業員の職務遂行能力を基準に決定される基本給のことである。
(ウ) ストック・オプションとは、権利者が将来においてあらかじめ決められた価格で自社株を購入することができる権利であるが、新株引受権によるものはこれに含まれない。
→×:ストック・オプションは新株引受権として扱われる。
(工) 賃金は全額通貨で支払われなくてはならないため、たとえ多く支払い過ぎた場合でも、その過払い分を調整によって相殺することは許されない。
→×:条件付では有るが、賃金を多く支払い過ぎた場合において、その過払い分を調整によって相殺することは認められている。
(オ) 低成長企業では年功給はコストを圧迫するが、技術革新が盛んな成長企業で年功給が適している。
→×:技術革新が盛んな成長企業では年功給より職能給や成果給が適している。

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設問28

解答:エ

製品ライフサイクルに関する問題である。

(ア) 既存の市場セグメント以外へ市場導入をする時期である。
→○:既存の市場セグメント以外へ市場導入をする時期で多いのは成熟期であるが、成長期にも若干とはいえ行なわれるので正しい。
(イ) 競争企業が多数、市場参入してくる時期である。
→○:市場が成長しているので競争企業が多数、市場参入してくる。
(ウ) 市場に品質を改善した新商品や価格を下げた普及品を導入していく時期である。
→○:競争企業が多数、市場参入してくるので他社商品との差別化や普及品を導入していく必要がある。
(工) 製品の認知度をあげるために、広告とパブリシティに予算を多く配分する時期である。
→×:成長期には既に製品は認知されていなければならない。製品の認知度をあげるために、広告とパブリシティに予算を多く配分する時期は導入期である。
(オ) 流通チャネルを新規開拓し、それを拡大する時期である。
→○:成長期には、流通チャネルを開拓し、市場カバレッジ(市場の適用範囲)の拡大が図られる。

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設問29

解答:ア

市場細分化に関する問題である。

(ア) 市場セグメントに対して、効果的にコミュニケーションできることが必要である。
→○:正しい。市場細分化が有効であるための条件である「実行可能性」に関する説明である。
(イ) 市場セグメントの設定には、ロイヤルティの測定が必要である。
→×:市場セグメントの設定には、必ずしもロイヤルティは必要ない。
(ウ) 市場セグメントは可能な限り小さなセグメントにする必要がある。
→×:必ずしも小さなセグメントにする必要はない。商品・サービス戦略を行い、十分な利益をあげるだけの市場規模があることが重要である。「維持可能性」
(工) 市場セグメントはライフスタイルや性格といった心理的変数でまず分割する必要がある。
→×:市場細分化の基準には心理的変数(社会階層、ライフ・スタイル、パーソナリティ(性格・個性)など)以外にも地理的変数(地域、都市の規模、人口密度、気候など)、人口統計的変数(年齢、性別、家族状況、所得、職業、教育水準、宗教など)、行動的変数(購買頻度、追求される利益、使用率、ロイヤリティなど)がある。その中からどの変数を選択するかは企業によって異なるので、必ずしも心理的変数で分割する必要はない。
(オ) 市場セグメントを設定するために変数はできるだけ多く使う必要がある。
→×:変数をできるだけ多く使用するかは製品ごとに異なる。必要に応じて選択するべきである。また変数を多く用いると標的市場が十分な規模をもちえなくなる。

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設問30

解答:ア

  セグメントA セグメントB
粗利益 6万人×10%×30,000円=1億8千万円 3万人×20%×35,000円=2億1千万円
費用 6万人×2回×2,500円=3億円 3万人×4回×2,000円=2億4千万円
損失 1億8千万円-3億円=-1億2千万円 2億1千万円-2億4千万円=-3千万円

よってセグメントA及びセグメントBも損失となる。よって解答はアである。

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