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平成19年度1次試験解答:経営法務

設問1

解答:イ

入札談合とは、国、地方公共団体、特殊法人等が行う公共事業の発注や、物品、工事等の調達先を決定する入札に際し、入札参加者間において事前に落札価格や落札業者を決めるというものである。

(ア) 入札談合がなされた場合でも、入札談合行為がなく適法に入札が行われたと仮定した場合に想定される落札価額が、入札談合行為に基づき行われた実際の落札価額を上回っていれば、違法とはならない。
→×:入札談合がなされた場合、落札価額が適切であったとしても独占禁止法が禁止する不正な取引制限に違反する。
(イ) 入札談合等関与行為防止法では、公正取引委員会から、各省庁の長等に対して、入札談合等関与行為を排除するために必要な改善措置を要求できる制度など、入札談合防止のための特別な規定が置かれている。
→○:正しい
▼入札談合等関与行為防止法 第3条
公正取引委員会は、入札談合等の事件についての調査の結果、当該入札談合等につき入札談合等関与行為があると認めるときは、各省各庁の長等に対し、当該入札談合等関与行為を排除するために必要な入札及び契約に関する事務に係る改善措置(以下単に「改善措置」という。)を講ずべきことを求めることができる。
(ウ) 入札談合に参加した企業に対しては、独占禁止法では、課徴金を課すことができず、刑法の談合罪に該当した場合に限り、課徴金を課すことができる。
→×:入札談合に参加した企業に対して、公正取引委員会は追徴金納付を課すことができる。
▼独占禁止法 第7条の2 
事業者が、不当な取引制限又は不当な取引制限に該当する事項を内容とする国際的協定若しくは国際的契約で次の各号のいずれかに該当するものをしたときは、公正取引委員会は、第8章第2節に規定する手続に従い、当該事業者に対し、当該行為の実行としての事業活動を行つた日から当該行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間(当該期間が3年を超えるときは、当該行為の実行としての事業活動がなくなる日からさかのぼつて3年間とする。以下「実行期間」という。)における当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額(当該行為が商品又は役務の供給を受けることに係るものである場合は、当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した購入額)に100分の10(小売業については100分の3、卸売業については100分の2とする。)を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。
(エ) 入札において、国や県などの公共団体の関与なく、入札参加予定企業だけで話し合いを行って、落札予定価額や落札予定企業を定めることは何の問題もなく、違法とはなりえない。
→×:入札参加予定企業だけで話し合いを行って、落札予定価額や落札予定企業を定めることは、不正な取引制限に該当し、独占禁止法違反となる。

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設問2

解答:イ

(ア) この会社が、公開会社(会社法第2条第5号)であるかどうかは、この現在事項全部証明書からは分からない。
→×:株式譲渡制限会社の場合には、登記簿に次のような記載があるはずである。
「株式の譲渡制限に関する規定:当会社の発行する株式は、すべて譲渡制限株式とし、これを譲渡によって取得するには、取締役会の承認を要する」
そのような規定が記載されていないので、この会社は公開会社である。
(イ) この会社では、株主総会決議によらないで、取締役会決議のみで、毎期の剰余金の配当(中間配当を除く)を行うことはできない。
→○:剰余金の配当は原則として株主総会の普通決議が必要である。しかし例外的に次の場合には取締役会決議により行うことができる。
  1. 取締役会設置会社における中間配当
  2. 会計監査人設置会社のうち、取締役の任期が終了する日をその選任後1年以内に行われる最初の決算期に関する定時株主総会の終結の日以前と定めている会社であって、かつ監査役会設置会社または委員会設置会社である場合に、剰余金の配当を取締役会決議で行う旨を定款に定めた場合
すなわち、この会社は会計監査人が設置されておらず、監査役会や委員会も設置されていないので取締役会決議のみで毎期の剰余金の配当(中間配当を除く)を行うことはできない。
(ウ) この会社に支店が設置されているかどうかは、この現在事項全部証明書からは分からない。
→×:この会社に支店が存在する場合は登記事項である。A株式会社の現在事項全部証明書には支店の記載がないので支店は存在しないと考えられる。
(エ) この会社は、大会社(会社法第2条第6号)である。
→×:大会社とは、株式会社のうち資本金が5億円以上または負債額が200億円以上の条件を満たす特に規模の大きい会社のことである。A株式会社の現在事項全部証明書での資本金は4億9,500万円であり大会社と認定することはできない。
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設問3

解答:ウ

(ア) 募集株式
必ずしも株券を発行する必要はない。
→○:株券の発行は任意である。
募集社債 必ず社債券を発行しなければならない。
→×:社債の発行は任意である。
(イ) 募集株式
いかなる場合でも、取締役会の決議だけで発行できる。
→×:公開会社では原則として取締役会の決議、株式譲渡制限会社では株主総会による特別決議により発行できる。
募集社債 いかなる場合でも、株主総会の特別決議がなければ発行できない。
→×:募集社債の発行は取締役会の決議がなければ発行できない。
(ウ) 募集株式
持分会社は発行できない。
→○:株式は株式会社のみ発行できる。
募集社債 持分会社も発行することができる。
→○:社債は株式会社及び持分会社等が発行することができる。
(エ) 募集株式
割当てを受ける者が30人を超えた場合は、株式管理者を置かなければならない。
→×:株式の発行に関して、株式管理者という制度はない。
募集社債 割当てを受ける者の数や社債の金額を問わず、社債管理者を置かなければならない。
→×:社債の発行には原則として社債管理者の設置が義務付けられている。ただし、各社債の金額が1億円以上である場合または、ある種類の社債の総額を当該種類の各社債の金額の最低額で除して得た数が50を下回る場合は社債管理者を置かなくても良い。

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設問4

解答:エ

TからWは次のようになる。よって解答はエである。


「4人とも(T:取締役)になることでどうだろうか。」
「それでは、会社の会計責任者が誰なのか、対外的にはっきりしなくなってしまうから、今回は適当でないと思う。Dは税理士でもあるのだから、Dに(U:監査役)か(V:会計参与)になってもらった方がよいのではないか。」
A、B、C
「もっともだ。」
「そうすると、Dは、(U:会計参与)でも(V:監査役)でも、どちらでもよいのかい。」

「いや。私が(U:会計参与)となって、A、B、Cの3人が(T:取締役)ということになると、大会社となったときに改めて(V:監査役)を設置しなければならない。それを避けて、(T:取締役)を2人として、1人が(U:会計参与)となるとすると、今度は(W:取締役会)を設置できなくなって、結局、後で、(T:取締役)を1人以上増やして(W:取締役会)を設置しなければならなくなるから、やはり面倒だ。最初から(W:取締役会)も設置して、私が(V:監査役)になる方がよい。」
A、B、C 「では、そうしよう。」

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設問5

解答:設問1:ア 設問2:イ 設問3:ア

(設問1)
(ア) X社が保有するX社の株式等と、Z社の発行済株式全部とを交換する方法。
→○:正しい
(イ) X社が保有するY社の株式等と、Z社が保有するZ社の自己株式とを交換する方法。
→×:完全親子関係会社を作れない
(ウ) Y社が保有するX社の株式等と、Z社の発行済株式全部とを交換する方法。
→×:Y社は契約の当事者ではない。
(エ) Y社が保有するY社の株式等と、Z社が保有するZ社の自己株式とを交換する方法。
→×:完全親子関係会社を作れない

よって解答はアである。

三角合併とは、会社を合併する際、消滅会社の株主に対して、対価として、存続会社の株式ではなく親会社の株式を交付して行う合併のことである。

(設問2)
(ア) X社が、Z社の株主に対し、X社が保有するX社の株式を交付する方式で、Z社を吸収合併する方法。
→×:Y社への統合にならない
(イ) Y社が、Z社の株主に対し、Y社が保有するX社の株式を交付する方式で、Z社を吸収合併する方法。
→○:XとY社の完全親子関係を維持したままZ社を統合できる。
(ウ) Z社が、X社に対し、Z社の発行済株式全部を交付する方式で、Y社を吸収合併する方法。
→×:Y社への統合にならない
(エ) Z社が、Y社に対し、Z社の保有するX社の株式を交付する方式で、Y社を吸収合併する方法。
→×:Y社への統合にならない

よって解答はイである。

(設問3)
(ア) 株式交換の場合は、X社の株主総会決議による株式交換契約の承認が必要ですが、三角合併の場合は、X社の株主総会決議による合併契約の承認は不要です。
→○:株式交換の場合は原則としてX社とZ社との間で株主総会特別決議による株式交換契約の承認が必要である。しかし三角合併の場合は会社法上、Y社がZ社を吸収合併するのであり、X社の株主総会決議による合併契約の承認は不要である。
(イ) 株式交換の場合は、X社、Y社、Z社、いずれの会社の株主にも株式買取請求権が認められますが、三角合併の場合は、逆にいずれの会社の株主にも株式買取請求権が認められません。
→×:株式交換の当時会社はX社とZ社である。X社とZ社の株主には買取請求権が認められるがY社の株主には買取請求権は認められていない。
(ウ) 株式交換の場合は、契約の当事者は、Y社とZ社の二社だけで足りますが、三角合併の場合は、契約の当事者は、X社、Y社及びZ社の三社でなければならないと会社法上定められています。
→×:三角合併の場合は、契約の当事者は、X社、Y社及びZ社の三社でなければならないとする会社法の規定はない。また株式交換の当事者はY社とZ社であり、X社は合併契約の当事者ではない。
(エ) 株式交換の場合は、交換の対価は株式か現金でなければなりませんが、三角合併の場合は、合併の対価は株式、現金、社債から選択することが認められています。
→×:株式交換の対価は、株式、現金、社債、新株予約権、新株予約権付社債などが認められる。

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