平成21年度1次試験問題:経済学・経済政策
設問16
不景気になると、規模の経済性を獲得するための水平的な企業合併が盛んになることが予想される。独占禁止法に照らして、水平的な企業合併が認められる際の判断基準となるのが、競争を実質的に制限することになるかどうかである。これに関連し、独占の程度に関する指標としてハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)がある。各企業の市場占有率を小数点以下の数値(例えば、0.2)で表すと、HHIのとりうる範囲は0から1の間の数値となる。このHHIに関する記述として最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。
a | HHIは、当該業界のすべての企業の市場占有率の2乗和で表される。 |
b | HHIは、当該業界の上位5社の市場占有率の2乗和で表される。 |
c | 独占状態に近ければ近いほど、HHIの値は1に近づく。 |
d | 独占状態に近ければ近いほど、HHIの値は0に近づく。 |
【解答群】 (ア) aとc (イ) aとd (ウ) bとc (エ) bとd
設問17
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
株価下落や不良債権増大に直面した銀行は、中小企業を含む民間企業への貸し出しを減らす必要に迫られる。健全な企業に対しても銀行側の都合で貸し出しが減少するなど、貸し渋り、貸しはがしのような社会問題が発生した。
このような銀行の行動の背景には、銀行が国際取引を行う際の自己資本比率に関する規制がある。その規制は、「自己資本比率が8%以上でなければ、銀行は国際的な業務ができない」というものである。
以下では、自己資本比率に関する規制について、次のような単純な構造を考える。
自己資本比率=自己資本÷貸し出し
自己資本=基本項目+補完項目
基本項目:資本金+法定準備金+剰余金など
補完項目:株式・社債の含み益(その45%を上限)など
ただし、補完項目の合計が基本項目の合計を超えてはならない。
ここで、次のような単純化された資本構成の銀行を考える。
基本項目は、36億円。
補完項目は、株式・社債の含み益のみで、その額は80億円。
この場合、自己資本比率は8%である。
自己資本比率 | = | {36+80×(45/100)}÷900 |
= | 0.08 |
(設問1)
株価下落などにより、株式・社債の含み益が半分の40億円に低下した場合、自己資本比率は何%になるか。最も適切なものを選べ。
【解答群】 (ア) 3% (イ) 4% (ウ) 5% (エ) 6% (オ) 7%
(設問2)
株価下落などにより、株式・社債の含み益が半分の40億円に低下した場合、8%の自己資本比率に関する規制を達成するためには、民間貸し出しを今よりどれほど減らす必要があるか。最も適切なものを選べ。
【解答群】 (ア) 90億円 (イ) 135億円 (ウ) 180億円 (エ) 225億円
設問18
リスク選好に関する下記の設問に答えよ。
(設問1)
下図の曲線は、ある消費者の所得と効用水準の関係を表したものである。この消費者のリスク選好度とリスクプレミアムに関し、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。ここで、リスクプレミアムの値は、この個人が合理的に期待する所得を保障する保険に対して支払ってもよいと考える保険料の額を表す。
a | この消費者はリスク愛好的である。 |
b | この消費者はリスク回避的である。 |
c | リスクプレミアムは負の値をとる。 |
d | リスクプレミアムは正の値をとる。 |
【解答群】 (ア) aとc (イ) aとd (ウ) bとc (エ) bとd
(設問2)
不況に直面したとき、企業は雇用を削減する必要に迫られる。労働者は解雇されれば大幅な所得減に直面するが、解雇されなければこれまでと同等の所得水準を維持できる。したがって、不況下では労働者は所得水準の変動リスクに直面することになる。一方、ワークシェアリングでは、すべての労働者が解雇されるわけではないものの、一定水準の所得減となる。リスク選好度に関して最も適切なものはどれか
【解答群】 (ア) リスク愛好的な労働者はワークシェアリングを好む。 (イ) リスク回避的な労働者はワークシェアリングを好む。 (ウ) リスク中立的な労働者はワークシェアリングを好む。 (エ) リスク選好度にかかわらず、どの労働者もワークシェアリングを好まない。
設問19
企業は、ある研究開発プロジェクトに関し、本格的な投資の意思決定の時期を遅らせ、プロジェクトの進捗状況などの不確実性が軽減された段階で、意思決定を行うケースがある。このケースでは、行おうとしていた投資のリターンが予想されたほど高くないと判明した場合、投資を差し控えることができる。すなわち、ダウンサイトのリスクをゼロにして、アップサイドの利益だけを享受できる。このような考え方を表す言葉として最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 機会主義 (イ) ヘッジ (ウ) リアルオプション (エ) リスクシェア
設問20
ある合理的な消費者がX財とY財を消費するとしよう。X財とY財は、ともに正常財である。ある価格の組み合わせのもと、下図では予算制約式Aが表わされている。一方、別の価格の組み合わせで予算制約式Bが表されている。予算制約式Aにおいて、この消費者は最も高い効用をもたらす点としてc点を選んだ。この消費者にc点より高い効用を与える可能性のあるX財とY財の消費量の組み合わせを表す点はどれか。最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【解答群】 (ア) a点 (イ) b点 (ウ) d点 (エ) e点