平成14年度1次試験解答:中小企業経営・中小企業政策
設問6
解答:ウ
生業的経営、企業的経営とは次のようなものである。
- 生業的経営
- 業主と家族従業者主体の経営であるが、利潤と賃金、営業と家計は未分離であり、企業以前の存在といえる。
- 企業的経営
- 業主と家族従業者主体の経営であり、利潤と賃金は明確に分離され、企業としての経済計算は一応確立している。
(ア) | 家族従業者の有無によって区別される。 →×:家族従業者の有無などの明確な区別がある概念ではない。 |
(イ) | 個人企業と法人企業として定義される。 →×:個人企業と法人企業などの明確な区別がある概念ではない。 |
(ウ) | 成長志向・利益志向の強さによって区別される。 →○:生業的経営は、文字通り、生業(なりわい:生活する、生きていくための仕事)の為の企業であり、成長志向・利益志向は弱い。 |
(エ) | 伝統的工芸品産業に属するかどうかが決め手になる。 →×:産業属性によって明確な区別がされる概念ではない。 |
設問7
解答:ア
a | 基礎的な研究には多額の資金を長期的に投入する必要があるので、大企業のほうが有利であると考えられる。 →○:基礎研究には多額の資金を長期的に投入する必要がある。それを中小企業で行うのは難しく、大企業のほうが有利である。 |
b | 研究開発にはさまざまな情報交換と意思決定が伴うから、組織が小さく階層の少ない中小企業のほうが有利であると考えられる。 →○:情報交換と意思決定が安易な中小企業の方が有利である。 |
c | 研究開発には多大なリスクが伴うから、小回りの利く中小企業のほうが有利であると考えられる。 →×:研究開発には多大なリスクが伴う。よって体力のある大企業の方が有利である。 |
d | 研究開発には範囲の経済性が伴うから、専門分野に特化した中小企業のほうが有利であると考えられる。 →×:範囲の経済性とは、異なる複数の事業の共有可能なコストを一元化することにより、企業全体の経営の効率化を図ること。よって専門分野に特化した中小企業には不利であり、複数の事業をもつ大企業の方が有利である。 |
設問8
解答:設問1:ウ 設問2:ウ 設問3:エ 設問4:ウ 設問5:ア
(設問1)
2001(平成13)年版中小企業白書 第212-1図 下請中小企業比率の推移より
(ア)1960年代半ばにピークを迎えた後、一貫して低下している。
→×:下請企業比率は1981年(昭和56年)にピークを迎えた後、一貫して低下している。
(イ)1970年代前半にピークを迎えた後、一貫して低下している。
→×:下請企業比率は1981年(昭和56年)にピークを迎えた後、一貫して低下している。
(ウ)1980年代初期にピークを迎えた後、一貫して低下している。
→○:下請企業比率は1981年(昭和56年)にピークを迎えた後、一貫して低下している。
(エ)1980年代末期にピークを迎えた後、一貫して低下している。
→×:下請企業比率は1981年(昭和56年)にピークを迎えた後、一貫して低下している。
(設問2)
2002(平成14)年版中小企業白書第1-1-41図 主要業種の下請中小企業比率より
すなわち下請企業の比率が相対的に高い産業は【A:輸送機械工業(69.3%)】 や【B:繊維工業(76.4%)】 となる。よってウが解答である。
a | 親企業は下請企業を景気変動の調整弁として利用することによって経営を安定化することができる。 →×:親企業は下請企業に対して、景気の調整弁の役割を担わしている事実はあるが、評価できるものではない。 |
b | 緊密で安定した取引関係を通じて、下請企業は親企業の要望に高度に特化した生産設備や技術・ノウハウを備えている。 →○:正しい。長期的に継続される取引関係によって設備や技術のような関係特殊的な資源の蓄積を行い、親企業者者も下請け企業の生産能力を補うための存在としてとらえている。 |
c | 下請企業の低賃金と過当競争によって取引単価が低く抑えられるため、親企業は低コストで生産できる。 →×:下請企業のみに負担を押し付けるやり方は評価できるものではない。 |
d | 長期的取引の中で信頼が形成され、取引に関して生じうる問題の予防や解決が円滑に行われている。 →○:正しい。長期的取引の中で信頼が形成され、問題予防や早期の問題解決が円滑に行われる。 |
よって(エ)bとdが解答である。
(設問4)
下請関係は一般に【C:(ウ)長期安定的】 な取引関係であるとされる。
(設問5)
各文言の意味は次の通りである。
- (ア)世界最適調達
- 世界中から競争力のある部品を調達すること
- (イ)貸与図方式
- 組立メーカーが開発・設計を行い、部品メーカーに対して設計図を貸与して製造させる方式
- (ウ)デザイン・イン
- 顧客製品の仕様が固まる前の設計段階において、自社製品の採用を促進する営業活動
- (エ)モジュラー生産方式
- 製品を大きな部品に分け、それぞれのサプライヤーによりで き上がった部品をメーカーが集め、組み立てていく方式
よって(ア)世界最適調達が解答である。
設問9
解答:設問1:ウ 設問2:エ
(ア) | 一店一帳合制は、販売業者の結束を固めるために、製造業者が販売業者に横断的な組織を結成させるものである。 →×:店会制にする説明である。店会員性とは、販売業者の結束を固めるために、製造業者が販売業者に横断的な組織を結成させるものである。一店一帳合制とは、メーカーの系列化政策のひとつで、小売業者との取引について、特定の卸業者からの仕入に限定することである。すなわち、製造業者が販売業者に横断的な組織を結成させるものではない。 |
(イ) | 専売店制は、製造業者が卸売業者に対して販売先である小売業者を指定し、小売業者が特定の卸売業者以外の業者と取り引きできないようにするものである。 →×:一店一帳合制に関する説明である。一店一帳合制は、製造業者が卸売業者に対して販売先である小売業者を指定し、小売業者が特定の卸売業者以外の業者と取り引きできないようにするものである。 |
(ウ) | テリトリー制は、製造業者が自社製品の販売業者の販売地域を制限するものである。 →○:正しい。 テリトリー制とは、メーカーの系列化政策のひとつで、小売業者に所定の販売地域での独占的販売権を与える契約を締結することである。 |
(エ) | 店会制は、製造業者が販売業者に対し、他社製品の取り扱いを禁止または制限するものである。 →×:専売制に関する説明である。専売制は、製造業者が販売業者に対し、他社製品の取り扱いを禁止または制限するものである。店会員性とは、販売業者の結束を固めるために、製造業者が販売業者に横断的な組織を結成させるものである。 |
(設問2)
流通系列化の、メリットとしては、@流通業者の統合・整理による流通の合理化、A業者間相互の関係緊密化による消費者情報伝達の効率化、Bアフターサービ ス体制の充実などがる。これに対して、デメリットとしては、@価格競争の制限、A流通業者の自主性の喪失、B新規参入の阻害などが挙げられる。
(ア) | 企業間の自由な価格競争を阻害する要因になる。 →○:流通系列化によって価格競争は制限される。 |
(イ) | 消費者の選択の自由が制約される。 →○:正しい。消費者は、系列販売店において他系列の企業の製品を購入できなくなる。 |
(ウ) | 製造業者による優越的地位の濫用を招きやすい。 →○:正しい。製造業者が系列店側に対して、各種メリットを与えると同時に規制を強くする場合がある。 |
(エ) | 品質やサービスの低下を引き起こしやすい。 →×:アフターサービス体制が充実しやすい。 |
設問10
解答:設問1:エ 設問2:エ
(ア) | 新たなサービス分野はニッチ市場として生まれることが多いから。 →○:新たなサービス分野は大衆分野から生まれるのではなく、ニッチ分野から生まれることが多い。 |
(イ) | →○:サービスに対する消費者の嗜好は変化しやすく、常に新たなものが求められる。。このため、サービス業は小回りのきく中小企業に有利である。 |
(ウ) | サービスは基本的に個別需要に合ったものであるから。 →○:サービスは通常の物財とは違って貯蔵できないため、ひとりひとりの顧客に個別的に対応することが基本となる。 |
(エ) | サービスは需要の価格弾力性が高い「奢侈財」としての性格を持つから。 →×:奢侈財とは、所得の増加にともない需要の増大幅が漸増していく財である。サービスが一概に奢侈財とはいえない。 |
(ア) | 高度に専門的な業務が増加していること →○:高度に専門的な業務が増加すると、経営資源の蓄積が大きい大企業の方が有利になる。 |
(イ) | 情報化が進展し、情報に関する規模の経済性が働くこと →○:規模の経済性が働く業界では、当然大企業の方が有利である |
(ウ) | 大企業が中小規模の事業所を設立して参入してくること →○:大企業のダウンサイジングは中小企業の優位性を脅かす。 |
(エ) | 派遣労働者が増加していること →×:派遣労働者が増加していることが中小企業の優位性を直接に制約する要因とは考えにくい。 |