平成14年度1次試験問題:経営法務
設問1
わが国の事業組織には、会社、組合、個人企業があるが、以下の記述で最も適切なものはどれか。
【解答郡】 (ア) 会社には、商法に規定された株式会社、有限会社、合名会社、合資会社の4種があり、組合には、民法に基づく組合と個別法に基づく組合がある。 (イ) 株式会社、有限会社は有限責任を負う者のみで、合名会社、合資会社は無限責任を負う者のみで作られる。 (ウ) 数人で共同して事業を行う民法上の組合は、法人格を持ち、組合員が直接無限責任を負い、課税対象となる。 (エ) 中小企業の組合制度である事業協同組合、企業組合は、最低出資金の規制がなく、 少額の出資で法人格を取得でき、組合員は有限責任を負う。
設問2
有限会社の設立と運営に関する以下の記述で、最も適切なものはどれか。
【解答郡】 (ア) 有限会社では、社員は、社員以外にはその持分を譲渡できない。 (イ) 有限会社では、社員総会の代わりに社員全員による書面決議も認められている。 (ウ) 有限会社の資本の総額は300万円以上でなければならないが、出資1口はいくらでもよい。 (エ) 有限会社の設立には取締役と監査役が一人ずつ必要である。
設問3
株式会社の取締役に関する次の記述で、最も適切なものはどれか。
【解答郡】 (ア) 会社の株式を有する株主は誰でも取締役の責任を追及する株主代表訴訟を起こすことができる。 (イ) 各取締役は、取締役会の開催を請求できる一方、代表取締役の職務を監視する義務を負う。 (ウ) 株主総会は普通決議により取締役を解任することができる。 (エ) 取締役は会社と雇用契約を結び、会社の為に忠実に職務を遂行する義務を負う。
設問4
株主総会の開催に関する次の記述で、最も不適切なものはどれか。
【解答郡】 (ア) 株主総会の議事録は出席した取締役が署名し、10年間保存しなければならない。 (イ) 株主総会の招集通知は、取締役会で議題を決め、2週間前に書面または政令で定める所による株主の承諾を得て電磁的方法で出さなければならない。 (ウ) 株主総会は会社の最高の意思決定機関であり、法令に反しない限り、どのような事項も決定することができる。 (エ) 取締役及び監査役は、株主総会において株主の求めた事項について説明をしなければならない。
設問5
事業活動に必要な官公庁への届け出に関する以下の記述で、最も適切なものはどれか。
【解答郡】 (ア) 常時5人以上の労働者を使用する使用者は、就業時間、賃金の計算方法等につき就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出なければならない。 (イ) 常時従業員を使用する法人事業所及び個人経営でも従業員が5人以上の事業所は、健康保険及び厚生年金保険について、原則として強制適用事業所となる。 (ウ) 所得税の青色申告の承認申請書を都道府県税事務所に提出した個人事業者は、親族でも世間並みの給与を必要経費にできる。 (エ) 労働者を雇用する事業所は、原則として労働者災害補償保険及び雇用保険に加入しなければならず、労働者災害補償保険の給付請求書等は公共職業安定所に提出する。
設問6
会社、組合などの組織変更に関する次の記述で、最も不適切なものはどれか。
【解答郡】 (ア) 合資会社から有限会社への変更は、無限責任社員全員の承諾があってもできない。 (イ) 個人企業が法人組織になることを法人成りといい、個人企業の資産をそのまま法人の資産とするには、現物出資や事後設立、営業譲渡等手続が必要となる場合がある。 (ウ) 事業協同組合から株式会社や有限会社への組織変更はできない。 (エ) 有限会社から株式会社への変更は、社員総会で総社員の半数以上で議決権の4分の3以上の同意が必要で、反対社員は決議がなければ有したであろう公正な価格でその持分の買い取り請求ができる。
設問7
営業譲渡に関する以下の記述で、最も不適切なものはどれか。
【解答郡】 (ア) 営業譲渡は、一定の営業目的のために組織化され一体として機能する財産(得意先関係等を含む)の全部または一部を買い手に譲渡するもので、第三者に譲渡する場合やグループ会社間での事業の整理、統合を行う場合等に利用される。 (イ) 営業譲渡は特定承継であり、個々の財産の取引関係の名義変更手続(不動産登記、債権譲渡通知等)が必要である。 (ウ) 営業の譲渡人は、競業避止義務を負い、同市町村内及び隣接市町村内において、同一の営業を、原則として20年間、行うことができない。 (エ) 株式会社がその営業の全部または重要な一部を譲渡するためには、株式総会における普通決議による承認が必要であるが、反対株主は決議がなければ有したであろう公正な価格で株式の買い取り請求ができる。
設問8
倒産処理のうち、裁判所の関与する手続(法的整理)と裁判所の関与しない手続(任意整理)に関する以下の記述で、最も適切なものはどれか。
【解答郡】 (ア) 任意整理では、企業の清算はできるが、再建はできない。 (イ) 任意整理は、債権者の数が少なかったり、対立や紛争が少ない場合は有効な手続であるが、一部の関係者の詐害行為や無責任な行動を許してしまうおそれがある。 (ウ) 破産手続等の再建型の法的整理では、倒産直前の不公正な財産処分は否認して、回収し、全債権者のために公正に配当・処理することができる。 (エ) 民事再生手続等の清算型の法的整理では、債務の減額免除、支払い猶予等企業の再建を法律に基づいて行うことができる。
設問9
食品メーカーA 社は、容器メーカーB 社に委託して新タイプの冷凍食品の容器を開発することとなり、開発委託契約を締結することとなった。
開発委託契約に関する説明として最も適切なものはどれか。
【解答郡】 (ア) A 社の営業秘密はB 社に開示した段階で不正競争防止法で保護される秘密ではなくなるので、開発委託契約書に秘密保持条項を規定しても意味がない。 (イ) B 社がA 社以外に開発品を販売することを禁止する定めは、独占禁止法により禁止されている。 (ウ) B 社の従業員が開発した容器に関し、A 社が単独で特許出願する旨を定めることができる。 (エ) B 社の従業員が開発した容器のデザインに関する意匠登録を受ける権利は、契約で別段の定めをしない限り、その容器を製造するための金型代を出資した者に帰属する。
設問10
自転車メーカーA 社は、自転車ペダルメーカーB 社と共同で自転車ペダルを開発し、共同で特許を取得した。この特許に関する説明のうち、特許法の規定に照らして最も不適切なものはどれか。
【解答郡】 (ア) A 社はB 社の同意を得ることなく、この特許権を放棄することができる。 (イ) A 社はB 社の同意を得ることなく、この特許権について実施権を許諾することができる。。 (ウ) A 社はB 社の同意を得ることなく、自らこのペダルを製造することができる。 (エ) B 社はA 社の同意を得ることなく、この特許権のB 社の持ち分を譲渡することはできない。