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平成18年度1次試験解答:企業経営理論

設問11

解答:設問1:ウ 設問2:ウ

 社内ベンチャーとは、企業組織の活性化を促進する目的などで、社内の人材が主体となって、本業以外の事業分野へ新規に進出したり、新製品の開発を行ったりする事業企画のために、企業内部に独立した事業組織を設立したり、企業の子会社を設立してそこで新規事業を開始させる制度のことである。社内ベンチャーのメリットとして、企業が保有する既存の人材、設備、資金、販路、情報等の経営資源を有効に活用できる点がある。
日本における主な成功例として、NTTドコモのiモードやソニーコンピュータのプレイステーションなどがある。

(設問1)
(ア) 既存の経営戦略から演繹的に導かれた戦略行動は、その時点での組織構造と密接な関係があるので、「戦略は構造に従う」という命題が成り立つ。
→×:事後的に解釈していく知識創造プロセスは、自然科学のように演繹的に導かれるものではない。また「戦略は構造に従う」のではなく「戦略は組織文化に従う」。
(イ) 既存の経営戦略のもとで社内ベンチャーのような自律的な戦略行動が展開されるためには、既存の事業から独立した研究開発部門の設置と研究者への十分な金銭的報酬を約束しておかなければならない。
→×:社内ベンチャーのような自律的な戦略行動では十分な金銭的報酬を用意するより先に、仕事そのものを魅力的にするべきである。また高額の金銭的報酬は技術者の創作意識を失わせる可能性がある。
(ウ) 現在の経営戦略は、それに従ってデザインされた組織構造や組織プロセスによって強化されるとともに、成功した自律的戦略行動を事後的に解釈し、正当化することを通じて新しい戦略が形成される。
→○:正しい
(工) 自律的な戦略行動とは、現在の経営戦略とはまったく無関係に展開される社内ベンチャーのような活動を意味する。
→×:社内ベンチャーは現在の経営戦略に大きく影響をうける。
(オ) 自律的戦略行動は既存の組織構造や組織コンテクストの影響を受けて展開されるが、ひとたびそれが形成されると、既存の組織コンテクストを破壊していく。
×:一般に、コンテクスト(あるいはコンテキスト)は、日本語では「文脈」と訳されることが多いが、他にも「前後関係」、「背景」などと訳される。自律的戦略行動は既存の組織構造や組織コンテクストの影響を受けて展開されるが、ひとたびそれが形成されると、既存の組織コンテクストを調整していく。
(設問2)
(ア) 現在の経営戦略は、新しい発想が求められる社内ベンチャーにとっては革新性を失わせる方向に作用するため、社内ベンチャーの管理者たちには浸透しないようにしたほうがよい。
→×:現在の経営戦略が革新性を失わせる方向に作用するとは限らないので、「社内ベンチャーの管理者たちには浸透しないようにしたほうがよい。」という記述は不適切である。
(イ) 社内ベンチャーは、既存事業とは現場レベルでの組織能力の関連性が低いので、早期にスピンアウトさせ子会社として管理することが望ましい。
→×:社内ベンチャーは、現場レベルでの組織能力の関連性が低いわけではない。また子会社として採算が成り立つかどうかでスピンアウト(分社化)するどうかを判断するべきであり、「子会社として管理することが望ましい。」という記述は不適切である。
(ウ) 社内ベンチャーは、中間管理職に既存の戦略のコンセプトに疑問を抱かせ、トップマネジメントに自律的戦略行動を正当化する新しい戦略のコンセプトを定義し直すきっかけを与える可能性をもっている。
→○:正しい
(工) 社内ベンチャーは、ボトムアップ式の戦略形成プロセスであり、現場の従業員の不満を解消する活性化策として採用される経営手法である。
→×:社内ベンチャーは、「現場の従業員の不満を解消する活性化策として採用される経営手法」ではない。あくまでも現場の自由な発想といった内発的な要因から生じるものである。
(オ) 社内ベンチャーを成功に導くためには、社内企業家となる技術者に高額の金銭的報酬を与えなければならない。
→×:高額の金銭的報酬は技術者の創作意識を失わせる可能性がある。

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設問12

解答:イ

シングルループ学習
すでに備えている考え方や行動の枠組みに従って問題解決を図っていくことである。 すなわち既存の認知的枠組みで状況を解釈するもので環境変化に対応できなくなる。
ダブルループ学習
既存の枠組みを捨てて新しい考え方や行動の枠組みを取り込むことです。すなわち枠組みを転換し、今までとは違った視点で失敗から学ぶことができる。
(ア) 第1段階は、衰退の兆候が現れつつあるが、組織はこれに気づいていない時期である。このような問題は、技術や顧客との不調和について組織が適切な情報を得ることができず、ダブルループの組織学習が行われているからである。
→×:第1段階は、衰退の兆候が現れつつあるが、組織はこれに気づいていない時期である。このような問題は、技術や顧客との不調和について組織が適切な情報を得ることができず、シングルループの組織学習が行われているからである。 シングルループの組織学習が行われている為に、既存の認知的枠組みで状況を解釈するので環境変化に対応できなくなる。
(イ) 第2段階は、組織が業績悪化について気がついてはいるが、既存の思考様式に従って行動を続けるため、問題の解決に役立つ行動を展開できない時期である。こ の段階の早い時期に、図中の@に示すように適切な情報を獲得・解釈できる仕組みを構築できれば、組織は成長軌道に復帰する可能性が高くなる。
→○:「既存の思考様式に従って行動を続けるため」とは、すなわちシングルグループ学習に陥っていることを指す。また「適切な情報を獲得・解釈できる仕組みを構築」とはダブルループ学習のことを指す。すなわちシングルグループ学習を止めてダブルループ学習に展開することで、組織は成長軌道に復帰する可能性が高くなる。
(ウ) 第3段階は、組織が業績の悪化をもはや無視できなくなる段階であるにもかかわらず、誤った修正行動が展開されてしまう時期である。このような現象は、既存 の行動に対するコミットメントが強くなりすぎることが原因となるダブルループの組織学習が起こっている可能性が高い。
→×:第3段階は、組織が業績の悪化をもはや無視できなくなる段階であるにもかかわらず、誤った修正行動が展開されてしまう時期である。このような現象は、既存 の行動に対するコミットメントが強くなりすぎることが原因となるシングルループの組織学習が起こっている可能性が高い。「既存 の行動に対するコミットメントが強くなりすぎること」とはシングルループ学習のことである。なお、既存 の行動に対するコミットメントが強くなりすぎるとは、個人が自己の行動を正しいものだと思い込む気持ちが強いあまり、自己の行動が客観的に見て適切なものかどうかを判断できなくなることである。
(工) 第4段階は、組織の業績が生存を脅かす限界の水準に達している段階である。この段階に達すると、組織はもはや変革に必要な十分な資源を持っていないために、図中のBに示すように漸次的な改革を積み重ねていかなければ成長軌道に復帰することは難しくなる。
→×:第4段階の危機的状況から成長軌道に復帰させるためには、漸次的な改革の積み重ねではもはや手遅れである。革命的な変革を行なわない限り、成長軌道に復帰することは難しくなる

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設問13

解答:オ

コンフリクトに関する問題である。

(ア) コンフリクトを起こしているそれぞれの部門内に独自にトレーニング・グループをつくり、組織開発の手法をとり入れた訓練を行う。
→×:「それぞれの部門内に独自にトレーニング・グループをつくる」のでは意味が無い。互いに問題を直視して、自分の利得も相手の利得も大きくなるように、部門間で何らかの対応をすべきである。
(イ) コンフリクトを起こしている部門間に共通の目標を共有させ、情報を共有させるとともに、各部門の専門性を損なわないよう独立した評価システムを導入する。
→×:独立した評価システムを導入しても、部門間に共通の目標を共有させることも、情報を共有させることもできない。
(ウ) コンフリクトを起こしている部門に対して、インターネットなどのITを導入して情報を共有させ、直接に共同の意思決定をする機会そのものを減らす。
→×:「直接に共同の意思決定をする機会そのものを減らす。」のでは、コンフリクトは増すことになる。
(工) コンフリクトを起こしている両部門を1つの部門に統合することを通じて、相互依存を認識しなくでは意思決定できないようにし、予算や人件費を削減する。
→×:予算や人件費を削減することで、組織内の資源配分を巡って争いが起こりコンフリクトは増すことになる。
(オ) 部門間人事異動を定期的もしくは不定期に行うことを通じ、それぞれの部門の目標や課題を理解できる人材を増やし、コミュニケーションを活発にするような横断的関係を設ける。
→○:コンフリクトの解決方法には競争、協力、妥協、回避、和解がある。選択肢は協力に該当する。

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設問14

解答:ウ

 組織慣性とは、組織が現状を保とうとする性質のことである。

(ア) 企業が既存の設備や資産に大きな投資をしていると、それらが機会費用となって、環境変化に対する組織慣性となってしまう場合がある。
→×:機会費用ではなく、埋没費用になってしまう。機会費用とは、利益を上げられる機会があるのに、何もしないことによって生じる損失のことである。また埋没費用とは、支払ってしまい取り返せない費用のことである。
(イ) 既存の商品の品質や性能に厳しい要求を突きつける取引相手の動向をフォローすることで、既存の技術や製品への投資を継続することへの組織慣性を小さくすることができる。
→×:厳しい要求を突きつける取引相手も既存の技術や製品という枠組みの中で厳しい要求をしているに過ぎない。よって取引相手へのフォローをしても組織慣性は小さくならない。
(ウ) 現在優先的に資源配分を受けているため、組織内でパワーを持っている人々が、資源配分のパターンを変更することに抵抗し組織慣性が強くなる。
→○:正しい。現在優先的に資源配分を受けているため、組織内でパワーを持っている人々は、資源配分のパターンが変更されることによって既得権益を失う恐れがある。その結果、組織慣性が強くなる。
(工) 伝統的な情報収集システムを通じて入手できる情報には限界があるため、最先端の情報処理技術を駆使した情報システムを構築しておくことで、組織慣性を小さくすることができる。
→×:伝統的な情報収集システムであろうと、最先端の情報処理技術を駆使した情報システムであろうとも意思決定をするのは人間である。よって「組織慣性を小さくすることができる。」とは限らない。

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設問15

解答:設問1:ア 設問2:エ

(設問1)
(ア) 経営改革案の作成段階に研究者を入れると改革そのものに反対する可能性があるので、マーケティング部門および財務部門の代表者をより多く取締役会のメンバーにし計画を作成する。
→×:組織変革によって影響をうける人々に対して公平に情報を共有するべきである。選択肢のように研究者のみ情報を提供しないことによって部門間のコンフリクトが発生する。
(設問2)
(工) 大株主からの支持を十分取り付けるためにIR活動を積極的に進めるコミュニケーションをとるとともに、従業員に変革の内容を外部から知らしめるよう利害関係者やマスコミへの情報をコントロールする。
→×:従業員に変革の内容を外部から知らしめるようにしても正確に伝わらない可能性があるし、直接説明がなかったことで不信感を抱くと考えられる。

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設問16

解答:オ

(ア) 個人に同時に複数の役割が期待される役割葛藤が生じ、それがストレッサーとストレスの関係にプラスに作用するモデレーターとなることがある。
→×:役割葛藤とは、複数の役割が相互に矛盾する状況下で、一定の緊張が生じることである。役割葛藤は、ストレスの原因となるストレッサーであり、モデレータではない。
(イ) 職務充実などを通じて、個人の能力に対し過重な負担となる職務を与えるとモデレーターとしてストレスを高くする効果を持つ。
→×:職務充実とは、職務満足を高めるためのものであり、一般的にはストレスを低くする効果を持つ。ただし、過重な負担となる職務を与えるとストレッサーとしてストレスを高くする効果を持つ。
(ウ) ストレス耐性の高い人は、燃え尽き症候群などのバーンアウトを起こす可能性は低く、高い組織成果を上げることが多い。
→×:ストレス耐性の高い人は、燃え尽き症候群などのバーンアウト(燃え尽きを意味する。働く意欲が急速に、それも著しく低下すること)を起こす可能性は高くなる。
(工) 高い組織成果を達成するためには、できるだけ組織ストレスの水準を低く抑える必要があり、そのために管理者はストレッサーとモデレーターの適切な管理を行わなければならない。
→×:。ストレスの全く無い、状態では、モラルが低下し、生産性も乏しくなる。逆に、極度にストレスが高まると非生産的行動が発生し、生産性も乏しくなる。すなわち適度のストレスが必要であり望ましい。
(オ) 役割葛藤などのストレッサーがあっても、上司や同僚に相談したり彼らから支持を得ることができれば、ストレスを弱めるモデレーターとなる。
→○:正しい。

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設問17

解答:ウ

労働基準法に関する問題である。

▼労働基準法第67条
(育児時間)
第67条 生後満1年に達しない生児を育てる女性は、第34条の休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる。
2 使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない。
(ア) 育児時間は、1日の労働時間を8時間とする勤務を予想し、1日2回の付与を義務付けるものであり、1日の労働時間が4時間以内であれば1日1回の付与でもよい。
→○:労働基準法では、1日の労働時間を8時間と予測している。よって1日の労働時間が4時間以内であれば1日1回の付与でもよい。
(イ)

育児時間は、勤務時間の始め又は終りに請求してきた場合にも拒否することはできない。
→○: 育児時間、勤務時間の始め又は終りにでも請求可能である。

(ウ) 勤務時間の中で、使用者が業務に支障がないように時間を決めて30分の育児時間を与えることは差支えがない。
→×:育児時間は、本人の請求により成立するものであり、また、子供を育てるために必要な時刻に取られるべきものである。すなわち使用者が時間を判断し決めることはできない。
(工) 社内の託児所の施設があれば、往復の時間を含めて30分の育児時間を与えればよい。
→○:社内に託児所の施設があり、30分の育児時間に往復の時間を含めるのは違法とはならない。

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設問18

解答:エ

 労働者災害補償保険とは、労働者災害補償保険法に基づき、業務災害及び通勤災害にあった労働者又はその遺族に、保険給付を支給する政府管掌の保険制度である。
 以下の事業については、国家公務員(地方公務員)災害補償法等の適用を受けるため、労災保険に加入できない。

(1)国の直営事業
国がみずから行う事業で、国有林野、印刷、造幣の3つの事業があり、これを3現業と言う。
(2)官公署の事業
非現業の官公署の事業のことです。わかりやすく言えば、役所など国又は地方公共団体の事務を行う事業。ただし、地方公務員で現業部門の非常職員については労災保険が適用。
(3)船員保険の被保険者
船員保険法の適用を受けるため、労災保険については適用除外。ただし、疾病任意継続被保険者については、労災保険が適用。
(ア) 外国人労働者(不法就労者を含む)
→○:国籍や不法/適法かに係わらず、労働者災害補償保険法の適用を受けられる。
(イ) 現業で非常勤の地方公務員
→○:公務員は、国家公務員災害補償法の適用を受けるが、現業で非常勤の地方公務員は労働者災害補償保険法の適用を受けられる。
(ウ) 短時間労働者
→○:短時間であろうと、労働者であるから当然、労働者災害補償保険法の適用を受けられる。
(工) 特定独立行政法人の職員
→×:公務員は、国家公務員災害補償法の適用を受ける為、労働者災害補償保険法の適用を受けられない。
(オ) 派遣労働者
→○:派遣労働者も労働者であるから当然、労働者災害補償保険法の適用を受けられる

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設問19

解答:ア

(ア) 学校教育法第1条にいう学校の昼間の学部の学生等は原則として被保険者にならないが、在学校の許可を得ることができるものは被保険者になることができる。

→×:昼間学生は、在学校の許可を得ても、被保険者になることができない。

例外が認められるのは、次の者だけである。

  1. 卒業見込証明書を有する者であって、卒業前に就職し、卒業後も引き続きその事業に勤務する予定の者
  2. 休学中の者又は一定の出席日数を課程終了の要件としない学校に在学する者であって、その事業において同種の業務に従事する通常の労働者と同様に勤務し得ると認められる者

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設問20

解答:イ

労働安全衛生法に関する問題である。

 衛生管理者とは、労働安全衛生法において定められている、労働条件、労働環境の衛生的改善と疾病の予防処置等を担当し、事業場の衛生全般の管理をする者である。一定規模以上の事業場については、衛生管理者免許、医師、歯科医師、労働衛生コンサルタント等の免許、資格を有する者からの選任が義務付けられている。
よって(イ)医師又は歯科医が解答である。

(ア) 安全衛生推進者
→×:安全衛生推進者は、安全管理者を選任すべき義務のない50人未満の小規模の安全衛生管理について選任されるものである。
(イ) 医師又は歯科医
→○:正しい
(ウ) 技術士
→×:衛生管理者となる者には含まれていない。
(工) 作業環境測定士
→×:衛生管理者となる者には含まれていない。
(オ) 労働安全コンサルタント
→×:衛生管理者となる者には含まれていない。

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