平成16年度1次試験解答:経済学・経済政策
設問1
解答:ウ
(ア) | GDP(国内総生産)は、各生産段階において作り出された付加価値の合計に相当し、付加価値は、各生産段階における産出額と中間生産物の投入額を加えたものに等しい。 →×:GDP(国内総生産)は付加価値の合計である。ただし付加価値は、各生産段階における産出額と中間生産物の投入額を差し引いたものに等しい。 |
(イ) | GDP は、国民総生産から固定資本減耗を差し引いたものである。 →×:GDPは、GNP(国民総生産)から海外からの純所得を差し引いたものである。国民総生産から固定資本減耗を差し引いたものは、国民純生産(NNP:Net National Product)である。 |
(ウ) | 帰属計算の考え方によれば、農家が自家消費のために生産した農作物はGDPに計上される。 →○:帰属計算とは、財貨・サービスの提供ないし享受に際して、実際にはその対価の支払が行われなかったにもかかわらず、それがあたかも行われたかのようにして計算を行うことである。 帰属計算によって、農家が自家消費のために生産した農作物はGDPに計上される。 |
(エ) | 生産面から見たGDP、分配面から見たGDP、支出面から見たGDP が事前的に等しくなることを、「三面等価の原則」と呼ぶ。 →×:三面等価の原則とは、一国における経済活動の規模は、生産、支出、分配の三つの面から把握できるが、これらは等しくなるという原則のことである。しかし、これは事前的な(計画段階の)関係ではなく、事後的な関係である。 |
設問2
解答:エ(c とd)
デフレ(デフレーション:deflation)とは、物価が持続的に下落していく経済現象のことである。
a | 消費者が物価のさらなる下落を予想すれば、買い控えの傾向が強くなる。 →○:消費者が物価のさらなる下落を予想すれば買い控えの傾向は強くなる。 |
b | デフレ経済下では、名目GDP の成長率が実質GDP の成長率を下回ってしまう。 →○:デフレーション下では名目GDP の増加率は実質GDP 増加率以下となる。 |
c | デフレの進行は、実質利子率を低下させる効果を持つ。 →×:デフレーション下では、実質利子率を上昇させる効果を持つ。 |
d | デフレは、実質賃金を上昇させ、企業収益を増加させる。 →×:デフレーション下では、実質賃金を上昇させる。しかし、企業にとっては実質的なコストの引き上げにつながるため企業収益を減少させる。 |
e | デフレは、預貯金の実質的な価値を高める一方、実質的な債務負担を増加させるように作用する。 →○:デフレーション下では、貨幣価値が上昇する。その結果、預貯金の実質価値を上昇させ、債権者には有利となるが、債務者には実質的負担増となり不利益が生じる。 |
設問3
解答:イ
横軸に欠員率を、縦軸に雇用失業率をとり、両者の関係を示す曲線をUV 曲線という。UV曲線は欠員数が上昇すると、失業率は低下し、逆に欠員数が低下すると、失業率は上昇するという関係があり、失業率と欠員率の関係が分かる。
(ア) | 欠員率の上昇は人手不足を意味し、求職が求人を上回っている状態にある。 →×:欠員数の上昇は人手不足を意味するが、求職が求人を上回っていると一概にはいえない。求職数と求人数の関係は求人倍率によって表される。 |
(イ) | ここ数年、統計的には、人手不足の傾向が見られるものの、失業率が上昇し、雇用のミスマッチが発生している。 →○:設問のUV図は、人手不足(欠員)が生じているにもかかわらず、失業が一向に解消されない状況が強まっていることを示している。すなわち「雇用のミスマッチ」が拡大している。 |
(ウ) | 通常、景気拡大とともに、欠員率と失業率がともに上昇するという関係が見られる。 →×:通常、景気拡大とともに、失業率は下降し、欠員率が上昇するという関係が見られる。 |
(エ) | 図中において、左下(南西)の方向に行くほど、人手不足が拡大し、失業率が低下することを示している。 →×:左下(南西)の方向に行くほど欠員数は低くなるので、人手不足は縮小しているといえる。 |
設問4
解答:ア(a とb)
ディフュージョン・インデックス(DI)とは、景気拡大期か、景気後退期かなどの景気の局面を判断する総合的な指標である。
景気を映し出す経済統計の指標には、景気に先行して動く先行系列、2)景気と一致して動く一致系列、3)景気に遅れて動く遅行系列があります。
- 先行系列
- 新規求人数、企業倒産件数、自動車新規登録台数、新設住宅着工戸数、鉱工業在庫指数、銀行貸出平均残高
- 一致系列
- 鉱工業生産指数、大口電力使用量、輸入通関実績、有効求人倍率、建築着工床面積(鉱工業用)、大型小売店販売額、所定外労働時間指数
- 遅行系列
- 雇用保険受給者実人員、常用雇用指数(製造業)、法人事業税調定額、貸出約定平均金利(地銀)、家計消費支出(津市)、消費者物価指数
a | 一致系列のDI には、鉱工業生産指数や有効求人倍率(除学卒)などが含まれる。 →○:鉱工業生産指数や有効求人倍率(除学卒)は一致系列である。 |
b | 一般に、一致系列のDI が50%を上回れば、景気は拡大局面にあるといえる。 →○:DIは、50%以上(以下)が景気拡大期になる。逆に50%以下が景気下降期となる。 |
c | 先行系列のDI には、法人税収入や完全失業率などが含まれる。 →×:法人税収入や完全失業率は遅行系列に含まれる。 |
d | 遅行系列のDI には、新設住宅着工床面積や新規求人数などが含まれる。 →×:新設住宅着工床面積や新規求人数は先行系列に含まれる。 |
設問5
解答:エ
a | 加速度原理によれば、生産量の増加速度が大きいほど、投資支出が小さくなる。 →×:加速度原理とは、投資量は生産量(GDP)の増加に比例することを示す理論である。生産量の増加のためには新たに機械が必要であり、投資を行うことになるので、生産量(GDP)の増加が大きければ、たくさん機械が必要なので投資も多くなる。 |
b | ケインズの投資理論によれば、投資の限界効率が利子率を上回る場合に、投資が実行される。 →○:正しい。ケインズの投資理論とは、利子率を投資の決定要因とするものである。投資の限界効率が利子率を上回れば、投資が実行される。 |
c | ストックとしての投資支出の増加は、フローとしての資本量が増加することを意味する。 →×:フロー(一定期間内に行われた生産や取引の量として測られるもの)としての投資支出の増加は、ストック(ある一時点に存在している資産や負債の残高のような数字)としての資本量が増加することを意味する。 |
d | 投資の利子弾力性が小さいほど、貨幣供給拡大に伴う所得拡大効果は大きい。 →×:投資の利子弾力性とは、利子率が1%変化したときに投資が何%変化するかを表した指標である。投資の利子弾力性が大きいほど、利子率の変化に対し投資は敏感に反応する。すなわち、投資の利子弾力性が小さいほど、貨幣供給拡大に伴う所得拡大効果は小さい。 |
e | 投資の利子弾力性が小さいほど、利子率の低下に伴う投資支出の拡大幅は小さい。 →○:投資の利子弾力性とは、利子率が1%変化したときに投資が何%変化するかを表した指標である。投資の利子弾力性が大きいほど、利子率の変化に対し投資は敏感に反応する。投資の利子弾力性が小さいほど、利子率の低下に伴う投資支出の拡大幅は小さい。 |