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平成16年度1次試験問題:経営法務

設問11

 ドメインネームの法的保護に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

【解答郡】
(ア) 自己の営業のため使用している名称が周知性を欠いていても、他人がその名称をドメインネームに使用した場合には、不正競争防止法違反となる場合がある。
(イ) 自己の営業のため使用している名称について、商標権を取得していない場合には、その名称を他人がドメインネームに使用しても、その使用を差し止めることはできない。
(ウ) ドメインネームの取得が不正競争防止法に違反する場合、その取得者に対しては、 当該ドメインネームの使用の差止のほか、当該ドメインネームを自分に移転するよう求めることができる。
(エ) ドメインネームの使用を差し止める確定判決を得ても、jp ドメインの登録機関を被告としていない場合には、当該ドメインネームの登録を取り消すことはできない。
(オ) 不正競争防止法は、他人の商品や営業との混同を避けるために、不正にドメインネームを取得することを規制しているので、ドメインネームを高価で買い取らせる目的で取得する行為は、不正競争防止法違反とはならない。

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設問12

 英米法の下での契約(contract)の成立及び効力に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

【解答郡】
(ア) 「NOW, THEREFORE, in consideration of the mutual covenants and agreements contained or set forth herein, the parties agree as follows : 」とは、以下の契約条件と合意事項を考慮したうえで双方が合意した、との趣旨であり、以下の各契約条項についての両当事者の意思表示に、瑕疵がないことを表明するものである。
(イ) 英米法の下では両当事者の合意した条項に約因が含まれないと、契約(contract)としては成立しないのが原則である。
(ウ) 約因とは、当事者の一方が他方に提供する金銭、物、行為を指すものであって、ある権利を行使しない、という不作為は約因にはあたらない。
(エ) 約因を含む合意は、約因を含まない合意とは異なり、即時に法的に強制が可能であるので、契約違反があった場合、相手方は訴訟を起こして勝訴判決を得ずとも直ちに強制執行の手続をとることが可能である。

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設問13

 次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
 ある商品の原材料の購入や商品の流通過程などでは、一定の契約に基づいて継続的・反覆的に売買が行われることが多い。これを継続的売買契約という。
 継続的売買契約の中には
@ 当事者間の包括的な契約に基づいて、直ちに具体的な売買契約が成立するもの
A 包括的な基本契約とは別に、個別に具体的な売買契約が結ばれるものであって、

(a)買主の一方的な意思表示により個別の売買契約が成立するもの、すなわち買主が【    】を有するもの、

または、

(b)個別の売買契約は買主の申込と売主の承諾によって成立するもの

とがある。

(設問1)
 文中の空欄に最も適切な語はどれか。

【解答郡】
(ア) 再売買予約権
(イ) 承諾通知権
(ウ) 売買承諾権
(エ) 申込通知権
(オ) 予約完結権

(設問2)
 次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

【解答郡】
(ア) 継続的売買契約のうち@とA(a)のタイプにおいては、基本契約がある以上、これとは別に売主側の同意を要することなく買主側は商品の引渡義務を発生させることができる。
(イ) A(a)とA(b)のタイプの継続的売買契約において、個別に成立した売買契約は、 包括的な基本契約に基づくものであるので、包括的な基本契約が解除により終了すると、個別の売買契約のうち履行が完了していない売買契約は、遡及的に消滅する。
(ウ) A(b)のタイプであっても、売主と買主の間には継続的な売買について包括的な基本契約が成立しているので、買主の申込に対し、売主は承諾する義務を負っている。
(エ) A(b)のタイプの継続的売買契約では、買主の申込から一定期間内に売主が拒絶の回答をしない場合には、個別の売買契約が成立する。

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設問14

 広告に起因するトラブルに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

【解答郡】
(ア) X はY 社から家庭用サウナを購入した際、Y 社の社員からA 新聞の広告に一回だけ、他の購入者全員の顔写真と並べて顔写真を小さくのせる、との説明を受け、顔写真を広告にのせることを承諾した。ところが、Y 社はA 新聞に計12回、X の顔写真入りの広告を掲載し、そのうちの1回はX の写真のみを大きくアップして掲載した。X は有名人やタレントではないが、Y 社に慰謝料を求めることができる。
(イ) Y 社は脱毛機の販売会社で、「毛をつまむだけで簡単に永久脱毛できる」とか「1分間でスピード脱毛できる」と宣伝していた。買主X はこの広告の文言を信じて当該脱毛機を買ったが、広告文言にあるような脱毛効果はなかった。X はY 社に対し、錯誤により契約が無効であることを理由に代金の返還を求めることができる場合がある。
(ウ) 広告媒体業務に携わる新聞社並びに同社に広告の仲介・取次をする広告社としては、新聞広告のもつ影響力の大きさに照らし、広告内容の真実性に疑念を抱くべき特別の事情があって読者らに不測の損害を及ぼすおそれのあることを予見し、又は予見しえた場合には、真実性の調査確認をして虚偽広告を読者らに提供してはならない義務がある。
(エ) タレントY は不動産販売業者A の販売広告に登場し、A は信頼できる会社と述べ、A が売る土地の購入を推奨した。しかし実はA はほとんど価値のない原野や山林を、詐欺的な方法で不当に高価で売却する会社であった。しかしY は広告主、広告代理店、広告を掲載する媒体のいずれにもあたらないので、Y が出た広告を見てA がまともな会社であると信じてA から山林を買ったX に対し、損害賠償義務を負うことはない。

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設問15

 金属製品製造業を営むX 社は、デフレの進行による同業者間の価格競争の激化等により収支が悪化している。中小企業診断士であるあなたは、かねてより経営者Y氏から経営全般についての相談を受けており、昨今の状況からY 氏から「民事再生法の申し立てを検討しているが、申し立て後は取引先と現金による決済になることが予想され運転資金の資金繰りに不安を抱いている」旨の相談を受けた。
 事業の再生過程における融資は、一般にDIP(Debtor In Possession)ファイナンスと呼ばれているが、このDIP ファイナンスについての記述として最も適切なものはどれか。

【解答郡】
(ア) DIP ファイナンスでも、担保が必要であり、ほとんどの場合、担保価値の高い不動産が担保となる。
(イ) DIP ファイナンスとは、DIP 型の再建手続である民事再生法を申し立てた企業に無条件で再建に必要な運転資金を融資することである。
(ウ) DIP ファイナンスとは、日本政策投資銀行や商工中金等公的金融機関のみに認められている融資制度である。
(エ) DIP ファイナンスには、事業継続の経済的社会的有用性が認められる、再生見込みがある等の一定の要件を充足している場合に、再生計画認可決定前であっても融資を受けられる制度がある。

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設問16

 会社は、毎決算期に、商法第281条第1項各号に定める計算書類を作成し、原則として株主総会の承認を得ることが必要である。また、その承認の後、遅滞なく決算公告を行うことが商法等で定められている。この決算公告に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【解答郡】
(ア) 合併を行う場合に債権者保護手続として合併公告が必要であるが、この合併公告において、決算公告に関する事項を記載することが必要とされている。
(イ) 株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律に定める大会社以外の会社については、官報による決算公告が必要である。
(ウ) 株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律に定める大会社について、インターネット上の自社のホームページに決算公告を掲載する場合、定款の変更が必要である。
(エ) 決算公告において、定時株主総会で承認または報告された貸借対照表、損益計算書及びその要旨を記載しなければならない。

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設問17

 商法では、一定の基準に従い資本準備金及び利益準備金を積立てることが求められるとともに、取崩すことが認められている。この資本準備金及び利益準備金の積立て及び取崩しに関する記述として最も適切なものはどれか。

【解答郡】
(ア) 会社は資本金を増加させるときには、増加すべき資本の額の2分の1までの金額は資本準備金とすることができる。
(イ) 会社は資本の2分の1に達するまで、毎決算期に利益の処分として支出する金額の10分の1以上を利益準備金として積立てなければならない。
(ウ) 株主に払戻をするため、取締役会の決議により、資本準備金または利益準備金の合計額から資本の4分の1に相当する金額を控除した額を取崩すことができる。
(エ) 資本準備金または利益準備金は資本の欠損を填補するために取崩すことができる。

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設問18

 次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
 不動産販売を営むA 社は、バブル期に行った開発事業が失敗し、不良資産を抱えていた。さらに、デフレが進行するなか、A 社を取り巻く経営環境は大きく変化し、 過剰債務の解消が事業の継続のために不可欠な状況となった。このような状況において、過剰債務の解消の一環として、A 社はメインバンクに対し@債務免除を要請すると共に、A債務の株式化を要請した。これに対し、メインバンクはA 社の経営責任及び株主責任を明確にするため、経営者の交代及び減資を行うことを条件にA 社の要請を受けることにした。
 その後、A 社は経営者が交代、新経営者は着任後まもなく『リ・スタート・プラン』を策定、公表し、その第一段階として、従来赤字のBノンコア事業を分離することにより一層の過剰債務削減を図るとともに、コア事業に経営資源を集中することによって再建を図ることに着手した。

(設問1)
 文中の下線部@の債務免除は、貸し手のメインバンクから見た場合債権放棄となるが、この債務免除及び債権放棄に関する記述のうち、最も適切なものはどれか。

【解答郡】
(ア) 会社更生法による更生計画の認可により切り捨てられることとなった金融機関の金銭債権は、税務上損金として取り扱われる。
(イ) 金融機関が債権放棄をする場合、合理的な再建計画に基づくものと考えられ、 税務上損金として取り扱われる。
(ウ) 債務免除が必要となる場合には必ず欠損金があるので、債務免除益を計上した会社で課税所得が発生することはない。
(エ) 民事再生法を申請した場合には債務免除益は非課税となる。

(設問2)
 文中の下線部Aの債務の株式化に関する記述のうち、最も不適切なものはどれか。

【解答郡】
(ア) 再建中の企業における債務の株式化は、過剰債務が削減され自己資本が増加することによりキャッシュ・フローが改善するため、債務者にとって有用な再建手法である。
(イ) 債務者が第三者割当増資を行い、その払い込まれた現金により債務を返済することにより直接的に債務の株式化を行う場合と同様の効果が得られることがある。
(ウ) 債務の株式化を行う場合には、優先株式が発行されることがある。
(エ) 日本で債務の株式化を直接的に行う場合には、債権の現物出資とみて、現物出資の規定が適用される。

(設問3)
 文中の下線部Bのノンコア事業の分離をする場合として、会社分割の手法を用いる場合あるいは営業譲渡の手法を用いる場合が想定されるが、それぞれの手法についての記述のうち、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

(a) 会社分割は営業を包括的に承継させる手法であり、個々の財産等の移転手続が不要である。
(b) 会社分割を行う場合、税務上は資産及び負債を時価で譲渡することになり、譲渡損益が発生する。
(c) 営業譲渡の対価は株式であり、営業譲渡による資金の流入はない。
(d) 営業の全部または重要な一部の譲渡を行う場合には株主総会の決議が必要である。
【解答郡】
(ア) a とc
(イ) a とd
(ウ) b とc
(エ) b とd

(設問4)
 事業再生の過程で、文中のA 社のように経営組織を再編成することにより企業の再建を図っていくケースが考えられるが、その再編成の手法のひとつに、商法に規定された会社分割の手法を用いる場合がある。また、事業再生の過程では再建計画の遂行上、施策実行のタイミングやスピードが要求される場合がある。上記会社分割の手法に関して手続上の期間をできるだけ短くするという観点から記載された下記の文章のうち、最も適切なものはどれか。

【解答郡】
(ア) 株主総会の招集通知の発送を、取締役会の決議により総会の会日の1週間前とすることができる。
(イ) 吸収分割の場合で分割により発行する株式が発行済株式総数の20分の1以下であれば、商法第374条の23の定めにより分割会社も分割承継会社も簡易合併の手続によることになり、株主総会の承認を得る必要がなくなる。
(ウ) 商法374条の3の規定により反対株主の買取請求期間について裁判所の許可により短縮することができる。
(エ) 新設分割の場合で発行する株式の全てを分割会社に割当て、かつ、分割会社が重畳的(併存的)に債務を引受ける場合において、商法第374条の4に定める債権者保護手続は不要になる。

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