平成26年度1次試験問題:経営法務
設問1
X株式会社(以下「X社」という。)の発行済株式総数は、30万株であり、そのすべ
てをAが保有していた。その後、Aは死亡し、B・C・D・Eの4名のみが相続人
としてAの財産を相続した。Bは、Aの配偶者である。C及びDは、AとBとの
間で出生した子である。Eは、AとAと婚姻関係を有したことがないFとの間で
出生した子であり、AはEを認知している(下図参照)。
【解答群】 (ア) B、C、D及びEが30万株を共有し、Bの共有持分が2分の1、C、D及びEの3名の共有持分がそれぞれ6分の1となる。 (イ) B、C、D及びEが30万株を共有し、Bの共有持分が2分の1、C及びDの2名の共有持分がそれぞれ5分の1、Eの共有持分が10分の1となる。 (ウ) Bが15万株を、C、D及びEがそれぞれ5万株を保有する株主となる。 (エ) Bが15万株を、C及びDがそれぞれ6万株を、Eが3万株を保有する株主となる。
設問2
X株式会社(以下「X社」という。)は、Y株式会社(以下「Y社」という。)との間で、それぞれが出資して株式会社形態の新会社を設立し、合併事業を行おうとしている。これを前提に下記の設問に答えよ。
(設問1)
次の2つの条項は、X社がY社との間で締結した合併契約書に定められたものである。この2つの条項の標題として空欄A及びBに入る語句の組み合わせとして最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【 A 】
第○条 | : | X社は、合併会社の株式の全部又は一部を第三者に譲渡しようとする場合には、Y社に対し、書面をもって、当該譲渡の相手方(以下、本条において「譲受人」という。)の氏名又は名称、譲渡しようとする株式の数及び譲渡の条件を通知する。 |
2 | : | Y社は、前項の通知が到達した日から60日以内にX社に対して買取りを希望する旨の書面による通知を行った場合には、Y社が指定する公認会計士によって合併会社の資産状態その他一切の事情を考慮して定められた価格で、X社が譲渡を希望する株式を買い取ることができるものとする。 |
3 | : | Y社は、X社に対し、合併会社の株式の価格についての意見を前項の公認会計士に述べる機会を与えるものとする。 |
4 | : | X社は、Y社が、第2項の期間内に買取りを希望する旨の書面による通知を行わなかった場合には、第1項で通知した数の合併会社の株式を譲受人に対して譲渡できるものとする。 |
【 B 】
第○条 | : | Y社は、次の各号の事由が生じた場合、X社に対し、Y社が保有する合併会社の株式の全部又は一部を、Y社が指定する公認会計士によって合併会社の資産状態その他一切の事情を考慮して定められた価格で、買い取るよう請求することができるものとする。 |
(1) X社Y社のいずれの当事者の責めに帰することのできない事由により、X社とY社との間又はX社が指名した取締役とY社が指名した取締役との間で意見が対立して調整がつかず合併会社の事業運営が滞った場合 | ||
(2) X社Y社のいずれの当事者の責めに帰することのできない事由により、合併会社\に重大な損失が生じ、合併会社の事業の継続が不可能又は著しく困難となった場合 | ||
(3) 前各号に掲げるもののほか、X社Y社のいずれの当事者の責めに帰することのできない事由により、合併会社の事業の遂行が不可能となった場合 |
【解答群】 (ア) A:拒否権 B:コール・オプション(イ) A:拒否権 B:プット・オプション(ウ) A:先買権 B:コール・オプション (エ) A:先買権 B:プット・オプション
(設問2)
X社とY社の交渉により、合併会社に対しては、Y社が議決権の過半数を確保できるように出資することとなった。しかし、取締役の全員をY社だけで選任できることとすると、合併会社の運営にX社の意向が全く反映されないことになりかねないので、累積投票制度を排除しないことになった。
この点、株主総会に出席した株主が有する株式数の合計がa株である場合において、b名の取締役を選任するときに、自派からc名の取締役を当選させることができる最小株式数は、
となることが知られている。
合併会社の発行済株式総数を90株、X社が保有する株式を31株、Y社が保有する株式を59株、選任する取締役の数を5名とした場合に、Y社が株主総会に出席して反対しても、X社が当選させることができる取締役の最大の人数と
して、最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 0名 (イ) 1名 (ウ) 2名 (エ) 3名
設問3
A氏は、X株式会社(以下「X社」という。)に対しB氏をX社の取締役に選任する議案を株主総会に提出したい。
これに関する記述として最も適切なものはどれか。
ただし、X社は取締役会設置会社であり、A氏の所有株式数は10株で、X社の議決権のある株式数は2,000株である。
また、当該議案と実質的に同一の議案は、過去3年間上程されていないものとする。
【解答群】 (ア) A氏はB氏を取締役とする議案の要領を株主総会の招集通知に記載することを請求することはできないが、取締役選任の議題があれば株主総会においてB氏を取締役とする議案を提出することができる。 (イ) A氏はいかなる場合もB氏を取締役とする議案を株主総会に提出することはできない。 (ウ) A氏はいつでもB氏を取締役とする議案の要領を株主総会の招集通知に記載することを請求でき、かつ、株主総会においてB氏を取締役とする議案を提出することができる。 (エ) A氏は株主総会の8週間前までであれば、B氏を取締役とする議案の要領を株主総会の招集通知に記載することを請求できるが、株主総会においてB氏を取締役とする議案を提出することができない。
設問4
取引先の信用状態が悪化した場合における債権回収に関する以下の会話は、中小企業診断士であるあなたとX株式会社の代表取締役甲氏との間で行われたものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。
甲氏 | : | 「Y社が振り出した手形が不渡りになったという情報を聞きました。Y社に対しては、売掛債権が1億円もあるんです。これを回収できないとなると当社の経営に大きな打撃となってしまいます。」 |
あなた | : | 「何か担保は取っていなかったのですか。」 |
甲氏 | : | 「何も取れませんでした。」 |
あなた | : | 「その売掛債権の内容はどうなっていますか。」 |
甲氏 | : | 「Y社は、卸売業者です。当社は、取引基本契約書を締結して、Y社に対して当社の製品を販売し、Y社は、これを小売業者に転売しています。当社がY社に対して有する売掛債権は、当社の製品をY社に販売して発生したものです。」 |
あなた | : | 「その売掛債権について、支払期限は、もう来ているのですか。」 |
甲氏 | : | 「いや、まだ来ていません。」 |
あなた | : | 「では、取引基本契約書に、【 A 】として、手形の不渡りが定められていますか。」 |
甲氏 | : | 「いや、ちょっと分かりません。」 |
あなた | : | 「ちょっと契約書を見せてもらえますか。」 |
甲氏 | : | 「どうぞ、これです。」 |
あなた | : | 「どれどれ。ああ、ここに定められていますね。【 B 】を行使するには支払期限が到来している必要があるのですが、ここに【 A 】として
手形の不渡りが定められているので、いますぐ【 B 】を主張できるか もしれません。【 B 】を主張できれば、甲さんの会社がY社に販売した製品について、他の債権者に先立って弁済を受ける権利、つまり、優先弁済権が認められます。」 |
甲氏 | : | 「でも、Y社は、既に、当社から購入した製品を転売して、買い受けた第三者がその製品の引渡しを受けてしまっているようです。それでも優先弁済権が認められるのですか。」 |
あなた | : | 「その場合でも、Y社が第三者から転売代金の支払を受けていなければ、その転売代金債権について【 B 】を行使できることになっています。これを【 C 】といいます。」 |
甲氏 | : | 「そんなことができるのですか。」 |
あなた | : | 「ただ、この【 C 】もY社が第三者から転売代金の支払を受けてしまっていると行使することができません。」 |
甲氏 | : | 「手続きはどうすればいいのでしょうか。」 |
あなた | : | 「Y社が転売代金を受け取る前に裁判所に申し立てる必要があるので、弁護士さんに依頼するのがよいと思います。とにかく時間がないので、早く顧問弁護士の先生のところに相談に行きましょう。 |
(設問1)
会話の中の空欄Aに入る語句として最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) 危険の移転事由 (イ) 期限の利益喪失事由 (ウ) 契約の解除事由 (エ) 契約の取消事由
(設問2)
会話の中の空欄B及びCに入る語句の組み合わせとして最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) B:先取特権 C:物上代位 (イ) B:先取特権 C:物上保証 (ウ) B:抵当権 C:物上代位 (エ) B:抵当権 C:物上保証
設問5
不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」という。)で定義される表示に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) イタリアで縫製され、日本でラベルが付された衣料品について、「MADE IN ITALY」と表示することは、景表法に違反する。 (イ) 景表法上、比較広告を行うことは禁止されている。 (ウ) 口頭で行うセールストークは、表示には含まれない。 (エ) 消費者庁長官から、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求められたのに提出しなかった場合には、景表法に違反する表示とみなされる。