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平成23年度1次試験解答:企業経営理論

設問1

解答:エ

ドメインとは事業領域のことで、企業(事業)で顧客にどのような価値を提供するか、自社で何をしないのかを決めることである。

(ア)

D.エーベル(Abell)の「顧客層」「顧客機能」「技術」という3次元による事業ドメインの定義では、各次元の「広がり」と「差別化」によってドメインの再定義の選択ができる。
⇒○: D.エーベル(Abell)は、3次元による事業ドメインを定義した。

  1. 顧客層(誰を対象とするか)
  2. 顧客機能(顧客に何を提供するか)
  3. 技術・ノウハウ(自社のどのような技術を提供するか)
(イ) 事業ドメインは将来の事業展開をにらんだ研究開発分野のように、企業の活動の成果が外部からは見えず、潜在的な状態にとどまっている範囲も指す。
⇒○:事業ドメインは、企業の活動について外部から見えない研究開発分野などの潜在的な状態にとどまっている範囲も示す。
(ウ) 自社の製品ラインの範囲で示すような事業ドメインの物理的定義では、事業領域や範囲が狭くなってT.レビット(Levitt)のいう「近視眼的」な定義に陥ってしまうことがしばしば起こる。
⇒○:T.レビットが1960年に発表した「マーケティング近視眼」という論文において物理的な定義にはマーケティング近視眼的な定義に陥ってしまうリスクを指摘した。
(工) 全社ドメインの定義によって企業の基本的な性格を確立できるが、製品やサービスで競争者と競う範囲は特定できない。
⇒×:全社ドメイン(企業ドメイン)を決めることで、各事業のドメインが決まる。その結果、競争ドメインが決まり、事業ごとに競合相手と争う範囲が決まる。
(オ) 単一事業を営む場合には製品ラインの広狭にかかわらず事業レベルの定義がそのまま全社レベルの定義となるが、企業環境が変化するためにドメインも一定不変ではない。
⇒○:単一事業を営む企業の場合は企業ドメインと事業ドメインは同じ定義となる。

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設問2

解答:設問1:オ 設問2:ウ

(設問1)

(ア) 開発された技術をてこに新規事業が増えるにつれて、社内でシナジー効果を追究する機会が高まるが、シナジー効果が成長にうまく結び付かない場合、多角化を維持するための費用がかさんだり、多様な事業をマネジメントするコストが大きくなるという問題がある。
⇒○:多角化を進めてもシナジー効果が発揮されない場合いもある。その場合、多角化を維持するための費用がかさんだり、多様な事業をマネジメントするコストが大きくなるという問題がある。
(イ) グリーンメーラー的な投機的な投資家や企業価値の実現による配当を迫る投資ファンドの動きが活発になると、企業はそれらに狙われないように企業防衛の姿勢を強めようとするため、M&Aも少なくなりがちである。
⇒○:グリーンメーラーとは、保有した株式の影響力をもとに、その発行会社や関係者に対して高値での引取りを要求する者をいう。グリーンメーラーの動きが活発化すると企業はそれらに狙われないように企業防衛の姿勢を強めようとするため、M&Aも少なくなりがちである。
(ウ) 成長の牽引力となる技術が枯渇してくると、新規な技術による事業機会も少なくなりがちであり、技術イノベーションによる多角化戦略は困難になる。
⇒○:成長の牽引力となる技術が枯渇または陳腐化すると事業機会が少なくなり、技術イノベーションによる多角化戦略は困難になる。
(工) 長期雇用慣行等に支えられて従業員のみならず経営者も会社への一体感が強くなると、このような企業がM&Aの対象になった場合、お家の一大事と受け止められ、会社ぐるみでM&Aに抵抗する動きが生じやすい。
⇒○:長期雇用慣行等に支えられている会社の従業員の一体感は強い。このような企業がM&Aの対象になった場合、お家の一大事と受け止められ、会社ぐるみでM&Aに抵抗する動きが生じやすい。
(オ) 貿易摩擦等の外圧に押されて企業の海外進出が活発になると、国内での生産技術開発や新製品開発が回避され、内部成長方式による多角化戦略は機能しなくなる。
⇒×:貿易摩擦等の外圧に押されて企業の海外進出が活発になっても、内部成長方式による多角化戦略は機能する。

(設問2)

(ア) M&Aで企業規模が大きくなれば、獲得した規模の経済性や市場支配力の便益を上回る管理コストが発生する可能性が高まるので、管理コストの削減を図るとともに、そのことによって経営の柔軟性が失われないように注意する必要がある。
⇒○:企業規模の拡大は、管理コストの上昇および経営の柔軟性を失う要因となる。
(イ) 企業間のベクトルを合わせて統合するには、それぞれの企業で培われてきた企業文化の衝突を避け、互いを尊重しつつ、1つの企業体に融合することを図ることが重要になる。
⇒○:M&Aを成功させるためには、それぞれの企業で培われてきた企業文化の衝突を避け、互いを尊重しつつ、1つの企業体に融合することを図ることが重要になる。
(ウ) 買収先の企業の主要なスタッフの離職が多くなると、マネジメント能力や専門的な知識や技能などの人的資源が損なわれて組織能力が弱くなるので、買収先の企業の従業員の賃金や待遇を手厚くすることを怠らないようにすることが必要である。
⇒×:M&Aの際に離職率が増加する原因は企業文化の違いや仕事へのやりがいの低下などが考えられる。それらには、買収先の企業の従業員の賃金や待遇を手厚くしても防ぐことはできない。
(工) 買収戦略にのめりこむと、買収先企業を適切に評価することがおろそかになり、高いプレミアム価格を相手に支払ったり、高いコストの借り入れや格付けの低い社債の過度な発行などが起こりやすく、大きな負債が経営危機を招きやすくなることに注意が必要である。
⇒○:M&Aでは買収先企業の適切な評価が重要になる。これに失敗すると高いプレミアム価格を相手に支払ったり、高いコストの借り入れや格付けの低い社債の過度な発行などが起こりやすく、大きな負債が経営危機を招きやすくなることに注意が必要である。
(オ) 買収によって新規事業分野をすばやく手に入れることは、イノベーションによる内部成長方式の代替であるので、M&Aの成功が積み重なるにつれて、研究開発予算の削減や内部開発努力の軽視の傾向が強まり、イノベーション能力が劣化しやすくなることに注意が必要である。
⇒○:M&Aに頼りすぎると、研究開発予算の削減や内部開発努力の軽視の傾向が強まり、イノベーション能力が劣化しやすくなることに注意が必要である。

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設問3

解答:イ

(ア) 経営資源の模倣には直接的な複製だけではなく、競争優位にある企業が保有する経営資源を別の経営資源で代替することによる模倣もある。
⇒○:先発企業が競争優位上重要な経営資源を先取りしている場合には後発企業は別の経営資源で代替することがあり得る。
(イ) 経営資源やケイパビリティが競争優位を生じさせており、企業の内部者にとって競争優位の源泉との関係が理解できない場合、経路依存性による模倣困難が生じている。
⇒×:経営資源やケイパビリティが競争優位を生じさせており、企業の外部者にとって競争優位の源泉との関係が理解できない場合、経路依存性による模倣困難が生じている。
(ウ) 経営資源やケイパビリティに経済価値があり、他の競合企業や潜在的な競合企業が保持していないものである場合、希少性に基づく競争優位の源泉となりうる。
⇒○:営資源やケイパビリティに経済価値があり、他の競合企業や潜在的な競合企業が保持していないものである場合、他社は同じものを調達することが困難なため、希少性に基づく競争優位の源泉となりうる。
(工) 経済価値のない経営資源やケイパビリティしか保持していない企業は、経済価値を有するものを新たに獲得するか、これまで有してきた強みをまったく新しい方法で活用し直すかの選択を迫られる。
⇒○:経済価値のない経営資源やケイパビリティしか保持していない場合、経営資源の有用性は低いので、経済価値を有するものを新たに獲得するか、これまで有してきた強みをまったく新しい方法で活用し直すかの選択を迫られる。
(オ) 成功している企業の経営資源を競合企業が模倣する場合にコスト上の不利を被るのであれば、少なくともある一定期間の持続的な競争優位が得られる。
⇒○:成功している企業の経営資源を競合企業が模倣する場合にコスト上の不利を被る場合、少なくとも不利が解消するまでの間のある一定期間の持続的な競争優位が得られる。

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設問4

解答:ア

(ア) コストに占める固定費の比率が高い製品の場合、企業は生産能力を最大限に活用しようとしがちであるため、業界は過剰生産に陥りやすいので、できるだけすばやくその製品を売り抜けて、業界からの撤退を図ることが重要になる。
⇒×:コストに占める固定費の比率が高い製品の場合、企業は生産能力を最大限に活用しようとしがちであるため、業界は過剰生産に陥りやすい。したがって、業界からの早期撤退を図ることはコストを回収できない恐れがある。
(イ) 自社が必要とする部材の供給企業が減少すると、競合企業との競争のため調達価格がつりあがりやすいので、代替的な部材の調達や自社開発を検討することも視野に入れておくことが重要になる。
⇒○:自社が必要とする部材の供給企業が減少すると、競合企業との競争のため調達価格がつりあがりやすい。したがって、代替的な部材の調達や自社開発を検討することも視野に入れておくことが重要になる。
(ウ) 自社の製品やサービスと補完性のあるものを販売する企業と強いアライアンスがあると、顧客の望む価値を統合的に提供して競合他社にない競争優位を構築し得るので、このようなアライアンス相手を見出すことは重要になる。
⇒○:アライアンスとは、複数の企業間の様々な連携・共同行動のことである。自社の製品やサービスと補完性のあるものを販売する企業と強いアライアンスがあると、顧客の望む価値を統合的に提供して競合他社にない競争優位を構築し得る。したがって、アライアンス相手を見出すことは重要になる。
(工) 新規参入企業がもたらす追加的な生産能力は、消費者の購入コストの上昇を抑え、競合企業には売上の減少や収益性の低下をもたらすので、参入障壁の強固さや参入企業への業界の反撃能力を点検することが重要である。
⇒○:新規参入企業がもたらす追加的な生産能力は、消費者にとって有利に働き、競合企業には売上の減少や収益性の低下をもたらす。したがって、参入障壁の強固さや参入企業への業界の反撃能力を点検することが重要である。
(オ) 製品がコモディティ化すると、顧客のスイッチングコストが低下して、競合企業との価格競争が激化するので、差別化を目指すには一歩先んじた独自製品の開発とその販売を目指すことが重要である。
⇒○:コモディティ化とは、ある商品カテゴリにおいて、競争商品間の差別化特性(機能、品質、ブランド力など)が失われ、主に価格あるいは量を判断基準に売買が行われるようになることである。製品がコモディティ化すると、顧客のスイッチングコストが低下して、競合企業との価格競争が激化するので、差別化を目指すには一歩先んじた独自製品の開発とその販売を目指すことが重要である。

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設問5

解答:エ

(ア) 企業と顧客の間で情報の非対称性が大きな製品・サービスでは、通常、ブランド・イメージや企業の評判のような客観的にとらえにくい要因に基づく差別化の重要性が大きい。
⇒○:市場における各取引主体が保有する情報に差があるとき、その不均等な情報構造を情報の非対称性 と呼ぶ。企業と顧客の間で情報の非対称性が大きな製品・サービスでは、通常、ブランド・イメージや企業の評判のような客観的にとらえにくい要因に基づく差別化の重要性が大きい。
(イ) 顧客が支払う意思のある価格の上限が顧客の支払い意欲を示すと考えると、通常、差別化による優位は顧客が自社の製品を競合する製品よりも高く評価しているという強みを持つことを意味する。
⇒○:差別化による優位とは、顧客が自社の製品を競合する製品よりも高く評価しているという強み(より高い金額を支払っても購入したい)を持つことを意味する。
(ウ) コスト優位は競合他社よりも低コストを実現できるため、通常、競合他社よりも低価格で製品販売しても利益を確保できる強みを意味する。
⇒×:コスト優位とは、他社より安く同じものを提供できることである。コスト優位は競合他社よりも低コストを実現できるため、通常、競合他社よりも低価格で製品販売しても利益を確保できる強みを意味する。
(工) コスト優位を確立した企業は、競合他社よりも常に製品1単位当たりのコストとそのコストの総額が低いため、低価格で製品・サービスを販売できる。
⇒○:コスト優位とは、他社より安く同じものを提供できることである。しあし、常に常に製品1単位当たりのコストとそのコストの総額が低いため、低価格で製品・サービスを販売できるわけではない。
(オ) どのような差別化による優位をつくるかを考える際には、通常、環境の変化だけではなく自社の強みと顧客の範囲をどのようにとらえて定義するかが重要である。
⇒×:差別化にあたっては通常、環境の変化だけではなく自社の強みと顧客の範囲をどのようにとらえて定義するかが重要である。

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