平成22年度1次試験問題:経営法務
設問1
甲は、株式会社を設立することとし、設立時発行株式は、発行価額5万円で1,000株を予定している。甲は、発起人として600株を引き受ける予定であるが残り400株については募集設立の方式を使って募集することとし、申込期間を7月1日から7月30日までとして募集したところ、A〜Dの4名から、以下のとおり、申込みがあった。
申込日時 | 引受希望株式数 | ||
A | 7月5日 | 午前9時 | 200株 |
B | 7月21日 | 午前10時 | 300株 |
C | 7月21日 | 午後3時 | 400株 |
D | 7月28日 | 午前11時 | 100株 |
甲は、引受人及びその引受株式数を決定することとしているが、募集に際し、決定方法は特に定めなかった。甲としては、申込者の4名の中では、今後の取引関係等を考慮すると、BとDに引き受けてもらうのが最も望ましく、他の方法は、法律上やむを得ない場合に実施したいと考えている。かかる前提で、会社法の制約の範囲内で、甲の希望を最大限に実現する割り当て方法として最も適切なものはどれか。
【解答群】 (ア) A: 0株 B:300株 C: 0株 D:100株 (イ) A: 80株 B:120株 C:160株 D: 40株 (ウ) A:200株 B: 86株 C:114株 D: 0株 (エ) A:200株 B:200株 C: 0株 D: 0株
設問2
中小企業診断士であるあなたは、資本金3,000万円で株式会社を設立しようとしているあなたの友人から、設立する会社の組織をどうしたらよいかについて相談を受けた。あなたの友人の希望は以下のとおりであるが、それを前提に友人の希望に沿う組織形態を、あなたがアドバイスするとすれば、最も適切なものはどれか。下記の解答群から選べ。
【あなたの友人の希望内容】
私を含めて株主は約10名を予定しており、私が1,600万円出資する予定である。会社の運営に当たっては、何でも株主総会で決議できるというのでは支障を来すので、株主総会で決議できる事項を制限し、代表取締役社長の決定で大部分の業務執行を行えるようにしたい。また、当初の役員の人数は必要最小限としたい。
【解答群】 (ア) 取締役1名(うち代表取締役1名) (イ) 取締役2名(うち代表取締役1名) 取締役会 (ウ) 取締役3名(うち代表取締役1名) 監査役1名 会計参与1名 (エ) 取締役3名(うち代表取締役1名) 取締役会 監査役1名
設問3
破産手続、民事再生手続及び会社更生手続について述べた次の文章について、下線部@〜Cの説明のうち最も適切なものを下記の解答群から選べ。
破産手続、民事再生手続及び会社更生手続の違いとしては、第一に、手続が目指す結果の違いが挙げられる。即ち、@破産手続は、清算型と呼ばれ、法人・自然人を 問わず破産者が破産手続開始決定時に保有する全ての資産を金銭に換価して配当に充てることになるが、民事再生手続、会社更生手続は、再建型と呼ばれ、それぞれの手続に従って、債務者の再建を図りながら弁済を行うこととなる。
第二に、対象となる人の違いが挙げられる。A破産手続、民事再生手続は、法人・ 自然人を問わず全ての人に適用されるが、会社更生手続は、会社法上に規定がある 会社のみに適用され、それ以外の法人・自然人には適用されない。
第三に、手続の主体の違いが挙げられる。B破産手続、会社更生手続では、管財人 が選任され、管財人が資産の管理処分等を行うが、民事再生手続では、管財人とい う制度が法律上存在しないため、債務者自身が主体となって手続を遂行することとなっている。
第四に、抵当権等の担保権に関する基本的な取り扱いの違いが挙げられる。C破産手続、民事再生手続は、担保権は別除権となり、担保権者は手続外で担保権を実行 することが可能であるが、会社更生手続においては、担保権は更生担保権となり、手続外での実行は禁止される。
【解答群】 (ア) 下線部@ (イ) 下線部A (ウ) 下線部B (エ) 下線部C
設問4
甲株式会社(以下「甲社」という。)では、営業部門を会社分割の手続を利用して分社化することとしているが、その中で、従業員A〜Dの所属について、以下の対応を検討している。これら従業員のうち、「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」第2条第1項に基づく通知が必要となる者の組み合わせとして最も適切なものを下記の解答群から選べ。なお、分社化により新たに設立される会社を乙株式会社(以下「乙社」という。)とする。
従業員A: | 入社以来、営業部門に従事している者であるため、会社分割に際しても、乙社所属とする。 |
従業員B: | 総務部門に従事する者であるが、乙社での総務担当者がおらず、従業員Bは過去に営業部門に関連する総務業務も担当していたことがあるため、会社分割に際しては、乙社所属とする。 |
従業員C: | 経理部門に従事し、営業部門に関連する経理も若干担当していたことはあるものの、会社分割に際しては、甲社所属とする。 |
従業員D: | 一昨年の人事移動で、営業部門に異動となり、その後約2年間その業務に従事していたが、適性の問題もあることから、会社分割に際しては、甲社所属とし、異動前の部署に戻す。 |
【解答群】 (ア) A、B、C (イ) A、B、D (ウ) A、C、D (エ) B、C、D
設問5
中小企業診断士であるあなたは、依頼者であるX有限会社(特例有限会社)の代表取締役である甲に対して、以下のアドバイスを行おうと考えている。このアドバイス案のうちで最も適切なものはどれか。
なお、X有限会社は、資本金300万円、株主は甲、甲の弟2名、甲の子の計4名、役員は、代表取締役の甲のほか、甲の弟2名がそれぞれ取締役、甲の子が監査役に就任している。
【解答群】 (ア) 御社の場合、取締役会を設置することはいつでもできますが、設置するメリットはないと思います。 (イ) 増資を行う場合、誰に割り当てるかは代表取締役のあなたが自由に定めることができますから、あなたに割り当てることにすれば、あなたの持株数を簡単に増やせます。 (ウ) 特例有限会社から株式会社に組織変更し、X株式会社という商号を使用するには、定款変更の手続をとって、商号を変更して、それを登記すれば足ります。 (エ) 特例有限会社の取締役の任期は10年までに制限されていますから、任期が満了するときにはまた取締役を選び、登記をしないといけません。