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平成22年度1次試験解答:経営法務

設問16

解答:エ

(ア) Y銀行が、月々の返済について11年目になって初めて乙に支払うよう請求してきた場合、乙は自らの保証債務に関する消滅時効を援用して、Y銀行の請求を拒否することができる。
⇒×:主債務者であるX社は10年間は返済を毎月履行してきたので、その間、保証債務の時効は進行しない。したがって、連帯保証人である乙は消滅時効を援用して、Y銀行の請求を拒否することはできない。
(イ) Y銀行から乙が支払わないと乙の不動産の競売をする旨の通知を受けた場合、乙は、X社の有する工場等の資産に対する執行を完了するまで、Y銀行の請求を拒絶することができる。
⇒×:連帯保証人には催告の抗弁権、検索の抗弁権は認められない。したがって債権者は連帯保証人に対して直接、債務の履行を請求することができ、連帯保証人は催告・検索の抗弁権をもって履行を拒否することはできない。
(ウ) Y銀行から請求を受けた際には、甲乙間で2分の1ずつ負担をする取り決めが甲と乙の話し合いによりなされている場合、乙はY銀行からの支払いの請求に対して2分の1の部分のみに応ずればよい。
⇒×:甲と乙とは連帯保証人である。連帯保証人は、保証人と異なり、催告の抗弁権、検索の抗弁権、分別の利益を有しない。
(エ) Y銀行に対する支払債務を乙が履行する場合、乙が有する不動産を売却又は競売してその金員をもってY銀行に返済した上で、さらに債務の残額があるときには、この残額も支払う義務がある。
⇒○:担保不動産の売却等を行なっても足りない場合は連帯保証人として債務全額の支払義務を負う。

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設問17

解答:ウ

(ア)

債権の分類は、債権の資金使途等の内容を個別に検討し、担保や保証等の状況を勘案のうえ、債権の回収の危険性又は価値の毀損の危険性の度合いに応じて行うものとする。
⇒○:「金融検査マニュアル」において、次の記述がある。

債権の査定に当たっては、原則として、信用格付を行い、信用格付に基づき債務者区分を行った上で、債権の資金使途等の内容を個別に検討し、担保や保証等の状況を勘案の上、債権の回収の危険性又は価値の毀損の危険性の度合いに応じて、分類を行うものとする。
ただし、国、地方公共団体に対する債権については、回収の危険性又は価値の毀損の危険性がないものとして債務者区分は要しないものとし、非分類債権とする。
(イ)

債務者区分について、特に中小・零細企業等については、債務者の財務状況等の他、当該企業の技術力、販売力や成長性などの情報や代表者等の収入状況や資産内容等を総合的に勘案するものとする。
⇒○:「金融検査マニュアル」において、次の記述がある。

債務者区分は、債務者の実態的な財務内容、資金繰り、収益力等により、その返済能力を検討し、債務者に対する貸出条件及びその履行状況を確認の上、業種等の特性を踏まえ、事業の継続性と収益性の見通し、キャッシュフローによる債務償還能力、経営改善計画等の妥当性、金融機関等の支援状況等を総合的に勘案し判断するものである。
特に、中小・零細企業等については、当該企業の財務状況のみならず、当該企業の技術力、販売力や成長性、代表者等の役員に対する報酬の支払状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況と保証能力等を総合的に勘案し、当該企業の経営実態を踏まえて判断するものとする。
(ウ)

債務者区分の破綻懸念先の債務者は、さらに要管理先である債務者とそれ以外の債務者とを分けて管理することが望ましい。要管理先である債務者とは、金利減免などの貸出条件や、支払が延滞しているなどの履行状況に問題がある債務者をいう。
⇒×:債務者区分の要注意先の債務者に関する記述である。「金融検査マニュアル」において、次の記述がある。

 要注意先とは、金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者、元本返済若しくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題がある債務者のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者など今後の管理に注意を要する債務者をいう。
 また、要注意先となる債務者については、要管理先である債務者とそれ以外の債務者とを分けて管理することが望ましい。
(エ)

信用格付は、債務者の財務内容、格付機関による格付、信用調査機関の情報などに基づき、債務者の信用リスクの程度に応じて行われる。信用格付は、債務者区分と整合的でなければならない。
⇒○:「金融検査マニュアル」において、次の記述がある。

債務者の財務内容、信用格付業者による格付、信用調査機関の情報などに基づき、債務者の信用リスクの程度に応じて信用格付を行う。また、信用格付は、次に定める債務者区分と整合的でなければならない。

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設問18

解答:設問1:ア 設問2:イ

(設問1)

内部統制には4つの目的がある。

1.業務の有効性・効率性
事業活動の目標の達成のため、業務の有効性及び効率性を高めること。
2.財務報告の信頼性
開示する財務諸表と財務諸表に重要な影響をおよぼす可能性が有る情報について、その信頼性を担保すること。
3.法令遵守
事業活動に関わる法令や会計基準もしくは規範、各社の倫理綱領やガイドラインを順守させること。
4.資産の保全
会社の資産(有形・無形、人的資源も含む)の取得やその使用、処分が正当な手続きや承認のもとで適切に行われるように資産の保全を図ること。
(ア) 企業統治体制の確立
⇒×:目的に含まれない。
(イ) 業務の有効性及び効率性
⇒1に該当する。
(ウ) 事業活動に関わる法令等の遵守
⇒3に該当する。
(エ) 資産の保全
⇒4に該当する。

(設問2)

内部統制には6つの基本的要素がある。

1.統制環境
統制環境とは、組織の気風を決定し、統制に対する組織内のすべての者の意識に影響を与えるとともに、他の基本的要素の基礎をなし、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング及びITへの対応に及ぼす基盤をいう。
2.リスクの評価と対応
リスクの評価とは、組織目標の達成に影響を与える事象のうち、組織目標の達成を阻害する要因をリスクとして識別、分析及び評価するプロセスをいう。
リスクへの対応とは、リスクの評価を受けて、当該リスクへの適切な対応を選択するプロセスをいう。
3.統制活動
統制活動とは、経営者の命令及び指示が適切に実行されることを確保するために定められる方針及び手続きをいう。(ex.ある作業に関し、誰が最終的な責任者であるかを明確にし、その者がその作業を、統制できている状況)
4.情報と伝達
情報と伝達とは、必要な情報が識別、把握及び処理され、組織内外及び関係者相互に正しく伝えられることを確保することをいう(ex.連絡・報告・相談をスムーズに行なうために、それを阻害するパワ・ハラやセクハラ等の禁止を明文化し、防止を徹底させる)。
5.モニタリング
モニタリングとは、内部統制が有効に機能していることを継続的に評価するプロセス(内部監査や外部監査において監査側が統制活動を監査するためのサンプルの採取がスムーズに行なえるかどうかが焦点になる)をいう。
6.ITへの対応
ITへの対応とは、組織目標を達成するために予め適切な方針及び手続き(情報管理規定など)を定め、それを踏まえて、業務の実施において組織の内外のITに対し、適切に対応することをいう。

したがって、「経営者の意向および姿勢のように、組織内のすべての者の統制に対する意識に影響を与えるとともに、他の基本的要素の基礎をなすもの」は、(イ)統制環境である。

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設問19

解答:ウ

【解答郡】
(ア) ADR(Alternative Dispute Resolution)
⇒×:ADR(Alternative Dispute Resolution:裁判外紛争解決手続)とは、訴訟手続によらない紛争解決方法を広く指すもの。ADRの種類にはあっせん、調停、仲裁がある。
(イ) DDS(Debt Debt Swap)
⇒×:DDS(Debt Debt Swap)とは、債権者が既存の債権を別の条件の債権に変更することであり、通常、金融機関が既存の貸出債権を他の一般債権よりも返済順位の低い「劣後ローン」に切り替える手法のことをいう。
(ウ) DES(Debt Equity Swap)
⇒○:DES(Debt Equity Swap:債務の株式化)とは、"Debt Equity Swap"の略で、Debt(債務)とEquity(株式)をSwap(交換)すること、すなわち「債務の株式化」のことをいう。通常、経営不振や過剰債務などに苦しむ企業の再建支援策の一つとして用いられており、債権を保有する金融機関等が融資(貸出金)の一部を現物出資する形で株式を取得することが多い。これによって、債務超過の状況を解消させたり、利払いや元本返済が必要な有利子負債を削減させたりすることができる。
(エ) DIP(Debtor In Possession)
⇒×:DIP(Debtor In Possession)とは、とは、民事再生法など法的整理に入った企業への短期の融資のこと。

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設問20

解答:エ

(ア) 株式会社の純資産が300万円を下回らない限り、株主総会の決議によっていつでも剰余金の配当をすることができる。
⇒○:株式会社の株式会社の純資産額が三百万円を下回る場合は、剰余金の配当はなしえない。
■会社法(適用除外)第458条
第453条から前条までの規定は、株式会社の純資産額が三百万円を下回る場合には、適用しない。
(イ) 株主総会の決議によって、配当財産を金銭以外の財産とする現物配当をすることができる。ただし、当該株式会社の株式等を配当財産とすることはできない。
⇒○:現物配当は、剰余金の配当のうち金銭以外の財産による配当のことで、会社法にその規定が設けられている。ただし、当該株式会社の株式等を除くとの規定もある。
(ウ) 事業年度の一定の日を臨時決算日と定め、臨時計算書類を作成して取締役会および株主総会で承認を受けた場合は、臨時決算日までの損益も分配可能額に含まれる。
⇒○:正しい。
(エ) 定款で定めることにより一事業年度の途中において何回でも取締役会の決議によって中間配当をすることができる。ただし、配当財産は金銭に限られる。
⇒×:1事業年度に1回しか行なえない。すなわち何回でも中間配当することはできない。
■会社法(適用除外)第454条
5.取締役会設置会社は、一事業年度の途中において一回に限り取締役会の決議によって剰余金の配当(配当財産が金銭であるものに限る。以下この項において「中間配当」という。)をすることができる旨を定款で定めることができる。この場合における中間配当についての第1項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。

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