平成20年度1次試験解答:経済学・経済政策
設問1
解答:イ
(イ) | A:事後的 | 三面等価の原則とは、一国における経済活動をマクロ的視点により、生産面、分配面、支出面の三つの側面から捉えたとき、これらはすべて事後的に等しくなるという原則のこと。これにより、生産=分配=支出という式が成り立ち、生産されたものはすべて分配され、支出されることを意味する。 |
(ウ) | B:付加価値 | 国内総生産(GDP : Gross Domestic Product)とは、一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額である。 なお、中間生産物を用いてGDPを計算する場合は純生産額から中間生産物の生産額を差し引くことでGDPを得ることができる。 |
(エ) | C:国内総支出 | 支出面からみたGDPを国内総支出と呼ぶ。 |
(オ) | D:国内純生産 | GDPから固定資産減耗を差し引いたものを国内純生産と呼ぶ。 |
設問2
解答:ア
年々低下傾向にある比率であること、2001年以降は3〜5%程度という低い水準で推移していること、日本の長期的な経済成長が鈍化する可能性が指摘されていることから【 A 】には、家計貯蓄率、【 B 】には高齢化の進展が入る。 なお、貯蓄率を左右する要因としては、以下の要素がある。
- 高齢化
- 退職者が増えれば貯金を取り崩し貯蓄より消費が上回る者が多くなる筈であるので、高齢化は貯蓄率の低下を招くとされる。近年の日本の家計貯蓄率の低下は高齢化によるものとされるのが一般的である。
- 社会保障への政府の関与
- 老後の備え(老齢年金)、あるいは失業、病気への備えに対して政府の財政支出の占める部分が多ければ、個人は貯蓄する必要がないため貯蓄率は低くなるはずである。
- 消費性向
- 貯蓄率は消費性向と裏表の関係にあるので、消費性向が上がれば貯蓄率は下がる。
- 景気要因
- 景気が悪くなると将来不安から消費を手控え貯蓄率が上昇する。
設問3
解答:エ
(ア) | 1980年代後半のいわゆるバブル経済期には、失業率の低下に応じて実質賃金は下落傾向にある。 →×:1980年代後半には、失業率は低下している。しかし消費者物価変化率と現金給与総額伸び率は同水準で変化していることから、実質賃金については殆ど変化が見られないことが分かる。 |
(イ) | 2000年以降、失業率の上昇期には実質賃金は上昇傾向にある。 →×:2000年以降、失業率の上昇期には実質賃金は下降傾向にある。 |
(ウ) | 「オークンの法則」と同様、物価と名目賃金はほぼ同じ傾向を示し、実質賃金は硬直的に推移している。 →×:物価と名目賃金はの変化は1990年近辺に関しては、ほぼ同じ傾向を示しているが期間全体を見ると必ずしもそうではない。 なお、オークンの法則とは、実質GDP変化率と失業率の変化(幅)の間に観察される負の関係のこと。最初に研究した経済学者のA.オークンにちなんで名づけられた。雇用されて生産活動に貢献する労働者が増えれば実質GDPが高まり、逆に失業率が高まり生産活動に従事しない労働者が増えると実質GDPは低下するので、両者の間に負の相関関係が生じるのは自然なことである。 |
(エ) | 「フィリップス曲線」が示すように、物価変化率と失業率は相反する傾向が見られる。 →○:消費者物価変化数と完全失業率の推移は、概ねそう反する傾向が見られる。なお、フィリップス曲線(―きょくせん、英: Phillips curve)は、経済学においてインフレーションと失業の関係を示したもの。 |
設問4
解答:エ
古典派マクロ経済理論では、市場の価格調整メカニズムが万全であり、物価および名目賃金が上下に伸縮的であると考える。このため、労働市場では常に完全雇用が実現し、GDPは完全雇用GDPの水準と一致する。古典派マクロ経済理論では【 A:セイの法則 】が成立し、【 B:供給 】サイドからGDPが決定されると主張する。
なお、ケインズ経済理論では、有効需要の原則が成立するので需要サイドからGDPが決定されると主張する。
設問5
解答:ア
(ア) | インフレ・ギャップが生じている場合、物価を安定させるために政府支出の縮小が必要とされる。 →○:インフレギャップとは、完全雇用水準上で、総需要量(世の中のお金の量:消費)が総供給量(社会全体のモノの量:生産)を上回った場合の差のことをいう。インフレギャップが解消されない状態が続くと、生産が追いつかず、供給不足(品不足)となり、物価が継続的に上昇し、貨幣価値が下がるインフレ現象におちいる。すなわち、インフレギャップが生じている場合、物価を安定させるためには総需要を抑制する必要がある。したがって、政府支出の縮小が必要とされる。 |
(イ) | 限界貯蓄性向が大きいほど、租税乗数は大きくなる。 →×:限界貯蓄性向が大きいほど、租税乗数は小さくなる。 |
(ウ) | 減税は可処分所得の減少を通じて消費を拡大させ、GDPを増加させる。 →×:減税は可処分所得を増加させる。この可処分所得の増加は消費を拡大させ、GDPを増加させる。 |
(エ) | 政府支出の拡大と減税を同規模で行った場合、GDPは一定に維持される。 →×:政府支出の拡大と減税を同規模で行った場合、GDPは大きく増加する。 |
(オ) | 定率的な所得税は景気後退を自動的に防止する役割を果たすが、これを「裁量的財政政策」と呼ぶ。 →×:裁量的財政政策とは、政府が政府支出や租税を操作し、経済全体の活動規模を望ましい水準へ誘導させ、経済の安定化を図る財政政策の事をいう。 定率的な所得税は景気後退を自動的に防止する役割を果たすが、これを「裁量的財政政策( ビルト・イン・スタビライザー)」と呼ぶ。裁量的財政政策( ビルト・イン・スタビライザー)」とは、景気変動を自動的に安定させる機能のこと。累進所得税は、好景気の所得増大時に増え、不景気の所得減少期に減って、所得弾力的な需要の変動を抑える効果があることから、その典型と言える。 |