トップページ企業経営理論トップページ過去問題 >平成15年度問題

平成15年度1次試験問題:企業経営理論

設問11

 A 社は中堅の衣料品メーカーである。昭和40年代には輸出で業績を伸ばし、政府から連続7回の輸出貢献企業の表彰を受けたことがある。当時生産の5割が米国に向けて輸出されていた。ところが@昭和50年代には輸出が振るわなくなった。昭和60年代になると一転してA輸入貢献企業の表彰を受けるにいたっている。現在、欧米のブランド品との競争が激しく、国内市場はジリ貧である。そこで、同社はB中国に新しい生産拠点をおき、国内工場と機能分担しながら巻き返しを図ろうとしている。

(設問1)
 文中の下線部@のように昭和50年代になると米国向けの輸出が急激に減少する中堅企業が多くなった。その理由として最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 中南米の低コスト品が米国市場に大量輸入され、日本製品の低価格戦略が通用しなくなった。
(イ) 通貨調整や原油価格急騰などで日本製品の価格競争力が失われた。
(ウ) 米国企業は生産性を著しく改善して、日本製品に対して価格競争力をもつようになった。
(工) 米国企業はブランド戦略を明確にして、高級品市場への日本製品の参入阻止に成功した。

(設問2)
 文中の下線部Aのように、日本では輸入が奨励されるようになるとともに、中堅・ 中小企業では戦略の転換を図る企業が多くなった。当時多くとられた戦略の説明として最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) FAZ 内に新たに生産拠点を設けて、為替差益を享受する立地戦略を押し進めた。
(イ) 中国に100%出資の子会社を設置して、コスト優位な生産力を強化した。
(ウ) テクノポリスへの立地によって、輸出競争力の再構築を図った。
(工) 米国内に生産拠点をおいて、生産余剰分を日本に持ち帰って国内市場の開拓を図った。
(オ) 輸出が振るわなくなったので、海外からの部材等の調達を進めて国内競争力を強化した。

(設問3)
 文中の下線部Bのような戦略行動を中堅・中小企業が展開する際に最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 現地従業員の研修を行い、熟練の形成や自社の経営慣行の習得を促進する。
(イ) 社長直属の海外事業の統括部門をおいて、国内と海外のビジネスを一元的に管理し、すばやい対応を図る。
(ウ) 中国での事業運営ノウハウやリスクの管理能力などの不足は、中国企業や日本企業との戦略的提携で補完する。
(工) 中国の合弁先には償却済みの古い設備を移転し、出来上がった在来型製品の日本への持ち帰りを中止して、消費の盛り上がっている上海や北京での自社販売にそれを振り向ける。

解答を確認する

設問12

 先端技術分野では独創的な技術を市場化するときに、オープン・アーキテクチャ戦略をとる例がしばしばある。その理由として最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) インターフェースを標準化することによって、製品のモジュール開発が促進される。
(イ) コア・コンポーネントの開発では高度な技術と多額の資金が必要であり、他社のオープンな参加が必要である。
(ウ) コア・コンポーネントの設計について、他社と共同して先端的な技術を駆使することが必要になっている。
(工) 製品の実装部品や加工デザインが高度になるにつれて、製品の技術の構造解析が重要になってきている。

解答を確認する

設問13

 @特産品を生産する地場産業、多様な業種の中小企業の集中立地、あるいは親企業と下請企業の系列ネットワークなど、さまざまなタイプの中小企業が特定地域に集積することが多く見られる。Aかつて中小企業の集積は弱者の連合であり、保護の対象とみなされがちであった。しかし、近年このような集積からイノベーションが生まれる可能性や取引の経済性が高いことが指摘されるようになり、そのような産業集積を Bクラスターと呼ぶことが多くなった。

(設問1)
 文中の下線部@の地場産業の特徴に関する説明として最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 地場産業では生産技術が独立の中小企業群によって社会的に分業されている。
(イ) 政府は産地保護のために、独自な技能研修施設を主要な産地に設置運営している。
(ウ) 大正時代末までに確立された技術や原材料に基づく特産品を特に伝統的工芸品という。
(工) 特産品には産地ブランドの表示が義務づけられている。

(設問2)
 文中の下線部Aのように、中小企業の集積が弱者の連合とみられた理由として最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 経営資源に恵まれない中小企業は各種の支援や保護がなければ独自な発展をたどれなかった。
(イ) 下請中小企業と親企業との間の経営格差が顕著であった。
(ウ) 衰退業種の中小企業のための工業団地は産業集積の契機であった。
(工) 中小企業は大手企業に比べて技術的にも経営的にも近代化が遅れていた。

(設問3)
 文中の下線部Bのクラスターの経済効果の説明として最も不適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 柔軟にシステム変更できる分業構造として、多数の企業が互いに専門性を活用しあう。
(イ) 地理的に近い企業が、お互いに公正な取引を促進する。
(ウ) 地理的に集積しているのでロジスティクス面で有利だが、範囲の経済性を犠牲にする。
(工) 密度の濃い情報交換を促す接触の経済性が高まる。

解答を確認する

設問14

 長期経営計画の策定にあたって注意すべき点で最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) ある日突然に異分野から登場する技術や新製品の予測は難しいので、その対応を計画に盛り込む必要はない。
(イ) 経済の長期不況のもとでは、自社の高い成長予測を立てなくてもよい。
(ウ) 顧客のニーズや技術の変化を考慮して、柔軟性を確保した予備計画を想定すべきである。
(工) 長期経営計画は策定時の予測が変化してゆくので、毎年度新規に策定すべきである。
(オ) 長期経営計画は毎月度の部門別の詳細なアクション・プランを盛り込んでおかなければならない。

解答を確認する

設問15

 組織変革のプロセスにおいては、現在の状態から望ましい状態への移行過程を適切に管理する必要がある。この移行過程のマネジメント(transition management)においては、変革に対する「抵抗」、変革に伴う「混乱」、変革をめぐる「対立」など様々な問題が生じる可能性がある。これらの諸問題に関する、以下の設問に答えよ。

(設問1)
 組織変革における移行過程の「抵抗」問題に関する記述として最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 組織成員がこれまで蓄積してきた経験や技能を無にしてしまうような変革案は、移行過程において抵抗を生みやすく、望ましくもない。
(イ) 組織変革における移行過程で、従業員が抵抗することは、その変革案に問題があることを意味するので、すぐに変革案を修正すべきである。
(ウ) 組織変革の結果、新しい組織でどのような部署に所属するのか、どのような権限を持ち処遇されるのかは、組織成員それぞれの生活にかかわることなので、変革の初期段階では伝えるべきではない。
(工) 抵抗を避けるには、組織成員に、新しい組織に適応するための十分な教育・訓練の時間と機会が提供される必要がある。
(オ) 変革に対して不安や抵抗が生まれないよう、組織変革は推進者以外に公開せず一気に進めることが望ましい。

(設問2)
 組織変革における移行過程の「混乱」問題に関する記述として最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 組織内の秩序維持に貢献してきた既存の組織構造に変革が及ぶ場合、日常業務への統制力が失われ混乱が生じることが多い。
(イ) 組織変革における移行過程で、逸脱や混乱が発生した場合、速やかに変革目標を修正することが望ましい。
(ウ) 組織変革における移行過程では、インフォーマルなコミュニケーション・チャネルを使用すると混乱が発生しやすいので、既存の組織構造におけるフォーマルなコミュニケーション・チャネルのみを利用するよう心がける必要がある。
(工) 組織変革における移行過程で予期しない問題が発生した場合、それを速やかに解決するよりは、その問題がどのような原因で生まれたかを時間をかけて分析し対処しなければならない。
(オ) 組織変革によって影響を受ける人々を、あまり早い段階から変革過程に参加させると、無用な混乱を生む可能性があるので避けることが必要である。


(設問3)
 組織変革における移行過程の「対立」問題に関する記述として最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 組織内の下位集団間に対立が見られる場合、外部環境の脅威など組織外部に共通の敵をつくることで、協働を生み出すことができる場合がある。
(イ) 組織内の下位集団間に対立が見られる場合、それぞれの集団のリーダーに問題があることが多いので、そのようなリーダーを組織から排除すべきである。
(ウ) 組織における中心的な権力集団の存在は、大きな抵抗勢力となりやすいので、それらからの協力の確保は政治的駆け引きを生みやすく避けるべきである。
(工) 組織変革における移行過程で対立が生じる原因は、変革の方向を自己に有利なように導こうとする人々がいるからであり、そうした人々は直ちに処分しなければならない。
(オ) 組織変革における移行過程では、株主や労働組合は対立しやすいので、変革計画の策定にこれらの代表者を参加させることは好ましくない。

解答を確認する

設問16

 企業組織における従業員の離職に関する以下の記述のうち、最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) ある企業に長く勤続している従業員は、その企業にとって特殊な専門能力も高くなるので、他の企業に移る可能性が低くなる。
(イ) 景気が良くなると給与水準も高くなるので、離職しようとする欲求は低くなる。
(ウ) 現在の企業内で課される職務と、企業外で果たす役割との適合性が高いと、離職しようという欲求も高くなる。
(工) 従業員は組織内の職務が自分のイメージに合わないと感じると、すぐに離職する傾向がある。
(オ) 大規模な組織に所属する従業員ほど、定型的な職務が増えるので、離職しようとする願望が強くなる。

解答を確認する

設問17

 機能別組織(functionally departmentalized organization)、事業部制組織(divisional organization)、マトリックス組織(matrix organization)、プロジェクト組織(project organization)に関する以下の設問に答えよ。

(設問1)
 ある企業組織を取り巻く環境の不確実性と、多角化の程度という2つの軸で図のように分類したとき、それぞれのセルに適した組織構造の組み合わせとして最も適切なものはどれか。

問題

【解答群】
(ア) A: 事業部制組織   B: マトリックス組織
  C: プロジェクト組織   D: 機能別組織
(イ) A: プロジェクト組織   B: マトリックス組織
  C: 機能別組織   D: 事業部制組織
(ウ) A: プロジェクト組織   B: マトリックス組織
  C: 事業部制組織   D: 機能別組織
(工) A: マトリックス組織   B: 事業部制組織
  C: 機能別組織   D: プロジェクト組織
(オ) A: マトリックス組織   B: プロジェクト組織
  C: 機能別組織   D: 事業部制組織

(設問2)
 機能別組織、事業部制組織、マトリックス組織、プロジェクト組織の利点と弱点に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 機能別組織は、それぞれの機能について専門化が進むため、頻繁に技術革新が必要とされる業界で採用される傾向がある。
(イ) 事業部制組織では、各事業部に分権化が進められるため、次の世代の経営者を育成することが困難になる傾向にある。
(ウ) 事業部制組織は、デュポン式の財務統制方式と併用されることが多い。
(工) プロジェクト組織では、機能マネジャーに大きな権限が付与されるため、しばしばプロジェクト・マネジャーと機能マネジャーとの対立が起こりやすい。
(オ) マトリックス組織は、トップマネジメントにかかる情報処理負荷が高いため、グローバルに事業を展開している企業にとっては不適当である。

解答を確認する

設問18

次の文章を読んで、以下の設問に答えよ。

  企業組織はオープン・システムであり、その生存に必要な資源を外部環境の構成者に依存している。その結果、企業組織(焦点組織)は、外部環境構成者から統制されたり、様々な制約を受けている。焦点組織の外部環境構成者に対する依存度は、次の3つの要因によって決まるという。
 第1は、@その資源の重要性であり、焦点組織の生存・存続に必要な程度である。
 第2は、外部環境構成者が、Aその資源の配分や利用に関してもつ自由裁量の程度 である。
 第3は、代替的な資源獲得の可能性である。
外部環境構成者が、焦点組織にパワーを行使できるのは、こうした3つの条件とともに、焦点組織が相殺パワーを持たない場合である。

(設問1)
 下線部@の焦点組織にとっての資源の重要性に関する記述として最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) ある焦点組織にとって重要な資源は、外部環境構成者にも重要であるから、価格は高くなる。
(イ) 価格の安い資源は、大量に購入することができるから、資源としての重要性も低い。
(ウ) 電力のように低価格で豊富にある資源は、常に重要性が低くなる傾向にある。
(工) 保守サービスのようなスタッフ・サービス的資源でも、機械の故障などの状況では、資源としての重要性は高くなる。

(設問2)
 下線部Aの資源の配分や利用に対する自由裁量に関する記述として最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 機械設備などの資源の使用法などに関する自由裁量は、それを実際に使用する従業員ではなく、経営者の方がにぎっている。
(イ) 焦点組織の意思決定プロセスで用いられる情報をコントロールできる外部環境構成者は、その企業が使用する資源に対する自由裁量を持っているといえる。
(ウ) 政府・行政組織などは、民間企業が利用できる資源の量や使用法を制限するための許認可権を行使することはできない。
(工) 我々が住んでいる私有財産制社会では、資源に対する所有権を持つものだけが、その資源の利用や配分に関する自由裁量を持つことができる。

解答を確認する

設問19

 組織は環境適応するために学習し、組織学習は個人の学習を通じて行われる。すなわち、個人の知識が経験を基礎に変化するとその人の行動が変わり、その結果、組織全体の行動に変化が起こり、結果として環境の変化を導く。個人はこの環境変化の経験を基礎に、自分の知識を修正し新しい行動を行っていく。図はこうした組織学習サイクルを示している。
 組織学習の失敗はA、B、C、D の各段階に断絶が起こることによって組織学習サイクルが不完全なものになることで生ずるという。
 以下の設問に答えよ。

(設問1)
 組織学習の完全サイクルにおいてA の部分での断絶に関する記述として最も適切なものはどれか。

問題

【解答群】
(ア) 従業員の離職率が低い職場では、個人の知識の変化が個人行動の変化になって現れなくなる可能性は低くなる。
(イ) 職務・責任・権限関係が明確に定められていないと、個人の知識の変化が個人行動の変化につながらなくなる可能性が高まる。
(ウ) 職務に対する報酬が十分に支払われている職場では、個人の知識の変化が個人行動の変化になって現れる可能性が高まる。
(工) 職務に忠実に行動する組織メンバーが多いと、個人の知識の変化が個人行動の変化につながらなくなる可能性が高まる。
(オ) 組織メンバーが組織目標に完全に一体化していないと、個人の知識の変化が個人行動の変化につながらなくなる可能性が高まる。

(設問2)
 組織学習の完全サイクルにおいてB の部分での断絶に関する記述として最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 階層的組織ではコミュニケーションの経路が明確に規定されているため、個人行動の変化が全体組織の行動の変化に結びつく可能性が高まる。
(イ) 下位組織にそれぞれ独自の文化が形成されてくると、部門間コンフリクトが発生しやすくなるため、個人行動の変化が全体組織の行動の変化に結びつかなくなる可能性が高まる。
(ウ) 下位部門に十分な権限の委譲が行われていない組織では、個人行動の変化が全体組織の行動の変化に結びつかなくなる可能性が高まる。
(工) 集団の凝集性が高いと、個人行動の変化が全体組織の行動の変化に結びつかなくなる可能性が高まる。
(オ) 職務・責任・権限関係が明確に定められていないと、個人行動の変化が全体組織の行動の変化に結びつかなくなる可能性が高まる。

(設問3)
 組織学習の完全サイクルにおいてC またはD の部分での断絶に関する記述として最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 組織があらかじめ明確に定められた情報収集メカニズムを採用していれば、個人レベルの学習は適切に行われる可能性が高くなる。
(イ) 組織の行動の変化はただちに環境の変化となって現れるため、環境の変化を注意深く観察していれば、組織の行動が正しかったか否かは容易に理解できる。
(ウ) 高い成果をあげた組織の行動は、その前提となっている組織メンバーの知識が正しいことから生まれたものであるので、その知識は強化されるべきである。
(工) 人間は高い成果が得られた場合は自己に、低い成果が得られた場合には他者に因果を帰属させる傾向があるため、組織の行動と環境の変化との因果関係を正しく認識することが困難である。
(オ) 低い成果しかあげない組織の行動は、その前提となっている組織メンバーの知識が誤っていることから生まれたものであるので、その知識は棄却されるべきである。

解答を確認する

設問20

 組織文化の形成や機能に関する記述として最も適切なものはどれか。

【解答群】
(ア) 一般に組織文化は、インフォーマルなコミュニケーション・ネットワークの上に形成されるので、公式組織の責任―権限関係を補完・強化する方向に作用する。
(イ) 市場において有力な競争相手が出現してこない環境で、長期にわたって高い成果をあげている企業組織には、一般に革新的な組織文化が形成されやすい。
(ウ) 組織文化の形成には、従業員に知覚された経営管理者の日常行動が大きな影響を与えている。
(工) 組織文化は非常に長い期間をかけて作られてくるものであり、その組織のメンバー に深く根付いているものであるから、変化することはない。
(オ) 手続きを重んじる組織文化が強い企業は、環境の変化に対する適応力も高いので、長期にわたって競争力を維持することができる。

解答を確認する

Copyright(C)Katana All right reserved.