平成14年度1次試験解答:経営法務
設問21
解答:設問1:エ 設問2:イ
資本政策に関する問題である。
(ア) | 公開時点及び公開後の株主構成(経営権の確保、株式の流動性)を考慮して策定することが必要である。 →○:資本政策を策定する場合には、株主構成を考慮する必要がある。 |
(イ) | 公開時点、公開後の株価の水準や公開後の利益還元政策を検討する上で、会社の利益計画は重要である。 →○:会社の利益計画は公開時点・公開後の物価水準や利益還元政策を検討する上で重要である。 |
(ウ) | 資本政策の手段としては、株式移動、株主割当増資、新株予約権付与、株式分割等がある。 →○:株式移動、株主割当増資、新株予約権付与、株式分割等は資本政策の手段である。 |
(エ) | (エ)直前決算日から公開日の間に、資本調達が必要であれば、その間の第三者割当は禁止されているので、株主割当増資のみを検討することが必要となる。 →×:第三者割当が禁止されているのは、「直前決算日の翌日から株式公開日の前日」である。「直前決算日から公開日の間」ではない。 |
(イ) | 資産・負債の時価の調査 →×:資産・負債の時価の調査は、株式公開のための予備調査では行わない。株式公開のための予備調査とは、会計制度、諸規定の整備状況、調査対象会社の概要、業務内容、内部統制制度を詳細に調査し株式公開を実現するために、クリアすべき事項やその解決策を検討する手続を行う。したがって、イの「資産・負債の時価の調査」は行わない。 |
設問22
解答:設問1:ウ 設問2:エ
(設問1)
証券取引法とは、投資家保護の立場から有価証券の【A:発行】及び売買その他の取引を公正ならしめ、かつ、有価証券の流通を円滑ならしめることを目的としている。
また有価証券の市場には、発行市場と流通市場に分類されている。
- 発行市場(プライマリーマーケット)
- 企業・国・地方公共団体などが、新たに発行する有価証券(株式や債券など)の出資者(投資家)を募集する場所のことである。
- 流通市場(セカンダリーマーケット)
- すでに発行された有価証券(株式や債券など)が、投資家の間で売買される場所のことである。
よって解凍はウである。
(ア) | 発行登録書 →×:将来有価証券の募集または売出しを予定している発行者が、当該有価証券の発行価額等一定の事項を記載した書類である。 |
(イ) | 半期報告書 →×:有各事業年度ごとに有価証券報告書を提出する義務のある会社が、有価証券報告書とは別に、金融庁長官に提出を義務づけられている報告書。有価証券報告書の補助的役割をはたす。事業年度が一年の場合、株式会社はその事業年度の開始より6カ月間の状況を、6カ月の期間経過後3カ月以内に半期報告書を提出しなくてはならない。 |
(ウ) | 有価証券届出書 →×:企業内容等に係る情報として証券情報(当該募集又は売出しに関する事項)及び企業情報(発行者である会社の属する企業集団及び当該会社の経理の状況、事業の内容等に関する事項)等を記載した書類である。 |
(エ) | 有価証券報告書 →○:株式を証券取引所に上場した会社、および有価証券届出書を提出した会社は、各事業年度終了後3カ月以内に、内閣総理大臣に提出を義務づけられている。その書類のことを有価証券報告書という。 |
設問23
解答:設問1:エ 設問2:エ
(ア) | X 社の株式を保有する役員・従業員は、会社を退職するまでX社株式を売却することはできない。 →×:インサイダー取引規制に該当しない限りは株式を売却する事は可能である。会社を退職するまで株式を売却できないわけではない。 |
(イ) | 株式公開すれば、株式の流動性が高まり株式の資産価値は増大する。そのため、未公開の段階で第三者割当増資を引受けた株主は、必ずキャピタル・ゲインを獲得できる。 →×:未公開株を引き受けた株主が必ず必ずしもキャピタル・ゲインを獲得できるわけではない。 |
(ウ) | 株式公開は、会社の資金調達が主たる目的であるため、株式公開時点で創業者の乙社長が保有する株式を売り出し、キャピタル・ゲインを得ることはできない。 →×:株式公開によって、創業者がキャピタル・ゲインによる利潤を得ることができるのが株式公開のメリットの1つである。 |
(エ) | 従業員持株会を導入している場合、株式公開により従業員の資産形成を図ることが可能である。 →○:従業員持株会を導入している場合において、株式公開により株価が上がると従業員の資産形成を図ることができる。 |
(ア) | 経営管理組織の充実には、適切な人材の確保が必要である。 →○:経営管理組織の充実には、適切な人材の確保が必要である。 |
(イ) | 経営管理組織の充実は、株式公開の前提であり、公開準備のひとつである。 →○:経営管理組織の充実は、株式公開を行う前の前提であり必須である。 |
(ウ) | 経営管理組織は、株式公開により投資家の厳しい目にさらされて更に充実する。 →○:経営管理組織は、株式公開により投資家の厳しい目にさらされる。またそれにより経営管理組織は充実する。 |
(エ) | 経営管理組織は、株式公開のためのディスクロージャーにより自動的に充実される。 →×:経営管理組織は、株式公開のためのディスクロージャーをしたとしても自動的に充実することはない。実際に経営管理組織充実のための施策を実行することで経営管理組織は充実する。 |
設問24
解答:設問1:ウ 設問2:ウ 設問3:イ
(設問1)
株式上場審査基準は次のものである。
- (1) 企業の継続性及び収益性
- 継続的に事業を営み、かつ、経営成績の見通しが良好なものであること。
- (2) 企業経営の健全性
- 事業を公正かつ忠実に遂行していること。
- (3) 企業内容等の開示の適正性
- 企業内容等の開示を適正に行うことができる状況にあること。
- (4) その他公益又は投資者保護の観点から必要と認める事項
- 法律に違反する行為の有無、裁判での係争事件の有無
(ア)企業経営の健全性の観点
→○:(2)に該当する。
(イ)企業の継続性及び収益性の観点
→○:(1)に該当する。
(ウ)債権者保護の観点
→×:該当するものがない。債権者保護、すなわち対外的取引安全を保護するのは民法、あるいは会社法であり、株式公開において審査されるわけではない。
(エ)投資家保護の観点
→○:(4)に該当する。
(設問2)
公開審査上、審査対象となる関係会社は、財務諸表等規則に基づく親会社、子会社、 関連会社に加えて人的関係会社、資本的関係会社も含まれる。
- 人的関係会社
- 人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、公開予定会社が他の会社を実質的に支配している場合又は他の会社により実質的に支配されている場合における当該他の会社
- 資本的関係会社
- 公開申請会社およびその特別利害関係者が他の会社の発行済株式総数の20%以上を実質的に所有している場合又は他の会社およびその特別利害関係者が公開申請会社の発行済株式総数の20%以上を実質的に所有している場合における当該他の会社
(設問3)
株式交換に関する問題である。
株式交換は株主総会の特別決議の承認を得る必要がある。特別決議を得るためには総株主の議決権過半数保有株主が出席しその議決権の2/3以上の承認が必要である。よって解答はイである。
設問25
解答:設問1:ア 設問2:エ
(設問1)
株式公開するためには、上場審査を受けなくてはならない。この要件には、形式要件と適格要件がある。
形式基準とは、上場するためには必ず充足しなければならない最低基準のことである。また実質基準とは、上場会社としてふさわしいかどうか、証券取引所が適否を判断する基準である。
(設問2)
内部監査は、企業内の会計や業務に関して社内規定等に準拠して、日常業務が効率的に遂行されているかどうか企業内部の者によって経営者のために行われる監査制度である。
(ア) | 内部監査は、会社に関与する公認会計士が実施するものである。 →×:公認会計士が実施するのは外部監査である。内部監査は一般的に、社内の独立した部署(内部監査部門)が、行なう。 |
(イ) | 内部監査は、株主及び債権者に対して監査の結果を報告するものである。 →×:株主及び債権者に対して監査の結果を報告することを目的としてするわけではない。 |
(ウ) | 内部監査は、取締役の職務の適法性や妥当性について監査するものである。 →×:内部監査は取締役の職務の適法性や妥当性についてのみ行うものではない。 |
(エ) | 内部監査は、会社が自ら、その社内規程やマニュアルに基づき実施するものである。 →○:正しい。 |